■スポンサードリンク


楽園の蝶



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
楽園の蝶

楽園の蝶の評価: 3.82/5点 レビュー 11件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.82pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(2pt)

舞台設定は興味をそそられましたが、この結末で良いのでしょうか

満洲国の満映を舞台にしており、それだけで読みたくなる設定で手に取ったわけです。
登場人物は満洲国を代表する甘粕正彦理事長や石井四郎731部隊長など、読者の興味をひく登場人物たちが場面に登場するシーンは良く描けていますが、最後の流れは全く理解できません。これで終わったのか、続きはあるのでは、と思うほどでした。尻切れトンボという結末でした。

柳広司の『ジョーカー・ゲーム』や『ダブル・ジョーカー』に惹かれて本作を読んだわけでしたが、あてが外れました。

また所謂「甘粕事件」が本作の背景にあるわけですが、大正の事件当時から甘粕の関与については疑問視されてきました。本人も嘘か本当かは分かりませんが、後に否定しているわけで、本書のある「流れ」そのものに、歴史を知っている読者は疑問を挟む余地があるわけです。フィクションですから、如何様にも書けますが、歴史を舞台背景に使うのならば、ある程度の「史実」との整合性も必要ではないかと思っています。

なお、213pのゲッペルスの表記は「ゲッベルス」の間違いです。よく間違って記載されていることがあるのですが、重要な歴史上の人物です。作者も編集者も気が付かないのはどうしてでしょうか。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.10:
(4pt)

これで終わっちゃうの?

読んでる間わくわく感がありました。しかし、後半になっても話は佳境に入ってこない。起承承承といった感じで、どうなっているんだ!次週に続くのか?と思っていたら、置いてけぼりにされてしまった。えっ!これで終わり?うそ!続きはどこ?もしや本に仕掛けがあるのではとひっくり返してみたり、火に炙ってみたりしたが、新たな文字が浮かび上がるはずもない。実は違うペンネームで続編を書いていてそれにつながる謎解きのヒントがあるのではと考えてみたが、思いもつかない。参りました。降参です。これ続編書けますよね。僕には壮大な謎のプロローグにしか思えませんでした。ぜひ続きをお願いします。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.9:
(3pt)

他作品と比べると緊張感は低い

満州国首都新京で設立された満州映画協会が舞台設定というのが、いかにも作者らしく、また甘粕理事長や石井将校の登場人物もスパイ物の小説を彷彿させ、他作品同様スリリングな展開を期待させます。

ただ、物語の起伏には乏しく地味で、ヒリヒリとした緊張感も長続きしません。主人公ののんびりとした性格の影響もありますが。

本作の読みどころが、桐谷監督や陳雲らの映画製作への情熱なのか、それとも満州国下の日本軍と軍から追放された甘粕理事長の凌ぎあいなのかが、今一視点が定まらなかったです。

しかし満州国での特殊な時代背景と、娯楽である映画(製作)という全く結びつかないような事象が、上手く繋ぎ合わされているなと感じました。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.8:
(5pt)

おもしろかった

時代背景は日本軍の支配する満州国。無政府主義の学生運動にかかわったために逮捕され、釈放後日本で居場所を失った坊ちゃんシナリオライターが満州国の新京にできた最新映画撮影所で遭遇する事件の数々。ジャンルは推理小説といっていいかも。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.7:
(5pt)

この世は本当は蝶が夢を見ているだけなのかもしれない

京都旧家の出身ながら慶應義塾在学中に社会主義思想に染まり、拘留中の"転向"宣言を経て学業と実家から追われた23歳の朝比奈は、幼少に京都の映画撮影所に出入りしていた縁から、満洲映画協会に脚本家としての職を得る。
建国10年に沸き立つ独立国家、満洲帝国。超特急あじあ号から首都新京に降り立った彼は、大陸的な雰囲気と多国語の声高に混じり合う新興都市の活気に魅せられる。
意気揚々と新天地での活躍を夢想した朝比奈だったが、若き女性監督桐谷サカエ(ここ重要!)よりすべての自信作を否定され、新機軸の探偵ものの執筆を命じられる。
意気投合した中国人スタッフ陳雲と彼の妹、桂花との共同執筆作業を開始した彼は、桂花への恋慕を愉しみつつ、日本ではお目にかかれない最新の英米仏のフィルムを研究し、乱歩の20面相をネタに「中国人の愉しめる」脚本に取り組む。前途洋々、意気軒昂。

だが朝比奈は偶然にも、"日本の国策会社"満映の真実の姿を垣間見ることとなる。
対米英戦争一色の日本と対照をなす日常生活を満喫する彼が、新京の持つ"映画セットのハリボテのような"昼の姿と人の奥の闇を顕現化した夜の姿の二面性を認識したとき、それは満洲国の偽善性が顕わになった瞬間でもあった。

そして知る決定的で過酷な事実。目を閉じる。目眩。
「だって、おかしいだろう」(p232)には感情が揺さぶられた。
希望が絶望に変節した脳裏に浮かぶ蝶の群れ
「この世は本当は蝶が夢を見ているだけなのかもしれない」(p245)

・関東軍の人体実験こそ悪名高いが、満洲国の事実上の支配者=日本人官僚が現地住民を支配する道具として"阿片を活用"し、より多くの中国人の心身を蝕んだ事実。その舞台装置としての満洲映画協会の真の姿がえぐり出される。

・歴史上の著名人、特にキーパーソンとなる元憲兵隊将校から満洲映画協会理事長職に就いた甘粕正彦と、満洲国より"国防を委託された"大日本帝国・関東の軍防疫給水部731部隊を率いる軍医少将、石井四郎の物言いと動作仕草が、いまそこに立つ人物のように活写されているのも本書の魅力のひとつとなっている。

・李香蘭については、満映スターであったこと、似非中国人として日本人の観客から喝采を浴びたことが簡潔に述べられるに留まる。満映が舞台なのだから、できれば彼女と甘粕正彦の関わりについて一捻りほしかったな。

・せめて映画好きの陳雲青年には、"解放後"の希望ある未来の展望あることを願ってやまない。

御参考までに満洲・満映と甘粕正彦氏についての図書です。(手持ちの分だけですが。)
■李香蘭と東アジア 四万田犬彦編、東京大学出版会・2001年12月発行
p108に掲載される甘粕理事長へのインタビュー記事に、満映機構改革と満洲至上主義に基づく映画国策の理念が現れています。
(『魅惑の姑娘スター李香蘭の転生−甘粕正彦と岩崎アキラ(漢字)、そして川喜多長政』牧野守)

■満洲国のビジュアル・メディア 貴志俊彦著、吉川弘文館・2010年6月発行
p176に、大衆の教化を強める目的で1941年12月に行われた満映の部門改正(製作部の啓民映画部、娯民映画部、作業管理所への分割)と、娯楽の統制のことが記載されています。
(『8章 決戦体制下における弘報独占主義」)

最後に。
プロローグの「ソーイチくん!」……お見事です。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.6:
(3pt)

ヤマが低い

まず最初に、この作者に戦前戦中の所謂昏(くら)い時代を書かせるとやはり
『さすが』と唸らせるものがあります。
しかしこの小説は「ジョーカーゲーム」のシリーズと比べて、どうしても感情
移入するべき物語としてのヤマが低いように思います。
あちらは短編でこちらは長編。普通に考えれば今作のほうが、読者を引き込め
る筈なんですが、いかんせん退屈でした。やはり映画を題材にしたした以上、
あまり奇抜なサスペンスというのは違和感があるのでしょうか。
ただこの作者が上梓する作品はいつも注目していますので、次作に期待です。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.5:
(3pt)

色々な意味で拍子抜け

本書は、「ジョーカー・ゲーム」シリーズで知られる著者の、戦時下の満州を舞台に、サスペンスとミステリーを混ぜ合わせたような一作。

著者のレビューで目立つ「ジョーカー・ゲーム」と違うというご意見は、本書にも共通するものだろう。
ミステリーとしての要素は希薄であるし(例えば、映画監督の名前が分かった時点で、!と分かってしまう)甘粕や石井に懇切丁寧な解説をつけているあたりもコアな読者にはヤレヤレだろう。「ジョーカー・ゲーム」と違うものを作ろうとする著者のアプローチは、もっとニュートラルに考えるべきところだろう。

とはいえ、では何を描きたかったのか?というところは大いに疑問が残る。
甘粕や石井あるいは満映という大きなギミックを用いた効果はあまり感じられなかったし、登場人物の通り一遍感も否めない。
流れるように美しいという、なんか出来のいいトーキー映画を見たような気持ちしか残らなかった。

ただし、そもそも、戦時下の満州や甘粕を描いたら、何か歴史とか戦争認識なんてもんをテーマにしろというルールがあるわけではないし、おそらく著者の狙いもそんなところにはないのだろう。
ただ、では、その狙いは何なのか?それが全く伝わっていない以上は、そうした点を完全に排除してスパイ・ミステリーに特化した「ジョーカー・ゲーム」的なものの方が分かりやすく面白いという意見はアリと思えるのが、残念でならない。

なお、1942年の新京での石井の暗躍、満州での甘粕のステータス、”甘粕”野枝という表記など、史実からみると違和感を受ける部分もある。あくまで、主人公が見聞した情報の中で組み立てられた内容と考えるべきと思う。(個々のエピソードは史実を題材としている)
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.4:
(5pt)

評価されてよい作品

「ジョーカー・ゲーム」とはまた違った味わいの作品。独特のユーモアがあり、ときおりくすりと笑わされた。読みやすく一気に読み終えてしまったが、あとで二重三重に物語が構築されていたことに気がつく。柳作品はいつも侮れない。

印象的だったのは、何人かの登場人物が突然姿を消すまたは死亡し、その後物語に一切登場しない点。恐らく意図的にやっているものと思われるが、これが軽い文体の中にも、全体に不穏なリズムと不思議な虚構感を与えている。

戦争前夜の混沌とした中で、登場人物の誰もが傷を負い、望んだような人生を送る事ができていない。その中で英一や桐谷監督が事態にどう対処し、何を選択したのか? 

映画も人生も、胡蝶の夢のように儚いものなのかもしれないが、それでも(だからこそ)、我々は前を向いて生きるのである。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.3:
(2pt)

もう少し、熱さと深さが欲しい

淡々とストーリが進んで、「もうこれで終わりなの?」という思いで読み終えました。映画への情熱というのもがそれほど伝わってはきませんでした。また、ストーリーのキーとなる事実についても、さほど衝撃度はなく、これが明るみなる経緯について、ご都合まかせのように思いました。前作の「パラダイス・ロスト」が大変魅力的な作品だっただけに、この作品でも、魅力的な主人公の活躍、というのを期待していましたが、登場人物のキャラクタ設定も少し中途半端で、あまり共感を覚えませんでした。次は、やはり結城中佐の活躍を読めることを期待したいです。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.2:
(5pt)

面白かったです!現代を生きる私たちが共感できる主人公の強さ

本当に面白かったです。
戦争が近づく気配を敏感に感じつつ、不穏な空気に不安を抱きながらも、目の前にある、自分が今守れるかもしれない、あるいは守りたいと思うものを、必死で守ろうとする主人公の英一。
「ジョーカー・ゲーム」シリーズの結城中佐のような超人ではないかもしれませんが、だからこその強さを魅せてくれていると感じました。
そんな英一は、現代という、ある意味不穏な空気の中を生きる私たちが強く共感できる人物だと思います。
英一を取り巻く人々も個性ある人たちばかりで、他の著作もいくつか読んでいますが、毎回、柳広司さんの筆力の高さに驚きます。
厳しい時代にあっても、未来への希望を持ち続ける、そんなラストも印象的でした。ユーモラスな場面もよかったです。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633
No.1:
(5pt)

待ちに待った新刊!期待通りの面白さ

ジョーカーゲームシリーズのファンで、待ちに待った新刊でした。
期待を裏切らない内容で、読んでいる間も読み終えた後でも、自分の中でストーリーが広がる、そんな楽しみもあります。
表面的には静かな様でありながら、深い、そんな文章力には感嘆します。
現代に生きる私たちにも共感できる人物や状況の描写が丁寧にされてるというのも印象的です。
読み直したら、また違う発見ができる作品に違いありません。
柳広司さんの新たな傑作だと思います。
楽園の蝶Amazon書評・レビュー:楽園の蝶より
4062183633

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!