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輪違屋糸里



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輪違屋糸里の評価: 4.31/5点 レビュー 71件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.31pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全71件 41~60 3/4ページ
No.31:
(4pt)

幕末は多くの女達がその歴史作りに貢献していた

特に、京において、祇園、島原等の花街の女達が、多くの義士たちの影となり彼らの活動を支えていたことはよく知られている。
だから、維新後、我が国の政治家の奥さんたちが、かつては花魁であったり、禿の時代からのつきあいだったような人物も多く見られた、と言う面白さがある。

そのような女性たちを扱った作品がないではないが、本作はその中ではぴか一のものだろう。
作者浅田次郎の幕末、特に新撰組モノと言うと、名作 壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2 があり、本レビューでもかなりその比較が言及されている。
本作で扱うのは、やはりあくまで幕末の京都の花街の一つ、格式高い島原の女性の世界であり、その彼女たちにとって、幕末は、勤王、佐幕の抗争はどうだったのか。彼女たち自身の生活にどう影響があり、彼女たちはどう見ていたのか。
このところ、幕末モノと言うと、龍馬を中心にやはり時代のヒーローにやたら目に行くようだけど、本当はその時代に生きた、ごく普通の人々、あるいは本作のように、それらヒーローのそばにいて彼らを時に支え、時に時代をともに作ったであろう女性たちに興味が行く。

浅田次郎の真骨頂の題材であり、フアンにはたまらないと思う。
若干この上巻では、舞台設定、モチーフ設定に時間が割かれ、話としていまいち面白くないかもしれない。
だけど、それは杞憂と言うもの。下巻に行けば、あぁ、と一気に読み進めるでしょう。
これはこれで、やはり浅田の代表的幕末モノと読んでいいと思いますね。
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
4167646064
No.30:
(4pt)

新撰組のことは何も知りません…

この題名でピンと来て、あるいは「壬生義士伝」からの流れで読んだという方々の中で、何だか肩身が狭い。
実は、新撰組については名前くらいしか知らなかった(笑)。
幕末もののドラマって何だか難しくて、子供時代からまともに見たことがなかったもので…。
だから沖田という美少年剣士がいた…くらいしか知らずに読んだ。
この本を読んでいる途中で、たまたま京都のガイドブックを見る機会があり、「八木邸」が載っててビックリ!
本当に八木さんだったんだ(笑)!
本当にいた人なんだ(笑)!
そんな素人でも、ちゃんと読めました。
様々な立場の女性の目を通してメンバーのキャラクターがくっきりと描き分けられ、これで私も芹沢鴨と土方歳蔵についてはある程度イメージが掴めたぞ!?
本当は「壬生義士伝」を読もうと思ったのだが、方言が読みにくいかな?と、何気なくこちらを手にとったのだが、「壬生義士伝」これから読んでみようかな。
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
4167646064
No.29:
(3pt)

期待していたよりは・・・

「壬生義士伝」で浅田ファンになり、ちょこちょこ著作を読んでいる者です。
しかし、同作を超えるものには未だ出会えず。
というより、同作が最高傑作のように思います(浅田氏の全作を読んだわけではありませんが)。

そして、「壬生義士伝」くらいの面白さを期待して読んでしまったのと、他の方も書いてらっしゃいましたが、芹沢鴨こそが真の武士だという持って行き方に同調できなかったため(そもそも酒乱で暴れるような自制心のない人に武士道が成立するのかと思う)、ちょっと厳しめの評価となりました。

主人公の糸里は、女の私からして見れば、何事も完璧すぎるほど立派な女性で、イマイチ共感までできなかった。

ただ、この作品で印象が180度変わったのが、お梅さん!!
菱屋の非道さには、言葉を失くしました。
単なる好色の売女に見えるお梅さんを、こう捉えることもできたのかと目から鱗。
小器用に見えて不器用な生き方しかできなかったお梅さんに、不器用な私は、とても共感しました。
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
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No.28:
(4pt)

霧につつまれたかのような冒頭部分!

『壬生義士伝』の続編と言われる本作です。

まず冒頭からしばらくは物語が霧につつまれたような状態で、全体像が見えないまま進んでいきます。
冒頭で芹沢がなぜこのように横暴に描かれているのか?
そんな芹沢が隊員から突き上げられないのは何故か?
島原の人たちがなぜこんな理不尽を飲み込んでいるのか?

疑問が解決されないまま本の半ばまできてしまいます。
(それでもこれだけ読ませる作者はすごいと思う!)

物語は、芹沢たちがお世話になっている家(2軒)の女房が隊員の一人を問い詰めたあたりから動き始めます。
序々にあきらかにされる、芹沢の動きの理由。

次第に明らからになる新撰組の動きと、とりまく勢力のそれぞれの意図がそれぞれしっかりとした一本の糸のように姿を見せ始め、絡み合い、思わぬ方向に持っていかれようとしています。

そこを照らし出すような糸里の台詞は、一言に体温が反映されたかのように物語に熱を加えています。

下巻が楽しみです!
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No.27:
(5pt)

ぜひ、読んでください!

女性が自分の意思で生きることが難しかった時代に
自分の運命を受け入れつつ、前進しようとする姿に感動を覚えました。

宮尾登美子さんの「蔵」の烈と同様に、悲しいけれど強く生きた女性の物語だと思います。

新撰組に関わる物語ですが、歴史が苦手でも読みやすい内容だと思います。
いつの時代にもある恋が丹念に描かれていて、せつない痛みが残りました。
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No.26:
(4pt)

壬生浪士を、太夫あがりの旦那にするわけにはいかぬ。

最初に小さな女の子が、島原につれてこられる場面で涙をさそい
次には島原の太夫の道中の瞬欄な画面に展開します。
この様子が華やかで、まるで映画でも見ているように描かれていています。

新選組の強面たちと、宿舎にわりふられてしまった壬生の郷士の女房たち
愛人となってしまったお梅、そして島原の天神
と、それぞれが告白するような形で一人称で語られていく様子が臨場感があって
面白く読み進むことができます。
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No.25:
(5pt)

女性の視点からの新撰組が魅力的

タイトルにもなっている輪違屋の糸里や新撰組が屯所とした八木邸のおまさ、前川邸のお勝ら、女性の視点を中心に描いた新撰組です。特に単なる悪役として扱われがちな芹沢鴨、新見錦、平山五郎の人物像が新鮮で、思わぬ一面にハッとさせられるものがあります(悪役のイメージがありますから、思わぬ一面は良い意味で、です)。純粋な美少年と描かれがちな沖田にしてもお調子者で描かれていて、こちらも面白い。
 
 女性の視点を中心にしていることから、刀と刀がぶつかり合う戦闘シーンというのはほとんどありませんが、芹沢一派を暗殺するまでの心理描写、駆け引きが巧みに描かれていて、物語に引き込まれます。結末は分かっていても、死んで欲しくないと思ってしまうんですよね…。

 新鮮で、とても魅力的な新撰組の小説になっていると思います。
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
4167646064
No.24:
(5pt)

新しい新選組!

凄くおもしろかった!「壬生義士伝」がすごくよっかたから、もしハズレだったらやだな〜と思ってたけど・・やっぱ浅田さんは凄いなぁ〜。
「壬生義士伝」では新選組の哀しさとか美点(?)の方が強調されていたけれど、こちらでは新選組の矛盾とか歪みが浮きぼりにされていて、よりはっきりと新選組という組織の姿が見えたし、今までの小説で描かれていていた新選組隊士とはちょっと違った新選組隊士が新鮮でおもしろく、特に独裁者でともかく悪、じゃない芹沢鴨とか、さわやかで近藤・土方を無条件に慕う、んじゃない沖田は他の小説にはないリアルさ、人間臭さがあって、確かに本物はこんなんだったかも・・なんて思えた。また、私は女性だから作品中の女性達からの視線には共感できる所も多々あって・・・あれ!?浅田さんは男性だよね?
また浅田版新選組が読みたい!今度は〜・・山南敬介脱走とかをネタにしたり!笑
今度も浅田さんの作品チェックを続けます!!
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
4167646064
No.23:
(4pt)

立派なお侍

淺田次郎による「新撰組」もの。
私にとつては、2002年に讀んだ「壬生義士伝」以來になる。

「壬生義士伝」では吉村貫一郎が、既成概念としての「新撰組」へのアンチテーゼとなつてゐた。
本書では、さうした存在は登場しない。
しかし、それでも從來の「新撰組もの」とは一線を劃してゐる。
それは何故か。

ひとつには、新撰組の外部からの視點、それも女たちの視點で新撰組を描いてゐること。
壬生の八木家の女房、おまさ。
八木家の分家・前川家の女房、お勝。
芹澤鴨の愛人、お梅。
そして、島原遊廓・輪違屋の藝妓、絲里。

この小説では、芹澤鴨が輪違屋の大夫、音羽を無禮打ちに切り捨てる場面から、物語が進行し始める。
音羽大夫は絲里をかはいがり、育て上げた大夫なのだが、その死に際して絲里に、云ふのであつた。
「だあれも恨むのやない。ご恩だけ、胸に刻め。ええな、わてと約束しいや」
この言葉が絲里のこころに染み入り、その後の絲里の行動を規定してゆく。

土方へ寄せる思ひから、芹澤斬殺に一役買ふことになつてしまふ絲里。
そして、そのことが成就したあと、土方が絲里に云ふ。
「俺は國に歸つて百姓をやらうと思ふ。一緒に來てくれまいか」
この言葉がどれほど絲里のこころを鷲掴みにしたか、想像するに難くない。
しかし、絲里は云ふのだつた。
「わてはわてにしかできひん生き方をしまつさけ、土方はんもさうしとくりやす。あんたはんは立派なお侍や」

「立派なお侍」、土方が命をかけて求め續けたのは、これであつた。
そして、土方は、こののちも、絲里の云ふ通りの生き方をしてゆくことになる。
男と女。
まつたく違ふものの見方をし、まつたく違ふ行動樣式をもつ、そんな2つの生き物が、お互ひを認め合ひ高め合ふ。
なんとも見事な小説ではないか。

さて、もうひとつ。
この小説がほかの「新撰組もの」と大きく違つてゐるのは、芹澤鴨の描き方だ。
これまでの「新撰組もの」では、芹澤は豪傑でこそあれ、思慮が淺く、酒を飮んでは町衆に迷惑を掛けるといふ存在であつた。
もちろん、彼の行動は事實として、この作品でも同樣に描かれてゐる。
しかし、その内面は、ナイーヴで花を愛し女を愛する男として描かれてゐる。
また、大和屋燒打事件についても、單なる芹澤の暴擧ではなく、會津藩の重役たちの示唆によるものだと暗示されてゐる。
この事件によつて、會津の藩士たちは歸國を途中でとりやめて京に戻つて來てゐるのだが、この事件は兵を引き戻す口實にするために起されたのではないか。
いはゆる「八月十八日の政変」に備へたものだといふ解釋がなりたつ。
もし、さうだとすれば、從來の芹澤鴨像は根柢から覆へることになる。
近藤勇も大和屋燒打については事前に知つてゐた筈だといふことだ。
そして、その嫌はれ役を芹澤が買つて出たといふことも考へられるのである。

「盡忠報國の士」としての芹澤鴨。
その芹澤を何故、土方たちは斬殺しなければならなかつたのか。
この小説では、その謎解きも興味深い。
しかし、じつは「謎」といふたいさうなものでもない。
土方歳三といふ人間がどういふ人間であるかが明らかになれば、この謎も自づから明らかにならうといふものである。

島原の桔梗屋には、絲里と仲のよい吉榮といふ藝妓がゐる。
彼女は、芹澤と一緒に斬殺された平山五郎の愛人であつた。
そして、平山が斬殺されたその場にゐて、しかも斬殺に一役買つてしまふのである。
死に望んで、平山はかすかに笑つて「おゆき」といふ。
「おゆき」とは吉榮の本名で、吉榮は平山にさう呼んで貰ひたかつたのだが、平山は一度もその名を呼んでくれなかつた。
それが最後の最後に、しかも自分が手引した連中に斬殺されたその時に呼んでくれたのだ。
悲しく、哀しい場面だつた。
かういふ場面を描かせたら、淺田次郎の右に出るものはあるまいと思つた。
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4167646064
No.22:
(5pt)

パターンとはいえ泣かされた

まず、真面目な時代劇です。笑える方のパターンの小説ではありません。

新選組を扱ったストーリーの中で、これほど女性を登場させたものはないでしょう。新選組という血なまぐさい集団を描く時、チャンバラシーンをここまで少なくした小説も希有ではないでしょうか。
また芹沢鴨を好意的に扱った本も少ないと思います。それでも芹沢鴨を排除しなくてはならなかった。
そこに関わる女性たちの運命。そして最後に泣かせ。パターンとはいえ、その泣かせに、はまった次第です。もちろん☆5つ。
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No.21:
(4pt)

人はいつの時代も・・・

まだ夜明け前だった日本の、風雲急を告げる京の街で、精一杯生きてそして死んでいった人たちの物語。島原という特殊な世界から出る事も許されないままアゲハ蝶のように色鮮やかに生きた音羽太夫や糸里天神も、幕末の時代に彗星の如く現われおびただしい血煙とともに消えていった新撰組やその隊士たちも、そして穏やかな日常だけを願いながら日々暮らしていた名もなき市井の人たちも、誰もが同一線上の主人公として描かれている。いつの世も、男がいて女がいて、欲があり願いがあり、そして人間はかくも哀しいものかと胸をつかれる。

混乱を極める幕末の京に、新撰組は時代の必然のように上ってくる。局長近藤勇も副長土方歳三も自身で意識する事もできないほど、深く重く武士という身分を渇望してやまない。一方で、時代の移ろいには何一つ関わりを持ちようもない芸妓・糸里は、貧しさから女衒に売られて以来、島原の小さな世界だけで生きている。そして、粗野で厄介者の新撰組隊士たちを養う事になってしまった八木家と前川家の人たちは、ごく普通の町人として歴史の片隅に生を営んだ。慕い、憎み、謀り、愛し、もがき、諦め、そして殺し、それでも時代の輪は決して廻る事をやめない。歴史というのは、光の当たる場所で演じる者たちだけが作り上げたものではなく、名前も残らぬ無数の人々によって、鍾乳石のようにわずかづつ確実に積み上げられてきたものだとしみじみ思う。

私はこの物語を新撰組ものだとは考えていない。特に新撰組だけが物語の中心にデンと据えられている訳ではないからだ。また同時に、輪違屋の糸里も主人公たり得ない。それぞれの身分に身を置く幾多の人々、そして動乱の日々、それこそがこの物語の真の主人公だという気がしてならないのだが・・・。
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No.20:
(4pt)

万人向けではないけれど

遅れながらようやく完読しました。

読みながら「何でこんな事に?」と悲しくてやりきれませんでした。

読んでいても、誰一人として間違っていないのです。しかし、みんながみんな少しの歪みに気付かず、結局は芹沢粛清しか方法がなくなってしまう。

女は、自分の幸せの為に運命に精一杯抵抗し、男は、見得と建前で本音を隠し、一度隠してしまった以上、二度と本音はさらせない。

これは、女性の為の新撰組小説の為、男性が読んでも「壬生義士伝」のような感動はないかもしれません。しかし、ひどい時代だからこそ時代に精一杯抵抗した女性陣には拍手を送りたいと思いました。それと同時に、非常に滑稽な新撰組小説としての側面も持ちます。時代と、建前に流され、それに抵抗したが為に、時代の道化となってしまった新撰組の第一歩と。
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No.19:
(5pt)

全く新しい「新撰組」小説

馴染みの新撰組のメンバーにも負けず劣らず、女性たちが活躍します。それだけに、ちょっと異色の新撰組小説です。

糸里、吉栄、お梅、おまさ、お勝、それぞれが、男たちに負けぬ存在感を示します。

この本の一つの見所、男と女の戦いは、女の逞しさに軍配が上がります。クライマックスでの糸里の啖呵は、読んでいて胸がすーっとします。そして、人間の愛憎から脱却し、芸の道に生きようとする糸里の心意気に胸を打たれます。

もう一つの対立の枠組みは、百姓対武士です。近藤勇派の百姓一派と、芹沢鴨の武士派の対立機軸です。近藤派は、「武士」になれぬ場所で足掻いています。そこを乗り越えるためには、芹沢鴨を打倒せざるを得なかったのでしょう。

この本で、おや!と思ったのは、芹沢鴨の見方です。永倉新八の口を借りて語る芹沢鴨像は、今まで読んできたような「悪人」ではありません。しっかりした考え方を持ったリーダーシップのある人物です。

いろんな意味で、全く新しい「新撰組」は、非常に楽しい作品でした。
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4167646064
No.18:
(4pt)

辟易、されど一読の価値あり

新選組、ちょっとかじったことがある人なら、このタイトルにグッとくるはず。

読み始めてみると、スタートから浅田節のオンパレード、正直辟易しちゃいました。

浅田流の芹沢像(酒乱の気はあるものの実は聡明で思慮深い、有名な大和屋焼き打ちも彼の深い思惑によるものだそうな)も個人的には無理があり納得しがたい。

土方・斉藤・永倉・沖田といった値千金のスター達もいま一つキャラが不鮮明、というか壬生義士伝のほどの輝きは感じない。

反対に、平山や平間・新見といった今まで描かれることが少なかった芹沢派隊士の描写は活き活きとしており、印象的。

物語の後半、主人公の糸里はもちろんのこと、桔梗屋吉栄、お梅、前川家のお勝、八木のおまさといったおんな達が紡ぎだしてきたサイドストーリーが怒涛の展開を迎え、一気に芹沢暗殺に向かって収斂していくところは大いに読み応えあり。

文庫版を手にしたあなた、決して上巻で断念することなかれ、だまされたと思って下巻まで読み進めるべし。

そうは言っても、芹沢暗殺後のエピローグでは、またまた始まる浅田節に再度辟易しちゃったんですけどね。
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4167646064
No.17:
(4pt)

外から「見た」新撰組

浅田氏の「壬生義士伝」が、新撰組に実際に入っていた男たちの語りや、その

身内の人たちの語りで構成された、内側から描いた新撰組だったのにたいして、

こちらの「輪違屋糸里」は、新撰組たちを寄宿させた町人やその女房、

隊士を愛した女たちなど、外側から見つめた新撰組を描いた作品である。

内と外、表と裏、というか。

土方を一途に慕うが、子ども扱いされているのが悔しい糸里。

隊士・平山五郎と夢のように幸運な両惚れ(両思い)の

間柄の吉栄、という、ふたりの遊女(といっても、吉原のように身体を売るのではなく

芸を売るのが基本らしい)たちや、寄宿先の気丈な女房・お勝やおまさ、

そして、芹沢の愛人で呉服屋の取り立ても自分で行く江戸前の女・お梅。

この5人の女性たちのキャラがすごくたっている。

そして、酒乱で乱暴だけど魅力的なこの物語の芹沢鴨は、浅田初期のヤクザものに

出てくるいい男の系譜に連なるアンチヒーローとして鮮烈な光と存在感を放っている。

「壬生義士伝」のような痛々しさ、せつなさは無いけど、荒々しさと破滅のにおいのする

男たち、彼らを愛する女たちの美しさに酔いつつ読める。
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No.16:
(2pt)

「壬生義士伝」でどれくらい稼ごうとしてるのか??

「新撰組」(筆者はこの表記を使わないが)を新しい視点で捉えた「壬生義士伝」は、確かに傑作であった。

 「新撰組」に何らかの興味があって、昔から「新人物往来社」などの書物を読んで来た人間には「拍手喝さいであった」。

 浅田次郎は「非凡である」!

 しかし、その後の「新撰組」を商売にした様々なガイドブックやサイドストーリーはちょいと調子に乗りすぎているのではないのか?

 出版者が悪いのか、拝金主義になった作家が悪いのか?
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No.15:
(5pt)

心に染み入る一品です

新撰組の物語には珍しく、「芹沢鴨の一味」それも女性の目から捉えた傑作。幕末という男が主役に躍り出ているこの時代を真摯に生き抜いてきた、女性の強さと内に秘めた儚さ、そして誰にも見せない弱さを浅田流の語り口調で切々と書き連ねられています。読む進めるほどに切なく、心に響きます。「だぁれも恨むのやない。ご恩だけ心に刻め・・・」。読破後はこの一言が胸に染み入ります。現代の人たちが無くしてしまった、大和魂と大和撫子の姿がこの物語には溢れています。現代の若い人達に是非読んで欲しい書物です。
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No.14:
(2pt)

散漫な印象

男に守らねばならないものがあるように、女にも守らねばならないものがある。ともすれば時代の流れに飲み込まれそうになりながら、彼女たちは自分の命さえ懸けてそれを守り抜こうとする。
新選組を違う角度からとらえ、違う解釈で描いた点はとても興味深かった。しかし様々なものを詰め込みすぎていて、的が絞り切られていないという散漫な印象が残る。ラストも何となく想像できてしまう感じだった。糸里についての描写も少ない。本の題名は、糸里のことを中心に書くという意味ではなく、何かの象徴ということなのだろう。
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No.13:
(4pt)

切ないけど女も意地があった

司馬遼太郎の「燃えよ剣」でいえば芹沢が切られるまで上巻の半分くらいまでの事を上下巻で書いているだけあってそれぞれの人物の心の中を深く書いていると思う。題名の糸里は京都の島原の太夫の名で土方を愛した女性。長兄が目が不自由だった土方が糸里の視力に気づきメガネを作ってもらう場面がある。見えない方がいいこともいっぱいあったと思う。その他に碧眼の平山の子を身ごもった吉栄、菱屋の妾で芹沢と一緒に殺されるお梅、新撰組に宿を貸していた八木源之丞の妻おまさや前川の勝もそれぞれの立場でこの時代を見てきた女性をえがいている。極悪非道の芹沢を会津の命でしてきたことし、また水戸の兄達が新選組から引き戻そうとした謀を土方らが見抜き、新見切腹へとするあたりは作者の芹沢贔屓が感じられた。
一緒に読んでいる夫が「昔の女の人は可哀相だったね」と言う。切ないと思うことはいっぱいあるが、土方の妻にならずに桜木太夫として生きる道を選んだ糸里、里子の申し出を断り 貧しくても自分で育てようとする吉栄に女の意地を感じた。
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No.12:
(5pt)

歴史で悪名を着せられた英雄

芹沢の名は、新撰組の中では悪名として扱われる。
しかし、その真実はどうなのだろう。
古来より、勝者側の視点で歴史は作られた。
大悪人として描かれれば描かれるほど大英雄であるかもしれない。
木曽義仲のように。
芹沢もそうかもしれない。
音羽大夫の斬り捨て。
大和屋へのゆすり。
語られる悪事が、実は別の意味を持つとすればどうなのだろう。
女は知っている。
彼らに抱かれながら真実を知る。
糸里は、真実を知りながら何も出来ない。
男は知っている。
真実を知り、それを知略に使う。
土方は、真実を知り、それを利用し、策略の根をはる。
血の匂いがする。
これから何が起こるのか。
只の史実だけでは終わらない。
もう一つの歴史がここにある。
輪違屋糸里 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:輪違屋糸里 上 (文春文庫)より
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