灰色の魂
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長編
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灰色の魂の総合評価:
8.55/10点 レビュー 11件。
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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第一次大戦のさなか、ドイツとの戦線に近いフランス北西部の小さな村が物語の舞台になっています。戦線に赴く兵士たちの隊列が通るいっぽうで、戦線から傷病兵たちが送り返されてくるという状況が村にあります。
そんな村のある厳しい冬のこと、町の食堂で親の手伝いをしていて皆によく知られた少女の絞殺死体が小川のそばの草むらで発見されます。いったいだれが殺したのか――小説の発端にあるその謎を謎のままにして「私」の語りのもと物語が時系列を行きつ戻りつしながら進行していきます。
検察官、判事、村長、反戦教師、女教師、語り手の妻、語り手の女友だち、憲兵大佐、脱走兵など――語り手の目に映じる数多くの人間たちが物語に登場してきます。そしてそのなかのほとんどの者が死んでゆきます。
この語り手はいったい何者なのか(小説なかばを過ぎたあたりでようやくだれであるかが明らかにされます)。
あるいは、それにしてもいったいだれが少女を殺したのか…(最初こうして一見ミステリーふうの小説のようにみえますが…)
物語のなかに次のような語り手による述懐が読まれます:
「人生とはおもしろいものだ(La vie est curieuse)。予告はない。選り分けることもできずにすべてが混じりあい、流血の時のすぐあとに恩寵の時が続く、そんな具合だ。まるで人間は道に落ちているあの小石のように、来る日も来る日も同じ場所にあったのに、放浪する男のひと蹴りで転がされ、理由もなく、空に向かって投げ飛ばされてしまうこともある。そして、小石に何ができようか?」(本書第XVI章より)
上に引用したのはこの小説に読まれるある一節ですが、最初の文を「人生とは怖ろしいものだ」という文に置き換えることもできるでしょう。そしてそのように置き換えれば、上の一節は、読者にとってこの小説の内容により符合するように思えます。
いっぽうでしかし、あまりに多くの目を覆うばかりの出来事が起こって自分もふくむ人間の人生というものを呆れたように突きはなしてながめざるをえなくなった小説の語り手にとっては原文どおり「人生とはおもしろいものだ」(「人生とはおかしなものだ」とも訳せます)というつぶやきのほうがふさわしいかもしれません。
なお、上の一節について本書訳文では「流血の時のすぐあとに恩寵の時が続く」とありますが、フランス語原文(Les moments de sang succèdent aux moments de grâce)どおりに訳せば「恩寵の時のすぐあとに流血の時が続く」です。究極はどちらも、「禍福は糾える縄の如し」みたいな、同じような意味に収斂するかもしれませんが、この節全体にあって、その文のもつ効果や印象はしかし微妙に異なるのではないでしょうか。つまり、ここはフランス語原文どおりに訳すべきではなかったかということです。