有罪、とAIは告げた
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| 判決をAIに委ねる。 そんな時代が近づいてきた、今。 このソフトのアルゴリズムは過去の判例と、裁判官個々の倫理観と経験則により作られていると。 だが、道徳と倫理。 それに、正義の概念と寛容さ。 初心、忘るべからず。 効率化を図ったとしても、血の通った判決を求む。 | ||||
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| テーマ先行型の小説です。 ---以下、内容への言及を含みます--- ・基礎データの入力を、"人間が10段階で判定して"行うという時点で、大した精度にはならないのではというのがずっと引っかかっていました。 ・(検察実務に詳しいわけではないですが)劣悪な家庭環境で被害者にも非がある状態での殺害で死刑を求刑されるというのがリアリティがないのではと思いました。あの条件が揃っていて普通求刑が死刑になりますかね?強い違和感がありました。 ・逆に主人公は「死刑の適用はない」という前提で行動するのも違和感がありました。殺人罪の最高刑が死刑である以上、最初からその可能性を否定しているのもやはり「偏っている」のではと感じました。 ・結局、「鑑識の見落とし」が物語を転換させるため、あんまりAIの問題点には触れず、このテーマを設定した理由が薄らいでしまっていたのも残念なポイントです。 ・システムの欠点として、尊属殺重罰規定違憲判決の判例データだけインプットされていなかったというのは、正直呆れました。欠陥の作り方が雑すぎませんかね。ちなみに尊属殺重罰規定違憲判決は、「普通殺人罪に比べて刑が重すぎたから」違憲となった判決です。ここへの言及がなかったのはややミスリーディングに思えます。(ストーリー上そこまで言及する必要がなかったのかもしれませんが) ホットなテーマの小説ですが、突っ込みどころが目立つ作品であり、あくまでエンタメとして捉えた方が良いものと思います。 | ||||
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| 刑訴の取材は相当いい加減ですが(公判前整理手続の後は証拠請求は認められない)、まあ小説量産型の先生にして、新しい分野に果敢に挑戦して、一定のレベルには達していると思います。 | ||||
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| 日頃、無駄にごたついている政治のニュースを見るたびに、政治はもうAIに任せた方が良いのでは?と思っているので、裁判をAIに任せる日がきても違和感を感じないかもしれないと思っている。 ただこの話でAI化を勧めてくるのが某国だということに、何とも言えない心のざらつきを感じながら、先を読み進めることになる。 今回私にとって初めてのオーディブルでの“読書”体験となった。 時々声色を変えながら男性のナレーションが進む。全体に会話が多かったので、ラジオドラマを聴くような思いで聴く(読む?)ことができた。 目や本を持つ手が疲れることもなく、好きな姿勢でストーリーを追うことができる反面、「え?今なんて言った?」と思ってちょっと戻りたくても、操作ができなかったので(個人的な技量だと思う)まあいいか、と聞き流すような形になってしまった。 私には、難しすぎる話はオーディブルは無理かな、と思われたので、この本は初めての体験としてはちょうど良かった気がする。 そんな意味でも、なかなか興味深く楽しめる“本”でありストーリーだった。 | ||||
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| 東京高裁に、中国との友好・技術交流のために、中国の人工知能の「AI裁判官」が導入されることになった。そのAIは、法文や判例をデータインプットし、裁判官の判決も実行する。 法文や判例を集めるだけでなく、判決文まで書くという。判決文は、難解と言われる文章であるが、それをきちんと踏襲するのだ。仕事の効率化、合理化、迅速化は司法の世界まで押し寄せているのだ。エストニアでは、ロボットAI裁判官が7000ユーロまでの少額訴訟にかぎって活躍していると報じられている。 東京高裁の総括判事の寺脇から、東京地方裁判所の新人裁判官の高円寺円は、「AI裁判官」の法神の有効性を検証するようにと、法神の担当:インストラクターをさせられる。中国から派遣された技術者楊の日本語が流暢だ。北京大学日本語科とアニメで日本語が上達したという。楊の上から目線に辟易しながらも、AI裁判官の使い方を習熟していく。そして、その性能に寺脇は驚くのだ。自分と同じような文体を使い、同じような結論を出すのだった。 裁判官は、公判、証人尋問、証拠や鑑定書の読み込み、判例の読み込み、そして、判決文の作成と実に忙しい。判決文を作る上での助手的役割をしてくれればいいかもしれないと高円寺円は考えていた。しかし、その性能に高円寺円は驚くのだ。 判決文はまさに裁判官の考えた通りの判決文を作り出すのだ。そして、総括判事寺脇の息のかかった判事たちに、使わせてみるとその性能に、みんな驚き、導入したいと言ってくるのだ。寺脇は、これを導入することで、自分の評価が上がると考えるのだが。 高円寺円は、AI裁判官をあまり信じておらず、使わず、相変わらず忙しい日々を送っている。 それでも、高円寺円は、AI裁判官について、AIの専門家萬代倫香に分析してもらうことを、寺脇に承認させた。バグだとか、何か不具合がないかの検証である。 定年まじかな檜葉裁判長が、家庭内暴力を振るう父親殺しの18歳の未成年の戸塚久志を担当していた。老人に近い存在なので、尊属殺人に対しては厳しい考え方をしていた。しかし、永山基準が存在する。1. 犯行の罪質。殺人の方法が残虐か、計画的かなど。2. 動機。利己的な動機か、やむを得ない事情があったかなど。3. 犯行態様の残虐性。被害者に与えた苦痛の度合い。4. 結果の重大性。特に殺害された被害者の数。5. 遺族の被害感情。遺族が極刑を望んでいるかなど。6. 社会的影響。社会に与えた衝撃の大きさ。7. 犯人の年齢。成人か未成年かなど。8. 前科。過去に犯罪歴があるか。9. 犯行後の情状。反省の有無、被害弁償の努力など。 その未成年犯人は、初犯であり、懲役刑が妥当だと思われていた。少年犯罪の場合、日本の刑事裁判は基本的に更生主義を採用している。尊属裁判の厳罰は、1995年の改正により正式に削除されている。檜葉裁判長は、AI裁判官の法神に、診断してもらうことを高円寺円に依頼した。そして、法神は、検察の要求した通りの「死刑」の判決文を書き出した。檜葉裁判長は、納得して、自分の考えた通りだという。 しかし、高円寺と刑事の葛城は、その法神の死刑の判決を覆すための証拠などを集めるが。 要するに情状酌量の余地がないか、未成年が死刑になるということへの恐れなどがあった。そしてついに、中国製のAI裁判官の弱点を見つけるのだった。中国、アジア、日本は、儒教の影響が強く、尊属殺人には厳しいことも反映していた。しかし、どんでん返しの中山七里は、さらにどんでん返をするのだ。 AIが、感情と心、共感性、創造性があるかという問題がある。山中さんとタモリの番組でAIを扱っていたが、人間しか持っていないという「予測能力」が今のChatGPTの最新版では、かなり改善されている事例が出された。2分間コントシナリオも、AIでできる時代だ。裁判でAIに裁かれるとすれば、人間としては嫌な感じはする。それにしても、中山七里、AI裁判官について物語を作り上げるスピード感がいいね。 | ||||
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