わたしを離さないで

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評判

わたしを離さないでの評価:

4.11/5点 レビュー 714件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,119件 721〜740 37/56ページ
No.399
(4pt)

悲しくなるので

なんだか無力感に包まれるような、でも面白かったです。
主人公の女の子の気持ち、わかるなあ。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.398
(5pt)

鋳ずかに、深く、しかし強く訴えてくる。

不思議な雰囲気のする物語。主人公のキャッシーは優秀な介護人。使命が終わりかけている「提供者」の介護をしながら、子ども時代を過ごした謎の施設ヘールシャムでの生活を振り返る。同世代の少年少女が保護官の監督の下に生活するヘールシャム。不安・恐れ・好奇心・冒険・反抗・からかい・いじめ等々。子どもたちが集団の中で当然経験するであろうごく有りふれた日常を淡々と描く。
 しかし、何かが違う。抑制された文体の中に少しずつ醸し出されていく、微妙な違和感。「提供」とは、「回復」とはそして彼らは何のためにここにいるのか。少しずつ明らかになる彼らの「使命」とは。静かに、感情を極力廃し淡々した描写が続く。決して変えることのできない未来(それが「未来」という言葉に値するかは別だが)に向かって静かに生きる彼らの深い悲しみを効果的に演出する。

 「生きる」「生きている」「生命」の意味、価値を改めて考えさせられる。
 折しも、京都大山中教授のIPS細胞研究に世の話題は集中しているが、IPSで病気治療の為に臓器を作るのは倫理的に許されるとしたら、片腕や片足は良いのか、更に、ヒトを丸ごと一人作るのは許されるのだろうか。

 これ以上はネタバレになるので止める。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.397
(5pt)

鋳ずかに、深く、しかし強く訴えてくる。

不思議な雰囲気のする物語。主人公のキャッシーは優秀な介護人。使命が終わりかけている「提供者」の介護をしながら、子ども時代を過ごした謎の施設ヘールシャムでの生活を振り返る。同世代の少年少女が保護官の監督の下に生活するヘールシャム。不安・恐れ・好奇心・冒険・反抗・からかい・いじめ等々。子どもたちが集団の中で当然経験するであろうごく有りふれた日常を淡々と描く。
 しかし、何かが違う。抑制された文体の中に少しずつ醸し出されていく、微妙な違和感。「提供」とは、「回復」とはそして彼らは何のためにここにいるのか。少しずつ明らかになる彼らの「使命」とは。静かに、感情を極力廃し淡々した描写が続く。決して変えることのできない未来(それが「未来」という言葉に値するかは別だが)に向かって静かに生きる彼らの深い悲しみを効果的に演出する。

 「生きる」「生きている」「生命」の意味、価値を改めて考えさせられる。
 折しも、京都大山中教授のIPS細胞研究に世の話題は集中しているが、IPSで病気治療の為に臓器を作るのは倫理的に許されるとしたら、片腕や片足は良いのか、更に、ヒトを丸ごと一人作るのは許されるのだろうか。

 これ以上はネタバレになるので止める。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.396
(5pt)

経験したことのない種類の戦慄…とにかく、なんかすごい

(本レビューはネタバレ含みます。ご注意ください)

あっという間に読み終えました。

主人公キャシーの独白という形で、異常なことをも淡々と語られるのが怖くて、目が離せません。
でも「面白い!ドキドキハラハラ」という感じじゃなく、ジワジワと引き寄せられ、時折顔をしかめつつ静かに集中して読み耽ってしまう感じです。
終盤は今まで読んだどんな本でも経験したことのない種類の戦慄にぞぞぞっとしました。

恐ろしい運命を知りつつ助けてはくれない保護官達、癇癪持ちだけど真っ直ぐな心を持つトミー、虚栄心や嫉妬心の強いルース、自分の利益を考え猜疑心に駆られているクリシーとロドニー、などのそれぞれの人物の言動や心理を表現するキャシーの語り口が、どこか冷めていて非情緒的で、読んでいて混乱する気持ちでした。
キャシーそうじゃないでしょう、もっと運命に抵抗してもいいでしょう、一体どうしてそんなにその世界の調和を崩すことを恐れるの?
と思いながら読んでいました。

しかし、読んでしばらく経ってみると、もしかしたら私も、キャシーのようにただ運命のままに生きている人間の一人なのではないか、とも思うようにもなりました。
私達は多かれ少なかれ、ぞっとするような運命も諦めつつ受け入れ、わずかな希望にすがるように時折夢想したりしながら、ただ淡々と生きているだけの存在なのかもしれない。。。

そして、この作品で描かれる奇妙で恐ろしい世界で、落とし物が全て集められるロストコーナーがどのような意味を持つのかについても、色々と考えさせられました。生きていく上で色々なものを失っていく人々の、遺失物保管所であるロストコーナー。

ロストコーナーであるノーフォークで、失くしたカセットテープを見つけたキャシーが、大喜びするかと思ったら、何かの間違いであって欲しいと思うくらい、全然喜べないという描写がとても印象的でした。探し物を追い求めていた時間はあんなに明るくて楽しそうだったのに、見つかった途端に空虚な思いになる。

またラストシーンでは、トミーを失ったキャシーが、同じくノーフォークで、海岸線に打ち上げられたごみのように、子供の頃から失い続けてきたすべてがここにあると感じ取り、涙します。でも、打ちひしがれることなく、車にエンジンをかけ、出発していく。このラストシーンも、とても深い余韻を残しました。

奇妙で、印象深くて、せつない気持ちになるこのロストコーナーにまつわる二つのシーンが、この作品中特に際立って素晴らしい部分ではないかと思っています。

特に文学に親しんでいなくてもグイグイ読ませ、「この話、なんかすごい」と思わせる力があるところがまたすごい。

変えることのできない運命、生きるうえで避けられない喪失、もがけどももがけども、それらを受け入れざるを得ないとやがて知ってしまった人間の哀しさ。
そういったものを、斬新なメタファーで物語にした、解釈しきれないとにかくなんかすごい作品、という印象を持ちました。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.395
(5pt)

経験したことのない種類の戦慄…とにかく、なんかすごい

(本レビューはネタバレ含みます。ご注意ください)

あっという間に読み終えました。

主人公キャシーの独白という形で、異常なことをも淡々と語られるのが怖くて、目が離せません。
でも「面白い!ドキドキハラハラ」という感じじゃなく、ジワジワと引き寄せられ、時折顔をしかめつつ静かに集中して読み耽ってしまう感じです。
終盤は今まで読んだどんな本でも経験したことのない種類の戦慄にぞぞぞっとしました。

恐ろしい運命を知りつつ助けてはくれない保護官達、癇癪持ちだけど真っ直ぐな心を持つトミー、虚栄心や嫉妬心の強いルース、自分の利益を考え猜疑心に駆られているクリシーとロドニー、などのそれぞれの人物の言動や心理を表現するキャシーの語り口が、どこか冷めていて非情緒的で、読んでいて混乱する気持ちでした。
キャシーそうじゃないでしょう、もっと運命に抵抗してもいいでしょう、一体どうしてそんなにその世界の調和を崩すことを恐れるの?
と思いながら読んでいました。

しかし、読んでしばらく経ってみると、もしかしたら私も、キャシーのようにただ運命のままに生きている人間の一人なのではないか、とも思うようにもなりました。
私達は多かれ少なかれ、ぞっとするような運命も諦めつつ受け入れ、わずかな希望にすがるように時折夢想したりしながら、ただ淡々と生きているだけの存在なのかもしれない。。。

そして、この作品で描かれる奇妙で恐ろしい世界で、落とし物が全て集められるロストコーナーがどのような意味を持つのかについても、色々と考えさせられました。生きていく上で色々なものを失っていく人々の、遺失物保管所であるロストコーナー。

ロストコーナーであるノーフォークで、失くしたカセットテープを見つけたキャシーが、大喜びするかと思ったら、何かの間違いであって欲しいと思うくらい、全然喜べないという描写がとても印象的でした。探し物を追い求めていた時間はあんなに明るくて楽しそうだったのに、見つかった途端に空虚な思いになる。

またラストシーンでは、トミーを失ったキャシーが、同じくノーフォークで、海岸線に打ち上げられたごみのように、子供の頃から失い続けてきたすべてがここにあると感じ取り、涙します。でも、打ちひしがれることなく、車にエンジンをかけ、出発していく。このラストシーンも、とても深い余韻を残しました。

奇妙で、印象深くて、せつない気持ちになるこのロストコーナーにまつわる二つのシーンが、この作品中特に際立って素晴らしい部分ではないかと思っています。

特に文学に親しんでいなくてもグイグイ読ませ、「この話、なんかすごい」と思わせる力があるところがまたすごい。

変えることのできない運命、生きるうえで避けられない喪失、もがけどももがけども、それらを受け入れざるを得ないとやがて知ってしまった人間の哀しさ。
そういったものを、斬新なメタファーで物語にした、解釈しきれないとにかくなんかすごい作品、という印象を持ちました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.394
(4pt)

文学作品!

文学作品を読んだなあ、という感じ。
私の頭では全てを理解したとは言い切れないけど、それでも凄いものを読んだという実感が残る。
分からないながらも圧倒されるというか。
すごく分量も多いけど、飽きることなく読めた。
ということは凄い作品なんだと思う。
この作者の他の作品も読んでみたい。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.393
(4pt)

文学作品!

文学作品を読んだなあ、という感じ。
私の頭では全てを理解したとは言い切れないけど、それでも凄いものを読んだという実感が残る。
分からないながらも圧倒されるというか。
すごく分量も多いけど、飽きることなく読めた。
ということは凄い作品なんだと思う。
この作者の他の作品も読んでみたい。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.392
(4pt)

iPSでノーベル賞受賞した今年、タイムリーな作品

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』☆4つ。

介護人を努めるキャシー・Hが、自分を取り巻く"人間"たちの様子を過去から現在まで淡々と語っていく。それはもう淡々と。

本作は三部で構成されている。第一部の七章、いくつかの伏線が明らかになる。序盤、退屈だと思った読者の方も、どうかここまでは読んでみてください。
ここから先は、ぐいぐい引き込まれました。お試しあれ。

私たちの人生の縮図としてキャシーたちの人生があるのでしょう。生き延びる事が至上であるかのような現代の考え方に、作者は疑問を抱いたのかも知れませんね。

時には抗いながらも、運命に寄り添い生きていたキャシーたちは幸せだったのでしょうか。
儚く悲しげに見えるのは、私たちの視点で見ているからなのでしょうか。視点が変わればどう感じるのでしょうか。

色々と考えさせられる、複雑な読後感を味わえる作品でした。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.391
(4pt)

iPSでノーベル賞受賞した今年、タイムリーな作品

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』☆4つ。

介護人を努めるキャシー・Hが、自分を取り巻く"人間"たちの様子を過去から現在まで淡々と語っていく。それはもう淡々と。

本作は三部で構成されている。第一部の七章、いくつかの伏線が明らかになる。序盤、退屈だと思った読者の方も、どうかここまでは読んでみてください。
ここから先は、ぐいぐい引き込まれました。お試しあれ。

私たちの人生の縮図としてキャシーたちの人生があるのでしょう。生き延びる事が至上であるかのような現代の考え方に、作者は疑問を抱いたのかも知れませんね。

時には抗いながらも、運命に寄り添い生きていたキャシーたちは幸せだったのでしょうか。
儚く悲しげに見えるのは、私たちの視点で見ているからなのでしょうか。視点が変わればどう感じるのでしょうか。

色々と考えさせられる、複雑な読後感を味わえる作品でした。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.390
(4pt)

近未来の臓器提供

DVDを見てから、原作を購入して読みました。臓器提供者として生まれ、死んでいく中で、普通に人と関わり、恋をして葛藤する姿が印象的でした。必死で生きようとする3人の男女に引き込まれました。制約の多い運命に悲嘆する直接的な表現はありませんでしたが、具体的に描かれない部分を想像して読んでいく楽しみと、人間の残酷さを痛感する悲しみと複雑な読後感です。過去に起こりえたような政策なのか、格差社会が進んだ先の近未来の人間の姿なのか、考えさせられました。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.389
(4pt)

近未来の臓器提供

DVDを見てから、原作を購入して読みました。臓器提供者として生まれ、死んでいく中で、普通に人と関わり、恋をして葛藤する姿が印象的でした。必死で生きようとする3人の男女に引き込まれました。制約の多い運命に悲嘆する直接的な表現はありませんでしたが、具体的に描かれない部分を想像して読んでいく楽しみと、人間の残酷さを痛感する悲しみと複雑な読後感です。過去に起こりえたような政策なのか、格差社会が進んだ先の近未来の人間の姿なのか、考えさせられました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.388
(5pt)

文学への見方が変わりました。

これまでSFやミステリーなどでお世話になっていたハヤカワさんから出ていたので書店でなんとなく買ってみた本書。
あとがきなんかを読むとどうやら文学という奴らしいですね…。

今まで文学と名のつくような文章とは教科書以外では接点が無かった僕ですが、とてもすらすらと頭に入ってきて、自分の中の”文学”という言葉の持つ敷居の高さをまったく感じませんでした。
独特な世界観だからこその心情の変化なども丁寧に書かれているせいか、想像しやすく、感情移入しやすかったです。

初めて本格的に出会った文学作品がこれでよかった。そう思える本でした。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.387
(5pt)

文学への見方が変わりました。

これまでSFやミステリーなどでお世話になっていたハヤカワさんから出ていたので書店でなんとなく買ってみた本書。
あとがきなんかを読むとどうやら文学という奴らしいですね…。

今まで文学と名のつくような文章とは教科書以外では接点が無かった僕ですが、とてもすらすらと頭に入ってきて、自分の中の”文学”という言葉の持つ敷居の高さをまったく感じませんでした。
独特な世界観だからこその心情の変化なども丁寧に書かれているせいか、想像しやすく、感情移入しやすかったです。

初めて本格的に出会った文学作品がこれでよかった。そう思える本でした。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.386
(4pt)

仏教的無常観

映画を先に鑑賞してから原作を読書。
映画を観て抱いた印象は、仏教的な無常観・諦観でした。また、モルモット、実験動物、人間に食されるために生まれて育てられる多くの家畜、植物のこと、「いのちの食べかた」という映画を思い浮かべました。
映画を観て「打ちのめされた」私は、原作を読み始めて意外と淡白な語り口に驚いたのです。映画は、全編重苦しいペール・ブルーの色彩を持つ陰鬱な印象でしたが、小説の語り口は割と淡々としていて、あまり陰鬱さを感じられません。
へールシャムの様子が、映画よりも描写が細やかで長い歳月を追って綴られ、悲壮感が少ない分、読みやすい小説でした。
映画を観ている時に大きな疑問を抱いたへールシャム出身の子供たちが成長してからの、男女の性的関係〜妊娠・出産問題は、原作を読んで明らかになりすっきりとした部分です。
また、本の表紙になった1本のカセットテープ、タイトルになった「わたしを離さないで」の歌が持つ、重要なテーマが映画では抜け落ちています。
キャシーが歌を聞いて踊る時の心情と、マダムがその姿を見て抱いた心情の温度差が、作品の大きなテーマの一つだと思いますが、映画ではその部分が省略されている点が異なっていました。

命の尊厳、臓器移植問題、生きている存在価値と使命を深く考えさせられた小説です。
アメリカで映画が批判された点は、へールシャム出身の主人公達が自ら運命を変えようとしない、切り開こうとなぜ努力しないのか〜という部分だということを知りました。
しかし、全てリストバンドで登録されて監視・管理されている以上、逃亡不可能であること、たとえ逃亡したとしても、通報されることは必至で、就業もできず、住む家も食べる物さえなく、彼らをかくまってくれる人が皆無なら、まず生きていけないと思います。

クライマックスにかけて、定められた避けようがない過酷な運命と使命を受け止め、残された時間の中で「愛」だけが最後に残された唯一の望みであることを信じて愛し合う姿は、崇高に感じられました。
取り扱ったテーマ自体は素晴らしく、どの世代の方にも読後深く考えさせられるものがある小説だと思います。

映画を先に観た為、小説への期待が大きかったのですが、文体等のイメージが想像と異なり、テーマ自体は★5ですが、総合で★は3・5〜4の間くらいです。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.385
(4pt)

仏教的無常観

映画を先に鑑賞してから原作を読書。
映画を観て抱いた印象は、仏教的な無常観・諦観でした。また、モルモット、実験動物、人間に食されるために生まれて育てられる多くの家畜、植物のこと、「いのちの食べかた」という映画を思い浮かべました。
映画を観て「打ちのめされた」私は、原作を読み始めて意外と淡白な語り口に驚いたのです。映画は、全編重苦しいペール・ブルーの色彩を持つ陰鬱な印象でしたが、小説の語り口は割と淡々としていて、あまり陰鬱さを感じられません。
へールシャムの様子が、映画よりも描写が細やかで長い歳月を追って綴られ、悲壮感が少ない分、読みやすい小説でした。
映画を観ている時に大きな疑問を抱いたへールシャム出身の子供たちが成長してからの、男女の性的関係〜妊娠・出産問題は、原作を読んで明らかになりすっきりとした部分です。
また、本の表紙になった1本のカセットテープ、タイトルになった「わたしを離さないで」の歌が持つ、重要なテーマが映画では抜け落ちています。
キャシーが歌を聞いて踊る時の心情と、マダムがその姿を見て抱いた心情の温度差が、作品の大きなテーマの一つだと思いますが、映画ではその部分が省略されている点が異なっていました。

命の尊厳、臓器移植問題、生きている存在価値と使命を深く考えさせられた小説です。
アメリカで映画が批判された点は、へールシャム出身の主人公達が自ら運命を変えようとしない、切り開こうとなぜ努力しないのか〜という部分だということを知りました。
しかし、全てリストバンドで登録されて監視・管理されている以上、逃亡不可能であること、たとえ逃亡したとしても、通報されることは必至で、就業もできず、住む家も食べる物さえなく、彼らをかくまってくれる人が皆無なら、まず生きていけないと思います。

クライマックスにかけて、定められた避けようがない過酷な運命と使命を受け止め、残された時間の中で「愛」だけが最後に残された唯一の望みであることを信じて愛し合う姿は、崇高に感じられました。
取り扱ったテーマ自体は素晴らしく、どの世代の方にも読後深く考えさせられるものがある小説だと思います。

映画を先に観た為、小説への期待が大きかったのですが、文体等のイメージが想像と異なり、テーマ自体は★5ですが、総合で★は3・5〜4の間くらいです。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.384
(5pt)

離れられない

極めて繊細に書かれた青春ドラマという生地を、ひどく細いSFの糸で縫いあげた物語。

外から眺める我々には、どのような衣服が出来上がるのか、この衣服をまとっているテーマが何なのか、うすうす分っているし、いざとなれば確かめることもできる。さらには違う状況についてあれこれ考えをめぐらすこともできるはずなのに、彼女から離れられない。いっしょに縫い目を追っていかざるをえない。

つまり単純によい小説ということです。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.383
(5pt)

離れられない

極めて繊細に書かれた青春ドラマという生地を、ひどく細いSFの糸で縫いあげた物語。

外から眺める我々には、どのような衣服が出来上がるのか、この衣服をまとっているテーマが何なのか、うすうす分っているし、いざとなれば確かめることもできる。さらには違う状況についてあれこれ考えをめぐらすこともできるはずなのに、彼女から離れられない。いっしょに縫い目を追っていかざるをえない。

つまり単純によい小説ということです。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.382
(4pt)

小説という体験

情報がこれほど氾濫している昨今、たとえ裏表紙のあらすじに残酷な真実が表記されていなくても、僕ら読者はおおよその梗概を知り得るだろう。僕もそうだった。そしてそれを承知の上、長い長いヘールシャムの日々を主人公たちと共に過ごした。それはイギリス文学にしばしば登場する孤児院、または寄宿舎の生活を彷彿させつつも、何か懐かしい日本的な、のぺっりとしたモルタル壁の校舎を僕は思い描いた。確執、嫉妬、裏切り、そして思い浮かべただけで落涙してしまいそうな友情。子どものころ、これだけは決して忘れてはならない、いつまでも大切にとっておくべきだと思ったさまざまな情感。たとえ備忘録を取ったとしても、読み返しても決して再現できない、きわめて個人的なエピソード。作者はそれらをまるで追体験するように描写する。僕はたしかにこの夏を、ヘールシャムでコテージで、ノーフォークで、そしてキングスフィールドで過ごした。そして保護官やマダムが時折見せる不可解な仕草に、ようやく予備知識(残酷な真実)を思い出す。この作者はほんとに魔法使いのような作家だと思う。残酷な真実を決して作為的に隠蔽していないしトリックのようなものもない。そして僕らを包み込んだそれら体験の末に、現実を突きつけるのである。ここで僕らは、この作品を開く前に得た予備知識は単なる認識でしかなかったこと、そして同じ日々を過ごした友人たちの前に立ちはだかる現実の酷さを思い知るのである。静かな、ややもすると倦むような描写は、実はここへ導くための非常に巧妙な伏線だったのかな?とすれば大変な小説だな。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.381
(4pt)

小説という体験

情報がこれほど氾濫している昨今、たとえ裏表紙のあらすじに残酷な真実が表記されていなくても、僕ら読者はおおよその梗概を知り得るだろう。僕もそうだった。そしてそれを承知の上、長い長いヘールシャムの日々を主人公たちと共に過ごした。それはイギリス文学にしばしば登場する孤児院、または寄宿舎の生活を彷彿させつつも、何か懐かしい日本的な、のぺっりとしたモルタル壁の校舎を僕は思い描いた。確執、嫉妬、裏切り、そして思い浮かべただけで落涙してしまいそうな友情。子どものころ、これだけは決して忘れてはならない、いつまでも大切にとっておくべきだと思ったさまざまな情感。たとえ備忘録を取ったとしても、読み返しても決して再現できない、きわめて個人的なエピソード。作者はそれらをまるで追体験するように描写する。僕はたしかにこの夏を、ヘールシャムでコテージで、ノーフォークで、そしてキングスフィールドで過ごした。そして保護官やマダムが時折見せる不可解な仕草に、ようやく予備知識(残酷な真実)を思い出す。この作者はほんとに魔法使いのような作家だと思う。残酷な真実を決して作為的に隠蔽していないしトリックのようなものもない。そして僕らを包み込んだそれら体験の末に、現実を突きつけるのである。ここで僕らは、この作品を開く前に得た予備知識は単なる認識でしかなかったこと、そして同じ日々を過ごした友人たちの前に立ちはだかる現実の酷さを思い知るのである。静かな、ややもすると倦むような描写は、実はここへ導くための非常に巧妙な伏線だったのかな?とすれば大変な小説だな。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.380
(5pt)

人はみなドナーである

カズオ・イシグロの最高傑作だと思う。

すべての人に手にとって欲しい本。

なぜなら、人はみなある意味“ドナー”なのだから。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196