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鎮魂歌(レクイエム): 不夜城2



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鎮魂歌(レクイエム): 不夜城2の評価: 6.67/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.67pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(5pt)

あまり面白くなかった

人を殺しすぎ。

わたろう
0BCEGGR4
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

とことん裏社会に生きる男たち

血と暴力とsexが描かれた内容。陽の当たる真っ当な社会で生きる人物は一人もいない。チャイニーズマフィア、香港マフィア、日本のヤクザ、悪徳警官、それらのごった煮の世界。
誰も信用できない世界で情報を金で買い隠された思惑を探る。この事態はいったい誰が仕掛けた? 殺し屋と元刑事の二人が黒幕を探しながら破滅への道を進む様子がハードに語られる。
毒にも薬にもならないお子様ランチ的なミステリに飽きた時は、この本のような毒がたっぷり入った味の濃いこだわりの一品も食欲をそそる。
この他に新堂冬樹の『ろくでなし』もおすすめ。いつもの日常からまったく別の世界を安全な場所から覗き見るのは楽しいものだ。
破滅願望は誰にもあると言うが、それを叶えてくれるのはこういったノワール小説を読むこと。一時の清涼剤にもなりうるこういった本を毛嫌いするのは勿体ない。
暑い夏の夜エアコンの効いた涼しい部屋で違った世界にトリップしよう。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

残虐性のインフレ現象

馳星周氏のデビュー作『不夜城』の続編。この後『長恨歌』が書かれ、新宿の中国系マフィアの暗闘を描いたこのシリーズは三部作として幕を閉じられる。

前作の主人公劉健一は新宿の一角にカリビアンという会員制のバーを開いて故買屋稼業をしながら新宿の中国系マフィアの情報を仕入れているという存在。
前作はほぼ彼の一人称という形だったのでその心情が色濃く書かれていたが、本書ではあくまで第三者という立場で得体のしれない存在感を醸し出している。常に何かを知り、のし上がる好機を窺っているような、獲物を見張っている豹のような存在とでもいおうか。
彼の存在は物語の終盤で如実に増してくるのだがそれはここでは敢えて触れない。

物語の主軸は楊偉民の子飼の凶手、郭秋生と元刑事で北京マフィアの頭目崔虎の下で糊口を凌いでいる滝沢誠の2人だ。

郭秋生はかつて義姉と義父を殺し、その2人の死体のそばで横たわって半死半生の状態だったところを楊に拾われて、台湾の海軍に預けられ格闘術と武器の扱いといった殺人の技術を習得した凶手。殺した義姉真紀に想いを寄せ、それがトラウマになっている。

一方の滝沢はかつて新宿署防犯課に所属しており、相棒の鈴木と共に歌舞伎町に巣食う売春婦、やくざ、売人を食い物にしていた悪漢警官だったのを2年前の劉健一がもとで起こった中国系マフィア同士の抗争に巻き込まれて刑事の職を辞することになった男。ただその性癖はいわゆる変態で暴力の衝動に駆られ、相手を痛みつけることにこの上ない快感を覚える男だ。

この滝沢、秋生、そして秋生がボディガードを務める上海マフィアのボスの情婦楽家麗、そこに劉健一が絡み、誰かが死ななければならない状況まで差し迫っていく。

混沌とした中国系マフィアの勢力争い。新宿歌舞伎町というごくごく狭い繁華街に上海、北京のマフィアが勢力を伸ばし、そのバランスを保とうと台湾のマフィアの長が策を施す。そんな絵図を俯瞰し、いつか彼らの喉笛に食らいつこうと虎視眈々とその時を窺う劉健一。そんな中国人だらけの街を取り戻そうと蠢く日本のやくざ。

誰もが他者を出し抜こうとし、誰もが他者を貶めようとする。
権力という安定を求め、仲間を作るが、その仲間さえも敵と天秤にかけ、平気で寝返る。
敵が味方になり、追う者は追われる者になる。
窮地に陥った人間が窮鼠猫を噛むが如く、ぎりぎりのところで口八丁手八丁の逆転をし、どうにか生きながらえる。
しかしそんな付け焼刃の云い逃れも上手くいくわけもなく、どんどん死の淵へと追いやられていく。

これは新宿歌舞伎町という日本一の繁華街を舞台にした人生劇場。いや明日をも知れぬ地獄絵図を描く者たちの鎮魂歌とでも云おうか。
私が歩いていた新宿の少し筋を外れたところでこんな人が簡単に人の命を奪う生き死にの戦いが繰り広げられているのか。そう思わされるほどこの物語はリアルである。

それは我々普通の生活をしている者にとっては想像もつかないような世界。誰もがプライドが高く、ギラギラした目を持ち、底なしの欲望にまみれて、犯罪を犯すことを厭わない。碌でもない男女たちばかりが登場する。

ふと思ったのはこれまでの馳作品の主人公にはある共通項があることだ。それは『不夜城』の劉、『漂流街』のマーリオ、本書の郭とも混血児であることだ。劉は台湾人と日本人の、マーリオはブラジル人と日本人の、郭は中国人と台湾人の混血。
彼らに共通するのは心に深い闇、憎悪といっていい感情を持っていることだ。馳氏は暴力的衝動、心に暗黒を宿すファクターとして混血児というモチーフを用いているようだ。

さて物語は前作『不夜城』で最愛の者を殺さざるを得なかった劉健一が新宿界隈の中国人コミュニティを牛耳る楊偉民に対する壮大な復讐劇だったことが判明する。楊の権力を殺ぎ、自身が新宿界隈の中国人コミュニティのボスに成り代わって楊を抹殺すること。その目的のために凶手郭、元刑事の滝沢は駒の1つであり、劉の掌上で踊らされていたにすぎないことが判明する。

通常このような権力争いの勢力を己の画策でぶつけ合わせて破滅させる、というハメットの『赤い収穫』のような物語は画策する人物の視点で書かれることが多かったが、馳氏はこれを駒となる人物たちの視点で描くことで画策した人物の恐ろしさを上手く表現している。これはまさにアイデアの勝利だろう。

ただやはり結局馳氏の作品はどの人物も死んでいく運命にあり、主要たる人物も最終的には屍の山の一角に過ぎなくなる。これがなんとも読んでいて残念なのである。
この辺は大いに好みの問題なのだろうが、生死の瀬戸際ギリギリで足掻く人物たちが結局死んでしまうことが解っているので何とも途中で白けてしまうのだ。

本書でも滝沢の変態性、郭が恋い慕う楽の扱いなど凌辱系ポルノビデオのような内容でこれ以上の物を書くとどんどんエスカレートしてこちらの感覚が麻痺していくように思えてならない。
どこまで突き進んでいくんだ、馳星周は?

Tetchy
WHOKS60S

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