わたしを離さないで

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評判

わたしを離さないでの評価:

4.11/5点 レビュー 714件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,119件 821〜840 42/56ページ
No.299
(5pt)

子供の頃から失いつづけてきたすべてのもの

切実な小説。
物語の核心に迫るまで少し冗長すぎるきらいはあるものの、
微妙な違和感・不自然さを積み重ねて、
読者に対して不安感を煽る手法は見事。

牧歌的な世界の青春小説的な味わいから一転して、
登場人物たちもはっきりとは認識していない世界のありようが
少しずつ、少しずつ明らかにされていく展開は胸をえぐる。

主人公の淡々とした語り口は、作品世界を静謐に保っているが
むしろその静けさがどこかしら諦念をも感じさせ、
またカタストロフィに向かって一歩ずつ刻み歩む姿に
抗いようのない未来を暗示しているかのようだ。
世界の美しさと残酷さが二重写しになって見える。

絵空事ではない現実が読者にも突きつけられている。
この世界はいずれあるかもしれない世界。
メタファー的にも読めるだろうが、私としては
彼女たちの人生に対して、言葉にならないリアリティを感じた。

決して後味の良い作品ではないし、このような世界観に
対して不快感を感じる方もいるだろう。
物語としても冗長な部分は多い。
だが、登場人物たちの希望と失望、そして生と死は
かけがえのないものであったと信じたい。

「子供の頃から失いつづけてきたすべてのものの打ち上げられる場所」
彼女の涙に映る原風景は、輝きながら散っていく。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.298
(5pt)

空気までも感じさせる

カズオ イシグロの作品は以前から気になっていましたが中々手をつける機会がなく先日NHKの特集で読む決心をしました。ストーリーはそれゆえに何んとなく把握済みでした。文章の読みやすさもあり一気に読み終えました。主人公のゆっくりとした間を置いたような語り口で彼女たちの取り巻く環境が特殊でありながら全くそれを感じさせず、3人の登場人物に起きるちょっとした事件や、やりとりに自分を投影させながら読んでいきました。何気なく語られるエピソードや感情が特別なようで特別はなく、しかもそれは彼女たちにとってとても大切なものであるということが自分の生活においてもいろんなものを見過ごして本当は大切なものであることを適当にしているんではないかと感じさせられました。ただストーリーを追って読んで行くだけでも面白い作品ではありますが、空気感が素晴らしく、最後のシーンは小説の中で吹く風を自分自身も感じることができました。言葉の力をつくづく思い知らされた作品です。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.297
(5pt)

子供の頃から失いつづけてきたすべてのもの

切実な小説。
物語の核心に迫るまで少し冗長すぎるきらいはあるものの、
微妙な違和感・不自然さを積み重ねて、
読者に対して不安感を煽る手法は見事。

牧歌的な世界の青春小説的な味わいから一転して、
登場人物たちもはっきりとは認識していない世界のありようが
少しずつ、少しずつ明らかにされていく展開は胸をえぐる。

主人公の淡々とした語り口は、作品世界を静謐に保っているが
むしろその静けさがどこかしら諦念をも感じさせ、
またカタストロフィに向かって一歩ずつ刻み歩む姿に
抗いようのない未来を暗示しているかのようだ。
世界の美しさと残酷さが二重写しになって見える。

絵空事ではない現実が読者にも突きつけられている。
この世界はいずれあるかもしれない世界。
メタファー的にも読めるだろうが、私としては
彼女たちの人生に対して、言葉にならないリアリティを感じた。

決して後味の良い作品ではないし、このような世界観に
対して不快感を感じる方もいるだろう。
物語としても冗長な部分は多い。
だが、登場人物たちの希望と失望、そして生と死は
かけがえのないものであったと信じたい。

「子供の頃から失いつづけてきたすべてのものの打ち上げられる場所」
彼女の涙に映る原風景は、輝きながら散っていく。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.296
(5pt)

空気までも感じさせる

カズオ イシグロの作品は以前から気になっていましたが中々手をつける機会がなく先日NHKの特集で読む決心をしました。ストーリーはそれゆえに何んとなく把握済みでした。文章の読みやすさもあり一気に読み終えました。主人公のゆっくりとした間を置いたような語り口で彼女たちの取り巻く環境が特殊でありながら全くそれを感じさせず、3人の登場人物に起きるちょっとした事件や、やりとりに自分を投影させながら読んでいきました。何気なく語られるエピソードや感情が特別なようで特別はなく、しかもそれは彼女たちにとってとても大切なものであるということが自分の生活においてもいろんなものを見過ごして本当は大切なものであることを適当にしているんではないかと感じさせられました。ただストーリーを追って読んで行くだけでも面白い作品ではありますが、空気感が素晴らしく、最後のシーンは小説の中で吹く風を自分自身も感じることができました。言葉の力をつくづく思い知らされた作品です。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.295
(4pt)

ETVでのKAZUO ISHIGURO

長崎で幼少期を過ごした筆者。メタファーになり得るほどのIDENTEITYには小説内には過不足はあるようだが、静観は出来ないイライラ感虚無感絶望感希望的観測自己満足感を痛切に投入されてしまった瞬間、あまりスペイサイドよりは島云々のアイランド系のモルトで感慨したい欲情にかられました。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.294
(5pt)

空気までも感じさせる

カズオ イシグロの作品は以前から気になっていましたが中々手をつける機会がなく先日NHKの特集で読む決心をしました。ストーリーはそれゆえに何んとなく把握済みでした。文章の読みやすさもあり一気に読み終えました。主人公のゆっくりとした間を置いたような語り口で彼女たちの取り巻く環境が特殊でありながら全くそれを感じさせず、3人の登場人物に起きるちょっとした事件や、やりとりに自分を投影させながら読んでいきました。何気なく語られるエピソードや感情が特別なようで特別はなく、しかもそれは彼女たちにとってとても大切なものであるということが自分の生活においてもいろんなものを見過ごして本当は大切なものであることを適当にしているんではないかと感じさせられました。ただストーリーを追って読んで行くだけでも面白い作品ではありますが、空気感が素晴らしく、最後のシーンは小説の中で吹く風を自分自身も感じることができました。言葉の力をつくづく思い知らされた作品です。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.293
(4pt)

ETVでのKAZUO ISHIGURO

長崎で幼少期を過ごした筆者。メタファーになり得るほどのIDENTEITYには小説内には過不足はあるようだが、静観は出来ないイライラ感虚無感絶望感希望的観測自己満足感を痛切に投入されてしまった瞬間、あまりスペイサイドよりは島云々のアイランド系のモルトで感慨したい欲情にかられました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.292
(4pt)

読んで観て、また読み返す

映画を観にいく前の予習として購入。コシマキは出演者が印刷されたものでした。
映画のほうは、原作のエピソードを大幅に端折ってあるので、映像だけを記憶に残し、ゆっくり読み返すとよろしいかと。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.291
(4pt)

読んで観て、また読み返す

映画を観にいく前の予習として購入。コシマキは出演者が印刷されたものでした。
映画のほうは、原作のエピソードを大幅に端折ってあるので、映像だけを記憶に残し、ゆっくり読み返すとよろしいかと。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.290
(4pt)

わからない

自分の感受性では、最後まで本書を理解することができなかった。

他のレビューにあるようなリアリティについては気にならず、文章の良さもあってすんなり入り込むことができた。内容が退屈だということもなく、400ページ以上にわたってぎっしりと文字がつまっているが、割と短時間で読めた。

しかし、本書をどのように受け止め、どう表現していいのかがわからない。
確かに読了後、何かが心の中に残っている。しかし僕の感受性、表現力、語彙では、これが何かを表現できないばかりか、自分自身でもよくわからない。何だか、モヤモヤしている。


本書は極力ネタばれはない方がいいと思うので気をつけたいが、

しかし、以下、ちょっとだけネタばれになるかもしれない。


本書の中心となる3人は、運命を受け止め、抗うことなく生きているように見える。あるとき、ひとつの希望が見えた。その時の彼女らの反応はどうか。著者のまさに抑制のきいた文章のごとく、彼女達は自分達を抑制しながら行動する。
その心の動きは理解できる。どうしようもならないと運命を受け止めているとき、人はそのように行動するのかもしれない。でも、本心は、望んでいるのは、きっと違うのだろう。

次のセリフが、頭に残っている。
「よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついている。必至でしがみついているんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される・・・」
そこで、本書のタイトルを思い浮かべる。そう、あのカセットテープの。Never Let Me Go・・・わたしを離さないで。わたしを行かせないで。そんなことをしないで。

そして、彼女たちの出来事と、想いとを想像するのだけれど、その想像が最後まで辿り着けない。
まだ、僕には本書を理解することができない。
何か重要そうなことだと思うのだけれど。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.289
(4pt)

わからない

自分の感受性では、最後まで本書を理解することができなかった。

他のレビューにあるようなリアリティについては気にならず、文章の良さもあってすんなり入り込むことができた。内容が退屈だということもなく、400ページ以上にわたってぎっしりと文字がつまっているが、割と短時間で読めた。

しかし、本書をどのように受け止め、どう表現していいのかがわからない。
確かに読了後、何かが心の中に残っている。しかし僕の感受性、表現力、語彙では、これが何かを表現できないばかりか、自分自身でもよくわからない。何だか、モヤモヤしている。


本書は極力ネタばれはない方がいいと思うので気をつけたいが、

しかし、以下、ちょっとだけネタばれになるかもしれない。


本書の中心となる3人は、運命を受け止め、抗うことなく生きているように見える。あるとき、ひとつの希望が見えた。その時の彼女らの反応はどうか。著者のまさに抑制のきいた文章のごとく、彼女達は自分達を抑制しながら行動する。
その心の動きは理解できる。どうしようもならないと運命を受け止めているとき、人はそのように行動するのかもしれない。でも、本心は、望んでいるのは、きっと違うのだろう。

次のセリフが、頭に残っている。
「よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついている。必至でしがみついているんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される・・・」
そこで、本書のタイトルを思い浮かべる。そう、あのカセットテープの。Never Let Me Go・・・わたしを離さないで。わたしを行かせないで。そんなことをしないで。

そして、彼女たちの出来事と、想いとを想像するのだけれど、その想像が最後まで辿り着けない。
まだ、僕には本書を理解することができない。
何か重要そうなことだと思うのだけれど。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.288
(5pt)

失われてゆくものの物語

これは「失われてゆくものの物語」。
この物語が描く「失われるもの」とは何か。
本当に様々な解釈で読む事ができるのです。

私たちが人生で触れるものは、観念的事柄であれ、具体的事物であれ、
全て、ひとつ残らず、失われてゆきます。
それだからこそ美しい、と思う人もいるでしょう。
愛おしさ、あるいはやりきれないほどの切なさを感じる人も、
失われるものそのものによっては、不安や恐怖を抱く人も…。
それがそのまま、この本の読後感となります。

それはつまり、読み手によって、また、人生の折々で読み返す度にも、
まるで違う物語となり得る、素晴しい小説。
緻密な筆致、隙のない構成も見事です。

まるでその世界を手に触れることができるような、緻密な描写。
誰しもが子供だった頃、ティーンエイジャーだった頃、
経験したような事ばかりではないでしょうか?
抑制のきいた文体で語られてゆく、想い出のエピソードの数々は
本当に些末な出来事がほとんどです。(しかし物語にとっては重要な…)
それと対照的に、この物語世界に終始して横たわる、非常にヘビーな「現実」。
そのコントラストが、
キャシー達をより「私たち側」のリアルな存在として感じさせ、
その世界の異様さを、あくまで叙情的に受け入れる事に成功させている、ような。

何にしろ、私にとっては非常に思い入れの深い一冊であり、
この先、一生にわたり幾度も読み返してゆくだろうことを予感させるのです。
この本を幾度失おうとも、その度に、取り戻すのです。なんちゃって。
(実際、一度なくして買い直しました)
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.287
(5pt)

失われてゆくものの物語

これは「失われてゆくものの物語」。
この物語が描く「失われるもの」とは何か。
本当に様々な解釈で読む事ができるのです。

私たちが人生で触れるものは、観念的事柄であれ、具体的事物であれ、
全て、ひとつ残らず、失われてゆきます。
それだからこそ美しい、と思う人もいるでしょう。
愛おしさ、あるいはやりきれないほどの切なさを感じる人も、
失われるものそのものによっては、不安や恐怖を抱く人も…。
それがそのまま、この本の読後感となります。

それはつまり、読み手によって、また、人生の折々で読み返す度にも、
まるで違う物語となり得る、素晴しい小説。
緻密な筆致、隙のない構成も見事です。

まるでその世界を手に触れることができるような、緻密な描写。
誰しもが子供だった頃、ティーンエイジャーだった頃、
経験したような事ばかりではないでしょうか?
抑制のきいた文体で語られてゆく、想い出のエピソードの数々は
本当に些末な出来事がほとんどです。(しかし物語にとっては重要な…)
それと対照的に、この物語世界に終始して横たわる、非常にヘビーな「現実」。
そのコントラストが、
キャシー達をより「私たち側」のリアルな存在として感じさせ、
その世界の異様さを、あくまで叙情的に受け入れる事に成功させている、ような。

何にしろ、私にとっては非常に思い入れの深い一冊であり、
この先、一生にわたり幾度も読み返してゆくだろうことを予感させるのです。
この本を幾度失おうとも、その度に、取り戻すのです。なんちゃって。
(実際、一度なくして買い直しました)
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.286
(5pt)

精緻な文章、重いテーマ

KAZUO ISHIGUROの名前を知ったのは数年前のことだが、数冊の本を出していて、それぞれの本がせいぜい200〜300ページくらいの厚さしかないと言うことにちょっと感心しただけだった。今回この本を手に取ったのは映画化されたのがきっかけだったが、彼の作品の短さだけでなく寡作であることにも驚かされた。デビュー作の「A PALE VIEW OF HILLS」が出版されたのが1982年で、最新作で七作目の短編集「NOCTURNES」が2009年に出されているから、およそ4年に1作と言うところだろうか。4年と言えば、STEPHEN KING氏だったら数百ページの長編を毎年出すことができるだろうし、村上春樹でももっと短い間隔で作品を発表できるだろう。それなのにISHIGUROはその道を辿らなかった。

この本を読み始めて感じたのが、恐ろしく愛想の無い小説だと言うことだった。なかなか心の中に染み通ってこない。英語も、単語はそれほど難しいものは使われていないのだが、構文は平易でないし、近づきがたいものがある。しかし読み進むうちに漸く分かった。わざとこんな書き方をしているのだ。一つ一つの作品が短いと言うことは、各作品が決して雑に仕上げられたと言うことではないのはすぐに理解できる。それどころか彼の場合、一つ一つの文章に掛ける時間が恐らく長いのだろう。ありきたりの言い方だが、彫琢の限りを尽くして創造したと言って良いかもしれない。

主人公であり語り手でもあるKATHYが、友だちと幼少年期過ごしたHAILSHAMと言う学園は最初のうちはなんでもない雰囲気で、物語の展開も単なる学園小説だと勘違いしてしまうほどだ。ところがある雨の日、Miss LUCYと言う女性が生徒たちに語った言葉でやっとこの小説の重さが理解できた。ある目的で作り上げられた生命と言うのは、何かしら家畜や農作物を想像させてしまう。こう言ったテーマの小説は、他の作家も書けるかもしれない。星新一だったらきっと、さらっとショート・ショートを仕上げててしまうだろう。筒井康隆だったら、批判されそうな小説を書き上げてしまうかもしれない。もちろん二人とも奥底に持っている考えは深いことは言うまでもないだろうが……。

この小説は長編小説だが、ペーパーバックで300ページくらいの手ごろな小説だ。長編に慣れている読者だったら、面白いかどうか分からないうちに読み終えることができるだろう。ぜひMiss LUCYが生徒に向かって発言するところまで読み進んでほしい。そうすれば、この小説の重みが理解できるのではないだろうか。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.285
(5pt)

精緻な文章、重いテーマ

KAZUO ISHIGUROの名前を知ったのは数年前のことだが、数冊の本を出していて、それぞれの本がせいぜい200〜300ページくらいの厚さしかないと言うことにちょっと感心しただけだった。今回この本を手に取ったのは映画化されたのがきっかけだったが、彼の作品の短さだけでなく寡作であることにも驚かされた。デビュー作の「A PALE VIEW OF HILLS」が出版されたのが1982年で、最新作で七作目の短編集「NOCTURNES」が2009年に出されているから、およそ4年に1作と言うところだろうか。4年と言えば、STEPHEN KING氏だったら数百ページの長編を毎年出すことができるだろうし、村上春樹でももっと短い間隔で作品を発表できるだろう。それなのにISHIGUROはその道を辿らなかった。

この本を読み始めて感じたのが、恐ろしく愛想の無い小説だと言うことだった。なかなか心の中に染み通ってこない。英語も、単語はそれほど難しいものは使われていないのだが、構文は平易でないし、近づきがたいものがある。しかし読み進むうちに漸く分かった。わざとこんな書き方をしているのだ。一つ一つの作品が短いと言うことは、各作品が決して雑に仕上げられたと言うことではないのはすぐに理解できる。それどころか彼の場合、一つ一つの文章に掛ける時間が恐らく長いのだろう。ありきたりの言い方だが、彫琢の限りを尽くして創造したと言って良いかもしれない。

主人公であり語り手でもあるKATHYが、友だちと幼少年期過ごしたHAILSHAMと言う学園は最初のうちはなんでもない雰囲気で、物語の展開も単なる学園小説だと勘違いしてしまうほどだ。ところがある雨の日、Miss LUCYと言う女性が生徒たちに語った言葉でやっとこの小説の重さが理解できた。ある目的で作り上げられた生命と言うのは、何かしら家畜や農作物を想像させてしまう。こう言ったテーマの小説は、他の作家も書けるかもしれない。星新一だったらきっと、さらっとショート・ショートを仕上げててしまうだろう。筒井康隆だったら、批判されそうな小説を書き上げてしまうかもしれない。もちろん二人とも奥底に持っている考えは深いことは言うまでもないだろうが……。

この小説は長編小説だが、ペーパーバックで300ページくらいの手ごろな小説だ。長編に慣れている読者だったら、面白いかどうか分からないうちに読み終えることができるだろう。ぜひMiss LUCYが生徒に向かって発言するところまで読み進んでほしい。そうすれば、この小説の重みが理解できるのではないだろうか。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.284
(4pt)

何気なく過ごす日常が実は大切

若い女性が語る形式で物語りはすすみ、最初のページで施設育ちの介護士の話かと思ったが、すぐに提供者、保護官などの言葉が出てくるのでこれは違うのだと思うようになった。一部、二部、三部とだいたい時間に合わせて物語はすすむし、日本語にも違和感はなくとても読みやすい。性格表現もすばらしく、語り手の友人トミーとルースには読み進むうちに実在の人物のように思えるようになるから不思議である。登場人物がいかにも語り手のように行動しそうに思うようになる。語り手の疑問も、最後には登場人物により語られる。が、読者には正直、疑問な点もあるだろう。だから、星5と言いたいが、読者の疑問、たとえば作品の科学的背景や社会的背景が少し現実離れしている気がするので、星4。余談だが、解説者が遺伝子工学云々されるが、逆に関係ないとした方がいいと思う。つまり、チェスの駒の動きの規則に疑問を挟んでもしょうがない、ナイトは何でこんな動きなの?、これに答えろと言われても。ところで、あのジュール・ベルヌも大砲で月旅行に行き、宇宙空間で窓を開けて物を捨てて閉める物語をまことしやかに書いて、読者、つまり小学生は信じた。いまはなぜできないかわかるが、このことが進歩とは思えないし、ベルヌはいまだに好きだ。カズオ・イシグロのファンも同じと思う。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.283
(4pt)

何気なく過ごす日常が実は大切

若い女性が語る形式で物語りはすすみ、最初のページで施設育ちの介護士の話かと思ったが、すぐに提供者、保護官などの言葉が出てくるのでこれは違うのだと思うようになった。一部、二部、三部とだいたい時間に合わせて物語はすすむし、日本語にも違和感はなくとても読みやすい。性格表現もすばらしく、語り手の友人トミーとルースには読み進むうちに実在の人物のように思えるようになるから不思議である。登場人物がいかにも語り手のように行動しそうに思うようになる。語り手の疑問も、最後には登場人物により語られる。が、読者には正直、疑問な点もあるだろう。だから、星5と言いたいが、読者の疑問、たとえば作品の科学的背景や社会的背景が少し現実離れしている気がするので、星4。余談だが、解説者が遺伝子工学云々されるが、逆に関係ないとした方がいいと思う。つまり、チェスの駒の動きの規則に疑問を挟んでもしょうがない、ナイトは何でこんな動きなの?、これに答えろと言われても。ところで、あのジュール・ベルヌも大砲で月旅行に行き、宇宙空間で窓を開けて物を捨てて閉める物語をまことしやかに書いて、読者、つまり小学生は信じた。いまはなぜできないかわかるが、このことが進歩とは思えないし、ベルヌはいまだに好きだ。カズオ・イシグロのファンも同じと思う。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.282
(4pt)

あきれるほど幸せな人生

幼い頃から手厚く「保護」され、
親のエゴの被害も受けず、純粋培養される提供者たち。
彼らは自分たちの使命を、幼い頃からたたき込まれる。
提供に相応しい身体を作るために若年同士の「セックス」も奨励される。

自分自身の「完了」に対する恐怖は、ない。

一定の年齢になると「提供」が始まり
介護人としての道も選べる。
芸術作品の創造により、提供を猶予されるかもしれないという希望が打ち砕かれても、
一瞬の絶望の後、穏やかにそれを受け入れる。
戦慄のストーリー?それは違う。

私たちは、むしろへールシャムの生徒たちに羨望を覚えるだろう。
彼らの,意義ある短い人生の何と輝いていることか。
目標もなく,寿命が終わるまで漂い続ける「普通の人生」のなんと残酷なことか。

私は断言する。
ヘールシャムの彼らは、この上なく「幸福」なのだと。
この世の誰もが決してたどり着けない
「生の意義」を達成して逝けるのだから。

読後感は、萩尾望都氏の「トーマの心臓」を読んだときに似ている。
出来れば萩尾氏に漫画化してほしいけれど、映画にもなっているし無理な話か。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.281
(4pt)

あきれるほど幸せな人生

幼い頃から手厚く「保護」され、
親のエゴの被害も受けず、純粋培養される提供者たち。
彼らは自分たちの使命を、幼い頃からたたき込まれる。
提供に相応しい身体を作るために若年同士の「セックス」も奨励される。

自分自身の「完了」に対する恐怖は、ない。

一定の年齢になると「提供」が始まり
介護人としての道も選べる。
芸術作品の創造により、提供を猶予されるかもしれないという希望が打ち砕かれても、
一瞬の絶望の後、穏やかにそれを受け入れる。
戦慄のストーリー?それは違う。

私たちは、むしろへールシャムの生徒たちに羨望を覚えるだろう。
彼らの,意義ある短い人生の何と輝いていることか。
目標もなく,寿命が終わるまで漂い続ける「普通の人生」のなんと残酷なことか。

私は断言する。
ヘールシャムの彼らは、この上なく「幸福」なのだと。
この世の誰もが決してたどり着けない
「生の意義」を達成して逝けるのだから。

読後感は、萩尾望都氏の「トーマの心臓」を読んだときに似ている。
出来れば萩尾氏に漫画化してほしいけれど、映画にもなっているし無理な話か。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.280
(5pt)

こころがプルプル

飛ばし読みしたけど、ラストらへんで心がプルプルふるえました。けど涙は出ない。ふしぎな読後感でした。 個人的に、トミーが「キャス、おれは介護人を替えようと思う」と言い出したところがシビレました。これぞデリカシーじゃないかと。 あと、トミーが「(フランクな)ルーシー先生が正しいと思う。(厳格な)エミリ先生じゃない」というとこは、非常に悩ましかった。そんな単純じゃないだろうというか。 ちなみに映画版は超駄作でした。製作費50億円で、興行収入が2億円というのが超納得。観客の女の子たちからはすすり泣きがきこえてきましたが、泣いてる意味がわかりませんでした。これは、僕の心がこわれてるせいかもしれません。というか途中で居眠りしたせいかもしれません。 主人公たちが生体移植用のクローンという設定は、すべてが経済原理で格付けされてしまう民衆のメタファーになっているようで、魂の自由の問題をあつかっているのかもな〜。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196