(短編集)
劇場の迷子: 中村雅楽探偵全集4
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実は第3巻「目黒の狂女」を古本屋の特価本の籠で何気なく手にとった。80円。なら買っても損はあるまいと買って帰った。読んで一驚。大変な傑作である。悠揚迫らぬ典雅な、しかし親しみ易い粋な文体。スッカリ魅せられてしまった。歌舞伎を中心とする床しい世界で起きる人間味ある事件。分厚い文庫本で5冊。戸板氏には他にも異なるジャンルの作品が沢山あるが、名探偵中村雅楽が活躍する5冊は戸板ワールドの重要な領域をなす。私の書架のシャーロックホームズ全集、ポオ全集、半七捕物帳などに中村雅楽全集が加わったのは大いなる喜びである。 | ||||
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中村雅楽の短篇を集めた第4集。 海外と日本の物だと圧倒的に海外の物を読む事が多いし、家柄や世襲が尊ばれる様な世界は本来あまり好きではないのですが、そういう所に典雅で華麗な物があるのも事実だと思うので、この戸板氏の連作も好きではあります。が、あくまで門外漢の書く事なので、ファンの方は以下の駄文は無視してください。 28篇と解説の縄田氏の文章とも面白かったですが、流石に28篇も読むと疲れるのも真実です。それもあまり縁のない、というか縁のない人の多い方が普通であろう現代で、歌舞伎の世界を描いた本作は同じ日本人が読んでも異国の話に思えてしまうのもバチ当たりではないと考えてもおかしくないのではとか思いました。だからこそ面白いとも言えますが。 収録作では最後の演劇史の謎を解く話が名作「時の娘」っぽく、歴史推理みたいで良かったです。あとの短篇も全てミステリとしての水準もクリアしていると思いました。 いつのまにかこの短篇集も4冊も読んで、かなり読んだ方に数えていいかもしれませんが、後一冊を読むのも楽しみです。 古の日本情緒溢れる名短篇集。是非ご一読を。 | ||||
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単行本未収録作品が掲載されていたので購入した。 最晩年の著者が若いお嬢さんに癒されている様子が垣間見えてほほえましかったが・・、 氏と同年齢に近づいてきた今・・却って、分からない心境だなあ! | ||||
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1巻目からずっと、歌舞伎役者、中村雅楽を中心としたミステリ短編集を読んできましたが、時系列に編纂されているこの短編集、1巻目が江戸川乱歩に影響された殺人事件解決などの本格ミステリだったのに対して、2巻目は日常生活のちょっとした謎解き、そして3~4巻目に至っては、ほとんどが歌舞伎界に題材を取るようになりました。元々が演劇評論家だった作者にとっては、やはり自分の専門分野を描いた方が書きやすく内容も生き生きとしたものになるということでしょう。 梨園と呼ばれる歌舞伎界の内情がよくわかります。一見、舞台で協力しあっている俳優たちの間に、時には役柄をめぐっての嫉妬や足を引っ張りあう競争があったり、それに世間一般から見ると特殊だと言われる恋愛事情もよく描かれています。雅楽自身の過去の恋愛話や、現在まわりにいる若い女性たちへのほのかな思慕が描かれていて興味深く、またそこかしこに雅楽の聡明で思いやり深い人柄が感じられて、読んでいて心が温かくなりました。そして、それぞれの短編のラストのうまく締められた粋な一言にうならされる作品が多かったです。 個人的に特におもしろかったのは、最後の「演劇史異聞」です。雅楽が、実在の本「近世日本演劇史」を読みながら、江戸から明治にかけての歌舞伎界に起こった事件や謎を、聞き役の竹野氏に向かって解いてみせます。特に過去の市川団十郎の家系は、切腹した人もいれば弟子に殺められた人もいたりして、なにかと波乱の家系だったのだなとびっくりしました。それに、あの大奥で有名な江島生島事件の生島新五郎が、二代目市川団十郎の弟だとは初めて知りました。この事件に関しても、雅楽が自分なりの推理を述べています。そして、これら過去の出来事をめぐる雅楽の考察は、きっとそのまま演劇評論家である作者の見解と思ってもいいでしょう。豊かな知識に裏づけされた深い考察が大変興味深かったです。 5巻目はまだ読んでいないのですが、この本の解説に、雅楽をめぐるミステリ短編はこれで終わりというようなことが書いてありました。それなら5巻目にはどんな作品が収録されているのでしょうか。どの作者でもそうなのですが、すでに亡くなられている場合は、読みつくしてしまうともうその先、新作は出ないわけで、いつも読み終わるのが惜しいと思ってしまいます。この短編集もすべて読んでしまうのがなんだか寂しいようなもったいないような、そんな気持ちになってしまいました。 | ||||
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1977年から91年までの新しい作品集。 雅楽はすでにめったに舞台には出ず、後輩の指導にあたりつつ、悠々自適の日々を過ごし、竹野記者も後半定年退職しています。 しかし劇界内部の小さな紛失事件や若手のライバル意識、役の配分をめぐる争い、また芸の秘伝口伝などに関する謎解きは、歌舞伎評論家の著者ならではの細やかな目のつけどころで、ますます味わいに磨きがかかり、このシリーズで親しんできたさまざまの屋号の家の俳優たちの代替わりや親子関係など含めて、すでに大河ドラマの滔々たる趣きを感じさせます。 しかも今回は、雅楽と女性のエピソードが多く、若いころに思いをかけた女性のエピソードや、雅楽を父と思いこんでいた少女のこと、梨園の実の父親をつきとめてくれといってくる女性など、男女の機微や親子の絆の情にあふれた作が多く、ほのぼのと名優雅楽の奥の深さを感じさせられました。 ことに、関寺真知子という、芸談の聞き書きに訪れる若い女性編集者との交流は連作になっていて、印象がきわだっています。いくつになっても男として、若い女性に憧れる気持ちが老優雅楽の芸の火でもあり、生命力でもあることを、見守る竹野記者がしみじみと描きます。 また、この巻では、雅楽の日常の小さなドラマに対して、ワトソン役の竹野記者のほうがお膳立てをしたり、助け船を出したりすることも多くなり、著者の分身、竹野記者の円熟もうかがえます。 真知子が結婚して記者引退となるか、というところでの活躍や、破門した弟子との橋渡しをするところなど、雅楽をむしろ外から支えており、彼の目線から描かれる、超人ではない人間味あふれる(愛すべき)雅楽像に親しみを覚えさせられました。 人間として厚みを増した老優雅楽は、「劇界の半七」だけではない、端正な存在感です。 ラストの「演劇史異聞」は歴史上の名優をめぐる謎、また写楽の正体などいくつかのエピソードを、雅楽がさらりと推理してみせるものですが、役者ならではの視点に、やはりはっとさせられます。 この四巻目で、私は物語以上に、この「雅楽」という俳優自身のご贔屓、ファンになってしまった気がします。 | ||||
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