(短編集)
夜更けのエントロピー
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夜更けのエントロピーの総合評価:
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全1件 1~1 1/1ページ
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すみません、短編集をこちらの手違いで長編で登録してしまいました。 | ||||
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SFの名作 ハイペリオンの、そしてジャンルを超えて最高の作品を生みだしつづける巨匠ダン・シモンズの短編集。 デビュー作である「黄泉の川が逆流する」、現実と非現実を見失い...「ベトナムランド優待券」、チャウシェスク体制下前後のルーマニアを舞台にした社会派であり吸血鬼&HIVモノ「ドラキュラの子供たち」、はさみこまれる過去のエピソードに不安定になりながらも、さわやかに終わる表題作「夜更けのエントロピー」、かつての教え子ケリーを殺すため異世界を独り追跡する美しい作品「ケリー・ダールを探して」、かなり強引な設定(ゾンビ学園モノ)だがしっかりと読ませてしまうその技量にも驚く「最後のクラス写真」、バンコクのじっとりした湿度と熱気を追体験できる奇譚「バンコクに死す」の7編。 良質のホラーでありファンタジーでありSFでありミステリであり...ただただ素晴らしい作品。 【 ただ作品の多様さとは裏腹に、使っている題材はわりと共通するものが多いのもシモンズの特徴です。本書の各作品も、ゾンビ・吸血鬼・ベトナム戦争・エイズ・教師・保険といったキー・ワードの組み合わせで括ることができます。もともとホラーでデビューした作家ですから、吸血鬼やゾンビはなじみ深いがジェットなのでしょう。ベトナム戦争とエイズを取り上げるのは、この作家の社会的な関心を示しています。教師が主人公になる作品は、自身の教師生活を繁栄していると考えられるでしょう。保険に関する話は、保険調査会社を営む弟のウェイン・シモンズから仕入れているようです。そうしたテーマがあるいは絡まり合い、あるいは独立して、味わいの異なる七つの作品に結実しているわけです。】 | ||||
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SFは食わず嫌いな自分だが、シモンズ作品は「ザ・テラー」以来二度目の挑戦。 その結果→素晴らしいの一語に尽きる、という余りに月並みな感想を抱く。ここ数年作品が出ていないようだが、ご本人はどうしているのだろう?などと思いつつ、各編の印象を勢いで書いてみた。 「黄泉の川が逆流する(The River Styx Runs Upstream)」 いつしか足元に忍び寄る崩壊を、子供の目線で描いた短編。デビュー作とは思えない中身もさることながら、自分の心を掴んだのはこのタイトル。これだけでもう、名作だ。 「あってはならない事が起き続ける世界」をこれ程まで端的に表現したタイトルは(自分の知る限り)思い浮かばない。 目に見える死を、生きている限りずっと見続けなければならないのは死ぬよりも辛い罰なのだ。 いかにも60年代ぐらいのくすんだ映像に、赤いコートがぼやけて見える。意思も何もなく、ただ着ているだけの赤。たぶんこの先いついつまでも着ているのではないか? 「ベトナムランド優待券(E-Ticket to ’Namland)」 未来のベトナムでは戦争そのものをテーマパークにして、観光客を集めている。映像技術を駆使したサバイバル・ゲームは、老若男女に大人気!プラスチックのライフルで参加だってできちゃう! シモンズの想像力は豊富な知識に裏付けされたものである事は間違いないが、「知っている者」と「知らない者」との違いが残酷だ。 ディサンティスじいちゃんがまっすぐ家に戻らなかった理由を、家族さえ分かってあげられないのだから。 「ドラキュラの子供たち(All Dracula's Children)」 昔TVで観たチャウシェスク夫妻の銃殺体が、いかにも荒涼と、風に晒された雰囲気だったのを思い出す。 直後のルーマニアでは、大勢の子供の命さえ荒涼の中に晒していた(今どきの育児放棄がまだまともに見える位!)のだが、その遠因が実は…という話。 タイトルの「ドラキュラの子供」が何を意味するのか、それは読んでみなければ分からない。 しかしシモンズという人は「場所の空気」を表現するのが本当に上手い。「ザ・テラー」では船舶の専門用語が多すぎて辛かったが… 「夜更けのエントロピー(Entropy's bed at Midnight)」 涼しいコロラドの山中には長いレールのアトラクションがあって、カートで滑り降りることが出来る。幼い娘がそのカートに乗りたがってお父さんにせがむ。でもお父さんは、娘が心配でたまらない。 エントロピーという言葉の意味を説明するのは自分にはとても難しいが、トマス・ハリスの「ハンニバル」では儚い希望を託していたのを思い出す。お父さんは保険会社を運営していて、いろんなケースをオレンジファイルに保管している。けれどどれだけ保険をかけたところで、未来の保証は誰にもできない。 お父さんの心情と、保険をめぐるケースとのギャップが面白くてつい引き込まれた。とりあえず、車を出すときには十分注意しなければ。 「ケリー・ダールを探して(Loockin for Kelly Dahl)」 その女の子には、家族に顧みられない投げやりさがあった。けれど、優れた直観知を備えた子でもあった。 何の因果か、かつての教え子を探して時空を彷徨う羽目になった教師の物語は、短いながらもスケールが大きい。100万年前、数億年前、今自分が暮らす場所はどうだったのか?今そんな事に思いを巡らす余裕なんて、あるだろうか? 長い長い年月の中、本当に大切な一瞬を誰が掴めているだろうと思わされる。 しかし野外学習楽しそうだなぁ。参加できるものならしてみたい。 「最後のクラス写真(This Year's Class Picture)」 ゾンビものの筈が、無償の思い遣りに胸ふさがれる。もと教師だった体験がシモンズの中で生きたのだろうが、その仕事がどれだけ多面的であるかを垣間見た気にもなった。周囲の人が子供に与える影響の大きさは、良い意味でも悪い意味でも重大なものだということに。 勿論現実には子供自身の回復力もあるので、ことさら悲観しなくてよいこともある。 けれど、ゾンビと化した子供たちの中にあるものを求めるのは、神の啓示を待つことにも近い。 「バンコクに死す(Dying in Bangkok)」 想像を絶する着地点。 何故人々が大枚(タイ米ではない)をはたいて「その場所」を訪れるのか、モチベーションが突飛すぎて理解できなかったけれど、まぁ勝手にやってくれとしか言いようがない。本当に自己責任でどうぞ、の世界。 この物語は主人公が目指す着地点があって、初めて成立している作品なので、やがては「その場所」の空気も存在も、どうでもよいことになってしまう。 長くなってしまったが、ほかの「奇想コレクション」もぜひ読んでみたい。 | ||||
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兎に角各短編で取り扱っているテーマが幅広い。戦争、ホラー、SF,ファンタジーとやたら色々手を変え品を変え読者を翻弄する。それもただ扱っているだけでなく全て佳作から傑作になっていて凄い。特に状況描写にその才能を感じました。例えば舞台が東南アジアになったら東南アジアの雰囲気が如実に伝わってきたり舞台が東欧になったら東欧の薄暗さが伝わってきたり山岳地帯の話になったら山の空気が伝わってきたりとその才能をキングが畏怖するだけのことはあるなと感じました。 読んだ人それぞれ面白かった作品が違うと思いますが、個人的な白眉は「黄泉の川が逆流する」。デビュー作で(多少手をいれたそうですが)これだけの物を書いたのは驚嘆に値する。 ホラー、SF、ファンタジー、クライムノヴェル、戦争小説、スリップストリーム、何でも書ける本当に天才に思える作家の格好の短編集。この人を最初に何を読むか迷う人はこれからがいいかも。 | ||||
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2003年発表の日本オリジナルの短編集。全体的にお話は陰鬱で一気に読み通すのには疲れます。、のような、小学校の教師であったダン・シモンズが妄想した驚異で悲しい物語たちといった趣ですね。 | ||||
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この作家さんの本はこれが初めてなんですが、この本に限って言えば、ちょっと表現がグロテクスで読み慣れない女性にはきつかったりもします。でも人間の闇というか残酷な一面を描く力はある人なのでしょう。 タイトルになっている「夜更けのエントロピー」は皮肉っぽいユーモアの表現の上手さがあったし、「ケリー・ダール」はグイグイひっぱる力があるし、「最後のクラス写真」は読み始めからは想像もつかない温かい気持ちにさせるし、確かに不思議な気持ちにさせる作品群と言えるでしょう。ただ、自分の本棚に置いておきたいかと問われると・・・NOです。 | ||||
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