復讐者たち
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1967年に書かれたこのノンフィクションが2015年になって新装版となって再刊された。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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単純で感情的、かつ涙もろいという絵にかいたような凡俗である筆者、罪もなく存在しているだけで殺戮されねばならなかったユダヤ人が復讐を遂げていくのはまことに当然、かつ公平な「罪と罰」、と共感して読み進めた。 その復讐者たちが個人的、或いは組織的に復讐を執行している手を止めさせたのが「イスラエル建国」というのはまことに前向きな展開だった。 どれほど怨念に燃えていても、国家がないユダヤ民族が、イスラエルという国家を持ったことで否応なく国際政治に登場し、建国のために復讐者たちが本国イスラエルに召喚され、復讐から建国へ(具体的にはイスラエル軍を構築する国家的事業や、対中東戦争)ベクトルを変えていくパラダイムシフトは、個人の怨念を現実世界で炸裂させることができる限界を示唆するものだった。 それは、サイモン・ヴィーゼンタール(ジーモン・ヴィーゼンタール)という、アメリカでユダヤ人追求の団体を作り上げた人物は生涯を掛けてナチス追跡を続けたが、それは個人としての活動であり、それが団体となっていった水準で、国家というレベルでは虐殺も報復も、全体では取り扱うなかでの一部門にすぎなかった。 もう一つ意外なことがある。 アーリア人至上主義の筈のナチスは、誰が見てもラテン系の南米で巨大なネットワークを作り上げた世界的構想を持っていた。 本来は世界大戦に勝利したあとのドイツが南米を支配するための下ごしらえだったらしいのだが、戦後も長く南米諸国でナチスが潜伏した土壌となったのは、アーリア人至上思想とやらも第三帝国のビジネス上の必要性からで、しょせん思想なぞ支配のための道具か、と美学の下のありふれた現実にま、そんなもんですよね、という覚醒効果がありました。 大日本帝国はこの種の国際的なネットワークの構築には失敗しただけに、ドイツの視野の広がりは感じさせられた。 全般に、これほどのジェノサイドをされたのだから、この人たちの反応は当然だよね…という感想でした。 そして2020年代、ガザ地区を支配するハマスとイスラエル軍が民間人虐殺の応酬を展開している惨状を見ると、中東側の政権担当能力、統治能力の拙劣さはともあれ、絶滅など不可能であることをイスラエル以上に知悉している国家はあるまいと思われるのにこの状況は、人と同じく、国家も原体験から逃れることは出来ないのか、という複雑な感慨を催させる。 後世という別な視点からもその歴史を検証させる、さながらユダヤ人という民族、イスラエルという国家の精神分析のようなルポルタージュだった。 | ||||
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ナチスドイツの敗北だけで終われない、家族親族民族を殺戮されたユダヤ人達の復讐の記録。 その名の通り『復讐者たち』である。 著者はこの本の為に15か国以上の関係者に取材している。 一つ一つを丁寧に書いてある印象を受けるし、わかりやすかった。 又、ホロコーストの書籍と違い、迫害および殺戮、大虐殺のような生々しい部分ではなく、ナチに対する憎しみの上に、その復讐にかける信念のような部分や計画的な作戦など知ることができた。 復讐者たちは多くのユダヤ人の気持ちを背負って、自分たちは犯罪を犯しているのではなく、二度とこのよな事が起きないようにとの道義づけもしている。 ナチスドイツが敗北したことで、唐突に起きたことではなく、迫害を受けている間中、ユダヤ人たちがそれぞれの立場や考えで何かを起こそうとしていたことも取材からわかる。 非常に興味深い本で読みやすい内容である。 | ||||
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落合信彦がフリードリヒことエルンスト・ズンデルの「ホロコースト否定論」を元にして書き飛ばした「20世紀最後の真実」のタネ本。 巻頭にある「ユダヤ人問題の最終的解決」についての要約が現実ならば、ブルガリアにいたバー=ゾウバー自身が、誰かに匿われるか、何かの幸運か偶然にでも巡り合わない限り、どこかの強制収容所に移送される途中の列車の中か、強制収容所のガス室で死んでいたはずだ。1つ年下のツヴェタン・トドロフの「善のはかなさ」で書かれているように、少なくとも1941年時点のブルガリア王国の国境内のユダヤ人は強制収容所には送られなかった。著者は自分自身の運命に関わっていた事なのに、何故事実に反する事を書くのだろうか? 「ホロコースト大事典」にニュルンベルク郊外の捕虜収容所での出来事を例外として書いているから、「復讐物語」は何らの事実の反映はしているかもしれない。しかし、本当に殺したとすれば、生き残ったゲットーのユダヤ人評議会の関係者かユダヤ人警察官、ゲシュタポに雇われた通訳や密告者、強制収容所のカポーのような気がする。それなりの地位にいたSS隊員が戦後のドイツやオーストリアでは実名を名乗って娑婆で暮らせるわけではないし、南米なり中東なりに逃げる途中の面々ならば他人の事までは知らないだろうし。「おおエルサレム!」にドイツ人の命令を拒否して短期間ながら強制収容所に送られた事があるアラブ人が経歴を生かして?パレスチナに帰るのにユダヤ人の帰還船を利用する話しがあるので、あるいはドイツにいたハジ・アミン・アル・フセイニーに近いアラブ人か。 「エルサレム〈以前〉のアイヒマン」にフリッツ・バウアーを初めて紹介した本として紹介されているので、「ナチ・ハンター」については、書かれたとしても問題にはならない範囲での事実を書いているだろう。まだボルマンの遺骨がベルリンで見つかる前とはいえ、彼がベルリンで死んだという目撃談があるにも関わらず、安っぽい冒険小説かスパイ映画まがいの「ボルマンの逃亡物語」はせいぜい伝聞を元にしたフィクションというところだ。まだスコルツェニーは生きている時期に刊行されているので知っていても書けないだろうが、著者自身の「モサド・ファイル」に書かれているように「ヨーロッパで最も危険な男」は免罪と引き換えにしてエジプトのミサイル開発の情報を収集する為のエージェントとしてモサドが雇用していた。 ドイツ人に対する復讐物語はイスラエル建国に際して故郷を去る羽目になったパレスチナ人がイスラエルに対する報復と重なるはずだが、「イスラエルの安全に対する邪悪なテロリスト」としてモサドの暗殺対象になった本を書いたのだから思い浮かばないだろう。この本が出た時期ならばPLOのゲリラ闘争だ。 | ||||
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マイケル・バー=ゾウハーさんの本で、訳が広瀬順弘さんです。 ナチのユダヤ人虐殺にかかわった人間、主にSSの人間を、戦後、ユダヤ人が復讐していく、という話です。 ユダヤ人たちは、組織だって復讐しています。 一方、SSの人間たちも、戦争の趨勢が負けに傾いたころから、脱出するルートは構築していたようで、主に南米アルゼンチンあたりに逃げるケースが多いようです。 ユダヤ人たちは組織で追いつめていくわけですが、もちろん逃亡先の政府が認めるわけはなく、逆に犯罪者として逮捕されてしまうかもしれないわけで、なかなかスリリングな展開になります。 主に、有名無名のSSを、「こういうふうに殺ったった」という話をあつめた本なので、一貫したストーリーがあるわけではありません。 インタビューをもとに構成した感じがする本です。 しかし、ユダヤ人たちの執念深さというか、追い込みかたってのが、すげえなぁ、と思いました。 もう逃げようがないなぁ、なんて思ってしまいました。 ただ、アルゼンチンは親ナチで、南米にはいくつか親ナチの国があったようで、そこいらへんにたどりついて、つつましく生活していれば、バレないかもしれません。 とはいっても、常に「追われる」身であるのは、つらいでしょうが。 それにしても、ナチの残虐行為をおこなった人間が、のうのうとまだ生きているかも、というのは、ちょっと怖いですよね。 また、逃げている人間も、「ナチの教えは正しかった」と宣伝していたりして、ナチの思想から抜け出てないのが、恐ろしいです。 | ||||
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筆者の気持ちは痛いほどよくわかる。イスラエルが過激なのはナチスによるユダヤ人へのジェノサイトからくるものなのか。素晴らしい本。 | ||||
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