ファイナル・ウィッシュ ミューステリオンの館
- 特殊設定ミステリ (59)
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発売から1ヶ月以上たっても、本作のamazonレビューが一つもつかないのでもう自分が書きます。他に誰もレビューしてない作品に星1レビューはしたくないのですが、レビューがないよりかはあるほうが良いと思うし、お世辞を述べるよりかは本音で語ったほうが健全だと思うので心を鬼にして書きます。 私は西澤保彦氏のファンです。タック&タカチはもちろん全部読破、チョーモンインシリーズは絶版のところを古本巡りで全部ゲット。腕貫探偵、ノンシリーズも8割方読んでます。ほとんど楽しく読みました。特にチョーモンインシリーズは絶版なのが惜しすぎる作品群で、ライト層でも楽しめる文体、漫画的で個性的なキャラ、なにより現在の主流である特殊設定ミステリの先駆者的シリーズという歴史的意義が大きすぎるので是非とも復刊と完結を望みます。 西澤作品の文章と相性が良いのでしょう、読むこと自体が楽しんですよね。 そんな西澤氏が「館×多視点×バトルロワイヤルの特殊設定ミステリ」を書くとのことで、期待大。とーっても楽しみにしていました。 結論から言います。大駄作だと思います。西澤ファンの自分が断言してしまうのだから間違いないと思います。 どういうことかというと、売りが売りとして機能してないのです。以下詳細を述べます。 ①館である必要性がない。 ここが最も残念だった所です。そもそも館ミステリとは、館そのものに愛着が湧くレベルの個性が必要だと思うのです。館が建てられた歴史、思想、構造がトリックや動機に直結した時に、強烈な個性が生まれるのではないでしょうか? 現存するなら観光に行ってみたい、言わば聖地巡礼レベルの特異な建物を文章で作り出すところに館ミステリのロマンを感じるのです。機能性を重視した面白みのないモダン建築なんかに用はなく、ある種の狂気的発想(よく言及される二笑亭とかのやつです)を求めて館ミステリを読むわけです。 そういう意味で、私の理想の館ミステリは島田荘司氏の斜め屋敷、綾辻行人氏の時計館、二階堂黎人氏の人狼城。いずれも新本格ムーブメントが産み出した館ミステリの頂点を極めし至宝、言ってしまえば現代の古典というべき作品で、西澤氏が読んでないわけがないのですが、これらの作品を踏まえた形跡がないのです。 ミューステリオンの館には個性が皆無です。言ってしまえばプレハブ小屋です。見取り図は簡素で面白みはゼロです。四角い部屋が並んでいるだけで密室トリックなどもありません。 建てられた歴史や建てた人物の思想はなく、超常現象でポンッと生まれたただの設定です。なぜかリモートテレビがあるため、1989年という設定が死んでいます。 はっきり言って、館ミステリであることを売りにするのが許されないレベルだと思います。少なくとも館のディテールがしっかりと作り込まれていたら絶対に星1にはしませんでした。 ②多視点である必要性がない 今誰の視点なのかを掴むのに疲れました。多視点のメリットはキャラの認識の違いがトリックになっているところだと思うのですが、そのメリットよりも視点の混乱による読者への負担というデメリットが上回っている印象です。というか多視点自体は売りにならないと思います。 ③バトルロワイヤルではない 誰が生き残り誰が死ぬのか、このハラハラドキドキ感というか緊張感がバトルロワイヤルの魅力ですよね。 本作にはそれがありません。「殺意の集う夜」のセルフオマージュみたいな感じで、バッタバッタと人が死にます。これ自体は傑作「人格転移の殺人」でもそんな感じなので文句はありません。しかしこれをバトルロワイヤルとして売るのはいかがなものでしょうか。愛着もわかないキャラ達がギャグのように死んでいく。これがバトルロワイヤルでしょうか? ④特殊設定が分かりづらい。 特殊設定ものは厳格なルール設定が非常に重要です。ルールがしっかりと定まっているからこそロジックが楽しめる。 しかし本作のルールは曖昧でさっぱりロジックに寄与しません。西澤ミステリの最大の売りであるロジカルな議論が機能してないのです。 「特殊設定ミステリが売れてるから、適当に特殊設定って売り出してみようか。西澤氏は特殊設定ミステリの元祖だし。」的なノリで編集がつけたのかなと邪推してしまうレベルです。 以上つらつら述べていますが、私には西澤氏がこれらの失点を犯すこと自体信じられないのです。なぜかというとミステリの問題点をしっかりと分析して乗り越えないと「実況中死」や「聯愁殺」のような傑作は書けないと確信しているからです。西澤氏がこれらの問題点を認識していないはずがなく、なぜこのような作品になってしまったのかが不思議で不思議で仕方ありません。 とはいえ、書く作品全てが傑作なんてことは絶対にあり得ず、ましてや西澤氏は多作の方です。締め切りでブラッシュアップできなかった可能性もあるでしょう。 新人が書いた作品なら二度と読まないレベルの作品ですが、西澤氏のポテンシャルの高さは嫌というほど知っていますので、身過ぎ世過ぎの作品であると考えて次の作品を期待します。楽しみです。 (できれば、タック&タカチかチョーモンインのようにロジカルなディスカッションを楽しめる作品がよいです。) | ||||
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