わたしを離さないで

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評判

わたしを離さないでの評価:

4.11/5点 レビュー 714件。 B ランク

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平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,119件 1,081〜1,100 55/56ページ
No.39
(5pt)

稀有な作家による驚愕の物語

前作「わたしたちが孤児だったころ」は少々物足りなかったが
本作は名作「日の名残り」に勝るとも劣らぬ傑作だと思う。
ではあるが、正直言って読後には背筋が寒くなるのを覚えた。
そして巷に溢れる数々の「ホラー小説」より、この作品のほうが
遥かに恐ろしいテーマを扱っているのではないかと思った。

「生命」に関する考え方が大きく揺れ動いている現在、
この物語の設定は荒唐無稽とは思えない。
「個人の尊厳」「人権」といった人類が長い歴史のなかで積み上げてきた倫理など
科学の暴走とそれを是とする人びとの前では何の価値もない、ということだろうか。

物語の終わり近く、キャシーとトミーが老いた指導教官をたずね、
善意と使命感に基づいて行動したはずの彼女から残酷な本音を聞かされる場面には、
イシグロの鋭い批判がこめられているように感じた。

「人間中心主義」の行き着く先、西洋の道徳感に潜む問題に対し、
鋭敏な感受性と批判力を備えたイシグロは、静かに異議を唱えているのかも知れない。
この優れた作家が同時代に存在することを幸せに思う。
また、原文の繊細な陰影を見事にとらえた翻訳にも敬意を表したい。



わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.38
(5pt)

生命の価値に複製もオリジナルもないという当然の帰結

家畜や奴隷に幸福はあるだろうか。思春期を含めて、青春や友人関係の喜びはあるだろうか。夢やアイデンティティを追い求める価値は?
 障害や病気、人種や貧困などによるマイノリティが、少数の富裕層や中流階級の幸福のために犠牲にされる構図は、本書だけでなく現代社会に厳然と存在する。先に「新しい世界」を手に入れた人々が、「古い世界」で生きている人々を「無慈悲」で「残酷」な世界に追いやる。多くの人はそのことに気づかず一生を終える。不思議だ、変だと思っても実際には行動に移すことはない。
 本書は学童期の「ヘールシャム」時代、モラトリアム期の「コテージ」時代、そして「一般社会」時代の3部に分かれており、主人公を含めて3人の運命が丹念に綴られている。彼らの決められた運命のごとく、全編閉塞感に満ち謎と不思議が覆っているが、主人公が真実に肉薄するとき、彼らの人生が一見悲しい中にも輝かしい光を帯びることになる。特にキャシーという感受性の強い魅力的な主人公の説得力ある語りによって、非現実的であるが、決してファンタジーとは言えないリアリティを、凄みを持って感じられる。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.37
(5pt)

生命の価値に複製もオリジナルもないという当然の帰結

家畜や奴隷に幸福はあるだろうか。思春期を含めて、青春や友人関係の喜びはあるだろうか。夢やアイデンティティを追い求める価値は?
 障害や病気、人種や貧困などによるマイノリティが、少数の富裕層や中流階級の幸福のために犠牲にされる構図は、本書だけでなく現代社会に厳然と存在する。先に「新しい世界」を手に入れた人々が、「古い世界」で生きている人々を「無慈悲」で「残酷」な世界に追いやる。多くの人はそのことに気づかず一生を終える。不思議だ、変だと思っても実際には行動に移すことはない。
 本書は学童期の「ヘールシャム」時代、モラトリアム期の「コテージ」時代、そして「一般社会」時代の3部に分かれており、主人公を含めて3人の運命が丹念に綴られている。彼らの決められた運命のごとく、全編閉塞感に満ち謎と不思議が覆っているが、主人公が真実に肉薄するとき、彼らの人生が一見悲しい中にも輝かしい光を帯びることになる。特にキャシーという感受性の強い魅力的な主人公の説得力ある語りによって、非現実的であるが、決してファンタジーとは言えないリアリティを、凄みを持って感じられる。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.36
(5pt)

こころが漂流している。

何もはっきりとは書かれていない。
秘密が明かされて行くのも、小出しにされるというよりも、
読んでいる自分たちさえ最初から知っていて暗黙の了解の上に会話をしているような気になる。
公然の秘密を共有しているような感覚。

曖昧な状況とは裏腹に、子ども時代からの心模様は過剰に思えるほど詳細で執拗だ。
始めから役割が決まっているとしても、逆らえない運命だとしても、
それが降り掛かっている人物にだって「ふつうの」感情があることを示しているのだろうか。
地に足がついていないというか、足をつけるべき地面がないような感じがするのは、
登場人物たちの不確かな境遇ゆえだろうか。

話したところでどうにも抗えないと分かってはいるけれども、
もしかしたらという気持ちを捨て切れない、あの妙な期待感を覚える。
訥々とした語り口からは想像もできないほど先を急ぎたくなる物語で、
キャシーたちの「ふつうの」しあわせを願わずにはいられなくなった。
それが叶わないことだと知っても。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.35
(5pt)

純粋な感情があふれる設定

前々作『充たされざる者』前作『わたしたちが孤児だったころ』で顕著になったと思うんですが、『充たされざる者』では都市に招かれた指揮者、『わたしたちが孤児だったころ』では若い私立探偵が、それぞれの表現・活動を通して世界を救おうという気持ちを持ちながら世界に翻弄されまくって、無力感の果てに感情を揺さぶられるという仕掛けになっていました。
この『わたしを離さないで』では主人公たちにある運命を課すことで、初めから世界を変える力を奪っています。世界に対する皮肉な見方も削げ落ちてしまったところで、浮かび上がってくる感情のナイーブな純度、閉ざされた生のなかで見られる夢の切なさは、ほかの作家の作品ではあまり体験できないものではないでしょうか。変な連想かもしれませんが、小津さんの「東京物語」を思い出してしまいました。
読み続けていてふっと感情がこみ上げてくるところが小津さんの作品に通じるような。世界に対してあらかじめ無力であると規定されることで感情が純粋にあふれる(その点だけで言えばやや実験的冒険的だった前2作より無理や破綻がなくて完成度が高い)というのは、そこまで世界が悪くなってしまっているということなのかもしれません。そして無力であると規定された主人公たちが、いまを生きる私たちのメタファーだとすると、こみ上げる感情を味わった後に残るのは、すごく苦い気持ちでもあります。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.34
(5pt)

こころが漂流している。

何もはっきりとは書かれていない。
秘密が明かされて行くのも、小出しにされるというよりも、
読んでいる自分たちさえ最初から知っていて暗黙の了解の上に会話をしているような気になる。
公然の秘密を共有しているような感覚。

曖昧な状況とは裏腹に、子ども時代からの心模様は過剰に思えるほど詳細で執拗だ。
始めから役割が決まっているとしても、逆らえない運命だとしても、
それが降り掛かっている人物にだって「ふつうの」感情があることを示しているのだろうか。
地に足がついていないというか、足をつけるべき地面がないような感じがするのは、
登場人物たちの不確かな境遇ゆえだろうか。

話したところでどうにも抗えないと分かってはいるけれども、
もしかしたらという気持ちを捨て切れない、あの妙な期待感を覚える。
訥々とした語り口からは想像もできないほど先を急ぎたくなる物語で、
キャシーたちの「ふつうの」しあわせを願わずにはいられなくなった。
それが叶わないことだと知っても。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.33
(5pt)

純粋な感情があふれる設定

前々作『充たされざる者』前作『わたしたちが孤児だったころ』で顕著になったと思うんですが、『充たされざる者』では都市に招かれた指揮者、『わたしたちが孤児だったころ』では若い私立探偵が、それぞれの表現・活動を通して世界を救おうという気持ちを持ちながら世界に翻弄されまくって、無力感の果てに感情を揺さぶられるという仕掛けになっていました。
この『わたしを離さないで』では主人公たちにある運命を課すことで、初めから世界を変える力を奪っています。世界に対する皮肉な見方も削げ落ちてしまったところで、浮かび上がってくる感情のナイーブな純度、閉ざされた生のなかで見られる夢の切なさは、ほかの作家の作品ではあまり体験できないものではないでしょうか。変な連想かもしれませんが、小津さんの「東京物語」を思い出してしまいました。
読み続けていてふっと感情がこみ上げてくるところが小津さんの作品に通じるような。世界に対してあらかじめ無力であると規定されることで感情が純粋にあふれる(その点だけで言えばやや実験的冒険的だった前2作より無理や破綻がなくて完成度が高い)というのは、そこまで世界が悪くなってしまっているということなのかもしれません。そして無力であると規定された主人公たちが、いまを生きる私たちのメタファーだとすると、こみ上げる感情を味わった後に残るのは、すごく苦い気持ちでもあります。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.32
(4pt)

不思議な本

こりゃあ、たいしたもんだ。うまくいえないが、そこはかとない感動があるな。ひょっとしてこれって俺たちのことかも知れんな。俺たちって、俺たちみんな、誰でもっていう意味だけど。特殊な設定にして問題点をわかりやすくしただけで。

俺は、「ブレード・ランナー」を思い出していたよ。

構成もみごとだし、論理もわかりやすい。たぶん訳もうまいんだと思う。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.31
(4pt)

不思議な本

こりゃあ、たいしたもんだ。うまくいえないが、そこはかとない感動があるな。ひょっとしてこれって俺たちのことかも知れんな。俺たちって、俺たちみんな、誰でもっていう意味だけど。特殊な設定にして問題点をわかりやすくしただけで。

俺は、「ブレード・ランナー」を思い出していたよ。

構成もみごとだし、論理もわかりやすい。たぶん訳もうまいんだと思う。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.30
(5pt)

A great story

It is such a beautiful, heart breaking, humane book. Using unbelievable imagination and extraordinary prose, author takes the reader deep into the minds and thoughts of cloned for purpose young people, exploring their spirits and souls. I will never let this book slip out of my memory. Also read- Quest by Giorgio Kostantinos. One word, Excellent.
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.29
(5pt)

Remarkable

This book was so well written, the subject matter so unusual, and the story itself so riveting that I read it almost straight thru. However, it was ulitimately very painful and disturbing ......much like Giorgio Kostantnos's "The Quest". A book I would highly recommend reading - but only once, maybe twice.
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.28
(5pt)

A great story

It is such a beautiful, heart breaking, humane book. Using unbelievable imagination and extraordinary prose, author takes the reader deep into the minds and thoughts of cloned for purpose young people, exploring their spirits and souls. I will never let this book slip out of my memory. Also read- Quest by Giorgio Kostantinos. One word, Excellent.
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.27
(5pt)

Remarkable

This book was so well written, the subject matter so unusual, and the story itself so riveting that I read it almost straight thru. However, it was ulitimately very painful and disturbing ......much like Giorgio Kostantnos's "The Quest". A book I would highly recommend reading - but only once, maybe twice.
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.26
(4pt)

あの曲、聴いてみたいなぁ

読みたい、と言うより、珍しく読まなきゃいけない気がして探していた小説。

昨日の読売新聞にこの作品に関して著者のカズオ・イシグロ氏が語ったインタビュー記事が出ていた。

「人は思っているよりずっと短い間に愛や友情を学ばなければならない。
 いつ終わるかもしれない時間の中でいかに経験するか」と。
単純明快な主題。

ああそうか。だから読まなきゃいけない気になったのか。

クローン人間たちの寮生活とその後を設定してあるが
最初は核兵器によって若いグループが人生を終えると言う設定だったと言う。

生きるためにやらなければいけないことがたくさんある。
愛や友情はそこと切り離したところにあるのではない。
「誠実に、日常と向き合う勇気だ。」記事はそう結んであった。

わたしを離さないで、が
わたしを消費しないで、の意味に響いたのは
わたしが日常をただ消費しているからだろうか。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.25
(4pt)

あの曲、聴いてみたいなぁ

読みたい、と言うより、珍しく読まなきゃいけない気がして探していた小説。

昨日の読売新聞にこの作品に関して著者のカズオ・イシグロ氏が語ったインタビュー記事が出ていた。

「人は思っているよりずっと短い間に愛や友情を学ばなければならない。
 いつ終わるかもしれない時間の中でいかに経験するか」と。
単純明快な主題。

ああそうか。だから読まなきゃいけない気になったのか。

クローン人間たちの寮生活とその後を設定してあるが
最初は核兵器によって若いグループが人生を終えると言う設定だったと言う。

生きるためにやらなければいけないことがたくさんある。
愛や友情はそこと切り離したところにあるのではない。
「誠実に、日常と向き合う勇気だ。」記事はそう結んであった。

わたしを離さないで、が
わたしを消費しないで、の意味に響いたのは
わたしが日常をただ消費しているからだろうか。


わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.24
(5pt)

歴史的傑作

タイム誌が1923年以降の作品から選ぶ
「all-time 100 novels」の中の一つとして選ばれた本作は、
疑いなくカズオイシグロの最高傑作と言ってよいだろう。
何十年かたった後、
我々よりもっと若い世代の人たちは、
この作品を生みだしてしまったイシグロの先見性と創造性にたいして
手放しの評価を送り続けることになるだろうと思う。
イシグロは一線を越えてしまった。
誰も踏み込んだことのない世界の地面に
偉大ながらも端正な足跡を残した。
我々は彼の手を握ってその世界へのジャンプを助けてもらえる。
この本はそんな本だ。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.23
(5pt)

歴史的傑作

タイム誌が1923年以降の作品から選ぶ
「all-time 100 novels」の中の一つとして選ばれた本作は、
疑いなくカズオイシグロの最高傑作と言ってよいだろう。
何十年かたった後、
我々よりもっと若い世代の人たちは、
この作品を生みだしてしまったイシグロの先見性と創造性にたいして
手放しの評価を送り続けることになるだろうと思う。
イシグロは一線を越えてしまった。
誰も踏み込んだことのない世界の地面に
偉大ながらも端正な足跡を残した。
我々は彼の手を握ってその世界へのジャンプを助けてもらえる。
この本はそんな本だ。


わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.22
(5pt)

傑作であることに疑いはない

翻訳も素晴らしいと思う。
ただし、「です・ます」調の訳文には、
微妙な違和感を覚えたことも否定できない。

これが『日の名残り』の執事であれば、
もってまわった冗長な言い回しを再現する上でも、
「です・ます」以外の選択肢はまず考えにくいところだが、
原書"Never Let Me Go"を初めて読んだ時に、
あくまで抑制の効いた全体の雰囲気とは裏腹に、
要所要所ではかなり直截、かつ切実な語り口が採用されていることに
きわめて強い印象を受けた覚えがあり、
それがどうにも「です・ます」とはそぐわないような気がするのだ。

そのことはおそらく、これまでのイシグロ作品では
全くと言っていいほど取り上げられることのなかった「性」が
殆ど即物的とも呼び得るやり方で取り扱われていることと、
いわば表裏一体の関係にあるのだと思うし、
待望の訳書を手にした時、帯の宣伝に
「ヤングアダルトの読者に読ませたい成人図書に
与えられるアレックス賞を受賞」
と書かれていたことからしても、
その読みはあながち間違いでもないはずだ。

冒頭では31歳と書かれているキャシー・Hが、
どのレベルの英語を操れる存在なのかということは、
実は本書の主題とも密接に関わる事柄なのであって、
訳者の土屋氏もそのことは重々承知の上で
あえて「です・ます」を選択されたということなのだろうが、
私の頭の中で鳴っているキャシーの語りは、
断然「だ・である」のほうなのだ。

本文から判断する限りでの彼女の性格にも
こちらのほうがぴったり来るように思うし、
彼女らが巻き込まれた非情な運命を描く上でも
むしろぶっきら棒というのに近いほど簡潔な表現法を取ったほうが、
より深い余韻を残せたのではないかという気がしてならない。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.21
(5pt)

傑作であることに疑いはない

翻訳も素晴らしいと思う。
ただし、「です・ます」調の訳文には、
微妙な違和感を覚えたことも否定できない。

これが『日の名残り』の執事であれば、
もってまわった冗長な言い回しを再現する上でも、
「です・ます」以外の選択肢はまず考えにくいところだが、
原書"Never Let Me Go"を初めて読んだ時に、
あくまで抑制の効いた全体の雰囲気とは裏腹に、
要所要所ではかなり直截、かつ切実な語り口が採用されていることに
きわめて強い印象を受けた覚えがあり、
それがどうにも「です・ます」とはそぐわないような気がするのだ。

そのことはおそらく、これまでのイシグロ作品では
全くと言っていいほど取り上げられることのなかった「性」が
殆ど即物的とも呼び得るやり方で取り扱われていることと、
いわば表裏一体の関係にあるのだと思うし、
待望の訳書を手にした時、帯の宣伝に
「ヤングアダルトの読者に読ませたい成人図書に
与えられるアレックス賞を受賞」
と書かれていたことからしても、
その読みはあながち間違いでもないはずだ。

冒頭では31歳と書かれているキャシー・Hが、
どのレベルの英語を操れる存在なのかということは、
実は本書の主題とも密接に関わる事柄なのであって、
訳者の土屋氏もそのことは重々承知の上で
あえて「です・ます」を選択されたということなのだろうが、
私の頭の中で鳴っているキャシーの語りは、
断然「だ・である」のほうなのだ。

本文から判断する限りでの彼女の性格にも
こちらのほうがぴったり来るように思うし、
彼女らが巻き込まれた非情な運命を描く上でも
むしろぶっきら棒というのに近いほど簡潔な表現法を取ったほうが、
より深い余韻を残せたのではないかという気がしてならない。
わたしを離さないで Amazon書評・レビュー: わたしを離さないでより
4152087196
No.20
(5pt)

面白かった

物語の世界に引き込まれて一気に読ませられた。
淡々と語られたその語り口とは裏腹な驚くべき世界。
誰にでもある若い頃の記憶のようでいて、読む進むうちに
明らかにされていく不思議で悲しい世界に胸うたれた。
家事の合間にも本をはなせなくなったほど。
 現実にはあり得ない、あっては欲しくない世界なのだけど、
数年前のねつ造ニュースの事を思い出すにつけ、
私たちに知らされないだけで、どこかにこんなヒロインが
現実に存在しそうな恐怖に捕らわれた。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517