高い城の男
評判
高い城の男の評価:
3.85/5点 レビュー 92件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全123件 61〜80 4/7ページ
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高い城の男の評価:
3.85/5点 レビュー 92件。 B ランク
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「本物と偽物の違いは何か」「本物であることに果たして意味があるのか」という問いが全編通して流れるのは、ディックの定番だなと思います。
プライムビデオでドラマ化され大好評を博し、第2シーズンも今年12月に公開になる予定の、話題の一冊です。
(現時点ではドラマ版は日本のアマゾンでは公開されていませんが英・米のアマゾンで英語版、ドイツのアマゾンで英語/ドイツ語版の第1シーズンが視聴可能です。)
小説版とドラマ版とは、かなり設定が異なっています。
キーワードになる『イナゴ身重く横たわる』は、この小説版では「高い城の男」と呼ばれる謎の小説家の書いた大ヒット小説で、連合国が勝ったパラレルワールドを描いていることからナチス政府に目を付けられている(帝国日本政府は「あくまでフィクションにすぎない」として黙殺しており、日本人の中にはかえって面白がって読みふけっている者までいる)ということになっていますが、ドラマ版では日独およびそれらの傀儡政府に所持を禁止され地下で密かにやり取りされている謎の8ミリフィルムで、それをレジスタンスの手を借りて「高い城の男」という謎の人物が収集しているということになっています。
主人公の一人ジュリアナは、小説版では夫のフランクと離婚しているけれども元夫の姓を名乗り中立地帯で柔道のインストラクターをして生計を立てている「ジュリアナ・フリンク」ですが、ドラマ版ではサンフランシスコで恋人フランクと同棲し合気道を学んでいる「ジュリアナ・クレイン」です(第1シーズンで役所に就職します)。
フランクは、ともに「フランク・フリンク」という名前でユダヤ系であることを隠している人物ではありますが、小説版では表向きは建具工場、その実は骨とう品の贋作を作る秘密工場に勤めていたけれども嫌気がさして同僚とともにアクセサリー製造工房を立ち上げた青年であるのに対し、ドラマ版では合法的な骨とう品レプリカ(昔の拳銃のコピー)を作る工場に勤めながら趣味のアクセサリーをコツコツ手づくりしている青年という風に変わっています。
ジョーは小説版では「長距離トラックの用心棒でイタリア系の元軍人ジョー・チナデーラ」と名乗っていましたが、ドラマ版では「レジスタンス活動のため自らナチス政権下のニューヨークからトラックを運転してきた青年ジョー・ブレイク」となっています。
また、ドラマ版で重要なキーパーソンである、ジュリアナの種違いの妹(実の母とその再婚相手の娘)でレジスタンス活動をしているトゥルーディ、ナチスの傀儡国家の東アメリカのナチ党親衛隊支部高官であるスミス元帥、サンフランシスコ憲兵隊本部の木戸主任捜査官は小説版には全く出番がないです。
ドラマ版を見て原作が読みたくなった方は、以上の違いに注意して下さい。
さて、この小説版では先述の本物と偽物云々という以外にも、以下の3つの視点からストーリーが展開されていきます。
一つ目は、勤め人を辞めベンチャーのアクセサリー工房を立ち上げたフランクの一代記(と、そのフランクに影響されていく周りの人々の物語)。
二つ目は、「高い城の男」の謎を探るジュリアナとジョーの冒険物語。
三つ目は、史実の米ソ同様に同盟国としてともに世界大戦に勝利したものの、冷戦に突入し、いつなんどき核戦争を起こしかねないという状態になった日独の国際政治ドラマ。
ディック作品の常として、これらの表面上のストーリーラインの下を流れる哲学は一貫して「本物と偽物の違い」に関する問いなのですが、その哲学の部分をあまり考えなくてもそれなりに楽しめるレベルなのはさすがだと思います。
最期の1ページまでドキドキハラハラが止まりませんでした。
ディックの長編では珍しく哲学の部分は控えめな主張となり、エンターテインメントの部分が強調されています。
ドラマ版は、欧米ではヒットしていますが、日本では恐らく物議を醸すだろうなという描写が多いので(まあ日本が勝ってる世界を描いた作品なので当然なのですが)、結局日本には上陸しないかもしれません。
ですが、それを差し引いても本書は読む価値のあるすぐれたエンターテインメントだと思います。
是非、一読してディックの世界に足を踏み入れてみて下さい。
ただ文句をつけたいところが一点。
原語版で"Baron L. B. Kaelemakule"とされている人物がこの版では「鎌倉男爵」という名前になっていること。
"Kaelemakule"は誤記ではなく、ネイティブハワイアンのファミリーネームです。
史実の帝国日本には実は、李氏朝鮮王家の血縁者である等の理由から、朝鮮籍で爵位を与えられた人物も数十名単位で存在していました。
この小説の世界ではハワイ、アラスカ、アメリカ西海岸が日本の領土になっているので、この「カエレマクレ男爵」はハワイ出身、おそらくカメハメハ/カラカウア/ルナリロ王家の血縁者であることから爵位を与えられた人物なのではないかと思います。
(実際、イニシャルは違いますがカエレマクレ姓の、カラカウア王家の末裔の方が複数現在もハワイにいらっしゃるようです。)
まあこの男爵はいてもいなくてもストーリーにはあまり関係しない人物なのですが、そこ以外は本当に好きな作品です。
【2016年12月13日追記】
日本でもドラマ版のシーズン1が公開になりました!
吹き替え版・字幕版が用意されていますが、キャラクターの役職名等、私の解釈と違う訳され方をしたところがありました。
(どっちがニュアンス的に近いかはよくわかりません。)
上記のドラマ版に関する記述は、あくまでも私が通しで見た英国公開版を基準にしていることをあらかじめご承知おきください。