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骨の記憶
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骨の記憶の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.07pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全29件 21~29 2/2ページ
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ん〜!凄い!508Pの分厚い一冊、一気読みでした。 貧しい岩手の少年が上京し、ラーメン屋で働く辺りも、しっかり書き込まれていて非常に面白かった。 しかしこの物語の真の面白さは、その先にありました。 偶然が偶然を生み、別人として生きるチャンスを得た一郎。 おまけに、何の役にも立たないと思っていた土地の権利所が、お宝となった。 そこからの一郎のサクセスストーリーの面白さ! 楡さんの作品は、『プラチナタウン』しか読んでいないのですが、資料の集め方が凄いのか、まるでドキュメンタリーを読むようなリアルさがある。 成田の土地の買い上げのことや、当時の世相が実にきちんと描かれているので、トントン拍子に進むサクセスストーリーに無理を感じさせないものがあります。 運送業をなし、更にコンサルタント会社まで興し、億万長者となった一郎。 没落した子爵の末裔の屋敷を買った一郎。 そこでかつて憧れていた清枝そっくりの娘・冬子に出会い、結婚する。 全てを手に入れたように思われた一郎。 後は、自分の血を継ぐ子供だけ。 が…。 冬子のプライドも凄ければ、その冬子に何も残さないと決めてからの一郎も凄い…。 己の死期を知った一郎が最後にやりとげたのは、弘明への復讐。 一郎の一生は弘明に追いつき、追い越すことだったのですね。 戦後の昭和、這いずり上がり、生き抜いた一郎の一生、面白かったです。 ただ、エピローグでの清枝の弘明への仕打ち…。 これはどうなんでしょう。 もちろん弘明が父を奪い、その後のみじめな生活を送ることになったのですが、プロローグでは『弘明を愛している』と言っていた清枝。 全ての人が不幸で終わっていくこのラストに胸が重くなりました。 あまり取り上げられていない感じがするこの本ですが、ぜひぜひ、読んで欲しいと思う一冊。 超オススメです! | ||||
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悲しくくもあり、寂しくもある、男の壮大なる野望と切なさを描いた物語。 楡作品は、「骨の記憶」が初めてであったが評判通り、いやそれ以上の面白さに感服した。 戦後「金の卵」と持てはやされた時代、中卒の集団就職で上京した少年が社会と大都会に揉まれ、やがて一人の男へと成長して行く。男はなりふり構わず、一代で築き上げた運送会社を大物政治家までも動かすほどの企業へと育て上げる。男であれば、誰もが一度は夢見るようなシンデレラストリーである。そんな主人公が齢を重ねふと立ち止まったとき、言いえぬほど満たされぬ感情が湧き出てくる。男はもう一度出発点に立ち戻ろうとするが、幾ら金があろうが、地位があろうが、足掻いても取り戻すことが出来ないものがあることを知る。その時、男がとった行動は…。見事な構成と筆致で描き上げる「楡ワールド」に引き込まれないものは、決していないと確信した。この作品を一気に読み終えた後に。 | ||||
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面白い小説でした! まるでドキュメンタリーかのような、真実味と読み応えがありました。 現代が舞台であるプロローグから一転した第一章では、 主人公すら想像していた人物と違い、 いったいどんなストーリーが展開するかと思いましたが、 これが本当によくできていて、引き込まれました。 貧しい農村で生まれ育った一郎が、一つの事件を隠したまま集団就職で東京へ。 そこでもまた、大きな事件に巻き込まれる形に。 しかしその負の財産を糧に、少しずつ成功を重ねていくという、 サクセスストーリーといえます。 すねに傷を持つ一郎が、そんなに幸せになってもよいのか、 少し疑問に思うところもありました。 ただ、どん底から這い上がってやるという一郎の一貫したポリシーには全く揺るぎがなく、 尊敬にすら値しました。 それほどまでのエネルギーを持っていたからこそ、 何もかも上手い方向へ進んでいったんだと思います。 激動の戦後という時代の波に乗った一人の男の人生を、 傍観者として、ワクワクしながら拝見した感じです。 | ||||
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持たざる者の狂おしい程のジェラシーが描かれている。絶対に富める者にはなれないという絶望の中で生まれたジェラシーは、成功しても対象が金銭から愛情に変わるだけだ。そういう星の下に産まれてしまったのか、それとも、ジェラシーがジェラシーを生んでいるのか、ジェラシーは消えることなく生涯主人公に付きまとう。 この種のジェラシーは万人に身に覚えがあると思うが、時代背景と相まって非常にリアリティのあるものとなっている。集団就職の実態、高度成長期の中での成功者の狡猾さ、バブル期の不動産取引の大胆さ等々との時代描写も見事だ。 難点はエンディング。時間を越えて東北の寒村に戻るラストはスリリングであるが、経済的に得をした人物がいないばかりではなく、年老いた登場人物の誰一人として、精神的に満たされないという終わり方では読者の溜飲を下げることはできないのではないだろうか。 | ||||
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東北の山村に生まれ、貧しい暮らしを余儀なくされ育った主人公「一郎」。片や広大な土地と資産を持つ旧家に生まれ何不自由なく育った友人の「弘明」。幼なじみのこの二人が育って行く過程において全く別の道を歩まざるを得なかった理由とは。 幼少期においては意識する必要すらなかった二人の違った境遇に主人公「一郎」が気付いた頃に、ある事件が発生する。「一郎」は集団就職で東京に出てから苦労を重ねて行く中で、別のある事件をきっかけに偶然転がり込んだ千載一遇のチャンスをものにし成り上がって行くが、彼の潜在意識に巣喰う「弘明」へのコンプレックス・トラウマがその後の彼の人生の歯車を徐々に狂わせて行く。 “人間の業”とも呼べそうなテーマにスポットを当てた秀作。「一郎」の人生がものの見事に描かれており、それに絡んでくる様々な人物の人間模様が明確な輪郭を持って登場する。中盤から現われる、彼を利用しようとする者。それをわかっていながら敢えて利用されようとする「一郎」の思惑。虚飾に満ちた茶番を演じる彼らの姿こそ、我々の日常そのものではないのか。 ラストの、この物語の終焉が意外にあっけなかったような気がしないでもないが、この小説は構成がしっかりしているため無駄な部分が一切なく、一気に読みきれる力作だ。種類は違うが高村薫の名作『照柿』にも似たカラーの重厚な作品。読み終わった後には思わず「はぁ〜」とため息が漏れてしまった。 | ||||
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508ページの厚さとプロローグから期待した51年前失踪した杉下良治の事件ではなく、その失踪に関わった長沢一郎の人生が物語の99%を占め、その人生が金に執着しただけなので物語に幅が無い。 プロローグに出てくる曽我弘明や静枝が出てくるのも第2章の前半までで、この2人が歩んだ人生は全く出てこない。 長沢一郎が中学卒業までに曽我弘明や静枝と関わったのは短く、その後東京に出てから辿る成功への道筋が物語の中核を占めていながら曽我夫婦を繋げている構成に無理がある。 仕事で悪人になっていく男が引きずっている過去に納得できないのだ。 強引に繋げた過去の事件が最後まで納得出来ないうえに、真実を知った静枝の行動が安直でラストで白けて終わる。 | ||||
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中卒集団就職が「金の卵」と持て囃された意味が良く分かりました。世の中、利用する者・される者の構図や、学の無さからくる貧困,判断間違いなど、昨今の派遣難民大量発生と年月が経っても何ら変わり無い様相であることにぞっとしました。 主人公「一郎」の無念さが手にとるように伝わりました。秀作です。 | ||||
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今までの楡周平作品はどれも自分の暮らす世界とはかけ離れててファンタジーのように感じてしまう所がありました しかしこの作品は時代も場所も自分の住む世界とは違うのですが読み終わった後自分の体験のように思えてしまうくらいでした 特に主人公が子供から大人になるまでの過程がすばらしい 純粋で素朴な田舎の少年が集団就職で東京に出てきたもののなかなかうまくいかず きれいごとでは生きていけないことを知り世の中に対しての考え方が変化していく様子、 田舎に帰りたい気持ちもあるが帰れない、帰りたくない事情もある 今の時代でも誰もが似たような経験があると思います 自分の忘れていた記憶もよみがえらせてくれる作品でした | ||||
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村や街の風景、食卓の情景、寂れた小都市の姿…細部の描写がキッチリしているため、まるでノンフィクションのよう。小説なれど真に迫って実に面白い。一気に読了してしまいました。唯一、最後に買う仏像の表現が甘いのは、わざとフェイクを強調したのかしら。 | ||||
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