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銃・病原菌・鉄
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【この小説が収録されている参考書籍】
銃・病原菌・鉄の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全347件 301~320 16/18ページ
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上下合わせて600ページを超える大作! 「なぜヨーロッパ人がアメリカ原住民を支配することが出来たのか?その逆はなぜ起こり得なかったのか?」 「人類の歴史」を1万3千年から遡り、定住、農耕、家畜、言語、文字、国家、戦争、地理地形、気候変動、病原菌、などの様々な視点から読みとこうとする総合知的解説書。 著者は分子生理学、進化生物学、分子生物学、遺伝子学、生物地理学、環境地理学、考古学、人類学、言語学など多くの分野に精通しているが、「人類の歴史」という因果関係が超複雑に絡みあった対象には一般法則を導き出すことが出来ないという。 「歴史科学」が成立しないのは、あまりにも歴史という対象が難しすぎるためであるが、著者は「人間科学としての歴史研究が恐竜研究と同じくらい科学的におこなわれるだろうと楽観視している。」(エピローグ)と語る。 本作はその筆者の楽観に現実感を与える力がある。 | ||||
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著者は本書で、人類が大陸によって異なる発展を遂げた理由を、人種の遺伝子的な優劣によるものではないことを証明した。 一言で言えば、人類はその大陸の生態、天候、地形などの環境によって異なる発展を遂げたのだ。 本書ではそれらを順に、解りやすく解説してくれる。 中でも面白かったのが、第2部「食料生産にまつわる謎」である。 なぜ今我々が食べているイネ(米)があるのか、なぜシマウマは家畜化されなかったのか。 これらの謎を、気が遠くなるような時間をかけて人類が試行錯誤してきた過程を通じ、解き明かしてくれる。 生きていて、なんとなく知っていたようで、実は知らなかったことがある。 そして本当に知った瞬間はまさにエキサイティングである。 「なるほど!」と何度つぶやいたかわからない。 本書は人類が辿ってきた歴史を「駆け足」で解説したものと著者は言う。 深く掘り下げたい人には物足りないかもしれないが、私のような歴史・考古学素人にはちょうどよく、充分にポイントは掴める。 読んでよかった。そしてもっと早く読みたかった。 | ||||
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なぜ、白人はアメリカ大陸を制覇できたのかという理由を、銃・病原菌・鉄というキーワードで読み解く人類史への壮大なミステリーを解き明かそうとするのが本書です。 結局、農業生産により食料の増大が、白人に政治システム・軍隊・武器の技術を与え、結果として、アメリカ大陸を制覇したといいます。 なぜ、食料生産がユーラシア大陸でできたかということを説明していくのですが・・・。 しかし、本書を読んでいて、まさに唯物論的であり、どこか抜け落ちているような気がしてなりません。 食料生産の高度化により、食料生産に携わらない人間が、良い政治システムを持つまではわかるのですが、なぜ、武器に向かうのか。 どうも、本書の理論は片手落ちであり、個人的には、白人の暴力主義、征服主義という精神論を説き明かさなければ、本当の意味での白人の五大陸制覇を説明できないように思います。 その点で力作を望むところです。 ただ、本書は訳も読みやすく、論証も明快なので、ぜひ、一読してほしい一冊です。 | ||||
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非常に遅ればせながら。 山田風太郎の『魔界転生』の石川賢による漫画化で、病原菌の固まりとして転生してくる駿河大納言 の描写があったじゃないですか。新大陸に乗り込んでくるヨーロッパのイメージとして、あの描写が脳にすり 込まれてしまいましたよ。 大陸間の文明格差と、その結果としての今日の情勢を、栽培化・家畜化可能な野生種の有無と 大陸の形状(伝播の環境的制約)から一気に説明してみせた壮大な人類史。 植生などの気候風土と地理的要因といった環境条件に人類の文化が決定的に制約されている様は 圧巻ですね。非常に大きな説得力を持っていると思います。 ヨーロッパの南北アメリカへの進出(侵略)だけではなく、その人類史上最大の不幸な遭遇を、オースト ロネシア語族の太平洋への拡散やバンツー諸族のアフリカ南方への拡散などと同じ現象の一事例とし て位置づけるなど、刮目する理路多数。 しかし、同じユーラシアでもヨーロッパが世界を席巻して中国はそうでなかった理由を、政治的統一の 有無に求め、その政治的統一の有無を、水系や半島などの地理的制約に求めるあたりは、それまで 説得力があっただけに、かなり厳しいのでは? これは著者自身が正しく総括しているように、今後、探求が進められるべき領域なんでしょう。 私は、どうしても「なぜヨーロッパが?」と来ると、M.ウェーバーを連想しないではいられないのだけれど。 天文、地質、生態、進化など、実験が不可能だったり倫理的に許されなかったりする分野を歴史科学 と位置づけ、それらと一貫した方法を模索して、人類史の今後に期待する態度には大賛成だけど。 しかし、参照文献をまるごと無しで済ませるって翻訳の方針には大疑問。 読者のさらなる探求を阻害するという意味で、原著者の意図にも、文明の相克という本書の趣旨にも 悖るのではないか。 | ||||
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歴史はなぜ動くのか?その動因を求めて、人は様々な史観を考案してきた。 英雄豪傑が歴史を動かしてきたとする大衆的な史観、人種間の優劣に原因を求める優生学的史観、 経済構造がすべてと語るマルクス主義的唯物史観、社会構造や精神にその原因を探るアナール派史観、等等。 生物学者が書いた本書は、これらに対し、動植物の分布環境がすべてを決定してきた、とする画期的な 歴史の仮説を提唱してくれる。 本書の考察は旧大陸と新大陸の関係への疑問からはじまる。なぜスペインはアステカ帝国やインカ帝国を 征服できたのか?なぜその逆のことがおきなかったのか?この疑問に対し、以前は白人文明の優位性、 はては白人種の優位性による説明がされていた。これに本書は真っ向から反対する。いわくヨーロッパ人が 優れていたわけではない、ただ旧大陸は新大陸より横長であるため、動植物の交流が多く、多くの動物を 家畜化した結果ヨーロッパ人は伝染病に対する耐性を獲得していたにすぎない、と。反対に新大陸は 東西の移動範囲が限られ、動植物の分布も貧弱であったため、先住民は伝染病に対する耐性を獲得できない ままでいた。このため、スペイン人が上陸した後、あっという間に伝染病が広がり、文明が滅んでしまった、 というのが本書の説く歴史である。それは人種間や文明間の優劣があったからではない、文明が育った 自然環境という些細なことが全ての要因だったわけだ。 その他にも、世界の数多くの地域に取材しながら、なぜヨーロッパ人が世界の中で優位に立っていったのか、 が、いかにも生物学者が書いた本らしく、極めて客観的・論理的に解説されていく。その論理構成たるや、 見事の一言。世界の歴史を舞台にした壮大なフィールドワークとでもいうべき、きわめて実証主義的な視点が、 本書の論理構成に鉄壁の信頼性を付与している。ヨーロッパ人は優れていたのではない、ただ動植物の 自然環境に恵まれていただけなのである。従来の史観に対するこの強烈な鉄槌、痛快である。まさに 唯物史観ならぬ、唯動植物史観の堂々たる登場、というところか。本書の読書にとって、これまでの 自分の歴史観ががらりと変わること間違いなしの体験であろう。 小さい現実の観察から論理を飛躍させ、壮大な歴史を構築するというこの壮大な仮説構成力は、感動的で すらある。歴史に興味のある人はもちろんのこと、優れたロジック展開や思考法を学びたいすべての人に すすめたい本と言えよう。 ピュリッツァー賞を受賞し世界的にも名高い本書は、間違いなく、自分の読書史上10冊の内にも入る 名著である。このような本に出合えたことに感謝して5点満点献上。本書で感動を覚えた方には、同じ 著者による続編「文明崩壊」もあわせておすすめしたい。 | ||||
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■テーマ「人類が誕生してから、何故、世界は今あるような姿になったのか?」 ヨーロッパ人は南北アメリカ大陸に入植したけれど、なぜアメリカインディアンがヨーロッパに入植してくることにはならなかったのか、かつて文明が萌芽した「肥沃な三日月地帯」は何故いまは肥沃でないのか、他民族にひどいことをするのは「先進国」の専売特許じゃなくて以外と普通(程度は別として)かも、などなど、ともすれば様々な批判を招きかねないテーマを堂々と科学として成り立たせています。 読んでいる途中で「そんなこと言っても○○じゃないの?」なーんてことを何度も思いましたが、彼は必ずどこかで返答を用意していて、自分の浅薄さを思い知らされることしきりでした。トホホ。 だからって訳じゃないけどジャレドさん、あんた偉いよ。マジで。 ■新時代到来か それにしても「何故いまあるようになったか?」って言われてもねえというテーマなんですが、必然と偶然のあいだを軽々と行き来するスタンスの取り方はお見事。ジャンルを超えて手本になり得るものだと思います。 記述されている内容そのもの、議論のレベルの高さあるいは公正さ、そしてこれだけのしっかりした論考が単なる学術論文としてでなく一般に流通する書物として出版され(さらに日本語訳され)、こうして我々の手に入ること、どれをとってもこれからの本のあるべきスタンダードを示していると思います。 おおよそ、進化とか進歩とかいう話をする場合、本書を知らないでは「お話にならない」ことになると思います。 | ||||
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日本の本屋に並んでいる歴史に関する本は「侵略戦争は悪いだとか」「自虐史観はけしからん」「歴史の英雄の伝記」だとか、純粋に知的好奇心を満たしたい人たちにとって「無価値」な議論をする本が多すぎます。 一方、学校では、この本で論じているような「なぜヨーロッパ文明が他の文明を凌駕したのか?」「隆盛する文明と消滅する文明の違いは何か?」といった歴史の本質的疑問に答えることなく、「時系列で起きた事象を淡々と述べる」、いかに自国が輝かしい歴史をたどってきたか(特に外国の教科書はそうらしい)」という視点で学ぶことがほとんど。 翻ってこの本は、「文明度の強い弱い(=進歩の度合い)」はなぜ起きたのか?を地理学的視点・生物学的視点・考古学的視点などを駆使して、素晴らしい説得力で論を展開していきます。 特に興味深いのは「農業(栽培作物)」「家畜」の問題。例えばアフリカの「しまうま」や「バッファロー」はなぜ家畜化しないのか?家畜化しようとしたのか?そうだとしたらなぜ家畜に出来なかったのかが、述べられています。 私は、人類の歴史をあえてシンプルに捉えるとすれば「勝つか負けるか」だと思っています。そしてなぜ「その文明・民族あるいは国家が勝ったのか?負けたのか?」に1つの答えを用意してくれたのが、この本でした。 アメリカの金融危機が全世界を同時に大不況に陥れた現代がたどってきた歴史は、「ヨーロッパ、特にアングロサクソン系の文明が他の文明を駆逐してきたことで起きた事象だと思いますが、これも、その根本的要因が、人種や民族などの人間という種の生物学的要因ではなく、地理的要因にあるということは、非常に興味深い。 それを象徴するかのように黒人のオバマ大統領が生まれたことも、非常に興味深く思いました。 | ||||
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なぜ富める地域とそうでない地域があるのか。ある国では原子力で電気をおこし、暑い日には冷房をつけ、寒い日には暖房をつける。かたや、すべてのエネルギーを木材に依存し、農業さえしていない先住民が世界にはいる。この差はいったい何なのか? 彼らの知能が低かったのか? それとも環境なのか? ジャレド・ダイアモンドはこの本の中で、格差は「知識の蓄積の差」によって生じたとしている。この蓄積に影響を及ぼした因子は4種類:(1)栽培・家畜化可能の動植物の分布、(2)伝播・拡散が可能な文化、特に文字、(3)発明、競争を起こす人口、(4)東西へひろがる大陸。このひとつひとつをサポートする情報をエンターテイメント性高く書き下ろしている。 たとえば、文字のところ。世界ではたった2箇所しか独自に文字を発見していない。シュメールとマヤで、他の文字は借用だ。文字をもたない文化圏がある。彼らに文字がない理由は、地理的な障壁により伝わらなかったこと。文字を使用する商業、農業が発達していなかった。 では、現在話されている言語の分布をみてみよう・・・オーストラリアには言語がないが、彼らの文化というのは・・・というように、サポートする情報にまたサポートする情報をもってくるので、自然と内容が深くなっていく。 ひとつの主題に対して、ぶれずにこのボリュームを書き上げる知識にただただ脱帽。 | ||||
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5つの大陸で 異なる発展を遂げた人類。 なぜ、異なる発展を遂げたのか?という疑問を考察する一冊。 その実、作者ジャレド・ダイヤモンド教授の文章力というか、読者を 惹き付けて「次のページへと引き込む”筆力”」に感嘆しました。 確かに、他のレビューにもあるように、切り口や発想、論理展開や 未知の知識が綴られる本書。 同時に、この著者ジャレド氏の筆力がなければ、本書は成立しなかっただろう。 なぜなら、上・下巻におよび膨大な情報量をここまで読ませて感動させるー。 その筆力こそが、1998年度のピュリッツアー賞獲得の理由(わけ)だと感じた。 良書です。 | ||||
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なぜユーラシア大陸の文明が栄え、アメリカ大陸(ネイティブアメリカン)の文明を滅ぼしたのか。 そのキーワードとなるのが銃・病原菌・鉄である。 ではなぜユーラシア大陸でそれらが発展し、アメリカ大陸では独自に発展しなかったのか。 本書ではその理由を大胆な仮説で爽快に示している。 その理由はいわれてみればたしかにそうだなとうなずけるものであるし、実際、なんとなく その理由を感じ取っていた人も少なくないと思う。ではなぜこの本が魅力的なのか。 著者は専門分野にとらわれない幅広い教養を持っている。その学際的な知識が絶妙に 絡み合い、人類の長い歴史を描いていく様子がとてもエキサイティングなのだ。 これからの学問は学際的な知識が必要とされていると言われている。 この本こそまさにそれであり、新しい時代を切り開く良書である。 | ||||
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ヨーロッパ人がアメリカ先住民を征服できたのは、ヨーロッパ文明が強くアメリカ先住民文明が弱かったからです。そしてヨーロッパ文明の強さの象徴が『銃・病原菌・鉄』です。 そして本書では、何故ヨーロッパが強く、アメリカ先住民が弱かったのかを分析しています。 そのロジックはただ一つ、より適したモノが生き残り増殖するという『ダーウィンの進化論』です。 著者はユーラシアが有利で、アメリカやアフリカが不利な条件を抜き出していきます。 その理由として、 0.文明が発達するには一定以上の人口の量と密度が必要であり、それらを確保するには食物生産が必要である。 しかし 1.ユーラシアには栽培に有利な野生の食物が沢山あったが、アメリカには少なかった。 2.ユーラシアには家畜にしやすい野生の動物が居たが、アメリカには少なかった(先住民が食い尽くした)。 3.東西に伸びているユーラシアは緯度に違いが少なく、気候が同じだったので食物や文明の交流が活発だったが、アメリカは南北に伸びているので気候の変動が大きく砂漠などにさえぎられて交流が少なかった。 このためアメリカ先住民の文明はユーラシアより数千年遅れを取ったというのが、著者の主張です。 これらがどのように文明に作用したのかを事細かにシミュレーションしています。 ダーウィンの進化論は『確率論』に根ざしており極めて汎用性が高い理論なので、種の進化にも、文明の進化にも、技術の進歩にも、企業の経済活動にも、応用できます。 そして本著は、その進化論が実際どのように働くかを知ることが出来ます。 | ||||
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本書は、ユーラシア、アフリカ、アメリカ、オーストラリアと言ったそれぞれの大陸で発展してきた文化、文明に大きなレベルの差を生み出した原因を追及しようとした力作。 著者が本書を書くきっかけになったのは、ニューギニア人のヤリが著者に問いかけた、 「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」 という質問である。 著者はこの質問に対する解として、 ・銃 ・病原菌 ・鉄 が、現在に於いても、「発展途上国」と分類されている人たちの人類史に大きな影響を与えたと言う。 上巻ではそのうち、食料生産と農耕が、大陸によりどのように異なる歴史を持っていたのかを解明している。 ここでは、食料生産の多寡が、現代に於ける、「持てるものと、持たざるもの」を分けた大きな理由であるという事が言われているが、その食料についても、緯度の違いによる環境の差が収穫出来る食物の種類や量を、ここまで決定づけているとは、本書を読むまで全く知らなかった。 | ||||
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このような多くの文明や国や人種が有りながら、なぜこのような差がついたのか? 誰もがぜひ知りたいところだ。 どの人種が血統的に優れている、このような考え方はもはやこの本によって打ち破られただろう。 発展の度合いは、主に地理的要因にあったのだ。自分はこの本を読んでから、国や人種の問題を考えるとき、 その国がどこに位置しているのか、どんな形をしているのか、そんなことを前提に考えるようになった。 勿論、地理的要因の結果、DNAの優劣の差が出ることはあるかもしれない、しかし、神に選ばれた人種や、 発展することが運命付けられた文明や国などないのだ。 多少、結論ありきのデータ集めやご都合主義はご愛嬌。 「文明の衝突」、本書「銃・病原菌・鉄」などの、文明を俯瞰的に扱ったものは、ミクロの視点では 粗雑な記述も多いのだが、それを補って余りある全体を見通す視点が得られるものがある。 やっぱり、アメリカ人は細部は粗雑でも大胆な発想をする人が多い。 | ||||
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科学者(進化生物学者)の見た人類史です。 シャーレの中のバクテリアの増殖に向ける視線で、人類の移動や進化について書いています。 アレキサンダー、エジソンなどという固有名詞つきの英雄、天才を軽視した歴史。 歴史は必然と偶然の積み重ねで進歩してきた事実に過ぎないことを美しく書いています。 子供の頃の私は、歴史の授業が苦手でした。 教科書はまったくアカデミックでない「英雄列伝」だし、 歴史好きと称する人の多くは「英雄好き」「戦争好き」のマッチョ思想の持ち主か、 雰囲気が好きという「オシャレさん」でしょ? という偏見があったのかもしれません。 そんなものは武道や道徳や美術の時間にやっていただきたかった。 脱線しましたが、こういう科学歴史なら歓迎です。 文明国が非文明国を滅ぼすに至った要因=病原菌であること、 発明は必要の母、であることなど、 衝撃的な事実を知れたことがとても楽しく、そしてまた、 これから先の未来もどうなるかわからないなぁ、という壮大なロマンも感じられ、素敵です。 | ||||
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ニューギニア人からの「どうしてあなたたち白人は、世界の富と権力の大部分を握ることが出来たのか?」という素朴な問いかけで本書ははじまる。人類すべてが狩猟採集で暮らしていた13000年前の最終氷期の終わりを起点にして、人間社会の生業、技術、疫病、政治構造等がどのように変遷して白人が主導権を握るに至ったのかが謎解きの面白さに満ちた平易な文章で綴られていく。タイトルは、白人が他の大陸を植民地化できた直接的要因を凝縮したものだが、本書の表紙にはこれらがもっとも劇的に作用した歴史的事件として、スペインの征服者ピサロがインカ皇帝アタワルパを捕らえた場面が描かれている。 著者はニューギニアで、日ごろ文明に頼り切って暮らしている現代人が、近代的インフラのない土地で暮らすには、現地人の協力なしにはやっていけないと痛感したという。そこから、現在もしばしば語られる、近代化できる・できないの違いは人種・民族ごとの生物学的な差異に基づくという俗説を完全に否定する。また、マオリ族による、同じポリネシア人のモリオリ族虐殺事件などをあげて、ヨーロッパの白人だけが特に他の人種・民族に残虐だったという俗説も否定する。 先の問いかけに対して著者は、ユーラシア大陸の白人が他の大陸を植民地化できたのは、人種間の生物学的差異からではなく、地理的・生態的偶然−大陸の広さの違い、東西に長いか南北に長いかの違い、栽培化や家畜化可能な野生動植物の分布状況の違い等−からだったと答える。大陸の広がる方向に着目するところは、まさに自然科学者らしいユニークな発想だ。本書は、個体より集団の行動に注目する動物生態学の視点が随所に感じられるなど、歴史を自然科学として読みたい人にお勧めします。 | ||||
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ベストセラーとなり、ピュリッツアー賞を受賞したのも頷ける名著。 本書は、最終氷河期が終わった約13,000年前から紀元1,500年頃までの人類文明発展の歴史を、社会科学と自然科学を合わせて考察している。 何故ユーラシア大陸の文明が他の大陸を支配するに至ったのか? 旧大陸が新大陸を征服出来た表面的な理由は「銃・病原菌・鉄」であるが、 何故、ユーラシア大陸でそれらが生み出されたのか? 何故、新大陸ではそれらが生み出されなかったのか? そもそも人類はどのように発展し、国家を形成するに至ったのか? これらの疑問を、壮大なスケールで考察している文句無しの名著。 | ||||
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変わった題名の本であるが、本書を読み進めるとすぐにその意味がわかる。著者が、あるニューギニア人から受けた、「現代の世界の不均衡はなぜ起こったのか」という疑問への答えがこの表題である。 最もわかりやすいのは、スペイン人とインカ帝国の激突の場面である。馬と鉄製の武器は圧倒的な力の差となったが、それ以上に大きかったのがヨーロッパからもたらされた病原菌である。天然痘によって、人口の95%も減少したという。 また、同じ人種でも、その土地の環境によって、社会の発展段階が全く異なる結果になるという。ポリネシアに広がっていったオーストロネシア人たちが、それぞれの島の環境に合わせて、寒冷な地域の狩猟生活から、ハワイに見られるような豊かな土地にできた王国まで、実に多様である。 著者が主張していることは、今の人類の繁栄を築いているのはヨーロッパ系の人種であるが、これは「たまたま」ユーラシア大陸からもたらされた様々な農産物や人間に従順な家畜や、統一しなかった国々があった結果であって、条件さえ異なれば、他の人種がリードしていたかもしれないということである。 不思議なことに、1500年頃までは、世界の最先端を行っていた中国が、なぜ停滞してしまったのか、それは、中国が統一国家であったためにたった一つの決定で、船団の派遣を中止し、そのころ始まっていた産業革命を禁じてしまったたことによるという。一方、ヨーロッパでは、政治的に統一されていなかったことが幸いし、新世界に各国が争って進出し、新たな技術を取り入れていった。このことが、それ以降の決定的な発展の差となっているという。 この指摘は実に興味深いし、これからの中国の行く末を暗示している。 本書は、壮大な人類の今に至る進化の物語である。このような遠い過去を振り返ると、数千年単位の遠い未来へのヒントが見えてくる。 | ||||
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ここまで幅広く世界を捉え、ここまで多様な学問的知見を動員し、 ここまで深く原因を究明しながら人類史を探求した書籍は他にはあまりないと思います。 また、人類史の探求にここまで自然科学を駆使した歴史書も他にはあまりないと思います。 本書を要約すれば、 「地理的な差異が様々な文明の、発生の有無、発生時期、発展速度、衝突を決める」 ということになります。 但し、ここまで進化理論を駆使しながら人類の進化の差異(優劣ではない)には全く触れていません。 アフリカから各大陸へ人類は移動してきましたが、 どのような状況でどのような集団が移動したのかによっても因果は変わってくるでしょう。 (当時の局所的・一時的な強者と弱者のどちらが移動したのか、など) また、エピローグでも述べられているように、文化そのものの多様性の因果、には全く触れていません。 更に、日本についての記述に触れるたびに違和感を覚えることから、 他の地域や民族の記述について、当事者が違和感を覚えるのではないか、という懸念も出てきます。 とはいえ、地理的な要因だけで、ここまで説明しきれる説を展開したこと自体が偉業だと思いますので、★5つです。 | ||||
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鳥類の研究者であったダイヤモンドはまた真の知識人でもあった。 ユーラシア大陸では家畜となるような動物が多く、それの飼育によってユーラシア人はまた病原菌耐性も獲得した。さらにイネ科の植物はユーラシアに多かったために、東西に長いユーラシアでは急速に農耕が普及した。 これらの理由から文明はユーラシアで圧倒的に進歩し、ヨーロッパ人は南北アメリカやアフリカ大陸、オーストラリアを支配することになったのだという。 私は彼のウルム氷期以降の1300年の人類の歴史を再構築する科学的な試みに完全に脱帽した。かつてこのような人類史を書いた学者は一人としていないのだ!! 無理やり文句をつけるとするなら、ダイヤモンドはあまりにも人間の平等にこだわっているようである。人間集団に差異があったとしても、彼の鋭い洞察のほとんどは全くその意義を失わないはずだ。 | ||||
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「科学としての歴史」というと直ぐに「史的唯物論?」と反応される 方もおられるかもしれないがご心配なく。 著者は医学をはじめ生物から考古学、歴史まで幅広く修めた才人で、 文明発展格差の謎について、学際的に様々な知見を交えアプローチ しており、飽きずによませる。 大きなスパンでの発展の制約や法則性を考察しようという観点なので 細かな勢力分析や個人の影響などは捨象されている。 勿論、人種の生物学的相違や能力格差という前提もとらない。 一昔前なら地勢学一本で説明しそうなテーマを(大陸の東西/南北 軸の議論にそれはみられはすうるも)、自生植物、大型動物の有無 や家畜可能性、大陸形状などの偶然的な資源配置から説明してゆく。 タイトルの「銃・病原菌・鉄」はピサロによるインカ征服時の決定要 因だとして、本書の史観を象徴している。 表現は極めて平易で子供にもよみこなせよう。 | ||||
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