(短編集)
壁に書かれた預言
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英国現代ミステリー界に確かな地歩を築くサイコ・サスペンスの女王マクダーミドの珠玉の19編を収めた初短編集です。著者の本領は分厚い頁数の大長編小説にありますので、短編はどうかなと思いましたが幸い心配は杞憂に終わりました。意外性は少なめですが、現代社会が抱える犯罪事件の人間心理を赤裸々に描き、時にユーモラスに時に哀感を込めて、情感たっぷりに書き上げています。また描かれるテーマが多彩で、微笑を誘われる物、恐怖に背筋が凍りつく物とヴァラエティーに富み、一編が平均16頁弱と非常にコンパクトにまとめられています。それから、著者自身の私生活のパートナーが女性である事を反映して、各編に女性同士のカップルを多く登場させていて、普通の男女関係以上に自然で違和感なく作品に溶け込んでいます。私のお気に入りの作品を紹介します。『壁に書かれた預言』:トイレの壁に書かれた女達の悩み相談が気楽な掛け合いの応酬から突然恐ろしい結末を迎えます。狂気の現代社会が深く実感される一編です。『得がたい伴侶』:スーパーの毒物混入無差別殺人事件の犯人は?切実な社会問題が悲劇を生みます。『ビンゴ・ホールの女たち』:炭鉱の閉鎖に伴い家計を支える為に働く女たちを切り捨てようとする経営者を密かに懲らしめる痛快なピカレスクです。『残念賞』:全米図書賞の栄冠を直前に獲り損ねた男が悔しい思いに沈んでいた時に、慰めてくれた女性と一夜を共にします。物語は二転三転し、激情の果てに皮肉な結末が待っています。『恋人たちの末路』:慎重に選ばれた既婚の人気女性作家にネットを介して不倫を持ち掛ける男の真の目的とは?著者の本領が発揮された驚愕のラストです。 どの短編を取っても不自然でなく今を生きる私達にとって十分信じられる真実味に満ちた作品ばかりですので、本書をすべてのミステリーとサスペンスファンの方々に自信を持ってお奨め致します。 | ||||
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『殺しの儀式』、『殺しの四重奏』、『殺しの仮面』と、心理学者トニーと警察官キャロルが活躍するサイコ・サスペンスで有名なヴァル・マクダーミドの短編集である。私は、上記の各長編を読んで彼女の魅力に取りつかれたひとりだが、短編ではどんな趣向で楽しませてくれるか期待して読んだ。 本書は、’05年に一冊の本として刊行されたものだが、’89年から’04年までにいろんなメディアに発表された18編に加え、’04年に執筆した未発表の1編からなっている。 印象に残ったものをいくつか挙げてみると・・・ 「疾走」−愛車を盗まれた依頼人に一矢を報いた女性私立探偵・・ 「壁に書かれた預言」−恋人の暴力に悩む女性がトイレの壁に落書きをし、それを通して交わされる議論の果てに行き着いた先は・・ 「得がたい伴侶」−店頭の毒物混入殺人は、きわめて今日的・社会的な、意外な動機によるものだった・・ 「善意の罠」−海賊版ゲームソフトの出所を探るよう依頼された女性私立探偵がたどりついた皮肉な真相とは・・ 「恋人たちの末路」−メールを使ったラブ・ストーリーかと思って読んでいたら、最後に驚愕の結末が待っていた・・ 他の作品も、長編でみられるマクダーミドらしさがうかがえ、題材や語り口がバラエティーに富んでいるだけに新鮮さが感じられる。 この短編集の全編にわたって漂っているのは、いかにも女性作家らしい恋愛などの繊細な心理描写であるが、その恋愛も男女間にとどまらず、女性同士の同性愛にも及んでいるところも読みどころである。 ジェフリー・ディーヴァーの短編集が“どんでん返し”や“罠”をきかせた「動」であるなら、本書は“オチ”をきかせた「静」であるといえるだろう。 | ||||
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