わたしを離さないで

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わたしを離さないでの評価:

4.11/5点 レビュー 714件。 B ランク

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平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,119件 941〜960 48/56ページ
No.179
(5pt)

完全な虚構のなかのリアリティ

通常小説とはフィクションとは言うものの、その一つ一つの部分はリアルに基づいて構成される。
登場人物の職業(ステータス)もその一つだ。たとえば作家やフリーター、学生など現実に存在する職種、かつ作者自らの経験や
取材に基づいているため、そこにはかなりのリアリティがあり、読者は場面を思い浮かべ、登場人物に感情移入しやすくなる。
しかしこのフィクションはそのような類の読者の共感を拒んでいる。
というのも、「介護人」という職業は現実には存在しないからだ。
では「介護人」とは何か?

この物語は言ってみれば簡単だ。
臓器提供のために作られたクローン人間が、自分たちなりに己の運命を考え、
それを受け入れながら我々と変わらない青春を謳歌していた。という話。
そして介護人とは、どうやら自分より先に提供者になった者の世話をするという仕事のようだ。
もちろん存在しない介護人経験者に取材するわけにもいかず、このような完全なるフィクションが
一人の人間の頭の中で生まれたということは、まさに奇跡としか言いようがないだろう。

いきなり「クローン人間」など出てきて、しかも出版社も早川書房だから一体どこのSFだ?
と驚かれたかもしれないが、英国きっての作家だけあってテーマは非常に「文学的」になっている。
この小説のキーワードは「運命」と「奉仕」だと思う。
どうせ抗っても抗いきれずどうしようもない運命なのだから、受け入れた上で他人のために生きようじゃないか、
という現代の都会人に欠けたものをこのようなカタチで提示しているようでもある。
そういう意味で、共感しにくいはずの登場人物のはずがごく自然に共感でき、繰り広げられるリアリティに圧倒される。


カズオ・イシグロ独特の静かで抑制の効いた文体でどこかミステリアスな雰囲気をかもしながら、
物語は現代から過去の出来事を想起し、自然に現代に戻りまた昔を思い出すという、これも作者が得意とする構成により進んでいく。
文庫版には訳者あとがきも付いており、いかに丁寧に訳し上げられたかが分かる。

こころの表面的な共感や感動ではなくて、たましいの奥深いところを掴まれて震わされる傑作です。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.178
(5pt)

文学です

奇抜な単語はほとんど使われておらず、誰もが知っている語彙の組み合わせで、これほど特殊な、しかも心を打つ世界が作り出されていることにびっくりします。

よく理解できない状態から読み始めることになると思います。謎が気になって終盤までほぼ一気に読み進み、最後は私自身、この小説の世界をすべて受け入れる気持ちになりました。基本的には、切ない内容です。人を泣かせようとするような大げさな表現は一つも使われていないのに、最後は涙が止まりませんでした。

読書からこういった感情や、生きることに対するある種の思いを得られたことは、素晴らしかったと思います。多分この本を手放すことはなく、ずっと手元に置く一冊になりそうです。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.177
(5pt)

文学です

奇抜な単語はほとんど使われておらず、誰もが知っている語彙の組み合わせで、これほど特殊な、しかも心を打つ世界が作り出されていることにびっくりします。

よく理解できない状態から読み始めることになると思います。謎が気になって終盤までほぼ一気に読み進み、最後は私自身、この小説の世界をすべて受け入れる気持ちになりました。基本的には、切ない内容です。人を泣かせようとするような大げさな表現は一つも使われていないのに、最後は涙が止まりませんでした。

読書からこういった感情や、生きることに対するある種の思いを得られたことは、素晴らしかったと思います。多分この本を手放すことはなく、ずっと手元に置く一冊になりそうです。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.176
(5pt)

過去?現在?

カズオイシグロの作品は独特の雰囲気を備えていてどの作品にもそれが貫かれているのが固定ファンを“離さない”理由のひとつだと思う。今回も裏切られることはなかった。崩壊寸前にまで追い込まれるアイデンティと知らないうちに持っている差別意識やエゴ。また新作を待ち続ける長い日々が!!
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.175
(5pt)

過去?現在?

カズオイシグロの作品は独特の雰囲気を備えていてどの作品にもそれが貫かれているのが固定ファンを“離さない”理由のひとつだと思う。今回も裏切られることはなかった。崩壊寸前にまで追い込まれるアイデンティと知らないうちに持っている差別意識やエゴ。また新作を待ち続ける長い日々が!!
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.174
(5pt)

生まれ持った宿命を許容するということ

この本を読んだのはもう数年前。
でも、未だに消えることのない、心の中に漂う悲しみや切なさや絶望。
つい最近、もう一度読み返してみる。
誰しも生まれる自由はない。
親を、環境を選んで生まれることは、出来ない。
この作品における極端に特殊なシチュエーションはメタファーに過ぎないと思う。
恐らく私たちすべてに言えること。
生まれ持った宿命を許容するとは、どういうことなのか・・・。
不幸な、あるいは自分が望まない「環境」を努力で変えていける人も確かにいるだろう。
しかし、多くの人は生まれた環境、両親、家業や立場(長男だとか一人っ子だとか片親だとか孤児だとか)の中でもがき苦しみながらも、許容して生きているのではないだろうか。
この作品を読み終えて私の中に、「許容とは何なのか?」
という疑問がずっと停滞したままだ。
もしかしてその答えは、一生かけて見つけていくようなものなのかも知れない。

そのテーマを得ただけでも、私にとってこの作品は、カズオ・イシグロという作家は、マイベスト、だと思う。
他の、「日の名残り」、「私たちが孤児だった頃」、「浮き世の画家」なども、
基本的にこの作家が投げかけているテーマは同じ、だと思うので、そちらもお勧めしたい。
日本が産んだ、世界で読まれている偉大な作家だと思う。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.173
(5pt)

生まれ持った宿命を許容するということ

この本を読んだのはもう数年前。
でも、未だに消えることのない、心の中に漂う悲しみや切なさや絶望。
つい最近、もう一度読み返してみる。
誰しも生まれる自由はない。
親を、環境を選んで生まれることは、出来ない。
この作品における極端に特殊なシチュエーションはメタファーに過ぎないと思う。
恐らく私たちすべてに言えること。
生まれ持った宿命を許容するとは、どういうことなのか・・・。
不幸な、あるいは自分が望まない「環境」を努力で変えていける人も確かにいるだろう。
しかし、多くの人は生まれた環境、両親、家業や立場(長男だとか一人っ子だとか片親だとか孤児だとか)の中でもがき苦しみながらも、許容して生きているのではないだろうか。
この作品を読み終えて私の中に、「許容とは何なのか?」
という疑問がずっと停滞したままだ。
もしかしてその答えは、一生かけて見つけていくようなものなのかも知れない。

そのテーマを得ただけでも、私にとってこの作品は、カズオ・イシグロという作家は、マイベスト、だと思う。
他の、「日の名残り」、「私たちが孤児だった頃」、「浮き世の画家」なども、
基本的にこの作家が投げかけているテーマは同じ、だと思うので、そちらもお勧めしたい。
日本が産んだ、世界で読まれている偉大な作家だと思う。


わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.172
(4pt)

全篇を漂うジャズのような哀愁

カズオ・イシグロの小説は何より文章が平易でありながら美しく、ナレーターが時系列で記憶をたどるというパターンを取るものが多いので、読みやすい原書から入りたい日本の読者にはとても適していると思う。
Never Let Me Goの場合、クローンで生まれた子供たちの孤児院という設定から、これは純文学なのかSFなのかという戸惑いのようなものが常につきまとう。その上、クローンだったのだという情報さえ、半分以上を過ぎたところ(この版では166ページ、)でようやく出てくる。カズオ・イシグロが比較的長い休みの後にクローンの子供を題材にして何か書いているらしいという噂は早くからあったが、その背景情報を知らなければ(一体何が起こっているのか)という不安感のようなものを抱きながら読み進まなければならない。

「Never Let Me Go」というタイトルは架空のジャズシンガーの歌の題名から来る。長い間子供を欲していた女性がようやく自分の赤ん坊を手にし「私を離さないで」と歌う。(コンテキストから言うと「私を離れないで」だがletが入るところに視線のひねりがある。)
望んでいた赤ん坊が生まれたと思ったら今度はそれを失う恐れを抱くことになるという、この歌詞の中の女性の悲哀と、生まれた時からすでに臓器ドーナである、つまり、犠牲者であるHailshamの生徒、Kathy、Ruth 、Tommyの悲哀があまり結びつかないことに多少違和感があった。

全編、胸の痛くなるような哀愁と忠誠(イシグロのよく取るテーマである)の痛みがある。失ったものを取り戻せる場所である筈のNorfolkで、ナレーターのKathyが静かに涙を流す最後のシーンが特に美しい。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.171
(4pt)

全篇を漂うジャズのような哀愁

カズオ・イシグロの小説は何より文章が平易でありながら美しく、ナレーターが時系列で記憶をたどるというパターンを取るものが多いので、読みやすい原書から入りたい日本の読者にはとても適していると思う。
Never Let Me Goの場合、クローンで生まれた子供たちの孤児院という設定から、これは純文学なのかSFなのかという戸惑いのようなものが常につきまとう。その上、クローンだったのだという情報さえ、半分以上を過ぎたところ(この版では166ページ、)でようやく出てくる。カズオ・イシグロが比較的長い休みの後にクローンの子供を題材にして何か書いているらしいという噂は早くからあったが、その背景情報を知らなければ(一体何が起こっているのか)という不安感のようなものを抱きながら読み進まなければならない。

「Never Let Me Go」というタイトルは架空のジャズシンガーの歌の題名から来る。長い間子供を欲していた女性がようやく自分の赤ん坊を手にし「私を離さないで」と歌う。(コンテキストから言うと「私を離れないで」だがletが入るところに視線のひねりがある。)
望んでいた赤ん坊が生まれたと思ったら今度はそれを失う恐れを抱くことになるという、この歌詞の中の女性の悲哀と、生まれた時からすでに臓器ドーナである、つまり、犠牲者であるHailshamの生徒、Kathy、Ruth 、Tommyの悲哀があまり結びつかないことに多少違和感があった。

全編、胸の痛くなるような哀愁と忠誠(イシグロのよく取るテーマである)の痛みがある。失ったものを取り戻せる場所である筈のNorfolkで、ナレーターのKathyが静かに涙を流す最後のシーンが特に美しい。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.170
(5pt)

受け入れ方☆

どこかミステリアスに描かれていて、読むに連れてこの小説の中の世界が段々と見えてくるようになっています。
それは私達の住む世界と異なる世界ですが、同時にその世界は私達の世界に重ねられるべきものであり、登場人物達は私達と同じ側面を持つのだと思います。形式はSF的でありながらも、彼らの姿は何よりも現実感を持って訴えかけられるものがありました。

これは登場人物達が、(極端に言えば私達と同じように)限られていて、抜け出せない現実があり、でもその中に何かを見出し、また受け入れようとしているからこそではないでしょうか。
彼らは決して諦めているのではなく、投げ出しているのでもなく、たしかに生きています。自分ではどうにもならないその運命、その社会と平行して自分の生を紡ごうとしているのが感じられます。

そしてこの小説を支えるひとつに文章の良さあると思います。描写や洞察力が素晴らしいのです。
誠実に抑制の効いたそれは、この登場人物達を表すのにぴったりと重なります。

そうして描かれるエピソード群は細密でリアルな人間の営みであり、社会の光景ともいえるでしょう。(もしかしたら現実でも意識出来ないくらいに)人間の息づかいのひとつひとつまでが伝わってきます。
そしてやはりラストシーンにかけての姿は本当に、本当に痛切なるもので、まさに胸がいっぱいになり言葉を失ってしまいました。やりきれない哀しみとまた苦しみを抱かずにはいられません。もうたまらなくなってしまいます。大袈裟ではなく、読み終わってもずっと何かヒリヒリしたまま、何も出来ないでいたほどでした。

今思い出しても、自分が何かを感じてるのがよくわかります。凄く「残る」作品だと思います。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.169
(5pt)

受け入れ方☆

どこかミステリアスに描かれていて、読むに連れてこの小説の中の世界が段々と見えてくるようになっています。
それは私達の住む世界と異なる世界ですが、同時にその世界は私達の世界に重ねられるべきものであり、登場人物達は私達と同じ側面を持つのだと思います。形式はSF的でありながらも、彼らの姿は何よりも現実感を持って訴えかけられるものがありました。

これは登場人物達が、(極端に言えば私達と同じように)限られていて、抜け出せない現実があり、でもその中に何かを見出し、また受け入れようとしているからこそではないでしょうか。
彼らは決して諦めているのではなく、投げ出しているのでもなく、たしかに生きています。自分ではどうにもならないその運命、その社会と平行して自分の生を紡ごうとしているのが感じられます。

そしてこの小説を支えるひとつに文章の良さあると思います。描写や洞察力が素晴らしいのです。
誠実に抑制の効いたそれは、この登場人物達を表すのにぴったりと重なります。

そうして描かれるエピソード群は細密でリアルな人間の営みであり、社会の光景ともいえるでしょう。(もしかしたら現実でも意識出来ないくらいに)人間の息づかいのひとつひとつまでが伝わってきます。
そしてやはりラストシーンにかけての姿は本当に、本当に痛切なるもので、まさに胸がいっぱいになり言葉を失ってしまいました。やりきれない哀しみとまた苦しみを抱かずにはいられません。もうたまらなくなってしまいます。大袈裟ではなく、読み終わってもずっと何かヒリヒリしたまま、何も出来ないでいたほどでした。

今思い出しても、自分が何かを感じてるのがよくわかります。凄く「残る」作品だと思います。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.168
(5pt)

豊かな語りもまた切ない

非常に抑制された静かな語りですね。語り手キャシーの豊かで温かい感性が、幼い頃のヘールシャムでの生活から、その後の日々を生き生きと語っています。人と人との交流がとてもリアルで、穏やかです。その日常の中に、ちらりちらりと謎めいたものが示されますが、決してあざとすぎることもなく、自然にひきこまれていきました。
このキャシーの豊かな感性そのものも、作品の中核に繋がるものなのだなと気づかされました。作中での「感性豊かな絵画作品」と同様のポジションなのではないでしょうか。
 非常に特殊な設定の物語ですが、ここに描かれている「抑圧するもの」「利用されるもの」「差別的感情」「死生観」などなどは、普遍性を持っていると思います。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.167
(5pt)

豊かな語りもまた切ない

非常に抑制された静かな語りですね。語り手キャシーの豊かで温かい感性が、幼い頃のヘールシャムでの生活から、その後の日々を生き生きと語っています。人と人との交流がとてもリアルで、穏やかです。その日常の中に、ちらりちらりと謎めいたものが示されますが、決してあざとすぎることもなく、自然にひきこまれていきました。
このキャシーの豊かな感性そのものも、作品の中核に繋がるものなのだなと気づかされました。作中での「感性豊かな絵画作品」と同様のポジションなのではないでしょうか。
 非常に特殊な設定の物語ですが、ここに描かれている「抑圧するもの」「利用されるもの」「差別的感情」「死生観」などなどは、普遍性を持っていると思います。

わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.166
(5pt)

第三部を読み進めながら、涙が止まらなかった。

単行本が出版された時から、気になっていたのですが、本の重さとたぶん内容も重いのではないかと考えて、手が出ませんでした。今回、文庫になったので、いつか読むつもりで購入しました。実際、読み始めは頭の中に、様々な疑問と「もしかしたら?」という恐ろしい予測が渦巻いて一章ずつ辛抱して読み進めるのがやっとでした。第一部の後半、「やはりそういうことだったのか」ということが分かってからは、次の展開が知りたくてどんどん読みすすんでいきました。
第三部に入ってから読了までは、読むことを止められず、悲しいとか感動したとかそういった感情の動きが一切なかったにも関わらず、自分の眼から涙があふれて頬をつたっていくという初めての経験をしました。読み終わった後、もう一度、苦労して読んでいた第一部を読むと、そこには結末を知ったからこそわかる精緻な表現があり、作者の構成力に感嘆しました。
柴田元幸さんの解説に「作家が想像力のなかにとことん沈潜したその徹底ぶりによって、これまでのどの作品をも超えた鬼気迫る凄味と、逆説的な普遍性をこの小説は獲得している」とありますが、そのとおりだと思います。「この世に生を受けることの意味」と「おそらく罪悪感から生じるであろう中途半端な正義、あるいは理想主義の、残酷」を深く深く考えさせられた作品でした。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.165
(5pt)

第三部を読み進めながら、涙が止まらなかった。

単行本が出版された時から、気になっていたのですが、本の重さとたぶん内容も重いのではないかと考えて、手が出ませんでした。今回、文庫になったので、いつか読むつもりで購入しました。実際、読み始めは頭の中に、様々な疑問と「もしかしたら?」という恐ろしい予測が渦巻いて一章ずつ辛抱して読み進めるのがやっとでした。第一部の後半、「やはりそういうことだったのか」ということが分かってからは、次の展開が知りたくてどんどん読みすすんでいきました。
第三部に入ってから読了までは、読むことを止められず、悲しいとか感動したとかそういった感情の動きが一切なかったにも関わらず、自分の眼から涙があふれて頬をつたっていくという初めての経験をしました。読み終わった後、もう一度、苦労して読んでいた第一部を読むと、そこには結末を知ったからこそわかる精緻な表現があり、作者の構成力に感嘆しました。
柴田元幸さんの解説に「作家が想像力のなかにとことん沈潜したその徹底ぶりによって、これまでのどの作品をも超えた鬼気迫る凄味と、逆説的な普遍性をこの小説は獲得している」とありますが、そのとおりだと思います。「この世に生を受けることの意味」と「おそらく罪悪感から生じるであろう中途半端な正義、あるいは理想主義の、残酷」を深く深く考えさせられた作品でした。

わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.164
(5pt)

人間を人間として見ること。

異常な運命を辿る主人公とその仲間の生徒たちの日常と思い出が落ち着いた調子で綴られている物語。
無人の風景に想像を膨らませたり、グループの中での自分の居場所を確立するための攻防がとてもリアルで、微妙な均衡の探り合いが日常を構成していることが身にしみた。
自分より恵まれているにしても、過酷な暮らしをしているにしても、わたしたちは自分たちとその仲間以外を、本当に、自分や仲間と同じ人間だと絶えず実感しながら生きていると言えるだろうか。
理解できない奇妙な生き物、あるいは神聖な存在、哀れむべき対象として、それにふさわしいとき以外は、いないこととして生きていないだろうか。
自分の幸せに浸るために、自分の目的を信じて全うするために、ときには自分で自分を慰めるために。
高層マンションのペントハウスにすむ人も、今日の宿に困る人にも日常はあって、特にその子ども時代は、他の人には異常であっても、その人のルーツとしてよりどころとして存在し続ける。
そして、人間が誰かとそのよりどころの感触を分かち合うとき、私たちは相手を同じ人間として深く意識できる…。
この小説を読むことは、主人公たちとこの感触を分かち合うことだ。
もし仮に自分たちがこの小説の世界に存在していたとしたら、自分たちはおそらく彼らを人間だと意識しない相手である。
しかし、この小説を読んで、彼らを人間だと思わないでいることなんてできないだろう。
人間を人間として見ること。この小説を読んで、それが「命の価値」とか「生きる意味」なんて陳腐な言葉よりもずっと、私たちが意識すべきことだと思った。
誰かが死んで泣ける物語がいい物語だと思っている人には、ぜひ一読をお勧めする。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.163
(5pt)

人間を人間として見ること。

異常な運命を辿る主人公とその仲間の生徒たちの日常と思い出が落ち着いた調子で綴られている物語。
無人の風景に想像を膨らませたり、グループの中での自分の居場所を確立するための攻防がとてもリアルで、微妙な均衡の探り合いが日常を構成していることが身にしみた。
自分より恵まれているにしても、過酷な暮らしをしているにしても、わたしたちは自分たちとその仲間以外を、本当に、自分や仲間と同じ人間だと絶えず実感しながら生きていると言えるだろうか。
理解できない奇妙な生き物、あるいは神聖な存在、哀れむべき対象として、それにふさわしいとき以外は、いないこととして生きていないだろうか。
自分の幸せに浸るために、自分の目的を信じて全うするために、ときには自分で自分を慰めるために。
高層マンションのペントハウスにすむ人も、今日の宿に困る人にも日常はあって、特にその子ども時代は、他の人には異常であっても、その人のルーツとしてよりどころとして存在し続ける。
そして、人間が誰かとそのよりどころの感触を分かち合うとき、私たちは相手を同じ人間として深く意識できる…。
この小説を読むことは、主人公たちとこの感触を分かち合うことだ。
もし仮に自分たちがこの小説の世界に存在していたとしたら、自分たちはおそらく彼らを人間だと意識しない相手である。
しかし、この小説を読んで、彼らを人間だと思わないでいることなんてできないだろう。
人間を人間として見ること。この小説を読んで、それが「命の価値」とか「生きる意味」なんて陳腐な言葉よりもずっと、私たちが意識すべきことだと思った。
誰かが死んで泣ける物語がいい物語だと思っている人には、ぜひ一読をお勧めする。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.162
(4pt)

一人の帰り道

この物語の特異な輪郭が見えて来たとき、
つき合う価値があるかなという不安がアタマをよぎった。

作者の勝手な空想につき合わされ、
ぐるぐる引き回されて、最後は元の場所、というような。

活字好きな僕は別にそれでもよかった、本が読めれば。
でも読んだあと何も残らない
というような読書体験はできれば避けたい。

果たしてそれは杞憂だった。

特異な設定の主人公と共に遠くまで旅をした。
その主人公の切実さに共感した。
自分自身の切実さに通じていると錯覚(?)すらさせられた

不安を燃料にした車に揺られ、うとうとと夢を見ながらずいぶん遠くまで来た。
多分ノーフォークあたりまで・・・。

今、本を閉じ、車は僕を乗せずに行ってしまった。
でも、今も、同じ車に乗っているような感覚が拭えない。

少し遠くまで来すぎたみたいだ。
一人の帰り道は長くて寂しいものになりそうだ。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.161
(4pt)

一人の帰り道

この物語の特異な輪郭が見えて来たとき、
つき合う価値があるかなという不安がアタマをよぎった。

作者の勝手な空想につき合わされ、
ぐるぐる引き回されて、最後は元の場所、というような。

活字好きな僕は別にそれでもよかった、本が読めれば。
でも読んだあと何も残らない
というような読書体験はできれば避けたい。

果たしてそれは杞憂だった。

特異な設定の主人公と共に遠くまで旅をした。
その主人公の切実さに共感した。
自分自身の切実さに通じていると錯覚(?)すらさせられた

不安を燃料にした車に揺られ、うとうとと夢を見ながらずいぶん遠くまで来た。
多分ノーフォークあたりまで・・・。

今、本を閉じ、車は僕を乗せずに行ってしまった。
でも、今も、同じ車に乗っているような感覚が拭えない。

少し遠くまで来すぎたみたいだ。
一人の帰り道は長くて寂しいものになりそうだ。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.160
(5pt)

すばらしい「SF小説」のような作品

現実と異なった背景・道具を用意し、読者が作品と現実を重ね合わせるなかで、現実の中の普段気づかずにすごしていたり忘れようとしているものに直面させてくれます。背景・道具立ては「SF小説」的ですが、内容は現実的です。
主人公の置かれている境遇は一見特に悲惨ではあるけれども、では、今まさにわれわれの置かれている境遇とどう違う?
子供のときの幸せや漠然と感じた恐怖、大人への不信感やあこがれ、はなんだったのか?
自分のなれるもの、できることが限られているとわかったときに、どう対峙すべきか?
読んだあとにいろいろと考えさせられました。
ただ、主人公の視線で語られてはいても、主人公の生き方に感動させられはするものの、著者の考えている事は主人公のたどった道を全面的に肯定しているのだろうか、とも思います。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517