殺しの双曲線
評判
殺しの双曲線の評価:
3.71/5点 レビュー 59件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全106件 21〜40 2/6ページ
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殺しの双曲線の評価:
3.71/5点 レビュー 59件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
本書で展開される推理についてはぜひ本書をお取りいただいて堪能していただければと思いますが、一つ指摘しておきたい点は犯人の動機、敷衍しますと犯人の性格に対する本書の強い描写が、論理を以て読者に挑戦する推理小説において本書を独特の、そして、深い読後感を残すものになっています。
本書では、社会の不寛容、他者に対するある種の不親切さーー特に責任の所在が明確でない場合におけるーーに対する厳しい目線が犯人の動機になっています。道に迷って困っている人を助けないことは現在の治安、社会情勢においては必ずしも指弾されるべきものではありません。しかし、場合によっては当人の記憶に残ることすらない程度の軽い「不親切」の集合が実は巨大な悪意を生み出しかねないということが本書の中核となる問題意識となっています。
そのような集合的「不親切」に対して鉄槌を加えることが犯人の意図です。本書の犯人は、事実上、完全犯罪、少なくとも有罪となってもその罪に対して著しく軽微な罰を受ける程度で済む状況を現出させることに成功します。本書の終盤において、犯人は、この集合的な「不親切」を殺人という激烈な犯罪を持って非難し正当化します。これは復讐であるのだと。しかし、犯人は、自身の犯罪がまた、彼自身が受けた「不親切」による悲劇と同様の悲劇を引き起こしたことに悲鳴を上げ物語は幕を下ろします。
犯人にとっての義憤がまた一つ別の悲劇を生じさせるというこの主題は実に重いものです。社会の不寛容を我々は指弾することができます。しかし、我々自身は、我々自身が不寛容であることに自覚的なのでしょうか?そこには社会の不寛容を指弾することそのものが内包せざるを得ない傲慢が隠されています。
「操」という単語には決意とともに気高さという意味があります。独りよがりな気高さという傲慢に対して推理小説という手段で接近した本書は、西村京太郎氏の社会派推理小説作家としての硬骨が今なお残されています。