このやさしき大地
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種別
長編
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あらすじ
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評判
このやさしき大地の評価:
8.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
このやさしき大地の総合評価:
9.33/10点 レビュー 3件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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ホメロスの『オデュッセイア』からのエピグラフで始まります。
この物語は、460ページあまり語られた後、エピローグで終わります。
「オデュッセイに出航した四人の孤児」(465頁)の物語です。
神話『オデュッセイア』になぞらえた物語。
旅の末にやっと会えたジュリアおばさんは
ぼくを「オデュッセウス」(426頁)と呼ぶ。
ジュリアおばさんはぼくの「母親」(452頁)だった。「母さん」(457頁)
そして母親は今、ゆるしを求めている。
この物語のテーマは、ゆるし。
「すべてのさすらい人」(465頁)たちのお話です。
巻末の「著者の覚書」によると、
「『ハックルベリー・フィンの冒険』のアップデート版を想像していた」(473頁)
『ハックルベリー・フィンの冒険』は、イギリス版1884年、アメリカ版1885年の刊行。
『ハックルベリー・フィンの冒険』のカバー・ストーリーとも言えそうです。
本書の原書は2019年の刊行。125年以上前の古典文学のアップデート版となります。
本書の時代背景は、主人公が生まれた1920年代から、主人公が80歳になった2000年代。
著者のウィリアム・ケント・クルーガーさんは、
「チャールズ・ディケンズの愛読者」(474頁)を自任しています。
チャールズ・ディケンズは、1812年に生まれ、1870年に没した古い時代の作家。
孤児『オリヴァー・ツイスト』の物語や、
現状を逃げ出してドーヴァに住む大伯母の家をめざして旅をする少年
『デイヴィッド・コパーフィールド』の物語で有名です。
本書は、これらディケンズ作品のカバー・ストーリーとも言えます。
読者は、「母をたずねて三千里」のお話を思い出しました。
本書のタイトルの『このやさしき大地』とは、
米国ミネソタ州フリモント郡に流れるギレアド川沿いの大地。
そこが、この物語の舞台です。
わたしは今「ギレアド川の土手に立つスズカケノキの木陰の家に暮らしている」(9頁)
「この美しく、やさしい土地」(162頁)
「ぼくはこの土地に親しみを感じていたし、ジャックが会話のなかで土地をやさしいと表現したことを思い出した」(171頁)
時は、「一九三二年の夏に起きたこと」(9頁)
「一九三二年のこと」(25頁)
「一九三二年のあの夏の日」(325頁)
「十三歳の誕生日を目前にひかえた一九三二年の夏」(413頁)
「一九三二年の夏をふりかえるとき」(465頁)
「一九三二年の夏に出発した川の旅」(473頁)
語り手は、ぼく(わたし)オディ・オバニオン。
ぼくは、1932年には12歳。
リンカーン救護院に新入したときは「八歳」(12頁)だった。
「ぼくはというと、自分で物語をつくるのが好きだった」(12頁)
「わたしは物語作家だ」(9頁)
この物語を執筆した時の語り手の「わたし」は、80歳。
ぼく(わたし)は「そのとき見た美しい光景は、八十年生きてきた今でも忘れられない」(188頁)
「七十年前のあの遠い夏」(469頁)、12歳だったぼく。
この物語の最初から最後まで、いつも響いているのは、ぼくのハーモニカの音。
ぼく(わたし)の人生をいつも伴奏してきた通奏低音です。
ブーカブーカブー。
《備考》
表紙カバーの装画は、草野 碧(みどり)さんによる。
茶色に濁ったギレアド川岸に座って、沈む夕陽を見ながら考えこんでいる「ぼく」。
その後ろに立って同じく夕陽を見ている四歳年上の兄の「アルバート」。
カヌーから降りて走り出している「モーズ」。
待ってえ、と言いながら彼を追いかける幼い「エミー」。
旅に出た、この四人のさすらい人たちが美しく描かれています。