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時間衝突



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【この小説が収録されている参考書籍】
時間衝突 (創元推理文庫)

時間衝突の評価: 4.17/5点 レビュー 6件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.17pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(5pt)

奇想にもほどがある時間戦争SF

傑作が多いベイリーの作品の中でもベスト級の傑作。
 『カエアン』、『禅銃』、『ロボット』、『短編集』と人によってベストが異なるとは思うけれど、私的にはやっぱりこれが一番。再読して改めてそう思います。次点が『禅銃』かな。
 12年前、出張帰りの車中で始めて読んだ時も傑作だとは思ったのだけれど、細かい部分は忘れてしまっていて、時間が衝突する凄い話だったという印象と、砂時計のイメージだけが残っていました。
 あらためて読み直すと、ベイリーの長編には珍しく、構成は思いのほかシンプルなことに気付きます。絶望感あふれる白人優生思想の軍国主義社会、異星人との大戦争の痕跡、ぶっ飛んだ時間理論、込みいった宇宙都市、裏がありそうな気もする親切な中国人などが次から次に登場し、また、登場人物の視点が次々と切り替わるため、ストーリーに翻弄されるように感じますが、基本線ははっきりしています。
 冒頭に登場する、徐々に新しくなっている遺跡という謎が物語を引っ張り、もしかしたら逆向きに流れている時間があるかもしれないという発想に、そんな馬鹿な話があるわけがないと思いながらも、縦横無尽に展開する奇想に引っ張られ続け、読み終えて思うのは、やっぱり、こんな話ってあり?という半ばあきれてしまう。じっくり考えるといくつか気になる点もありますが、それも気にならないくらい壮大に、かつ奔放に作り込まれた大怪作です。
 二者対立の構造が繰り返し描かれているのが隠し味でしょうか。
 ベイリーの小説には、人種差別や階級対立のように風刺なのかブラック・ユーモア(悪ふざけ)なのか理解に困るような設定がしばしば登場しますが、これは好き嫌いが別れるところかもしれません。
 漆黒の恒星間空間に漂う砂時計のような形のレトルト・シティのイメージが美しい。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011
No.5:
(5pt)

時間衝突

SF小説を探して居たのでとても良かった。気に入って居る。また探したい。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011
No.4:
(1pt)

楽しく読めない。

素直には楽しめない

「時間」を扱った全くの異色作。
時間の流れが複数ある という設定ならそれこそいくらでもあるが、
本書のように「同じ空間を占めながら、異なったそれも逆行する時間」を
扱った作は本書以外にはあり得ないだろう。

主人公も複数いる。「タイタン」の世界で考古学を専攻にする学者。
地球外に居住地を定めた(中国人を模した)レトルトシティの反逆者。
タイタンの総統すら主人公的役割を果たす。

文章も読みやすく、設定も優れているし、人物描写も深い。

だが、表題の通り「素直には楽しめなかった」。

理由は、あまりにも「生臭く」人物を描写していること。
タイタンの総統=リムニッヒは、そのままヒトラーを模した人物。

その言葉たるや、まるで実際のヒトラーが言ったような「人種差別用語」のオンパレード。
純血だの、混血だの「真人」だのの言葉。
著者が実際に思っているかと錯覚してしまう。

レトルトシティの住民は「チンク」。そのまま中国人のこと。
この単語を目にした時実に嫌な気持ちだった。
スペイン語の「チノ」と同じ、中国人の蔑称。そのまんまです。

また、物語の最終場面でタイタン軍の総攻撃があるが、それまた「特攻」の
ヨーロッパ版。

巧みにカリカチュアライズしてはいるが、アジアへの偏見を茶化したような言辞は
たとえフィクションとしても感心しない。

最悪なのがリムニッヒのこと。
本書を読んでユダヤ系の人なら、即この本を捨て手を消毒するだろう。
600万人(異説あり)の無辜の人を死に追いやった「ユダヤ人問題の最終的解決者」を
戯画化し、面白おかしく書いて、それで許されるというものではない。

はっきり言えば、著者の見識(そんなものがあるとすればだが…)を疑う。

たとえフィクションとしても、節度はあるべき。

読んでしばらくは気分が悪かった。

お勧めしない。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011
No.3:
(5pt)

本来の SF の姿

最近、事実に固執しすぎた科学空想小説を SF としているものがあるが、この小説はこれらとは一線を画する。本作は 1973 年の原著初版だが、その時点でこの作品の内容は全くの著者のアイディアが生み出した架空のものである。もちろん、相対性理論などはすでに知られてはいたが、作品中の「時間衝突」の基礎となる理論は全くの空想である。本来 SF とは科学を題材にした「空想/夢想」であり、そのため著者の発想こそが最も重要なものであると思っている(もちろん、後世に SF で描かれた事象が実現/証明されることもあるが)。その点で、この作品は真の SF だ。ベイリーのぶっ飛び加減には驚かされた。それでいて、彼の作り出した理論の中では、ほとんどの理論が矛盾がなく完結しているところにも力量を見せつけられた。ところで、支配種が白人で異系亜種が有色系、恒星間生命が中国人なのは意味があるのだろうか?。
 翻訳についてだが、多少物理学用語のわかりにくいところもみられたが、小説として非常にうまく訳してあるようだ。その点が、邦文で読む本書の面白さを引き出していると思う。この小説は理論物理学者には訳しにくいだろう(なにせ、根本の理論が矛盾しているので)。個人的には「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に次ぐ SF だと感じた。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011
No.2:
(5pt)

唯一無二の時間論SF

唯一無二の時間論が展開する独創的な時間SF。
そもそも時間とは一つしかないのか、ひょっとしたら時間は二つあるかもしれない。
と、この作品を読むまでそんなことは考えたこともなかったが、この作品では二つ存在するのである。
SFには、矛盾しない時間SFというものが存在するが、ひょっとしたらこれもひとつの矛盾しない時間SFなのかもしれない。
時間論が好きなら、考える価値のある作品。
そして、これを読まなければ思いつくわけもない時間論の作品。
ベイリーが生命といっているところを意識と置きかえれば、本当かもしれないと思える(ような気もする)しっかりとした時間SFである。鬼才と呼ぶにたるSF作家バリントン・J・ベイリーの代表作。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011
No.1:
(4pt)

交差する時間と世界と

これは大変な時間SFです。時間理論について書かれたところはむずかしいのですが、この作品に登場する複数の世界はなかなかおもしろいのです。はじめの物語の舞台は未来の地球、白人種による圧倒的な軍事支配と苛烈な人種差別にあえいでいる小さな世界です。なんでも、その昔、異星人の襲来によって地球上の文明の遺産がことごとく滅したらしいのです。それから暗黒の四世紀が過ぎ、異星人が姿を消したのち、文明再興。それだけ聞くと、めずらしくない設定だと思われる方も多いでしょうね。でも、ここに荒廃した異星人の遺跡を発掘する研究者たちがいます。物語は彼らのあいだからはじまります。というのも、彼らが今発掘している遺跡を写した古い写真が、あまりに奇異だったのです。なんとそこに写っていたのは、現在よりもはるかに古びた遺跡だったのです。三百年も前に撮られた写真なのに、なぜ今より荒廃が進んでいるのか――まさか遺跡がどんどん新しくなっている?
次の舞台は地球からへだたった宇宙空間。そこは生産系社会と娯楽系社会とが峻別された奇妙な世界です。暮らすのはすべて中華系の人々。その隔絶した社会のはざまに、ひとりの青年がいたたまれない面もちで立っていて、やがて歩き出し――複数の世界は、ついにまみえるわけです。こうなってくると、単なる時間SFとは言えないかもしれないですね。
時間理論はむずかしいのですが、あまり静的ではなく、時間線の交差など、たいへんスリリングな展開の連続で、まあ、大変な時間SFなのでした。
時間衝突 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:時間衝突 (創元推理文庫)より
4488697011

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