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(短編集)

緋の堕胎: ミステリ短篇傑作選



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【この小説が収録されている参考書籍】
緋の堕胎: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)

緋の堕胎: ミステリ短篇傑作選の評価: 4.29/5点 レビュー 7件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.29pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(3pt)

お腹いっぱい

戸川昌子は長編を5冊ほど読んだが、やはり圧倒的に『大いなる幻影』が素晴らしい。あとはまあそれほどでも…というのが正直な感想だけれど、余人をもって代えがたい凄みのある作家だとは思う。

この短編集もそんな感じである。官能ミステリといえば聞こえはいいが、要するにハードな下ネタのオンパレードだ。そういう意味では凄みしかない。恐れ入りました、もう帰っていいですか? という感じだ。

○○(一応伏字にしておきます)を搾り取ってチーズやヨーグルトに混ぜるとうまい、というような発想には紙一重なものを感じてしまうが、戸川昌子というキャラクターをテレビなどを通して知っていれば、ギリ許容範囲だろうか。

とはいえ、もうお腹いっぱいだ。げっぷが出るほど味わった。この人の場合、早々に作家活動を辞めて、シャンソン歌手やタレントとして活躍したのは、結果的に正解だったろう。自分で引き際がわかっていたのだと思う。
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No.6:
(5pt)

日本文学史に残る鬼才

粒よりの短篇集。人間の性を正面から扱い、奇想とも言える発想と想像力で構築された物語は、芸術的な宇宙を形成している。女性の性と子宮を中心とした女性しか描けぬ官能の機微は、おそらく古今類を見ない。驚くべき日本文学史における精華だ。
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No.5:
(2pt)

駄作!!

著者の個性がすっかり出ていた。個人的にはこのような内容の本は超苦手!!
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No.4:
(5pt)

血生臭いエログロ幻想譚

竹書房文庫の「くらげ色の蜜月」を先に読んだが、日下氏の戸川昌子短編集は、こちらが先だ。散逸しやすい短編をまとめて復刻してくれるのは、大変ありがたい。

本書も傑作ぞろいだった。性愛絡みのねっちりした幻想譚を堪能した。
ストーリーを語るとネタバレするので、ごく簡単に触れる。
表題作は、堕胎専門医の陰惨な活動を背景に事件が起こる。
『嗤う衝立』四肢欠損者のセックスを扱った問題作だ。
『黄色い吸血鬼』ぼくは施設に収容されている。生活が保障される代わりに、吸血鬼の求めに応じて血を吸い取られる。売血が金になった時代だ。たしかモデルになった事件があったような。
『降霊のとき』は降霊術がテーマだ。『誘惑者』も吸血鬼ものだが、プロットが凝っている。
『塩の羊』はフレンチグルメ猟奇譚だ。美味くても食べたくない。

『人魚姦図』人魚エロスに憑かれた男の話だ。人魚は大切な所が魚なのに、なぜかエロい。少し気持ちがわかる。『蜘蛛の巣の中で』植物状態の妻を妊娠させるのは、罪なのか。
『ブラックハネムーン』新婚初夜の夫婦を悲劇が襲う。「蜘蛛の巣」と「ブラック」は証言者が信用できず、どこまでが真実かわからない。不快な味わいが、気持ちいい。

解説にあるように、作家としての根幹が山田風太郎に似ている。山風ファンは必読だ。
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No.3:
(5pt)

戸川昌子ルネサンス

いずれの作品もきっちりまとまり無駄がありません。
戸川昌子がこんなに面白かったとは!
他社からも短編集の刊行があるそうなので楽しみです。
東京創元社あたりで文庫版全集を企画してくれないかな。
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No.2:
(5pt)

奇想と官能のミステリ集

『緋の堕胎』…グロい。胎児をあたかも汚物のように処分する残酷さに、登場人物たちの利己的で欺瞞にみちた心理描写がかさなり、救いようのない醜悪さがある。結末に向けておぞましさのボルテージをスリリングにあげてゆく展開は、迫力にみちて圧巻。サスペンスミステリというよりサイコホラーの趣き。

『嗤う衝立』…片足を切断して入院する男。その同室の患者のベッドで、毎夜くり返されるあやしい性戯。背徳的な心理と官能の描写にどんどん読まされるが、結末は「そんなことやるものかな?」と、やや首をかしげる。

『黄色い吸血鬼』…不気味に倒錯した闇夜の幻覚のような物語に、日の光が射して現実の輪郭が明るみにでてくるにつれ、吸血鬼の意味とその残酷さが知れ、冷ややかな恐怖がにじんでくる秀作。

『降霊のとき』…霊媒師の手伝いをしていた女が、主人の留守中に客からの依頼をうけ、まねごとに降霊をするうち、本当に霊に憑依されてしまう…。淫猥な降霊シーンと皮肉な結末が印象的な作品。

『誘惑者』…軽井沢を舞台にした、幻想的で悲劇的な吸血鬼ミステリ。雰囲気満点のゴシックホラーを読むような楽しさがあった。

『塩の羊』…行方不明となった女子学生の調査に、日本人警官がおとずれたフランスの地。淫靡な空気が立ちこめる料理店と修道院を舞台に、大戦中の日本兵による残虐な集団強姦の事実が、彼の前に浮かびあがってくる。

『人魚姦図』…水族館の水槽でくり広げられる、人魚と人間との禁断の交尾実験の顛末とは…。

『蜘蛛の巣の中で』…ひとりの家政婦がいくつもの家庭を転々としながら重ねる、ゆがんだ虚妄と背徳の遍歴。

『ブラック・ハネムーン』…新婚旅行でおとずれた南の島のホテルのベランダから、突然乱入してきた五人の暴漢。幸せいっぱいだった初夜は、悪夢の夜に一変する。

いずれも怪しい奇想と官能にみちた作品で、ページをめくる手が止まらない面白さがあった。
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No.1:
(5pt)

劇薬につき服用注意

中学生の頃に筒井康隆選のアンソロジーで表題作をうっかり読んでしまい衝撃のあまり、しばし唖然とした記憶が甦る。子供には刺激が強すぎたのだが、しかしその劇薬の成分量は今読んでも全く減じていない。
とにかくリーダビリティ抜群の筆力と奇想天外な発想は圧倒的。編者は解説で山田風太郎を引き合いに出しているが、虚無的で強烈な人間不信の念が感じられる点も両者は共通している。
全編、セックスが主題となった作品ばかりだが、人間の性にまつわる妄執やその業の深さに、作者自身が辟易し嫌悪感を抱いているのではないかとしばしば思わせるのが興味深い。
著者の短編を代表する恐怖ミステリの表題作、オフビートな吸血鬼テーマの「黄色い吸血鬼」、第二次大戦中の凄惨な悲劇「塩の羊」、極め付けの奇想小説であり残酷な結末が見事な「人魚姦図」、そして後味の悪さでは群を抜く「ブラック・ハネムーン」など傑作揃いだが、どれもこれも純真で性善説を信じる方にはお勧めしかねる。

【収録作品】
緋の堕胎
嗤う衝立
黄色い吸血鬼
降霊のとき
誘惑者
塩の羊
人魚姦図
蜘蛛の巣の中で
ブラック・ハネムーン
緋の堕胎: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:緋の堕胎: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)より
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