松風の記憶: 中村雅楽探偵全集5
- 劇団 (96)
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読み終えてしまうのが惜しくて大事に取ってあった最終巻、とうとう読んでしまいました。著者の小説は短編がほとんどの中、こちらはめずらしい長編が2つ収録されています。 「松風の記憶」は昭和34年(1959年)に新聞に連載されたものです。今も世間一般とは違う梨園の結婚や恋愛が話題に上がったりしますが、跡取りがいなければ家や芸が継承できない歌舞伎界で、役者たちの倫理観がよくわかります。しかし今も昔も婚外子として生まれた子供の心情は複雑なものがあるようです。そんなことも含めた梨園の事情がテーマになっています。昔の日本の雰囲気がわかるのも奥ゆかしく、風情があっていい感じです。 現代の目から見たら突っ込みどころはありますが、「車引殺人事件」で小説デビューしてたった1年後にこれだけのものが書けるとはすごいと思います。 ネタばれするのであまり書けませんが、雅楽が犯人をすぐに告発せず、犯人の良識と罪悪感にまかせたのはアガサ・クリスティや内田康夫のミステリにもあったと思い出しました。 「第三の演出者」も初期作品で1961年出版です。当初は長編ももっと書いていくつもりだったのでしょうか。 こちらはがらりと変わって新劇の話になります。カリスマ性のある気難しい演出家と元女優の若い妻、夫は自宅に出入りするようになった有能な劇団員と妻が関係しているのではと疑っています。そして夫は病死、その劇団員は稽古中に銃が暴発して亡くなってしまいます。事故だったのかそれとも周到に準備された殺人か? 陰湿だった夫が死後もどこかから見ているようなオカルト的な不気味さが漂い独特の雰囲気を醸し出しています。どこかのどかな中村雅楽ものとはまったく違った作風です。 他、いろんな媒体に掲載された雅楽シリーズに関する文章やエッセイがまとめて収録されています。ミステリ・デビューのきっかけになった江戸川乱歩との出会いが何度も語られ、作者にとってはよほど印象深い運命的な出来事だったのでしょう。乱歩に対する深い感謝の気持ちが感じられます。 十七世中村勘三郎(今の勘九郎の祖父)が雅楽を演じたテレビのミステリ・ドラマは3回放映されたようです。知り合いで1人見たという人がいますが、なかなかおもしろかったそうです。見たかったです。 | ||||
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古書としてはきれいな状態で、満足です。 | ||||
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クラシックですから、肩の力を抜いて楽しむのがいいでしょう。 | ||||
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中村雅楽ものの二長篇を収録した巻。 「松風の記憶」広島の寺で歌舞伎俳優が変死し・・・というお話。著者初の長篇という事ですが、単に長いだけではなく、必然性のある長さになっていて、流石だと思いました。歌舞伎の演目である相似の題材をうまく絡めて推理小説の長篇にしており、傑作と言っても過言ではないでしょう。 「第三の演出者」新劇の俳優が亡くなり、その遺稿通りの殺人が起き・・・というお話。こちらも長篇ですが、事件に関わった関係者の証言を併記して、事件当日に何があったかを視点人物の主観で浮き彫りにするという凝った作風になっております。こちらもなかなかの佳作だと思いました。 あとは、様々な雑誌等に掲載された戸板さんのエッセイを収録しております。江戸川乱歩との邂逅の話しが多く、戸板さんには思い出深い事だったのが判ります。 こういう世界だけで、推理小説が成立するのも凄いですが、恩讐渦巻く世界だからこそ、色々な題材で推理小説を書けたのかもとも思いました。 日本の推理小説史に残る名シリーズの長篇二作。是非ご一読を | ||||
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最終巻は、雅楽のめずらしい長編が二編、おさめられています。 『松風の記憶』は梨園の血のつながりをめぐる悲劇で、ヒロインにやや古風な趣きはありますが、歌舞伎に日舞の世界をもからめて、著者らしい緻密な筆ですみずみまで描ききった実力作であると思います。ラストも「松風の音」で舞踊「汐汲」を思わせ、国文学の伝統を踏まえた余韻を漂わせます。 『第三の演出者』は、新劇の世界を舞台にし、劇団の長で演出家でもある男の死後、あたかも予言のように続く一連の事件を、妻や劇団員など複数の視点から書いたものを読んで、雅楽が安楽椅子探偵として推理する、というものです。こちらはより推理小説らしく、また人物の心理描写も委曲を尽くしています。 しかし短編の楽しさ、ウィットの面に比べると、長編二編には、多少重苦しい読後感があります。 著者が直木賞、日本推理作家協会賞を受賞したのが、いずれも雅楽シリーズの短編であることもそのあたりに理由があるかもしれません。 とはいえ著者の推理作家としての実力は、むしろこの長編に十分に伺えるのではないでしょうか。 この巻も読みどころは満載で、長編のあとにつけられた「中村雅楽エッセイ」という章には、著者がこのシリーズにまつわる雑感、裏話などを雑誌にのせたものがまとめられています。これが軽妙洒脱で、また率直な感想がつづられています。初期作品では「等々力座殺人事件」が自分では気に入っている、というくだりにはさてこそ、と思わされ、また江戸川乱歩に励まされたこと含め、彼の思い出が数編に渡ってのべられているのも興味深いです。舞台化された三人の歌舞伎役者の雅楽の違い、またTVの十七世勘三郎のことにも触れられています。特に、八代目中車の雅楽は見たかったと思います。 また処女作「車引殺人事件」の反響や、「ほくろの男」(第一巻所収)の裏話なども、歌舞伎評論家ならではの鋭い目線を感じます。 巻末には小泉喜美子の愛情あふれる『松風の記憶』初版の解説と、権田萬治、日下三蔵の文庫版解説も充実しています。 著者は敬愛する岡本綺堂の半七(特に当代菊五郎が演じたもの)にも触れていますが、雅楽は半七の後継者である、というようなしずかな自負もあったように思います。 全五巻のこのシリーズ、折りにふれて読み返しても古びない味わい、そしてある時代の歌舞伎の世界の匂いや雰囲気を鮮明に写しとった資料としても、座右に置くのにふさわしい名作です。 | ||||
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