トラブル・イズ・マイ・ビジネス: チャンドラー短編全集4
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種別
短編集
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あらすじ
評判
トラブル・イズ・マイ・ビジネス: チャンドラー短編全集4の評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
トラブル・イズ・マイ・ビジネス: チャンドラー短編全集4の総合評価:
9.00/10点 レビュー 5件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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陸上選手が生まれつき持ち合わせた速筋・遅筋の割合に応じて自らの主戦場とすべき距離を選ぶように、作家もまた文章的資質に応じ短編・中編・長編、あるいは掌編・大長編といったそれぞれの棲み処を選ぶ。たとえば、同じ名をもつ作家レイモンド・カーヴァ―は、長くとも数十ページに収まる短編以外の小説を残さなかった。ジョン・アーヴィングが物語を語るとき、それは内包すべき数々の要素のあまりの分量によって、必然的に長編にならざるを得ない。彼らは自分のストロングポイントがどこにあるのか、自分に適した長さはどの程度なのかということを自覚している。そしてレイモンド・チャンドラーもまた、自分が最も輝かしい実力を発揮できるのは長編だと知っていた。短編が不得手だからではなく、あまりに長編の名手だったからだ。
文章を必要最低限まで、少なくとも過剰なまでの修飾は排さなくてはならない短編形式では、チャンドラーの魅力たる事物への饒舌さが生きてこない。彼の長編と比べ、短編に含まれる景色は明らかに色褪せている。人々は生命力を欠き、奥行きを持たない。チャンドラーの小説の魔法は、作家が思う存分筆を振るうことにあるのだと感じずにはいられない。
とはいえ文章それ自体はチャンドラー節とでも呼ぶべき固有のもので、読んでいて退屈しない。プロットの味気無さを補い切れはしないものの、失望させるには至らない魅力がある。優れたシーンの存在はプロット全体を凌駕するという信念を体現しているといえよう。結局のところ、チャンドラーの文章が読めれば内容はひとまず措いておける。
これは短編集ではあるが、個人的な白眉は「無駄のない殺しの美学」なる素敵な邦題を与えられたエッセイだった。ハードボイルド探偵小説を書くことについて、その分野の第一人者が綴るのだから必読である。本エッセイを読んだ後、記されたチャンドラーの視点を保ちつつ長編を読むのが本書の正当な活用法だと思う。