喜嶋先生の静かな世界
評判
喜嶋先生の静かな世界の評価:
4.63/5点 レビュー 81件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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喜嶋先生は、一般人的視点から評価すればかなりの変人で作中の言葉を借りれば「エキセントリック」な人物。しかし、主人公視点では尊敬すべき人物で「王道」の研究者という、この評価の逆転が物語の面白さでありメインテーマですね。舞台は大学の理系学部で、研究生活や就活事情などの描写はかなりリアリスティック。これも他の小説にはあまりない本作の魅力。
人物や舞台設定は特徴的で「エキセントリック」なものですが、物語の骨子は、才能ある若者が苦悩しながらも指導者に導かれ成長する、という「王道」路線です。シンプルなストーリーは、読者が一般のいわゆる文系であっても楽しめると思いますが、理系研究者を志す若者なら、より多く感じるものがあるでしょう。
喜嶋先生は理系学生なら一度はあこがれそうな「理想の研究者」として描かれますが、その「エキセントリック」さゆえに理解者はごく一部で、社会的な成功とも縁遠い。それでもあなたは「理想の研究者」を目指しますか?
昔話になりますが、名古屋大学で文化祭があった時、筆者の森博嗣の講演会が企画されました。三角関数の微分積分の話とか、なぜ飛行機のエンジンが前部に搭載されることが多いのかといった話題が語られたように記憶しています。後半の質疑応答で、喜嶋先生にモデルはいるのか? という質問がありました(当時は短編の「~静かな生活」しか発表されていませんでしたが)。それに対する回答は、あの小説をモデルなしに書けたら天才、時々自分は天才じゃないかと思うときがある、というようなものでした。
いかにも森博嗣らしい回答ですが、質問した学生も本作の主人公のように、研究者としての生き方について思い悩んでいたのでしょうか。
そうそう「王道」のストーリーと書きましたが、最後はやはり森博嗣らしく一癖ある終わり方で、それが物語に深みを与えているといえるでしょう。若い理系学生におススメです。