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東京影同心
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東京影同心の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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杉本章子の小説を初めて読んだ。紹介していた毎日新聞の書評は江戸言葉を使わせれば当代一のと形容と、幕末から明治への政治と世相の移り変わりを活写していると述べていたが、滑らかな江戸言葉に心が洗われた。 内容は、第一章 つかみぼくろ 第二章 ミルクセヰキは官軍の味 第三章 東京影同心 という3本仕立て。杉本さんは捕物帖というファンも多いらしく、これもそういう事件が2つ描かれてはいるが、どちらかと言えば、ちょっと硬めの人情話。金子弥一郎という16歳の同心見習いが、25歳で定周り同心になり、弟が彰義隊で死んで同心を辞め、明治になって恩義ある上役の仇討をするという間の出来事を描いている。 江戸の同心の普段の生活、付き合いの話、町方から迎えて嫁と武家の母との確執と、町方の商いの幕末から明治への移り変わりなど。知っていそうで知っていない話が散りばめられているが、主人公の周りで良い人々が次々と死んでいくのがちょっと悲しかった。世の中の移り変わりというのはそういうものかもしれず、仇討というような行為に至るにはそのような不幸の積み重ねという前準備がいるのかもしれない。 明治維新やその前の江戸時代については、最近は、教科書的な単純進歩的な評価から、もう少し多様な文化の継承や、そういう時代の文化的な遺産をどのように組み上げていけたkが話題になっているように思う。 革命があっても多くの人のその日の暮らしはそう変わらないものだが、一方で、自分が生きてきた60年ほどでも多くのことが変わってしまった。 国語学者の水谷静夫先生が自分の家は商家だったからということをおっしゃっていたが、金子弥一郎とともにしばし幕末の世を見ることができたのは、少し寂しさが残るがいい思い出だと感じた。 | ||||
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本書は幕末から明治期にかけての江戸・東京を舞台としています。 主人公は定町廻り同心の金子弥一郎。 当時の多くの武士の辿る道は駿府への移住、新政府への仕官、商売人への鞍替え等。 弥一郎はそのどの道もとらず、かと言って食いぶちも無いことから、かつての手下・金常が経営する料理茶屋の居候となり、自由な立場で新しい時代と向きあい、己の生きる道を探ることになります。 偶然の出会いがきっかけで新聞社に勤めることとなり、地方では新政府打倒を企て第二の維新を起こそうとする動きがあることを知ることになります。弥一郎自身もその動きに関わることになるも、自身の立場はあくまで政治的動きとは距離を置き、元上役の敵討ちをすることで武士としての生き方に区切りを付けます。 本書は幕末から明治にかけての13年〜15年程度の短い期間を時代背景にしています。 本書の魅力は、物語そのものの面白さもありますが、この時代の世相の移り変わりが弥一郎を通じて生き生きと伝わってくるところ。 江戸時代の武家のしきたり(「ねずみ」と言わずに「おふく」という等)、同心が手下に渡す手札の文言、陰扶持(家中の者が江戸で騒動を起こした際に裏処理してもらうため地方大名家が与力に払う賄賂)の存在等、江戸時代の慣習等を紹介する逸話から、明治の世に移り、市民が「治まる明(めい)」と陰口を叩いていた話、倒幕後も未だ攘夷を叫ぶ人々の存在、新しい役所の名称(「檀上台」「刑部省」等)は奈良平安のころの律令から持ち出されたこと等、この時代そのものを紹介する逸話がふんだんに盛り込まれています。 弥一郎と芸者の恋物語が物語に華を添え、読んで楽しい一冊となっています。 | ||||
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