折れた竜骨

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

折れた竜骨の評価:

3.87/5点 レビュー 97件。 S ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.87pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全101件 81〜100 5/6ページ
No.21
(5pt)

変化球ミステリの傑作

「折れた竜骨」米澤穂信さんのミステリ作品です。

 といっても、いわゆる通常のミステリではなくて、剣と魔法が存在する架空の中世イングランドが舞台のミステリです。普段の米澤さんのフィールドではないし、剣と魔法の世界で推理小説が成立するのかと心配になるむきもおありかと思いますが、これが実に見事にきちんとミステリしております。

 不死に近い肉体をもち、何百年も生きることが出来る呪われたデーン人(デンマークバイキング)に、十字軍の遠征地のペルシアから流れてくる魔法使いに、ギリシア時代の遺物のゴーレムを操るものなど、不可思議な魔法的存在と通常の人間が共存する世界の端っこにある島、ソロン。その領主ローレント・エイルウィンとその娘アミーナ・エイルウィンのもとに現れた聖アンプロジウス病院兄弟騎士団の騎士ファルク・フィッツジョンは、領主の命が狙われていると告げた。
 彼ら兄弟騎士団の不倶戴天の敵であり、暗殺を生業とし、魔術さえも操る暗殺騎士がローレントの命を狙っているのだとファルクは言うのだった。おりしも、復活したデーン人がソロンに攻めてくるという噂があり、ソロンの島には傭兵達が集まってきていた。彼らの中に暗殺騎士の走狗がいるのではと考えたファルクは警戒の目を彼らにも向けたが、悪いことにその夜のうちにローレントは暗殺されてしまう。
 かくして、ファルクとその従者ニコラ、そして領主の一人娘であるアミーナは、父を殺した犯人捜しを始めるが、果たしてうまく犯人は見つけられるのか。。。。

 

 というようなお話なんですが、結論からいうと冒頭で述べたように、これが実に面白く、かつまたミステリとしてもきちんと成立しております。魔法が存在するような世界で、きちんとミステリとして成立するのかとご心配のむきもあろうかと思いますが、巧妙な伏線や、精密なプロットのおかげで作品として見事に成立しております。
 著者ご本人もあとがきで触れておられますが、よく考えてみれば、こういう特殊な世界を舞台にした作品というのはいくつかあります。例えば、西澤保彦氏の「七回死んだ男」は主人公が同じ時間を何回も体験するタイムループの中での作品でしたし、山口雅也氏の「生ける屍の死」という作品は、一定の確率で死体が生き返ってしまう(つまりは殺人者は被害者に顔を見られたら即犯行がばれてしまう)という世界でのミステリ作品でしたが、どちらも傑作でした。
 そして、この「折れた竜骨」はそれらの作品に勝るとも劣らない作品です。確かに最後の謎解きのあたりは、新本格推理のバズラー的な要素が多くてちょっと説明に傾きすぎるきらいがありますが、それを除けば、剣と魔法の世界の話としても面白く、かつまた同時にミステリとしても面白いという作品に仕上がっております。
 なので、日常の謎系ミステリに飽きてしまった、現代を舞台にしたミステリに飽きてしまったという方には是非お勧めしたいと思います。
折れた竜骨 上 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 上 (創元推理文庫)より
4488451071
No.20
(4pt)

推理作家協会賞

推理作家協会賞。当然のごとく面白い。
ただ星を一個減じたには、本格ミステリとして見た時に多少の不満を感じたから。
それは《ある時ある場所にいないと知りえないことを、知っている人間の中に犯人がいる》
という大前提に対して、登場人物の誰一人として(そして恐らくは作者も)何の疑問も抱いていない点。
これだけ魔法使いやら超能力の持ち主やらが出てくるのだから、
《遠くにいながらにしてその場で話されていることを知りえる能力》の持ち主がいたっておかしくない。
その可能性もつぶしておかなければダメなのでは?
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.19
(3pt)

期待し過ぎた

ミステリとファンタジーの融合で、ミステリ部分は面白かった。
だけど、ミステリ以外の色々な要素(魔法、歴史、神話など)は、どっちつかずな作品というイメージ。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.18
(3pt)

ファンタジーの部分がミステリーのためのご都合主義に感じたのが正直なところ

12世紀末の中世ヨーロッパの世界が舞台。あとがきでいっているように、ファンタジーとミステリーの融合に取り組んだ作品だそうだ。

ソロン島の領主ローレント・エイルウインが殺された。暗殺騎士エドリックが使った魔術<強いられた信条>により、暗殺騎士の手先<走狗>になり、暗殺騎士に操られ領主を殺した。<走狗>として領主を殺した候補者は8人。
・アミーナ・エイルウイン
・家令のロスエア・フラー
・従騎士エイブ・ハーバード
・ザクセン人の騎士コンラート・ノイドルファー
・ウェールズ人の弓手イテル・アプ・トマス
・マジャル人の戦士ハール・エンマ
・サラセン人の魔術師スワイト・ナズィール
・イングランド人の吟遊詩人イーヴォルド・サムス
探偵役としては、ファルク・フィッツジョンとニコラ・パゴにアミーナ・エイルウインが随行する。

結局、ファンタジーの部分がミステリーのためのご都合主義に感じたのが正直なところだ。ファンタジーという特殊設定ゆえに、なかなか入り込めずに読みづらかったりするわけで、ファンタジーとミステリーの融合に成功しているかといえばそうではないんだろうね。結局中途半端になっているなあ。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.17
(5pt)

いくさ

戦闘が一度あります。

その描写がうまい、と思います。

一人称が女性であることはミステリーの世界では難しく、たとえばエラリー・クイーンでも失敗例があります。

この作品は一人称が女性であることにおいても成功していると思います。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.16
(1pt)

王宮系好きのマニア向け、よって楽しめず

まずはその舞台設定にアレルギーを感じるかそうでないかで作品の評価は決まると思う。

前半は、延々と作品の世界観や定義づけの理解に時間を費やすことになる。

ここで常人ならば読む気がうせる。

されど、そこを理解しないことには話は面白くないし、ミステリだとは理解できない。

出てくるキーワード、
騎士、魔法使い、魔術、領主、侍従、男勝りの女騎士…

まさに、ドラクエ系RPGで育った人間が作った作品で、そうした世界が好きな人間に楽しんでもらえればという、せま〜い読者をターゲットにした作品。

ということで、前半我慢して読んだけど、
結論としてOUT

ついていけません。

だから面白いという境地には到底達することはできない。

しかたなく、ざっと一気読み。

ミステリーの仕掛け自体は標準レベル出だろう。

マニア向けの作品。

この作品を2012の1位に推している某ミステリ雑誌があるけど、

結局、あの雑誌作ってる連中も王宮系が好きなマニアックな連中なんじゃないか。

米澤には期待しているんだけど。
ファン層を広げるもっと誰にでも楽しめる作品が書けるはずである。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.15
(5pt)

街で「折れた竜骨」って言葉を見かけた俺は・・・。

米澤穂信さんの作品は始めて読みましたが、とっても面白かったです。エヘヘ。
続けて「犬はどこだ」も読みましたが、「折れた竜骨」の方が好きです。違う人の作品みたいだったし。

魔法が無闇に万能ではない世界設定がグッと来ました。
化学実験みたいに、材料と条件が揃わないと発揮されないみたいな。
訳もなく指先から炎が出てきちゃう系の魔法だと、アメコミヒーローと区別つかなくなっちゃうし、
推理小説としてつまらなくなる気がするし、この設定は良いなぁとおもいますね。
ただアメコミヒーローみたいな魔法使いも好きなんですけどね。

戦闘描写も格好良くてしびれました。トリックもほど良い感じで気持ちが良かったです。
俺でも「も、もしかして、こうやってやったんじゃ・・・でもそうするととんでもなくやべー」とか
推理できましたし。
物語のその後も凄い気になります。弟子の成長とか。
と言うわけで、とっても面白い作品でしたが、
この本を読んだ方達にはタイトルの「折れた竜骨」の意味が分かってると思うんですが、
ってことは、い、今すぐ!!ってことなんじゃないんですかね!?
こ、これ以上は言えない・・・。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.14
(4pt)

予想外に面白かった

このミステリーはすごい2012年度版で上位にランキングされていたので、最近の本格ミステリーには愛想をつかしていながらもとりあえずという感じで手に取りました。
読み始めて、あれ?確かミステリーで、ファンタジーではなかったよね?と思いながら読み進めましたが、その分肩を張らずに気軽に読めたので、思いのほか面白かったです。
被害者は一人だけで、いつも疑問符がつく探偵役の立ち位置も、この時代背景の中での指名を果たすという説明ですんなりと納得できました。
また、ミステリーでのお約束である関係者全員を集めての謎解きも、「儀式」と置き換えれば違和感はありませんでした。
ミステリーにあたる「犯人」を犯行の記憶がない「走狗」と置き換えることにより、通常のミステリーでは「そんなんアカンやろ!」と、姑息な手段に見える展開もクリアしており、物語としても探偵役の心理を考えると行動に納得できます。
謎解きの最後で、兄弟のどっちなの?と少し混乱しましたが、終章の弟子の解説ですっきり解決しましたし、逆にそこが師匠と弟子の人間ドラマに厚みを増す結果となっています。
ラストシーンは今後の展開に想像が膨らみ、続編が読みたくなるような気分になりました。(実際には、続編は書かないでください)

最近のミステリーは、謎解きの手法や、トリックにこだわり過ぎて、本来読み物として楽しませるストーリーや、人物描写がおろそかになっているように思います。
でも、よく考えてみれば、中学校時代に好きだったポアロ物やコロンボ物で、今でも印象に残っているのは、トリックの妙や犯行の手法ではなく、事件解決後に見せるポアロやコロンボの人間味に溢れる台詞だったり、犯人に同情できるドラマ的な部分が大部分を占めています。
そういう意味では、本作品は充分及第点をつけることができ、ほかの方にもお勧めしたい作品です。

本作品の著者が、映画で散々だった「インシテミル」の著者であると、読んでいる途中で知りましたが、そちらも読んでみようと思います。


折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.13
(3pt)

うーん、そんなに完成されてるかなぁ?

まぁ、そこそこ面白かったですが
魔術の種類が限定的で、
この魔術は、こうゆうものだ!
的なルールの中での推理なので

何かと腑に落ちないなぁと
まぁ、限定しないとなんでもありになってしまいますが・・・

最終的に、ファルクが、ショボ過ぎませんか?
2つもかけられるなよ
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.12
(2pt)

ファンタジー部分が上手く描けていない

「面白い!」と思う読者と「つまんない!」と思う読者とではっきり分かれる作品かな?
残念ながら私は後者です。

中世ヨーロッパの架空の島を舞台にし、魔法というものが実在するという設定でのミステリー。
その設定にしっかりとのめり込もうと試みたのだが、ファンタジー部分の描き方があまり上手と
は言えず、正直最初の3分の2までは退屈で仕方が無かった。登場するキャラクターの個性を
作者が描ききれていないからではないだろうか?舞台設定に全然引き込まれていかないのだ。
せっかくの舞台設定なのだから、謎解き部分さえ良ければ良いというものではないだろう。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.11
(4pt)

魔法というルールを加えた犯人当てゲーム

ミステリーとしては、動機もトリックも飛ばして『犯人』当てにフォーカスした作品ですが、通常のミステリーと異なるのは中世ファンタジー世界を前提とした魔法等のルールの設定が加わっていることです。ただし、魔法もそのルールに従うので決してアンフェアではなく、筋道を立てた推理をすることは十分に可能になっていますし、犯人当てに関してはきわめて古典的な王道ミステリーの盛り上がりを楽しむことができました。それゆえミステリー好きにもオススメできますし、ファンタジーとミステリーのマリアージュがこのように可能だ、とミステリーの自由度を教えてくれた点から読んで良かったと思える本でした。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.10
(4pt)

見事な終わり方です

中頃にやや展開が遅いところがあり、読むのを挫折しそうになりましたが、ここの書評をもう一度読んでみて、終盤が面白いということが分かり最後まで読み通しました。読み通して良かったです。

終盤はテンポもよくどんどん読めていきます。そして何がなんだか分からなくなりそうにもなりますが、よくよく考えてみるとなるほどと分かって来ます。

あとがきによれば、問題編のようなところはアマチュア時代に書いたものがベースになっており、解決編がプロになってから書かれたものだそうです。そのあたりの影響もあるのかもしれません。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.9
(5pt)

面白かったです。

この作家の作品をかたっぱしから読んでましたが、3回も繰り返して読んだのはこの「折れた竜骨」だけです。
個人的にはこの作品が一番面白く、残念ながら他の作品は最後まで読めないつまらなさのもありました。(全作品を読んだわけではありませんが)

舞台はロンドンから船で三日かかる、ソロン島・小ソロン島。
魔術を使う暗殺騎士を追ってやってきた、騎士ファルクと従士ニコラ。そして主人公は領主の娘、16歳のアミーナ。
食べず眠らず、首を切り落とさないかぎり復活する不死の存在デーン人。 さらには個性的な傭兵たち。

暗殺騎士をつかまえようと動きだした矢先、ついに伝説の呪われたデーン人がソロン島にやってきます。
描写が丁寧でわかりやすく情景がイメージできます。またミステリーというよりも「読み物」として物語に入り込みやすいです。
ファルクとニコラは、那須雪絵の漫画「嵐が原」を、デーン人たちはプレステのゲーム「影牢」の刻人をイメージしてました(笑) 惜しむらくはアミーナの容姿がほとんど描写されていないこと。美少女だと思いたいですが。

最終的には犯人を暴き、納得できるような解決で、よく読むとヒントになるような伏線が張ってあり、わかりやすい謎解きになっています。

デーン人の呪いは解けるのか、暗殺騎士たちを追い詰め壊滅させることはできるのか、魔術とは何なのか、個性的な傭兵たちの結末は?ニコラの旅はどうなるのか?アミーナは?
物語としてはいくらでも広がりを感じられるので、続編を、いやシリーズ化を期待しています。

年齢不詳・身長が120センチという小柄ながらも、立派な剣士であるニコラにかなり萌えてしまいました(笑)
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.8
(4pt)

意外性という意味での面白さはありましたが・・

意外というかなんというか。
終盤にある大一番の戦闘場面の描写が上手かったと思います。
米澤さんの他作品では受けたことのない印象を受けました。
純粋なファンタジー小説など出せば、かなり面白くなるのではないでしょうか。

しかし推理パートは魔術などのファンタジー要素が入ってきてしまったせいで
微妙だったかな・・。

米澤さん自身があとがきで語ってたルール付けがそもそも曖昧だった気がします。
「主人公達が知らない魔術が行使されていて、絞込み対象以外の人が犯人でした」
という理屈も通ってしまいそうでしたし。
(例えば、他者の記憶を読める魔術師が○○で・・とか)

ファンタジー+推理にするなら、ハイファンタジーにしたうえで、ファンタジー要素に
厳密なルール付けを行ってやるべきではないでしょうか。
「魔法を使うならA→B→Cの前提条件/動作を“必ず”クリアしなければならない」
「魔法で行えることには制限があり、それはD、E、Fである」等。

楽しめましたが上記部分に引っかかりを覚えたので☆4とします。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.7
(4pt)

傑作ファンタジーであり、傑作ミステリでもある

舞台は魔術がいきづく十二世紀末のヨーロッパ

ソロン諸島で領主が殺害される事件が起きた

しかも、「呪われたデーン人」の襲来の危機が迫っており
島には騎士や傭兵が集められていた

領主を殺害してのは「暗殺騎士」だが、
彼らは魔術を用いる

今回も魔術が用いられたことが調査から判明し
その魔術とは人を操るたぐいのものであった

「暗殺騎士」に操られ、殺害を実行したのは誰なのか
それが、ミステリとしてのメインの謎

魔術が機能する世界で、
謎は論理的に解明されるのか

大変、興味深い作品でした

また、ファンタジーとしても
「暗殺騎士」「呪われたデーン人」といった敵勢力
魔術と剣が入り乱れる戦闘場面など
大変、魅力的でした

ミステリとしても、ファンタジーとしても傑作だった
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.6
(5pt)

あくまで正統ミステリーin中世ヨーロッパとして読むものなり

他レビューの中でファンタジーという言葉が何度も出てくるが、魔術や魔法使いが出てくれば何でもファンタジーと受け止めるのは、ゲーム世代なのだろうか?本作は、中世ヨーロッパ(英国)の架空の島を舞台としてはいるが、あくまで正統ミステリーであり、それを見誤ると評価も楽しみも的外れとなってしまうのではないか。(とはいえ、本書の宣伝がそうした勘違いを助長するものであることも否めないが)本作の舞台であるにおいては、魔術も青銅の巨人も吟遊詩人も社会に存在していた(注:むろん魔術も巨人もフェイクだが、当時の日本において百鬼夜行が在るものと思われたのと同様に、在ったということ)。剣と魔術をもって謎を解く主人公は、科学と拳銃を以て推理に挑む名探偵に他ならない。そして、彼は、剣と魔術に長けているが、その推理はあくまで「論理」(これが当時においては優れた知識であることも忘れてはならない)であり、剣も魔術もあくまでその論理や推理を引き立てる道具に過ぎないだろう。私は海外ミステリーを数多く読んでいないので不知であるが、「薔薇の名前」のようにミステリーで中世を舞台にしたり、本作のように魔術等も筋立てに用いた作品もあるのではないだろうか。本作の評価の結論としては、ミステリーとしての出来はウェルメイドであり、作者の技量の高さを再認識させるもの。しかし、ウェルメイドすぎて、舞台や仕掛けに凝った部分を使いきれていないという批判は成り立つとは思う。但し、そこを過剰に言い立てるのは、瑣末に過ぎるだろう。★としては、無条件には5つをつけたくないが、ファンタジーと読み違えての低い★を補うために、5つ付けます。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.5
(4pt)

グイン・サーガの外伝的な何か。

今までに読んだ米澤さんの小説といえば、主人公の高校生が初期の「北村薫」作品のような日常の延長線上にあるささやかな謎を解いていく話がほとんどだったので、いきなり中世のイギリスを舞台に、魔術師や騎士の推理ファンタジーを書いたと言われても、「ホントに面白いの、それ?」と懐疑的でした。でも実際に読んだ結論から言うと、予想外に面白かったです。傑作ではありませんが、良作でした。しかも、この米澤氏の新たな面を見せた小説は、同じ「薫」は「薫」でも「北村薫」氏ではなく、どこか「栗本薫」氏のグイン・サーガを想起させる仕上がりでした。登場人物の設定と世界観をちょこっといじれば、そのままグイン・サーガの外伝として成立しそうなくらい。特に、若くて聡明で度胸もある領主の娘(主人公)が、10代の頃のリンダの姿とダブりました。ただ、いろんな能力や過去を持った人達が登場したのに、そのほとんどがさほど活躍することなく物語が終わってしまったのは、やや消化不良気味でした。なので、もし今後この作品の登場人物が活躍する別の物語が紡がれるのであれば、ぜひ読んでみたいです。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.4
(4pt)

異世界が出来あがる

私は時たま、アトを引くファンタジーに巡り合います。 例を挙げるなら恩田陸さんの「ネクロポリス」や宮部みゆきさんの「ブレイブ・ストーリー」や平山瑞穂さんの「ラス・マンチャス通信」などです。この話もファンタジーとして、登場人物たちの行方が気になるものでした。でもこの話では、中盤までは捗りませんでしたが。 跡をひく程面白いと言っていいと思うのです。 ただ、途中までスピードが上がらなく、つまらんと考えていたのも私です。 そこでこう考えました。中盤までの間、ここの世界は未完成だったのではないかと。 本の中、つまり文章の上では最初から世界が存在します。でも、私の頭の中では出来あがっていなかったのではないか?そう思ったのです。私はソロン島という物語の舞台となった島を知りません。イギリスとも縁がある訳では無い。その私が想像できるソロン島は「ファンタジーの継ぎ接ぎ」でしか無かったのかもしれません。 そして中盤を超えて、世界が結ぶべき像を結んだ。という事ではないでしょうか。一度結んだ像はなかなか消えません。続編を読みたいですね。長いのでこれ良いかも、と思われた方は米澤穂信さんが続きを書かれる前に(書かれるか分かりませんが)読むことを勧めます。 ミステリーとしてファンタジーとして後半の盛り上がりっぷりは凄まじいものでした。 ハイファンタジーの「異世界が出来あがって頭の中に残るような感じ」もさることながら、この話は本格ミステリーでもあるのです。 かつて、出会った本格ミステリーの中でファンタジーと混ざっているにも関わらず、一番本格らしい本格だったような気がしています。とはいえ、私がミステリーに詳しくないのは確かです。 ただ、この話が、論点が明らかで、展開がスッキリまとまっている、心理が入り乱れている割に混乱させられない、という素敵な形にまとまっているのも確かです。クイズ集ではなく、物語としてまとめて、きちんと落とすところには落とす。読者にテキトウな読み物は読ませない作者の方の礼儀を感じました。 ミステリーのクライマックスとファンタジーのクライマックスが合わさったらこの話のクライマックスになります。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.3
(1pt)

ファンタジーの推理は表現できていない

米澤さんの作品は好きなのですべて読んでいるのですが、この作品は展開、結末ともに予定調和で全くといっていいほど楽しめませんでした。「強いられた信条」「走狗」「忘れ川の雫」など魔術が出てくるのですが、ファンタジーというには世界観が表現しきれておらず、推理物としてはファンタジー色が強すぎる推理が多く、ところどころでちぐはぐに感じる違和感を拭い切れませんでした。私はファンタジーは読者が物語に引き込まれ、納得できるだけの力がないと成り立たないと思っています。そういった点で作者はファンタジーには向いてないのではと感じずにはいられない作品でした。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657
No.2
(5pt)

魔術を踏み台とした、論理と理性の賛歌。

「理性と論理は魔術をも打ち破る。必ず。そう信じることだ」(p100)。魔術が跳梁跋扈する12世紀末欧州での殺人事件を、同じく魔術の心得がある騎士が推理する>という舞台で描かれたのは、魔術を踏み台とした論理と理性の賛歌です。まず、魔術が絡んだ「何でもあり」に見える謎が急所を突いた簡潔な論理で見事に解かれ、その時読者の脳裏に浮かび上がる画の魅力が素晴らしい。<二十年に渡り囚われ続けた不死の青年は、いかにして塔の牢獄という密室から脱出したのか?><蝋燭に火を灯せば姿を消せる、魔法の燭台を持つ盗賊のアリバイをどう証明する?> 謎は魔術によって怪しく彩られ、その分だけ、解き明かす論理の冴えを引き立てます。しかしそれにも増して、解かれることで、各人の謎が各人の人間性や背景を鮮やかに語ることがこの作品のより大きな魅力。例えば、解明と共に明らかになる「いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち」の内、幾人かの意地と屈折と誇りを目にしたとき、読者は彼らを好きにならずにはいられないと思います。また、(詳細は省きますが)この作品は容疑者が魔術によって「走狗」とされていることにより、ミステリとして、動機を問う「ホワイダニット(Why(had)DoneIt)を綺麗に取り除いている>ことに一つ妙味があるのですが、それによって喪われがちな物語の厚みをこうして補うところに、作者の技の冴えが感じられます。また、この作品が描く論理と理性の賛歌とは、単に理屈に頼ることや、事態を解説するなどということではありません。理性と論理を「掲げる」ということは、自らがそういう存在であろうとする、また、世界がより理性的、論理的であるべきだとする意志を持つということ。この作品は論理の鮮烈さよりも、むしろ論理を扱う理性、その意志を称える力強さによって、より魅力的になっていると思えます。<不条理と矛盾に満ちた世界の中で、論理が大きな「力」を持って立ち向かえる>というのは、(勿論全てではないけれど)少なくないミステリが共通して持つ志向であり、魅力です。ただ、論理が「力」になる以上、そしてそれを振るうのが一人の人間である以上、それをどう用いるべきか、用いて良いのか。それを扱う理性が大きな問題となります。この問題に対し過去の米澤作品、特に「古典部」シリーズの省エネ主義の折木奉太郎や「小市民」シリーズの二人などは、複雑な現代社会の中で、学生という保護された狭い世界に生きる立場と自覚から、大変消極的な態度が特徴でした。一方、『折れた竜骨』ではそもそも存在自体が連鎖する矛盾の中にある騎士とその弟子も、領主の子であり女であることで責務を負いつつ将来を厳しく縛られた語り手も、論理を理性の下に扱い、意志をもって「力」とすることと、その責任に対し大変意欲的です。 その理性、意志の賛歌が最も鮮やかに表れているのは、病院兄弟団の騎士と暗殺騎士、各々の弟子との関係のそれぞれの結末を巡る描写の対比。暗殺騎士の弟子の描写は極端に少ないのですが、鏡像の関係にある少年の描写を見ていけば、師弟の絆の重みは十分に察せられるところ。そして、物語の敵役たる暗殺騎士も知識への探求欲ゆえに堕ちた人物であり、弟子ともども、論理と知性の信奉者に他なりません。彼らの違いが、どこで際立つか。論理と知、そのもたらす力を扱う理性とは、どうあるべきか。物語はそれを、鮮やかに示します。そんなわけで、この作品は過去の米澤作品と比べてただ舞台設定だけでなく、その積極的な意志のあり方、描き方から見ても新境地であり、過去作品を踏まえるとなお面白く読めもする意欲作だと思います。一方で、初米澤作品として勧めるにも十分過ぎるほどに楽しいミステリであり、冒険小説でもあり、少女と少年の成長物語でもあります。『折れた竜骨』、傑作です。
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) Amazon書評・レビュー: 折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)より
4488017657