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4.00/5点 レビュー 3件。 - ランク
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無限の鏡の反映のなかの中心なき迷路
ミステリーは引き出しの一つ
それどころか、連続殺人の始まりを予感させる第一の事件の幕が切って落とされた後は、捜査の概要さえ圏外に放り出されてしまう。そして我々は、現代に生まれ変わったヘルメス・トリスメギストスの高説もかくやと思わせる、生と死、存在と時間、差異と反復、偶然と運命、肉体と悪魔(つまり魂!)、転生と変身、実像と虚像などトピックが多岐にわたる異端趣味満載の連続講義に付き合わされることになる。もしここに一貫したテーマがあるとすれば、その布石ともいえる身代わりと取り換え子、成り済ましの挿話では、筆者の語り部としての才能の片鱗を堪能することができる。
推理小説の典型からほど遠い、警句と諧謔、霊感と内省、憧憬と郷愁が綯い交ぜになった、叙述というよりは変幻自在な散文詩を思わせる文体。ジャンルの定石を逆手にとった記号遊戯の空騒ぎを期待する者は、きっと出会い頭にかんばせに唾棄されたような驚きと義憤を禁じ得ないだろう。
個人的には、アンチミステリの発案者として知られる某氏の代表作よりも、ジャンルの形式を換骨奪胎した『薔薇の名前』や『LAヴァイス』などのポストモダン文学のほうが親和性が高いと感じられた。