(短編集)
閉じた海 社会派推理レアコレクション
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表題作のタイトルに全く記憶がなかったので、取り敢えず買った。収録されている3編のうち『閉じた海』と『よごれた虹』の初出は文藝春秋社、『雨』は光文社刊行の雑誌が初出である。いずれも松本清張には一方ならぬ縁のある出版社なのにこれまで単行本化されなかったのは意外だが、3編合わせても200頁に足らないことに加え、小説としての出来も半端だから、まぁ仕方ないか。第一、本書の副題に “社会派推理レアコレクション” と謳っていながら、推理モノというほどの作り込みも捻りもない。 読後の感想を有り体に云えば、最初の2作は素材を碌に料理もしないまま並べたようなものである。戦後の混乱期に阿漕な手段まで駆使して成り上がった男たち…。片や財閥系に伍して業界の中堅までのポジションに至った損保会社、此方無尽会社から発祥して地域の有力金融機関の地位にある相互銀行の裏の顔を暴くようなストーリーなのだが、どちらもネタとして古すぎるな。むしろ3作目、わずか20頁余りの短編『雨』が著者特有の味わいで、最もましに思えてしまうのだから、困ったものだ。 本書の後半は、単行本化のための埋め草として寄せ集めたと思しき対談・座談等である。私としてはいずれも初見ながら、ところどころ松本清張の興味深い発言があって、これは拾い物。辛うじて「買って損はなかった」と思わせてくれたものである。特に書評家・平野謙との対談中の次の一節…。 松本 それは出版社とのはじめからの約束でしたからそういうことになったんです。平野さんが『点と線』から読んでくださって大へんありがたいのですけれども、ぼくを認めてくださるなら、『風雪断碑』とか『石の骨』、あのころから認めてくださったら、ぼくは推理小説に手を出すことはなかったと思う。 平野 いやいやそんなことはないでしょう。 松本 それはそうなんです。 平野 それは批評家に対する松本さんの買いかぶりで、批評家にそんな力があるわけはありません。 松本 受ける側はそうですよ。あのときに一言半句でも、文芸時評か何かでとり上げてくださったら、ぼくは馬車馬みたいにあの道を走ったと思う。ところがあの当時だれも何ともいってくれない。自分の信ずる道を行けばいいわけですが、サラリーマンから作家となったばかりですから生活を失いそうな不安があったわけです。しかし、推理小説が受けるとも思わなかった。『点と線』を書くときには、雑誌も「旅」でしたからね。ただ、ぼくは推理小説が好きだったし、あのころの日本の推理小説に不満を持っていたので書いてみた。それが連載中も何も反響がなく、単行本になってから売れたということから次々とこういうことになっちゃったんですけれど、『風雪断碑』のころに、批評家に二、三行でも触れてもらいたかった。何を書いても全部黙殺されました。 松本清張がどこまで本心を吐露しているのか定かでないが、推理小説を書き始める以前に、なまじ作品を評価されていたら後の ”超ベストセラー作家” は存在しなかったのかと思うと感慨深い。結果オーライの究極であろう。 | ||||
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