(短編集)

伝奇集

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評判

伝奇集の評価:

4.12/5点 レビュー 41件。 A ランク

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平均点4.12pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全84件 21〜40 2/5ページ
No.64
(5pt)

なかなかです

読んでみました
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.63
(5pt)

なかなかです

読んでみました
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.62
(5pt)

ボルヘスという〈迷宮〉

.
ボルヘスという作家は、「読書家に憑く」という性格を持っているようだ。

その極端なまでに「肉質」を欠いた抽象性は、ふわふわとした「世俗的な夢」や「物語性」といった「生活世界の肉」を削ぎ落として、ストイックに錬成された重金属製のオブジェのごときものである。
「書物」「迷宮」「図書館」「螺旋」「宇宙」「幾何」「象徴」「薔薇」「神学」「異端」「探偵小説」あるいは「無法者」。それらは、私たちの有する雑味の多い「日常生活」とはまったく異質であり、縁遠いものと感じられるからこそ、私たちはそこに魅せられる。

「書物」だってそうだ。それは「書物」であって、「本」という言い方は、適切ではない。まして「書籍」などという野暮な言い方では、「書物」というものの孕む「無限性」は、とうてい暗示し得ない。

「無法者」もまた、純化された存在であって、「犯罪者」などではない。「犯罪者」は、生活の中における逸脱者だが、「無法者」とはそもそも「生活」という概念を欠く、「人間」ではない何かであり、だからこそボルヘスも、それに憧れることができたのだ。畢竟「無法者」とは、抽象的な存在である。

同様に、私たちはボルヘスの「小説」を読んでいるのではなく、ボルヘスの暗示する「小説」を夢想することに喜びを感じているのだ。その秘儀に参与できる「選ばれたメンバー」としての「読書家」であることに、無上の喜びを覚える。
ボルヘスは、私たち「読書家」を、「書物」の彼方の世界へと導く、盲目の司祭なのだ。

じっさい、彼のキャラクターは、ウンベルト・エーコの原作小説を映画化したジャン=ジャック・アノー監督の『薔薇の名前』に登場する、フェオドール・シャリアピン・ジュニアが演ずるところの「盲目の修道院図書館長・ブルゴスのホルヘ」をはるかに凌駕して、魅力的だ。
もしも『伝奇集』の作者が、エーコのような「気の良さそうなおじさん」だったら、ボルヘスの魅力は、間違いなく半減するだろう。ボルヘスが作品を書いたのではなく、作品がボルヘスをボルヘスにしたという言い方も、あながち転倒したレトリックだとは言えないのではないだろうか。

ボルヘスという作家の作品が「難解」だという読者は多い。だが、その「難解」という言葉が「面白くない」ということを意味して発せられたものなのだとしたら、その読者は「ボルヘスの読者」ではない。ボルヘスとは「難解な書物」であり、その「難解さ」は、苦痛ではなく、喜びなのだ。
名探偵が「難解な謎」に舌なめずりするように、「ボルヘスの読者」は「ボルヘスという迷宮」に喜んで踏み込み、踏み迷い、そしてぞくぞくとした快感に背筋を震わせながら「道に迷っちまったじゃねえか!」と、小さく歓声をあげるのだ。

言うまでなく、「迷宮」は迷うためにあるのであり、迷わない迷宮は迷宮ではない。また、迷宮を首尾よく脱出してしまったら、そこにはもう「生活」世界しか待っていないのである。当然、私たちは、そこで回れ右をして、もう一度、迷宮へと戻っていくはずだ。

そして、ボルヘスの迷宮とは、踏み込むたびに姿を変える、何度でも迷える迷宮なのである。

.
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.61
(5pt)

ボルヘスという〈迷宮〉

.
ボルヘスという作家は、「読書家に憑く」という性格を持っているようだ。

その極端なまでに「肉質」を欠いた抽象性は、ふわふわとした「世俗的な夢」や「物語性」といった「生活世界の肉」を削ぎ落として、ストイックに錬成された重金属製のオブジェのごときものである。
「書物」「迷宮」「図書館」「螺旋」「宇宙」「幾何」「象徴」「薔薇」「神学」「異端」「探偵小説」あるいは「無法者」。それらは、私たちの有する雑味の多い「日常生活」とはまったく異質であり、縁遠いものと感じられるからこそ、私たちはそこに魅せられる。

「書物」だってそうだ。それは「書物」であって、「本」という言い方は、適切ではない。まして「書籍」などという野暮な言い方では、「書物」というものの孕む「無限性」は、とうてい暗示し得ない。

「無法者」もまた、純化された存在であって、「犯罪者」などではない。「犯罪者」は、生活の中における逸脱者だが、「無法者」とはそもそも「生活」という概念を欠く、「人間」ではない何かであり、だからこそボルヘスも、それに憧れることができたのだ。畢竟「無法者」とは、抽象的な存在である。

同様に、私たちはボルヘスの「小説」を読んでいるのではなく、ボルヘスの暗示する「小説」を夢想することに喜びを感じているのだ。その秘儀に参与できる「選ばれたメンバー」としての「読書家」であることに、無上の喜びを覚える。
ボルヘスは、私たち「読書家」を、「書物」の彼方の世界へと導く、盲目の司祭なのだ。

じっさい、彼のキャラクターは、ウンベルト・エーコの原作小説を映画化したジャン=ジャック・アノー監督の『薔薇の名前』に登場する、フェオドール・シャリアピン・ジュニアが演ずるところの「盲目の修道院図書館長・ブルゴスのホルヘ」をはるかに凌駕して、魅力的だ。
もしも『伝奇集』の作者が、エーコのような「気の良さそうなおじさん」だったら、ボルヘスの魅力は、間違いなく半減するだろう。ボルヘスが作品を書いたのではなく、作品がボルヘスをボルヘスにしたという言い方も、あながち転倒したレトリックだとは言えないのではないだろうか。

ボルヘスという作家の作品が「難解」だという読者は多い。だが、その「難解」という言葉が「面白くない」ということを意味して発せられたものなのだとしたら、その読者は「ボルヘスの読者」ではない。ボルヘスとは「難解な書物」であり、その「難解さ」は、苦痛ではなく、喜びなのだ。
名探偵が「難解な謎」に舌なめずりするように、「ボルヘスの読者」は「ボルヘスという迷宮」に喜んで踏み込み、踏み迷い、そしてぞくぞくとした快感に背筋を震わせながら「道に迷っちまったじゃねえか!」と、小さく歓声をあげるのだ。

言うまでなく、「迷宮」は迷うためにあるのであり、迷わない迷宮は迷宮ではない。また、迷宮を首尾よく脱出してしまったら、そこにはもう「生活」世界しか待っていないのである。当然、私たちは、そこで回れ右をして、もう一度、迷宮へと戻っていくはずだ。

そして、ボルヘスの迷宮とは、踏み込むたびに姿を変える、何度でも迷える迷宮なのである。

.
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.60
(4pt)

懐かしい…?!

篠田一士『伝奇集、エル・アルフ、汚辱の世界史』 ボルヘス、集英社「世界の文学」、1978
 学生時代に夢中になって周囲にも勧めてみたが、だれも共感してくれずドン引きされた。とうの昔に絶版、忘却の彼方に去ったことすら誰も覚えていないと思っていたら、文庫やらなにやら一杯出てる。日本人というやつも案外話が分かるのかも。
 若いころはご時世のせいでマルエン・レーニンに非ざれば人に非ずで、ルカーチだデュクタオだ星埜惇だと手を出して、サルトル・カミユに入れ込んだりした。理屈は全部飛んで、残ったのは小説とマンガ。無人島にもっていくのはドストエフスキーとボルヘスになった。
 ボルヘスは笑える。ドストエフスキーも笑えるが、『白痴』みたいにたまにちょっぴりだ。ボルヘスは終始神妙な面持ちでボケまくるバスター・キートンみたいなもので堪らん。
 全然、作品の感想がないじゃないかって?ボルヘスは「最初から作品の解説を書けばいい」ようなことを書いていた。「解説」の説明と感想を書くわけ?
 ふと見ると、訳者が違う。鼓直氏は『ブロディーの報告書』くらいしか持っていない。ここ20年ほど「晴チャリ雨ネット」化して、本とマンガがネタ切れ気味。買ってみるか。
 追記…ひとまず持っていなさそうなのを4つ、古書で注文した。ブーム再来か?
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.59
(4pt)

懐かしい…?!

篠田一士『伝奇集、エル・アルフ、汚辱の世界史』 ボルヘス、集英社「世界の文学」、1978
 学生時代に夢中になって周囲にも勧めてみたが、だれも共感してくれずドン引きされた。とうの昔に絶版、忘却の彼方に去ったことすら誰も覚えていないと思っていたら、文庫やらなにやら一杯出てる。日本人というやつも案外話が分かるのかも。
 若いころはご時世のせいでマルエン・レーニンに非ざれば人に非ずで、ルカーチだデュクタオだ星埜惇だと手を出して、サルトル・カミユに入れ込んだりした。理屈は全部飛んで、残ったのは小説とマンガ。無人島にもっていくのはドストエフスキーとボルヘスになった。
 ボルヘスは笑える。ドストエフスキーも笑えるが、『白痴』みたいにたまにちょっぴりだ。ボルヘスは終始神妙な面持ちでボケまくるバスター・キートンみたいなもので堪らん。
 全然、作品の感想がないじゃないかって?ボルヘスは「最初から作品の解説を書けばいい」ようなことを書いていた。「解説」の説明と感想を書くわけ?
 ふと見ると、訳者が違う。鼓直氏は『ブロディーの報告書』くらいしか持っていない。ここ20年ほど「晴チャリ雨ネット」化して、本とマンガがネタ切れ気味。買ってみるか。
 追記…ひとまず持っていなさそうなのを4つ、古書で注文した。ブーム再来か?
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.58
(2pt)

途中で挫折しました

それほど厚い本でもないし、多少難解でも読めると思ったけれども、途中で挫折してしまった。
物語の意味がわからないだけでなく、そもそも文の意味がわかりづらい。日本語訳の問題なのか、元々の原文のせいなのか不明だが、訳者自身による巻末解説の文章を読むと、訳者の日本語文もわかりづらい。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.57
(2pt)

途中で挫折しました

それほど厚い本でもないし、多少難解でも読めると思ったけれども、途中で挫折してしまった。
物語の意味がわからないだけでなく、そもそも文の意味がわかりづらい。日本語訳の問題なのか、元々の原文のせいなのか不明だが、訳者自身による巻末解説の文章を読むと、訳者の日本語文もわかりづらい。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.56
(4pt)

じっくり時間をかけて

私はじっくり時間をかけて読みました。

正直、前半の「八岐の園」は、最初からとっつきにくい。読みにくい。
でも、せいぜい短編なので、やっかいな哲学書に挑んでしまった時よりも救いがあります(笑)
有名な本のため、読書好きを「内心で」自称している身としては避けてはとおれないと思い、我慢して読みました。

一読してワケがわからない作品については、ネットに感想を書かれている方々の文章に助けてもらい、なんとか読了。
で、後半の比較的読みやすい「工匠集」を含めての感想は「読んで良かった。」でした。

ごく短いプロットが次々と提示されて、自分がSFや推理作家だったらネタの宝庫だと思う内容でした。
「八岐の園」の各短編ついても、咀嚼して(もしくは分からないまま受け入れて)いくうちに、余計な説明をそぎ落とした素っ気ない文体が「読みにくい」から「かっこいい」に自分の中で変りました。

独特な文体に慣れてくると味わいがあってとても良いです。
再読すると思います。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.55
(4pt)

じっくり時間をかけて

私はじっくり時間をかけて読みました。

正直、前半の「八岐の園」は、最初からとっつきにくい。読みにくい。
でも、せいぜい短編なので、やっかいな哲学書に挑んでしまった時よりも救いがあります(笑)
有名な本のため、読書好きを「内心で」自称している身としては避けてはとおれないと思い、我慢して読みました。

一読してワケがわからない作品については、ネットに感想を書かれている方々の文章に助けてもらい、なんとか読了。
で、後半の比較的読みやすい「工匠集」を含めての感想は「読んで良かった。」でした。

ごく短いプロットが次々と提示されて、自分がSFや推理作家だったらネタの宝庫だと思う内容でした。
「八岐の園」の各短編ついても、咀嚼して(もしくは分からないまま受け入れて)いくうちに、余計な説明をそぎ落とした素っ気ない文体が「読みにくい」から「かっこいい」に自分の中で変りました。

独特な文体に慣れてくると味わいがあってとても良いです。
再読すると思います。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.54
(5pt)

図書館好き、文学好きな誰かに。

"図書館は無限であり周期的である。どの方向でもよい、永遠の旅人がそこを横切ったとすると、彼は数世紀後に、おなじ書物が無秩序さでくり返し現れることを確認するだろう"1940年代発表の短編集である本書は、ラテンアメリカ文学の先駆けとして、あるいは【短い物語で根源的なテーマを描く】著者の魅力が詰まっています。

個人的には、或るトークイベントで本書に収録されている『バベルの図書館』の話になって、恥ずかしながら未読であった事から、ちんぷんかんぷんであった事(笑)また5月は図書館振興の月と、ソーシャルキャンペーン『#図書館に感謝 』を企画している立場として、読んでおかねば!と本書を手にとりました。

まず『バベルの図書館』に関しては『五つの書棚が六角の各壁に振りあてられ、書棚のひとつひとつにおなじ体裁の三十二冊の本がおさまっている。それぞれの本は四百十ページからなる』閉鎖的な図書館を舞台に世界や宇宙、永遠といった幾つもの読み方ができるのに驚きを超えて圧倒されました。(実際に映画『薔薇の名前』やポアンカレ予想、白熱教室にVRと多くの影響を知り、こちらも勉強になりました)

また本書では『バベルの図書館』以外にもプロローグをのぞいて17の物語が収録されていますが。こちらはこちらで、図書館員と無法者、メスとナイフ、病院と酒場といった、一見対照的なシンメトリーさが伝わってきて(特に『南部』)それぞれに面白く。中では『円環の物語』夢そのものに没入させられる様な幻想的な神話性は私的に好みでした。

図書館好き、文学好きな誰かに。また『長大な作品を物するのは、数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である』そんな短編好きな誰かにオススメ。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.53
(5pt)

図書館好き、文学好きな誰かに。

"図書館は無限であり周期的である。どの方向でもよい、永遠の旅人がそこを横切ったとすると、彼は数世紀後に、おなじ書物が無秩序さでくり返し現れることを確認するだろう"1940年代発表の短編集である本書は、ラテンアメリカ文学の先駆けとして、あるいは【短い物語で根源的なテーマを描く】著者の魅力が詰まっています。

個人的には、或るトークイベントで本書に収録されている『バベルの図書館』の話になって、恥ずかしながら未読であった事から、ちんぷんかんぷんであった事(笑)また5月は図書館振興の月と、ソーシャルキャンペーン『#図書館に感謝 』を企画している立場として、読んでおかねば!と本書を手にとりました。

まず『バベルの図書館』に関しては『五つの書棚が六角の各壁に振りあてられ、書棚のひとつひとつにおなじ体裁の三十二冊の本がおさまっている。それぞれの本は四百十ページからなる』閉鎖的な図書館を舞台に世界や宇宙、永遠といった幾つもの読み方ができるのに驚きを超えて圧倒されました。(実際に映画『薔薇の名前』やポアンカレ予想、白熱教室にVRと多くの影響を知り、こちらも勉強になりました)

また本書では『バベルの図書館』以外にもプロローグをのぞいて17の物語が収録されていますが。こちらはこちらで、図書館員と無法者、メスとナイフ、病院と酒場といった、一見対照的なシンメトリーさが伝わってきて(特に『南部』)それぞれに面白く。中では『円環の物語』夢そのものに没入させられる様な幻想的な神話性は私的に好みでした。

図書館好き、文学好きな誰かに。また『長大な作品を物するのは、数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である』そんな短編好きな誰かにオススメ。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.52
(4pt)

難しさに挑戦

思いの外難解で、まだ読破出来ていませんが挑戦しています。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.51
(4pt)

難しさに挑戦

思いの外難解で、まだ読破出来ていませんが挑戦しています。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.50
(5pt)

迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらした『バベルの図書館』

『伝奇集』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫)に収録されている『バベルの図書館』を読んだのですが、正直言って、迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらしてしまいました。

「書棚、謎めいた書物、旅人のための疲れることのない階段、腰おろす司書のための便所などの、優雅な基本財産をそなえた宇宙は、ある神の造られたものでしかありえないだろう。聖なるものと人間的なものをへだてる距離を知るためには、わたしの誤りを犯しがちな手が本の表紙に書きちらす、これらの震える粗雑な記号と、本のなかの有機的な文字とを比較すればたりる。後者は正確で、繊細で、鮮やかな黒で、まねのできないほど均斉がとれている」。

「ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した。この思想家のいうには、いかに多種多様であっても、すべての本は行間、ピリオド、コンマ、アルファベットの25字という、おなじ要素からなっていた。また彼は、すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した。広大な図書館に、おなじ本は2冊ない。彼はこの反論の余地のない前提から、図書館は全体的なもので、その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ――その数はきわめて厖大であるが無限ではない――を、換言すれば、あるゆる言語で表現可能なもののいっさいをふくんでいると推論した。いっさいとは、未来の詳細な歴史、熾天使らの自伝、図書館の信頼すべきカタログ、何千何万もの虚偽のカタログ、これらのカタログの虚偽性の証明、真実のカタログの虚偽性の証明、バシリデスのグノーシス派の福音書、この福音書の注解、この福音書の注解の注解、あなたの死の真実の記述、それぞれの本のあらゆる言語への翻訳、それぞれの本のあらゆる本のなかへの挿入、などである。図書館があらゆる本を所蔵していることが公表されたとき最初に生まれた感情は、途方もない歓びであった」。

「その種の冒険のために、わたしも生涯を浪費してしまった。宇宙のある本棚に全体的な本が存在するという話は、わたしには嘘だとは思えないのだ」。

「おそらく、老齢と不安で判断が狂っているかもしれないが、しかしわたしは、人類――唯一無二の人類――は絶滅寸前の状態にあり、図書館――明るい、孤独な、無限の、まったく不動の、貴重な本にあふれた、無用の、不壊の、そして秘密の図書館――だけが永久に残るのだと思う」。

図書館大好き人間の私が戸惑っているのを見て、ボルヘスは、してやったりと得意顔をしていることでしょう。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.49
(5pt)

迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらした『バベルの図書館』

『伝奇集』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫)に収録されている『バベルの図書館』を読んだのですが、正直言って、迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらしてしまいました。

「書棚、謎めいた書物、旅人のための疲れることのない階段、腰おろす司書のための便所などの、優雅な基本財産をそなえた宇宙は、ある神の造られたものでしかありえないだろう。聖なるものと人間的なものをへだてる距離を知るためには、わたしの誤りを犯しがちな手が本の表紙に書きちらす、これらの震える粗雑な記号と、本のなかの有機的な文字とを比較すればたりる。後者は正確で、繊細で、鮮やかな黒で、まねのできないほど均斉がとれている」。

「ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した。この思想家のいうには、いかに多種多様であっても、すべての本は行間、ピリオド、コンマ、アルファベットの25字という、おなじ要素からなっていた。また彼は、すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した。広大な図書館に、おなじ本は2冊ない。彼はこの反論の余地のない前提から、図書館は全体的なもので、その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ――その数はきわめて厖大であるが無限ではない――を、換言すれば、あるゆる言語で表現可能なもののいっさいをふくんでいると推論した。いっさいとは、未来の詳細な歴史、熾天使らの自伝、図書館の信頼すべきカタログ、何千何万もの虚偽のカタログ、これらのカタログの虚偽性の証明、真実のカタログの虚偽性の証明、バシリデスのグノーシス派の福音書、この福音書の注解、この福音書の注解の注解、あなたの死の真実の記述、それぞれの本のあらゆる言語への翻訳、それぞれの本のあらゆる本のなかへの挿入、などである。図書館があらゆる本を所蔵していることが公表されたとき最初に生まれた感情は、途方もない歓びであった」。

「その種の冒険のために、わたしも生涯を浪費してしまった。宇宙のある本棚に全体的な本が存在するという話は、わたしには嘘だとは思えないのだ」。

「おそらく、老齢と不安で判断が狂っているかもしれないが、しかしわたしは、人類――唯一無二の人類――は絶滅寸前の状態にあり、図書館――明るい、孤独な、無限の、まったく不動の、貴重な本にあふれた、無用の、不壊の、そして秘密の図書館――だけが永久に残るのだと思う」。

図書館大好き人間の私が戸惑っているのを見て、ボルヘスは、してやったりと得意顔をしていることでしょう。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.48
(5pt)

手を変え品を変え、現実を揺さぶる

この本を買ったのは3,4年ほど前なのですが、未だに魅了され続けています。暇があったら読み返してしまいますし、そのたびに発見があります。
解説も野暮になるくらいの優れた(それも、長編を煮つめたような濃い)短編が詰まっています。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「バビロニアのくじ」など、大好きですけど、確かに、解釈が困難な作品もあります。
一方、「刀の形」「死とコンパス」などは――この短編の本質ではないのかもしれませんが――、ボルヘスの作家としての実力の確かさ、器用さを示していて、短編としてもとても優れていると思います。

難しいというのは、作中、「リデル・ハートの『ヨーロッパ大戦史』」「フロイト流のコメディ」「カルカッタのマチュア市場の鼻もまがるような悪臭」「ウィリアム・ジェイムズの同時代人であるメナール」「四文字語(テトラグラマトン)」など、ボルヘスの膨大な知識量と発想の跳躍によってそんな特異な名詞がポンポンと出てきてしまうので、
外国の知識人の基礎的教養レベルが必要とされるのかなと思いますが、まぁ修飾語の一種だと思い、個人的にはなんとかついていけました。

翻訳が批判されているようですが――いかんせん他の人の翻訳を読んだことがないので比較もできないんですけど――、
ボルヘスの冷静で皮肉っぽい、流れるような語り口が日本語を通して伝わってきたので、細かい誤訳などはあると思いますが、とても好きです
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.47
(5pt)

手を変え品を変え、現実を揺さぶる

この本を買ったのは3,4年ほど前なのですが、未だに魅了され続けています。暇があったら読み返してしまいますし、そのたびに発見があります。
解説も野暮になるくらいの優れた(それも、長編を煮つめたような濃い)短編が詰まっています。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「バビロニアのくじ」など、大好きですけど、確かに、解釈が困難な作品もあります。
一方、「刀の形」「死とコンパス」などは――この短編の本質ではないのかもしれませんが――、ボルヘスの作家としての実力の確かさ、器用さを示していて、短編としてもとても優れていると思います。

難しいというのは、作中、「リデル・ハートの『ヨーロッパ大戦史』」「フロイト流のコメディ」「カルカッタのマチュア市場の鼻もまがるような悪臭」「ウィリアム・ジェイムズの同時代人であるメナール」「四文字語(テトラグラマトン)」など、ボルヘスの膨大な知識量と発想の跳躍によってそんな特異な名詞がポンポンと出てきてしまうので、
外国の知識人の基礎的教養レベルが必要とされるのかなと思いますが、まぁ修飾語の一種だと思い、個人的にはなんとかついていけました。

翻訳が批判されているようですが――いかんせん他の人の翻訳を読んだことがないので比較もできないんですけど――、
ボルヘスの冷静で皮肉っぽい、流れるような語り口が日本語を通して伝わってきたので、細かい誤訳などはあると思いますが、とても好きです
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.46
(3pt)

難解だが

難解なのは作品の内容そのもののせい、あるいは注釈をあえて多くつけるそのスタイルにもあるのかもしれないが、
翻訳の仕方に問題があるのではないかと思う。

直訳チックな翻訳で、何を言っているのかよくわからない部分が多い。

それでも内容そのものは面白く、独特の作風にぐいぐい引き込まれていく。

※ 最初は、注釈はあえて全部無視して一旦最後まで読んでしまうことをおすすめします。
  解説と行ったり来たりすると集中力も切れますし、重要なのは注釈ではなく本文なので…
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.45
(3pt)

難解だが

難解なのは作品の内容そのもののせい、あるいは注釈をあえて多くつけるそのスタイルにもあるのかもしれないが、
翻訳の仕方に問題があるのではないかと思う。

直訳チックな翻訳で、何を言っているのかよくわからない部分が多い。

それでも内容そのものは面白く、独特の作風にぐいぐい引き込まれていく。

※ 最初は、注釈はあえて全部無視して一旦最後まで読んでしまうことをおすすめします。
  解説と行ったり来たりすると集中力も切れますし、重要なのは注釈ではなく本文なので…
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212