それ以上でも、それ以下でもない
- アガサ・クリスティー賞受賞 (13)
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第9回アガサ・クリスティー賞受賞作「それ以上でも、それ以下でもない」(折輝真透 早川書房)を読みました。 第二次世界大戦末期、パリ陥落後のフランス。ナチスによる占領。南部を統治するヴィシー政権。そして、対抗する連合国、フランス・レジスタンス。その時代の中西部の村、サン=トルワンの神父、ステファンの姿を追う歴史ミステリーです。今年3月に読んだ「戦場のアリス」(ケイト・クイン)の時代と被っていますね。どちらも<オラドゥール=シュル=グラヌの悲劇>、虐殺事件に言及しています。 ミステリーですから、「誰が匿っていたレジスタンス、モーリスを殺害したのか?」というフーダニット、その謎が最後に明かされますが、そのことよりもその死体を隠匿しようとする際の<反転>が予想外で読ませます。スリラーの読み手にとっての「ときめき」がありました。 <瑕疵>はあると思います。誰が嘘偽りのない正直な庶民で、誰がSSという力の強い側に加担していて、誰がレジスタンスを装っていてというミスディレクションが曖昧なためにその<反転>が少し唐突な印象がありますね。それは、登場人物を多く配したが故にそれぞれのキャラクタリゼーションの描き込みが不足しているためかもしれません。様々な制約があるのかもしれませんが、この物語であるならばより長尺になりうるように感じます。欧米のスリラー、或いは歴史小説であれば(必要以上に(笑))悠然と長く、長く仕立てられているような気がします。 よって中盤以降、連合国側勝利後のサン=トルワンに生きる人々の描写が説明的で平板な印象があります。とは言え、舞台をフランスに置き、登場人物をすべて外国人に設定し、尚且つカトリックの神父を主人公にそえた作者の物語作者としての力量とその特異性は輝いているのだと思います。特に、ナチス親衛隊(SS)のベルトラムが登場し、その意を放つシークェンスはエキサイティングでした。私たちはグレアム・グリーンの「情事の終わり」を読み、スピルバーグの「シンドラーのリスト」を見て育っていますから(笑)、期待値が高く、少し不満が多くなることをお許しください。 タイトルは、この物語を収斂させていくにあたって、とても清々しいですね。今日、今、この時、この一瞬、ここにいることによってもたらされたふるまい、行為が一人一人の変えられない「歴史」を生み出していくのだと思います。 「思い出して、あなたを待っている人たちを」 素敵でした。 | ||||
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