ディア・オールド・ニュータウン
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作者である小野寺史宜の作品は本作が初読。「オールドニュータウン」という一見矛盾していながらどこかしっくりと来るタイトルに惹かれて手に取った次第。 物語は主人公で28歳になる笹原鳴樹が地元の蜜葉市で亡き父親が営業していた蕎麦屋「笹原」を復活させた所から始まる。都内の大学に通い、一応は父親から蕎麦の手ほどきは受けていたものの一般企業に勤めていた鳴樹だったが6年前に64歳で父親が、1年前に65歳で母親が亡くなり20代で天涯孤独の身に。 会社員人生は順調だったが誰も住まなくなった実家の取り壊しを考えた鳴樹は一人暮らしをしていたアパートの更新時期が迫っていた事や取り壊しの費用、コロナ禍で世話になったデリバリーサービスの利便性、近隣に競合店が無くなった事が重なって決断「おれ、そば屋、やる」と。 店名を「笹原」から「ささはら」へと改め蕎麦屋としての再出発に乗り出した鳴樹だったが出前もしなきゃならない以上は誰か人を雇わねばならず毎日昼・夜の二回勤務をこなしてくれる人物を探す羽目に。難題だと思われたが四軒隣に住む5歳下の幼馴染・勝呂小枝に思い当たる。二年生の製菓学校を1年半で辞め就職した服飾販売会社も辞めてブラブラしていた小枝は「やる」と二つ返事。こうして中途半端な二人は蕎麦屋「ささはら」の営業に乗り出すが…… 初めて読んだ作家さんだったけど、非常に口当たりがソフトというか「どぎつさ」が皆無という作風が印象に残った。地元で父親が亡くなった後、閉鎖されていた蕎麦屋を再開し地元の人々と関わり合いになりながら見様見真似でやっているうちに地域社会へ溶け込んでいく……言ってみれば何という事の無い話なのだけど個人的にはその「何という事の無さ」が気に入った。 上で紹介させて頂いた冒頭部分を読んで頂いても分かって頂けると思うが主人公の鳴樹は20代で天涯孤独の身に。思ってもみない早すぎる両親の死で孤独感に打ちのめされても仕方無い部分もあるのだが、そこで疑似家族的に浮かび上がってくるのが「地元」の存在。 一人ぼっちになった鳴樹が蕎麦屋を思い立った理由はひどく些末な事なのだけど、両親と暮らした実家の取り壊しや父親の営んでいた蕎麦屋という職業に意識せずに拘ってしまった部分や店員に幼馴染の小枝を採用した所からは彼の抱えていた孤独の裏返しではないだろうか? いわば鳴樹が始めた「ささはら」はある種の疑似家族とでもいうか、一人ぼっちの自分を包んでくれる繭の様な物では無いのかと。そして登場する地元・蜜葉市みつばの面々もなんというか非常に温かい。予め申し上げておけば本作に悪人は一人も登場しない。高校中退で道を見失い地元に排気音を鳴り響かせながら孤独を誤魔化す様に爆走していた和太の様な少年も登場するが心の底からねじ曲がったような不穏な登場人物とは無縁である。 その代わり話の大半を占めるのは人生の転機を迎えた、どこか道を見失った様な宙ぶらりんの状態に向き合う人々である。小枝や和太の様に宙ぶらりんの状態を鳴樹に拾われた店員たちはもちろんの事、一家離散の前に住んでいた家が取り壊されてしまったお客さんやら中学生なのに夜一人で蕎麦を食べにくる女の子などどこかに寂しさを匂わせる人々がそばつゆの温もりを求める様に集まってくる。 舞台となる蜜葉市みつばは造成後何十年かの時を経た、些か草臥れた感のある、文字通りのオールドニュータウン。ニュータウンと言うと温かみの無いどこか人工的な空気を感じる響きがあるが住人の入居から何十年も経てばそこには「子を産み、育て、そして死んでいった」という機動戦士ガンダム的な営みが積み重なって土地の歴史らしきものが生まれるのである。 その滔々たる流れの中で鳴樹をはじめ、進み続けていたレールの上から降りたり外れてしまった人々を受け止めてくれる懐の深さみたいなものがこのオールドニュータウンには生まれたのだという事を本作は訴えかけてくる。母親に手を惹かれていた幼児は生意気盛りの高校生になり、あるいは新しい家族を形成し……少しずつ入れ替わりながらも互いを受け入れ「町」を営む人々の織り成す流れが町に包容力を産み出す、そんな事を考えてしまった。 ただ、読んでいてふと、特に終盤に近付くにつれて「この作品妙に登場人物が多いなあ」と思ったのだが、色々調べたらこの作品の舞台となったみつばは作者の既存作にも登場し、登場人物も過去に他作で登場した事のある顔ぶれであるとか……いや、まあプロの作家となれば既存のファンを大切にしようとシェアワールドを産み出す人は少なく無いのだけども。 社会の中で他人に揉まれて生きている様でも心情的には一人ぼっちという寂しさを抱えた人が多い現代社会で地元という「帰れる場所」が「包み込んでくれる土地」の持つ有難みみたいな物が伝わってくる様な連作短編であった。 | ||||
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今まで読んできた蜜葉の住人が沢山出てきてそれぞれのその後も知れて良かった。 小野寺節全開の会話がリズム有り心地いい。 何も起こらないけど幸せを感じる本。 | ||||
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読んでる最中や読み終わって蕎麦が食べたくなりました | ||||
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まぁまあかな。もっと人との交流や意外なな繋がりがあると良かったと思う。 | ||||
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悲壮感がない真面目で一所懸命なスタイルでいい~い感じに回り始めたご商売 読んでて感じが良い。一所懸命が報われるように次々繋がってくから 何がどうという訳でもないが心地のよい読書になりました | ||||
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