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あなたはここで、息ができるの?



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【この小説が収録されている参考書籍】
あなたはここで、息ができるの? (新潮文庫 た 111-4 nex)

あなたはここで、息ができるの?の評価: 3.38/5点 レビュー 8件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.38pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(5pt)

ファンには聖典

難解だが、胸に突き刺さる言葉の数々。
そして最強のヒロイン。
まさに竹宮ゆゆこと言える作品。
あなたはここで、息ができるの? (新潮文庫 た 111-4 nex)Amazon書評・レビュー:あなたはここで、息ができるの? (新潮文庫 た 111-4 nex)より
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No.3:
(5pt)

信頼ならざる語り手による清らかすぎる恋愛小説

長年ライトノベルで培った経験が一般文芸に進出してもなお確実に生きている。ストーリーはバタフライエフェクトに賢者の贈り物を合わせたようなもの。あと叙述トリック。ただ竹宮先生の作品については全て言えることだが、もはやストーリーは重要じゃない。徹底的に晦渋を排除した日常言語で、心の深奥を抉るようにして掬い取る。そういった描出こそがこの書き手の強みだと思う。それは作品ごとに洗練されていく。それだけで、言葉の快楽に溺れてしまいそうだ。小説を読むということは、話の筋に目を奪われることではなくて、言葉の祝福を浴びることだと竹宮先生は知っているのだろう。いつまでも読んでいたいと思いながら一時間ぐらいで読み終わってしまった。すごく至福のひとときだった。しかし、先程ストーリーは重要じゃないとは言ったけれど、この物語自体はずいぶんとお行儀の良いものではないかと思う。他者を想うということが、自分を捧げるということになるというのはなかなか清らかすぎる気もする。他者を思い、所有欲から依存、破壊願望、そして慈しみ、帰依、信仰、献身とその辺りのグラデーションにもっとページを割いて欲しかった。いつかリミッターを解除した竹宮作品を読んでみたい。
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No.2:
(4pt)

「好き」という感情をパワーに変えた因果律の綱引き合戦!自分に正直な竹宮ゆゆこヒロインの究極進化型かも

自分の「好き」という感情に「どストレート」なのは竹宮ゆゆこの描くヒロインに欠かせない要素だと思う。泣きも喚きも大げんかもするけど、とにかく最終的には自分の惚れた相手に「私を惚れさせたのが最後だ」とばかりにまっしぐらに突っ込んでいくパワフルさが無けりゃ竹宮ヒロイン足りえない、と言っても良いぐらいに。

ライトノベルレーベルである電撃文庫から出発した竹宮ゆゆこが初めて出したハードカヴァーという事で「いったいどれ程のボリュームが?」と期待したけど、意外な事にこれが170頁しか無いので驚いた。が、読み終えてからもう一度驚いた。これってこのレビューの冒頭でつらつら語らせて頂いた竹宮ヒロインの「究極進化型」なのではなかろうか?

竹宮ゆゆこ作品を初めて読む、という方は序盤でチョイと面食らうと言うか「ナニコレ?」となるかもしれない。なんせ170頁しか無いのに最初の50頁は延々とヒロインである邏々の独白が続く。しかもこの邏々が五体満足であるならともかくも、ケモノ偏みたいなポーズで死にかけているのである。細かい事は書かないが、その死にっぷりといったら竹宮ゆゆこが時々やる割と容赦ないグロ描写がテンコ盛り。

その無残な状態の邏々が13歳の頃の回想で大学教員の母親に反抗期し始めたと思ったら、次に現れるのが「宇宙人」なのである。邏々いわく「私が愛する者の形」をした宇宙人がテレビの画面の中で「この世界の終わり」について語ったと思ったら空から降ってきた光線によって消し飛ばされる、その光景を見ながら邏々が泣き喚く……

……まあ、この辺りで「なんだこれは付き合い切れん」となってしまう読者もいるかもしれない。なんせこの諸々の情報が不足した中で切実そうに思える状況を描きながら、邏々と「宇宙人」が何をしているかと思えば、邏々が「ドラゴンボール」の世界で何に該当するかのまるで噛み合わない議論を繰り返したりするのである。

小生の様に竹宮ゆゆこを追いかけてきた読者であるなら、この凡そ訳の分からん展開にも我慢して付いていくのだが、慣れない読者だと割とこの時点で「合う・合わない」が分かれるかも。一般文芸に進出してからの竹宮ゆゆこはこの「少々とっつき辛い序盤」を入れてくる事が多くなったけど、その「序盤で割と人を選んでしまう」という部分が50頁続くので星を一個減じた次第。少なくとも「万人向け」とは言い難い仕様になっている。

が、このクセの塊みたいな序盤を潜り抜けてから始まる「加速」が実に素晴らしかった。邏々が高校一年の時に電車の中で一目見た瞬間に恋に落ちた他校の数日おきに髪の色が変わる三年生、萩尾健吾。彼とのドタバタしたちっとも素敵でない出会いから始まった5年にわたる邏々の恋の日々が綴られる。時にうまくいかない事もあり、不安に陥ったりもする。それでも自分の「好き」という気持ちだけは全くと言って良いほど揺るがない邏々の恋はまさに竹宮調。

が、本作のユニークさはこの綴られ続ける黄金の日々の中で事あるごとに件の「宇宙人」が現れ「これじゃダメなんだよ」と邏々に対する否定の声を挟んでくる所にある。そしてその宇宙人によるダメ出しは五年にわたる恋の日々がある一点に近付く程に頻繁になり、ダメ出しを拒絶するかの様に恋の日々をひた走る邏々に対して宇宙人の見せる絶望の色も濃くなっていくのである。

「宇宙人」が何にダメ出しをしているのか?邏々が宇宙人にダメ出しを出されながらも突き進む時間の果てに何が待っているのか?そもそも冒頭の不穏な状況は一体何だったのか?……加速しつつもある一点に向かって収束していく流れの果てに待っていた残酷な運命に息を飲んだ。まさに「理不尽」そのものであり、宇宙人が必死で訴えた残酷な運命の正体がこれか、と絶句した。

が、この物語のヒロインである邏々はその残酷な運命に屈しない。竹宮ゆゆこ史上最強のヒロインであり、ある意味一番「わがまま」なヒロインである邏々は運命を覆す。ただ一つの理由「健吾が好き」という自分の感情だけで全てを覆してしまうのである。ライトノベルであれば「紫色のクオリア」、アニメであれば「魔法少女まどかマギカ」の様な
宇宙を支配する因果律を無限のトライ&エラーの果てに覆す作品はままあるが、本作もその流れに連なっている。

邏々が貫き通した「わがまま」が正しいかどうかは分からない。そもそも個人の「好き」という感情が正しいかどうかなんて他人が決める事ではないのかもしれない。例えそれが「好き」という感情を向けた相手を悲しませる事になっても竹宮ヒロインの究極進化型はそれを貫き通す。因果律の綱引き合戦で「好き」という感情を無敵のパワーに変えて強引に運命の流れを「捻じ曲げて」しまうのである。

「好き」という感情を貫くのはどこかしら戦争みたいな部分があるし、それ故に竹宮ゆゆこ作品のヒロインたちは自らを装う事に余念が無いのだけど、まさか宇宙の因果律にまで戦争を仕掛けて、しかも勝つに至る……「好き」を貫くという形で勝ちを収める、ここまでやるヒロインを僅か170頁に収めてしまうとは思わなかった。

「好き」を貫く女の生き様を描いてきた竹宮ゆゆこ作品は遂にこういう形に至ったかと唸り声を上げざるを得ない、どうにも「わがまま」で、それでも憎めない竹宮ヒロインが好きな方にこそ手に取って頂きたい一冊である。
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No.1:
(5pt)

最後の2ページ、泣きました。

「とらドラ!」「ゴールデンタイム」の頃から読んでいますが、一般文芸に移り、女性視点で作品を書くようになって、文体の躍動感や迫力が増した印象です。読んでいて、どんどん惹きこまれます。
今回は初の単行本というだけあって、分量は短いながらも読みやすく、最後は思わず涙の展開でした。
竹宮版「時をかける少女」といえる物語です。
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