邪眼: うまくいかない愛をめぐる4つの中篇
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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初めて読む作家だったので、期待して読んでみたのですが・・・。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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確かに面白いが、主人公の心情やその先に起きるであろう出来事を想像すると読むのが辛い。面白いし、描写も深い。本当に自分で経験した、もしくは鋭く世の中を観察した事から描かれているんだろうと感じる。近頃日本で流行ってる読みやすい小説とはレベルが違う。好きな人は大好きなんだろうと思う。でも自分は、読むのが辛かった。 | ||||
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ジョイス・キャロル・オーツのいいところは、たぶん肝心要の部分を事細かに書かずに読者の想像力に委ねるところだと思います。なんだろう、どうしたんだろうと読み進めても、結局よくわからないまま終わってしまい、そのぶん、どの作品も余韻に浸れます。暴力的なシーンが多く、芥川賞をとった田中慎弥の『共喰い』を思い出しましたが、外国人の作家には珍しく、日本文学のような人間のどろどろした心の奥底を描くのが上手な作家だと思います。 | ||||
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副題(原題の副題の直訳でもある)に「うまくいかない愛をめぐる4つの中篇」とある通り、表題作を含む4つの「愛の物語」を収録した作品。しかし、本作における「愛の物語」には"あちらの世界"の住人が登場する。その意味において、「愛と狂気の物語」と言って良いだろう。 冒頭に置かれた表題作の出来は秀逸。ある有名人の四番目の新妻となった女性の恐怖と絶望とを描いた中篇。異国の仮面、突然訪れた最初の妻の義眼なしの右目(があった筈の)の眼窩等の小道具の使い方の巧みさ、女性が夫の狂気に次第に気付いて行く過程の木目細かい描写、更に、その過程に織り込まれる夫のおぞましいエピソ-ドの造形等、読み応えタップリである。夫の狂気に気付きながらも離婚出来ない女性が取るラストの行動も皮肉が効いている。しかし、残りの三篇の出来が頂けない。「すぐそばに......」はロリコンのストーカーを描いただけで、新鮮味が全く感じられない。「処刑」はサイコ・キラーの青年の視点で描いたスプラッタものだが、これまた何の工夫もなく単調で、退屈感しか覚えなかった。「平床トレーラー」は前二篇よりは出来は良く、ある女性の性的トラウマを描いた中篇で一応読ませるが、もう少し工夫が欲しかった所(女性が読むと、もう少し評価が高いかも知れない)。 表題作レベルの中篇を並べて貰えると文句なしの傑作と言って良い作品だが、残りの三篇が足を引っ張っている。作者の作風は広く、作品数も多いので編集・企画によっては傑作中篇集になったかと思うと残念である。 | ||||
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昨今の北欧ミステリーの翻訳本は、良作ぞろいだが、どうしても長編になりがちだ。 著者は、アメリカ・ゴシック・サスペンスの女王であり、ノーベル文学賞有力候補との紹介だったが、 そうしたことよりも、中編4編のゴシック・サスペンスの傑作という紹介と怪しいたくらみに満ちた自選中編小説集ということで、 購入してみた。 帯文のトップに大きく「死ね、死ね、マイ・ダーリン、死ね。」と書かれているが、直接的には4編の中の一編に出てくるものの、 すべてを読み終わってみると、この言葉が4編全部にある意味共通しているように感じる。 うまくいかない愛をめぐる物語ということだが、内容そのものは特に昨今の作品の衝撃的な内容と比べれば、それほど斬新というわけではない。 表題の「邪眼」は、不気味な展開ではあるものの、衝撃度では「処刑」が一番高いように思う。 人間の性格というものは、生まれながらの遺伝的性質、成育歴によって形成されたもの、現在の状況が複雑に絡み合って、 その時々の言動につながっているが、このあたりを感じさせる描写がこの著者はうまいと思う。 人と人が関わるときに、こうしたものが交差し、相互に影響しあい、時に思いもかけない現実の出来事が発生する。 これらの作品の後味の悪さは、主人公全員がある意味身勝手で自分を守ることしか考えていないゆえに 物語が展開していくことと、著者が幾重にも不気味に変わっていく人の心理を上手く描いているからだろう。 特に「処刑」の母親は、考えれば考えるほどに不気味で恐ろしいと思うばかりだ。 処刑されたのは、本当は・・・。 | ||||
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ノーベル文学賞の選択基準はよく分からないところがあるが、単なるエンターテインメントではない面白さ、という点では、ジョイス・キャロル・オーツはずば抜けている、というのが本書を読んでの感想である。たとえばスティーヴン・キングのある種の小説は圧倒的に面白いが、その面白さは限りなくエンターテインメントに引き寄せられるところがあるため、彼にノーベル文学賞が与えられないことなど容易に想像がつく。 私にとって、さほど面白くない小説を書く作家にその賞がもたらされることに格別関心がないが、オーツのこの短篇集を読むノーベル文学賞審査員が、もし○ではなく△か×の評価をするとしたら、それはこれらの作品が面白過ぎたためだろうと推測せざるをえない。つまりみずからおぼえた面白さを否定しようとする働きがそこにあるに違いない。 シャーリイ・ジャクスンとジョイス・キャロル・オーツ。共通するところがあるが、作品数において大きく異なり、前者は寡作、後者はおそろしく多作だ。ところで前者は今年生誕100年、後者はノーベル賞受賞のささやきにおいて邦訳が比較的集中しているのかもしれないが、どんな理由にせよ邦訳は嬉しい。前者においては少ない著作のすべてが、後者においては膨大な著作の多くが訳される日が近いかもしれない。 本書の標題作「邪眼」だが、ヒロインが結婚をする、おそろしく趣味のよい、というより趣味にうるさいエゴイスティックな男は、ヘンリー・ジェイムズの『ある婦人の肖像』に登場するギルバート・オズモンドに似ている。そして不気味な最初の妻はマール夫人に近いところがある。そうしたことにオーツは自覚的だと思うが、今度そのジェイムズ論もある彼女の文学評論集が訳されているので読もうかと思う。 | ||||
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