(短編集)

これはペンです

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

これはペンですの評価:

3.43/5点 レビュー 21件。 C ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.43pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全26件 21〜26 2/2ページ
No.6
(4pt)

テキストからもらう自分の反応を楽しむ読書

五感が重なる共感覚のようなあるいは多重の意識をコントロールするような、常人と異なる言葉の感覚を、をあえてテキストだけで伝えようとしているようです。 安易にナンセンスだと断じるよりも、これが腑に落ちるごく僅かな人たちのために小説を書いているのかな、と感じました。 屍者の帝国、の他人のテキストをイタコしている円城塔よりも(全く否定の意図はなくむしろ感謝した口ですが)、こちらがやはり本領ですね。 テキストからもらう意識の反応が素敵な読書時間でした。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614
No.5
(5pt)

非常に興味深い作風

著者の作品に接するのは、「オブ・ザ・ベースボール」に続き、2冊目。
「オブ・ザ・ベースボール」収録の【つぎの著者につづく】を読んだ時、著者は理系出身であり、テーマを数学的な論理思考で解明しようとしているのではないか、という感想を抱きましたが、本書収録の2つの作品を読んで、その印象をますます強めました。

【これはペンです】
第145回芥川賞候補作となりながらも、出席選考委員の9人中、4人が「積極的な反対」をしたとされる本作品、どんな作品かと興味津々でしたが、個人的には、よく出来た作品と評価しています。
「論文の自動生成プログラム」と「自動生成された論文かどうかを判定するプログラム」を作った叔父の真の姿を追い求める姪の一人称で書かれた本作品は、【つぎの著者につづく】と同様、「言葉」がテーマ。
数学的思考で、次々と繰り出されるアプローチには、大いに感心させられました。

【良い夜を持っている】
最初、【良い夜を「待っている」】かと思ってしまいました。
【良い夜を「持っている」】のですね。
これは、「記憶」をテーマにしたお話。
見たこと、読んだことを決して忘れない「超記憶力」を持っていた父が亡くなり、その記憶のシステムを解明しようとする「わたし」。
最後から5ページ目に記された「記憶のシステム」には、目眩がしてしまいます。

「オブ・ザ・ベースボール」のレビューにも記載しましたが、著者の作品は、しばしば「文学作品」を評する時に言われる「人間描写の巧みさ」「人間の魂の叫び」などとは無縁の作品。
でも、テーマである「言葉」も「記憶」も掘り下げていくことで、「人間の本質」に迫っていくものではないでしょうか。
その意味で、「人間を描いた」小説になっていると、私は思っています。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614
No.4
(5pt)

小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作

作者の作品としては、「Boy's Surface」、「Self-Reference ENGINE」、「道化師の蝶」、「オブ・ザ・ベースボール」に続いて本作を手に採った。我ながら物好きとも言えるが、理数系人間のための小説を書き続ける作者には好感を抱いている。本作には表題作と「良い夜を持っている」の2つの中編が収録されている。作者の作品の一番の特徴は「読んでも理解出来ない」点にあると思う。その上で、「作品を産み出すチューリング・マシンは作者ではなく、読者の想像力の方」という独創的哲学の下で執筆している姿勢が伝わって来る。表題作はその独自の小説作法の一部を解体して見せた(チューリング・マシンが登場人物側にやや移った)感がある。

表題作は、「論文を自動生成するプログラム」及び「ある論文が自動生成された物か否かを判定するプログラム」を開発した幻の「叔父」の姿を追い続ける「姪」の手記という体裁で綴られる。ソフトウェアの世界では昔から"機械翻訳"という分野があり、R.ダールの短編には「小説の自動生成機械」を扱った話が出て来るが、その辺は充分承知の上で、小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作だと思った。相変わらず、輪廻(に代表される位相幾何)の構造が埋め込まれている(「「叔父」=「姪」」あるいは「「叔父」=「読者」」であっても構わない)。この手記自身が「小説の自動生成プログラム」によって作られていると仄めかしている辺り可笑しい。更に、「姪」の母が「誰にもわからないことを言い続けて何の得があるものかね」と呟く箇所では爆笑した。従来の、位相幾何学、物理学、計算(機)理論に加え脳科学(意識)にまで作者の守備範囲が拡がっている。「良い夜を持っている」は、絶対記憶力を持っていた亡き父(サヴァン症候群 ?)の思い出を"夢"を中心に綴った情緒的作品とも取れるが、表題作のモチーフの繰り返しとも取れる。即ち、AIの限界を小説風に論述した物という意味である。しかし、APLやアイバーソンの名前が出て来るとは驚いた(この文脈では普通はPrologだろう、APL専用キーボードのためか)。私事で恐縮だが、APLは私が最初に習得したプログラミング言語なのである。

数理をもって小説を構成する稀有な作家との認識を益々強く抱いた。今後も期待したい。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614
No.3
(4pt)

この本のジャンルは・・・、ペン?

この本は2作品で構成された作品で、1つめは「よく読むと意味の無い文章を自動で生成する装置」を開発した叔父とその姪との文通の話。2つめは無限の記憶力を持つ父と子の話。1つめは「よく読むと意味の無い文章を自動で生成する装置」を使って書かれたんじゃない?とも思わせる作品で、白い世界に閉じこめられた様な不思議な感覚を味わえた。2つめは、ふむふむなるほどという感想と、1つめと違い彩りある現実の舞台へ降りている感覚があった。疑問なのは、この話って装置を作った叔父とその父親の話なの?ってこと。だって2つの話を1冊にまとめてる訳だし。どうなんだろう。全体的な感想は、2つの話が合わさって、なんか鼻が通る感じを味わえて、素直な小説ではないけど、登場している人達が純粋で好感が持てる作品でしたよ。という感想です。星4つなのは、1つめの作品がスッキリしない点。でもそのスッキリしないのは、やっぱり装置で書かれた作品って設定だから?いや、でも・・・という堂々巡りをさせられて、そんな思考から抜け出せない。そんな風になりたい人にはお勧めかな〜。あと、この感想文は、驚くことにその装置を使って書かれていません!あしからず。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614
No.2
(4pt)

表題作より「良い夜を持っている」のほうがいいな!

名前は前から知っていたし、本も気になっていた著者の、
僕にとって初めての読書でした。
SFはそんなに読み込んでないけど、読みなれてないわけでもなく、
物理や数理は不案内でも小説として楽しむにはマストではないはず
とおもって買いました。

基本的にはすっごく頭のよい小説で、書いてあることを理解するのにも
それなりの苦労がいる感じの、嫌いじゃないタイプですが、
文章の自動生成を発明した叔父とのやり取りをめぐる「これはペンです」
はちょっと面白味がわからなかった(不明を恥じるべきなのかどうか
わかりませんが。)

でも、二つ目の「良い夜を持っている」は写真記憶をする父を描いて、
文章もやわらかくはないけれど、よくとがったシャーペンみたいな、
気持ち良さがあって大好きでした。
中身的にもこっちのほうが温かみがあって、テーマや筋がわかりやすい感じ。

読み終わってみると、どっちもどうしてかわからないけど、程よい距離感の
肉親の情みたいなものが残響的に残ってすごくいいんですけど、
表題作がもうちょっと読み物として面白いとよかったな、と思って
★4つです。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614
No.1
(5pt)

豊かな時間

円城塔氏の作品は、大部分が物理学と数学によって構成される。 この著作も同じ。 その分野に疎い私には、述語の意味が全く分からない。 それでも世界観は、何となく楽しめる。 では、あらすじを説明しろといわれて、はたと困る。 残ったものが表現できない。 では、読書の意味はなかったのか?そうではないと思う。 「なにも読まないこと」と「なにも無いことを書くことを読むこと」(スタニスタフ・レム)は全く違う。 円城氏の作品は、後者である。 そのような時間を生活から割けることが、豊かさなのだろう。
これはペンです Amazon書評・レビュー: これはペンですより
4103311614