同志少女よ、敵を撃て
評判
同志少女よ、敵を撃ての評価:
4.08/5点 レビュー 575件。 S ランク
Amazonレビュー一覧
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全677件 361〜380 19/34ページ
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同志少女よ、敵を撃ての評価:
4.08/5点 レビュー 575件。 S ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
アレクシェーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』や秋元健治『狙撃兵ローザ・シャニーナ』などソ連の女性兵士を描いた作品はいくつか出ていますが、戦争における女性、ましてや女性兵士の検証は圧倒的に少なく、かつ後まわしにされてきました。彼女らが差別的な境遇と闘ったのは戦時中だけではありません。戦後長らく偏見にさらされ、忘却のかなたに葬られんばかりでした。
歴史に詳しい人から見れば齟齬もあるでしょうし、小説好きにも不満があるかもしれませんが、いま、極東日本の若い男性が、膨大な資料と格闘してこの作品を発表した意味はものすごく大きいと思います。
他でもたびたび書いていますが、私はあの戦争の本当の検証はこれから始まると思っています。当事者は語りたくない、次の世代は親の苦労を目の端に入れながらも真逆の繁栄を謳歌、その次の世代は自己実現に夢中……。経験者の生の声が聞けなくなることは大きな痛手ですが、客観的に冷静に歴史を検証できるのはこれからの世代です。
それには、政府・民間を問わずあらゆる史料を駆使し、学術・報道のみならずフィクションの形でも闊達に発表されるべきでしょう。史実ベースのフィクションには膨大な調査・検証が不可欠です。すべて創作ならSFですし、検証の甘いものは自然に淘汰されていきます。たとえば幕末史観について大きな影響力をもった司馬遼太郎の作品。ちゃんと否定的な検証が起き、いまでは「史実とは異なるもの」として位置づけられていますよね。
細部に間違いがあるなら次の版で注釈なり訂正なりを加えればいい。そうした作業を続けながら、長く読まれてほしいと思います。
「なぜ日本人がソ連のことを?」という人がいますが、別にいいではないですか。いつかこの本を読んで自国の女性兵士のことに興味をもつロシアの少女がいるかもしれないし、何人であろうと世界市民の一人なのですから。
外国の、違う時代を背景にした作品は山のようにあります。そこに必然性を感じられないと言うなら、読書の醍醐味である「未知との遭遇」を放棄するようなものでは? 大阪の作者が北海道の調教師を描いたら「誰の心にも響かない」? 台湾の作者が京都の舞妓を描くことには「意味がない」?……バカげていますよね。
逆に考えたらどうでしょう? 日本人が日本のことを書いたら必ず読むでしょうか? たとえば沖縄の人々は、当事者として・ずっと・必死に・心の底から、声を発し続けています。同じ日本人である本土の人々はちゃんと聞いているでしょうか? 彼らの話など興味も持たず、揶揄するだけの人も少なくありませんよね。
届かないと怒る人は、聞かない人なのでは?
あの戦争はただひたすら重く暗く悲惨なものでしたが、今は戦争ドキュメンタリーさえ忌避される時代です。ただ重さ暗さ悲惨さだけを示すだけでは訴求力がありません。私も実話ベースの小説や映画で興味をもった史実は山のようにあります。歴史の検証には小説家の目が必要ですし、何よりも「他者の目」が必要です。
あのドイツでもホロコーストは長らく黙殺されていました。一部の幹部だけが悪い、市民は関係なかったんだと。しかしアメリカの放送局によるドキュメンタリー番組が契機となり、自らを省みる風潮に火がついたのです。日本の近現代史も検証するには海外の史料や新しい時代の視点が「絶対に」必要です。時に間違いやデマで撹乱されるとしても、他者の目を通して学び合うことには意味があります。
「本書は軽すぎる、ライトノベルにすぎない」などの意見もあるようですが、舞台を日本にしたらどうでしょう? ベタベタに持ち上げるか、逆にエンタメ性を批判してやれデマだと騒ぐか、いずれにしても「どこかで自分につながる話」を冷静に捉えられないのでは?
2022年のいま、極東日本の、1985年生まれの若い男性の作者がこの作品を書き上げた……これは必要な距離であり必然だったのかもしれません。地理的・時間的・感情的に距離があるからこそ全体を俯瞰し、なおかつ核心を射抜くことができる。そうした若い作者が育っていることが希望でなくて何なのでしょう?
……まずはご一読を。