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(短編集)
声出していこう
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声出していこうの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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小さな町に住む、平凡な人々を主人公にした連作小説。 町で通り魔事件が起きたが、登場人物たちは、事件よりも日々の小さな事柄に頭を悩ます。 若い学生や中高年の主人公たち、自意識過剰で、少し情けないやつばかり。 通り魔事件の犯人探しの小説ではなく、一人一人に人生の物語として読み進めていきましたが、 読了後、もう一度最初からパラパラ読んで、ちりばめられたヒントを結んでいくと、カタルシスが!! 一つ一つは、コミカルで、ちょっぴりほろ苦い話でしかなかったのに、 すべてが見えてくると何ともやるせない気持ちになるようなお話で、全体が違ってみえました。 ここからネタバレ。。(本を読んでいない人は読まないで) 第一話主人公の同級生Nの父親は、第二話のN医師とすると、最終話で通り魔事件の犯人が若くて、犯行に使ったナイフを本に挟んで隠した、という記述から、本=N医師の著作であり、犯人はNだったと推測される。 Nは父親によって息苦しさを感じさせられており、父親の象徴である本に犯罪の象徴であるナイフを隠すというやり方で、自白する。こんな父親なら、子どもは鬱屈をためるだろうな、と、第二話で描写されている。Nの片思いの彼女は、Nの父親にとても強いあこがれを抱いていることから、Nも、父を憎むと同時に強く愛しているのだろう、とも想像してしまう。 また、N君の心許す友達(友達の方はそうでもないが、N君が友達に心許している様子は、N君は心の中をある程度さらけ出していることから推察される)の母親(ドラッグストア店員)が、事件に安っぽい好奇心を持っており、犯人が明らかになっても、下種な好奇心しか持っていない姿に嫌悪してしまう。 一話一話は独立しており、別の話ではどの登場人物なのかヒントしか出ていない。 作者も、読み手に犯人捜しを求めていないかもしれないが、犯人が分かると、 ちょっぴりコミカルでほろ苦いだけの話が、自分のことに必死で他人に無関心なところがえぐくて、笑えるどころではなくなった。 裏主人公とも言うべき、N君の話として読めば、また違って見えてくる話です。素晴らしい!! | ||||
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本来ここにいたはずのわたしと実際にここにいるわたしのギャップに纏わる著者お得意の結構イタイお話である。各話の最後の言葉が次話の冒頭で意味をずらして再現される(最終話は第一話のタイトル)という遊びもある。 「声出していこう」のシゲモチもしくはマサノリくん(中一)は、いまでは沈着冷静キャラを請け負った感があり、「シクシク」の辻村由季子さん(修学旅行に行く学年の高校生)は「あたしのことをどう思うかはあなたの勝手よ」的な何かを感じられる可愛さを最上とし、「みんな嘘なんじゃないのか」の最上幹基くん(二十歳)の将来計画とは三十歳までに北大のできれば法学部を卒業しロースクールを経て司法試験に合格し弁護士となることであったが、先々代の構えたラーメン屋で「息子としてではなく、バイトととして」働いていたし、「お先にどうぞ、アルフォンヌ」の安西奈緒美さん(三十歳)は半年前の十月二十日の「事件」以来、なにもかもが悲しく、辛く、そして、虚しく、「大きくなったら」の工藤泰介さん(四十六歳)は、ざっと四十年前には、ほぼ世界中の国旗と国名と首都を覚えていた、なんにでもなれる「ぼく」だったのに、今では両親の「爺さんの財産ぶんどり大作戦」の一味に加わり喫茶店で雇われマスターをやっていたし、「就中――なかんずく――」の倉持のぶ子さん(五十歳)は「じぶんのことを、ふつうよりもちょっときれいで、ふつうよりもちょっといい女で、ふつうよりもちょっとモテると思ってる」と偶然スナックに居合わせた他話の登場人物たちに見透かされてしまっていた。 各話でフューチャーされる人物が被さって重層構造になっているのも朝倉氏らしい。 | ||||
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