青春とシリアルキラー
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ジャンルや作者についての前知識、小説の様式を知らなければ楽しめないようなものに思いました。 内容は 言いたいことが特に無い、ような素振りでちょいちょい自分の考えを挟んでくる感じが少し苦手でしたが「それこそが狙いなのです」などと言われそうな感じでそれもまた苦手でした。 | ||||
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「この本は、なんだかわからないうちに人生をしくじった僕と、その周辺について書いたものである。」と帯に書いてあり、じゃあ、僕(作者)のエッセイなのでは。と読み進めたが、それは、違うようで、僕(作者)は強く『青春とシリアルキラー』は小説だと言った。確かに、「小説用にわかりやすく作ったキャラ」などのような、ところどころ小説だと読み手に気づかせてくれるところがあったように思う。しかし、エッセイのように思えてしまうのは、自殺やコロナなど、現実に目を向かわせるようなことが書かれていて、人生の不安、鬱屈さ、もやもやした感じがうまく表現されていて、それに共感した人がいるからなのではないだろうか。私もそのひとりである。だが、読み進めていくと、これはエッセイではなく、小説なのだな。と少し、感じるようになっていった。(なぜ、そう感じたのかは上手く言葉で表せないが。)それを感じ取れるカギは、「本当にあったできごと」「真実より真実味」という言葉にあるのかもしれない。だからこそ、もう一度読み返してみようと思う。読み返すことで、『青春とシリアルキラー』が小説であるということをしっかりと感じ取れるようになるのでは期待している。 | ||||
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"この本は、なんだかわからないうちに人生をしくじった僕と、その周辺について書いたものである(中略)しくじった人生をいかに生きるか。僕が求めているのはそれだけだ"2022年発刊の本書は生きにくい中年男性に贈る限りなく私小説じみたメタフィクション。 個人的に著者の『転生! 太宰治』が面白かったのと、帯にひかれて手にとりました。 さて、そんな本書は1997年に神戸市須磨区で発生、犯人が当時14歳であったことから社会に驚きを与えた『神戸連続児童殺傷事件』を題材に、かって執筆した(本書巻末に収録されている)『ドグマ34』が出版社の判断でお蔵入りになった"小説家"『僕』のもとに『続きを書かないか?』と、当時の担当編集者『阿南さん』から連絡があったところから始まり【結婚して子供が出来、家も買った38歳】一見すると幸せなはずなのに、どこか自分を『社会不適合者』と感じ、自殺すら考えている"小説家"『僕』は結局、続きを書き始めるのですが。 まず、作中の中でも『エッセイやコラムと間違われる』と書かれてますが。本書はあくまで小説であり、フィクションなのですが。語り部たる"小説家"『僕』が、著者自身と【あまりにも同一人物に見えてしまい】なんとも言葉にしにくい不思議な読み心地でした。(太宰治的な作風を狙った?) 一方で、38歳で玉川上水に飛び込んだ太宰治、また35歳で『ぼんやりとした不安』で自殺した芥川龍之介でなくても、本書での小説家『僕』。中年男性が抱える【挫折感、生きづらさ】は世代の近い私には【感覚的に共感できる】のですが。しかし今だと"非正規雇用のコロナ禍での失業、親の介護問題とかでもっと大変な人もいる!甘えるな!"とか、言葉にしてしまったら、おそらくは(外野から)【非難されるだろうこと】を、本書は代弁してくれている感じもして、何だか嬉しかった。 著者と同じく、かっての事件に大きな衝撃を受けた人、また漠然とした不安や挫折を抱える中年男性にオススメ。 | ||||
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作者である佐藤友哉についての前知識はゼロ。帯を飾った「中年男性は生きにくい」という滝本竜彦の推薦文に「NHKにようこそ!」からもう20年も経ったのかと時間の流れの早さを実感すると同時に、あの辺のウダウダやってた世代の作家が今何を考えているのか知りたくなって手に取ってみた次第。 物語の方は主人公であり作家として生きる「僕」と編集者である阿南という人物との会話で始まるのだが、どうもこの二人の関係はかつて出版を前提に書いたものの社会的にまずいという事でお蔵入りになった企画が挟まった微妙な物らしい。 その死蔵された企画を再起動させないかという阿南の提案を受けた「僕」はキャリアウーマンの連れ合いの稼ぎで生活が成り立っているぐらいには余裕があり、ほぼ専業主夫の様な立場で子供を育てているが自分の人生に言い様の無い違和感を覚えているらしい事も見えてくる。 その違和感の正体を探りながら「僕」が「青春とシリアルキラー」という題の小説を執筆する中で日々は過ぎて行き社会も変化を続けていく……というのが主な内容。 ひと言で表せば何ともとりとめが無いというかつかみ所の無い物を読んでしまったなという印象。私小説っぽく生きづらさを抱えた「僕」が悶々としながら日々を過ごす様を追っているのは分かるが結局の所この作品を通じて読者に何を訴えかけたいのか最後の最後までよく分からないまま終わってしまった感が残った。 どうもこの「僕」が潰されてしまった企画というのが25年前に須磨区の北の方にある住宅地で起きた連続殺傷事件を題材としていたらしい事は最初から匂わせてある……というか巻末に「ドグマ34」というタイトルで実際に収録されているこれまた私小説っぽい代物がそれらしい(作中に2年前に閉店した三宮の東急ハンズとか出てくるので微妙に懐かしさが)。 この「ドグマ34」という2008年頃の物と思しい名谷から妙法寺あたりを作者がウロウロしてその10年前に社会を騒がせた事件を起こした少年に迫ろうとした企画から時間が流れ、今では登戸で通り魔事件が起きようが京都のアニメ会社が放火されようが以前ほどには心が動かない人が多い事に気付いてそれは何故なのだろうと「ペスト」の登場人物を切り口にして自問自答したり映画「ジョーカー」をネタにした編集者との会話で突き詰めようとする様が延々と繰り返される。 ……これでバーンと「シリアルキラーに関心が持てなくなった理由はこれだ!」と読者に提示してくれれば読者としてその答えに賛同できようが出来まいが一応の納得は得られるのだけど、答えを出す訳でも無くずーっとウダウダしている。で、当然こういうものを読んでいると「言いたい事が分かり難い作品とか読んでられっか」となりがちな短気な読者なものだからイライラしてくるのはいつもの事なのだけど、どうもそこに停滞感によるもの以外のイライラも混じっている様に思えた。 作家がいくら自分の抱える生きづらさについてウダウダ悩もうとそれは御本人の勝手ではあるのだけど、付き合わされる読者としては「そもそもこの人って自分自身の人生に何か悩む様な部分が残ってるの?」と嫌味の一つも言いたくなる。 若くして作家としてデビューし、著作も複数出した上に(「僕」が作者自身だとすれば)高名な文学賞まで受賞して、プライベートではキャリアウーマンの嫁さんも稼いできてくれる中でマイホームも購入し、我が子を育ててる真っ最中って……どこをどう切り取っても誰もが羨望する「満ち足りた人生」だとしか思えないのだが。 あんまりイライラしたものだから著者の刊行記念インタビュー記事を読んだらまたここでイライラ。まだ高校生だった頃の神戸の事件には大いに引き込まれというのは分かる。バブルも来なかった千歳とはいえ親がかりの身であれば歳の近い人間が閉塞感を感じる街で起こしたシリアルキラー事件に構う余裕は十分にあっただろう。 アメリカの同時テロ事件の時は作家としてデビューし、駆け出しだったので他人に構う余裕が無く世界的大事件に対しても「それどころじゃねえ!」という気分だったが、東日本の大震災やコロナ禍では「どうしよう」と思わされたって……それ単にご本人に守るべきものと他人を守る余裕が出来たってだけの話なのでは? 作者は1980年生まれの氷河期世代らしいが、この世代には守るべき物としての安定した職業や連れ合いや子供なんか持てないまま2020年代に突入してしまったという人が珍しくも何とも無い訳で。そんな人は90年代後半から続くどうしようもない不況と日本社会の衰退に追い詰められっぱなしでシリアルキラー云々に構う余裕なんか無かったろうと。 件のインタビューで「それどころじゃねえ!」とシリアルキラーやテロ、大災害での他人の死なんかに構ってられない状態が続いている限りは青春であると仰っているが自身の経済的状況で世間を騒がす事件に構えない様な状態も含めて「青春」と仰るつもりなんだろうか? モラトリアム期であれ、社会的な成功を収めた後であれ余裕のある状況だけで許されるモヤモヤ感もゼロ年代初頭のまだギリギリ余裕のある時代であればともかく、社会のどこにも余裕なんか無くなった時代に訴えられかけても「そんな倦怠めいたものに付き合わされてもなあ」と訴えに対して変な痛々しさすら覚える。 酷く余裕の無い印象を与えるレビューになってしまったかも知れないが色んな意味でギリギリに追い込まれている中年の多い時代になって90年代~ゼロ年代の尖ったボクちゃんみたいな感覚を突き付けられても今さら感ばかりが強く、それこそ「それどころじゃねえ!」としかお答えのしようが無いな、と思わされたそんな一冊。 | ||||
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