黒い壁の秘密
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ディクスン・カーならぬグリン・カーによる山岳ミステリ。 このジャンルに手を出すのは初めてで戸惑うと思いましたが、 純粋な本格フーダニットもので、すんなりと入ってきました。 他の方も書いているように探偵役リューカーのシェイクスピア引用癖が 病的なまでにちりばめられ、その数の多さに感心するよりも、むしろ 笑ってしまいます。ふざけているのか真剣なのかよく判らない言動に 好感が持てます。 レッドヘリングス(燻製ニシンと訳出されている)による目くらまし、 各人の犯行の機会(裏を返せばアリバイ)・動機のリスト、随所に 張り巡らせた伏線など本格テイストが濃厚です。 さらに、大昔ベント・ストーンで魔女集会(サバス)が執り行われていた というオカルト趣味も加味され、それを模倣する人物まで現われ、 物語に厚みをもたらしています。 リューカーの探偵法はきわめて古典的で、 事件全容を四つのグループにわけ、第一のグループから順にパズルのピースを 嵌め込んで行き、最終的に全体像を完成させるという形をとっています。 | ||||
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この手のモノは、だいたいが導入部の密藪を我慢するのが読者としての作法でしょうが、そこを抜けると、本書がミステリーであることを忘れさせてくれます。全編にあふれるシェークスピア劇の名台詞の数々、言葉遊びも少々、気の利いた台詞が地の文にも染み出したかのような「あれ?」と思わせる詩文調もたまに。そして、ヒースが転がる「荒涼として、でも孤独ではない」風景に遊ばせてもらいながらたどり着く結末。ミステリーとしてもちゃんと伏線を敷いた堅牢な造りだと思いましたが、いろいろに楽しめる出来映えになっていて、訳業にも目を瞠りました。 なかなか良書に恵まれない山岳ミステリージャンルにあって、原作者自身、ガイドブックの著作もあるようなクライマーで、かなりの多作家のようです(邦訳は今回が2作目)。ボブ・ラングレーとは違ったテイストですが、シリーズ中には「山度」充満の作品もあるらしく、この訳者の手で続編が訳出されることを待っています。 | ||||
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翻訳がうまい!→ 役者的な言葉づかい、時には時代がかった言い回しなどを効果的に使っているし、タイトルもキャッチー。 古さを感じることなく、面白く読ませて頂きました。 | ||||
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グリン・カー著、堀内瑛司訳『黒い壁の秘密』(創元推理文庫)はイギリスのミステリーである。主人公アバークロンビー・リューカーはシェイクスピア俳優である。各章の見出しはシェイクスピアの『リチャード三世』からとっている。主人公を始めとする登場人物の台詞にもシェイクスピアなど様々な作品の台詞が使われる。 それによって物語を芝居かかった雰囲気にしている。現代日本でもシェイクスピアを引用した『絶園のテンペスト』という漫画があった(林田力『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』「『絶園のテンペスト』復讐と魔法」)。既にイギリスでは1952年の段階で同じ効果を持つ作品が出されていた。 『黒い壁の秘密』は休暇中の旅行先で事件に遭遇する。巻き込まれ型はミステリーのオーソドックスな手法であるが、主人公が事件に遭遇する理由を偶然で済ませる安直な手法でもある。そのために唐突に事件が勃発するなど不自然な展開になるものもある。シリーズ物ともなれば、何故主人公の行く先々で殺人事件が発生するのか、という話になる。 この点で『黒い壁の秘密』の開き直りは清々しい。主人公は探偵役をやりたくてたまらない。だから事故に見えるような出来事も殺人事件ではないかと疑ってかかる。「素人探偵とは、魚などどう見てもいそうにない池にも釣り糸を垂れずにはいられない酔狂な釣り師」とまで言い切っている(81頁)。 『黒い壁の秘密』は第二次世界大戦終結から10年も経っていない時期の作品である。戦争の記録も遠い過去にはなっていない。物語中で人の死に冷たい反応する人物が登場する。彼がそのようになった原因は「日本軍の手に落ちて、長いこと捕虜になっていた」ためである(98頁)。 日本軍の捕虜への非人道的扱いは小説世界でも常識になっている。アメリカのミステリーでも好ましいものに対する形容として「日本の捕虜収容所で何ヶ月も過ごした後の白パン」という表現が登場した(林田力『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』「『人形パズル』米国社会の精神風俗」)。日本の侵略戦争を美化する右翼的言説に対してアジア諸国だけでなく、欧米からも強く批判されている。日本軍の非人道性は欧米社会の奥深いところで認識されていることを理解する必要がある。 肝心のミステリーとしては真犯人の意外性に驚きを覚えるか、後半から予想できたとするかは意見が分かれるところである。少なくとも真犯人の設定には物語の秀逸さを感じた。イギリスは階級が固定化された階級社会とされる。階級社会では貧富だけでなく、人間としての尊さや卑しさも階級で評価されがちである。 これに対して『黒い壁の秘密』は、その種の固定観念を吹き飛ばす真相が用意されている。現代日本でも卑しい地上げやゼロゼロ物件業者の黒幕が大手不動産業者だったということは珍しくない。『黒い壁の秘密』の真犯人設定には爽快感がある。 | ||||
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1951年の作品なので、非常にシンプルな内容。 最近ご無沙汰していましたが、クリスティなどのハヤカワ文庫の往年の愛読者としては懐かしくて、 逆に新しく感じました。 退役軍人の主人公や警察官の醸す空気や、パブやユースホステルの描写、007スカイフォールを思い出す自然描写、 シェイクスピアの引用がなくても、良質な舞台芸術を見ているような気分になる作品です。 | ||||
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