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【マイケル・バー=ゾウハー】
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無名戦士の神話の評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです
平均点7.00pt
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名も無き戦士たちへの痛々しい鎮魂歌
1984年5月28日、アーリントン国立墓地にヴェトナム戦争無名戦士の葬儀が当時のレーガン大統領の弔辞を伴って行われた。マイケル・バー=ゾウハーが選んだ本書の題材はこの史実に基づく無名戦士の身元を探る物語である。しかしそこはバー=ゾウハー、単に身元不明の遺体の正体を探るだけの話にはしない。その遺体に残された弾丸と手榴弾がアメリカ製であるという仕掛けを施す。つまりこの兵士が味方に殺されたのではないかというスキャンダラスな謎を放り込むのだ。その調査に挑むのが国防総省の行方不明兵士(MIA)事務局の局長ウォルト・メレディスだ。彼は自身の息子をもヴェトナム戦争で亡くし、その遺体が行方不明になったままだという過去を持つ。息子の死を知った矢先、当時勤めていたCIAを辞め、国防総省に移り、自ら行方不明兵士の調査に携わることにしたのだった。しかし妄執的なまでに調査に没頭する彼を恋人であるバーバラは息子の影を追っているだけだと糾弾する。しかし彼は国の為に命を投げ出した戦士たちが名も無き死体として葬り去られることの虚しさと、息子もしくは夫の帰りを待つ家族にきちんと区切りをつけ、ヴェトナム戦争を終わらせるために必要なことだと説く。つまり無名戦士の葬儀とはまだ同地に残るアメリカ兵士を歴史の翳に葬り去る行為なのだ。そして物語の渦中にある無名戦士の正体は物語中盤で判明する。海兵隊第37連隊の隠された8番目の兵士アンディ・カニンガム一等兵だった。彼の父親は第2次大戦のノルマンディ上陸作戦で活躍した英雄だった。そんな彼がなぜ無残に殺されなければならなかったのか?物語の後半はその謎の解明に費やされる。謎の解明に当たるウォルト・メレディスの前に立ち塞がるのが元第37連隊々員だったスティーヴ・レイニー。ある時は先回りして同士に連絡して協力しないように手を回し、中には既に自らの手でその命を奪った同胞もいる。それほどまでにして隠すアンディ・カニンガムの死とは一体どんなスキャンダルなのかと俄然興味が増してくる。しかしアンディ・カニンガムの死を巡る捜査は屍の山を累々と築いていく。第37連隊の生き残り、リンドン・ヒューズは自殺に見せかけて殺害され、と今回の事件の張本人スティーヴ・レイニーもまたウォルト殺害に失敗し、自ら死を選ぶ。そしてウォルトの捜索の良き理解者であり協力者であったMIA家族の会もまたウォルトから袂を分かつようになる。それほどまでアメリカが守りたかったアンディの死とは一体何なのか?最後の最後でようやく明かされる。しかし今なおヴェトナム戦争については語られることが多い。特にデミルはライフワークとしているようにも感じられる。そのどれもが異口同音に語るのが初めてアメリカが正義ではなくなった戦争だということだ。そんな無益な戦争で犠牲になった兵士たちが人間性を喪い、狂気に駆られてもはや普通の生活さえも送れなくなった戦争の惨たらしさが本書でも書かれているが、それは本当に人間のやることなのかと背筋に寒気が起きるようなことばかりだ。そんな戦争だったからこそ無名で死ぬようなことはあってはならない。無名戦士の名を明らかにすることはすなわち兵士を一人の人間として尊厳を取り戻すことに繋がるのだ。しかし、だ。本書を読んだ後では事はそう簡単ではないことに気付かされた。そういった意味では最後にカバーストーリーを仕立て上げたブリグズ大佐の行為は欺瞞ではあるものの、誰もがあるべきところに落ち着く結末ではある。正義と悪、敵と味方、そんな単純に割り切れない物を孕んでいるがゆえに真実は明かされない方がいいときもある。本書は戦争が決して英雄的行為ではなく、人間が生んだこの世で一番愚かな行為であることを示してくれた。従って英雄などいないのだ。そこにあるのは戦争を美化するための神話や伝説があるだけだ。真実は常にそんな美談とは対極の位置にある、バー=ゾウハーは静かに我々に教えてくれた。ミステリ以上の味わいをまたもやもたらしてくれた。しかし今回は殊の外、考えさせられ、苦かった。 ▼以下、ネタバレ感想
1984年5月28日、アーリントン国立墓地にヴェトナム戦争無名戦士の葬儀が当時のレーガン大統領の弔辞を伴って行われた。
マイケル・バー=ゾウハーが選んだ本書の題材はこの史実に基づく無名戦士の身元を探る物語である。
しかしそこはバー=ゾウハー、単に身元不明の遺体の正体を探るだけの話にはしない。その遺体に残された弾丸と手榴弾がアメリカ製であるという仕掛けを施す。つまりこの兵士が味方に殺されたのではないかというスキャンダラスな謎を放り込むのだ。
その調査に挑むのが国防総省の行方不明兵士(MIA)事務局の局長ウォルト・メレディスだ。
彼は自身の息子をもヴェトナム戦争で亡くし、その遺体が行方不明になったままだという過去を持つ。息子の死を知った矢先、当時勤めていたCIAを辞め、国防総省に移り、自ら行方不明兵士の調査に携わることにしたのだった。
しかし妄執的なまでに調査に没頭する彼を恋人であるバーバラは息子の影を追っているだけだと糾弾する。しかし彼は国の為に命を投げ出した戦士たちが名も無き死体として葬り去られることの虚しさと、息子もしくは夫の帰りを待つ家族にきちんと区切りをつけ、ヴェトナム戦争を終わらせるために必要なことだと説く。つまり無名戦士の葬儀とはまだ同地に残るアメリカ兵士を歴史の翳に葬り去る行為なのだ。
そして物語の渦中にある無名戦士の正体は物語中盤で判明する。
海兵隊第37連隊の隠された8番目の兵士アンディ・カニンガム一等兵だった。彼の父親は第2次大戦のノルマンディ上陸作戦で活躍した英雄だった。
そんな彼がなぜ無残に殺されなければならなかったのか?物語の後半はその謎の解明に費やされる。
謎の解明に当たるウォルト・メレディスの前に立ち塞がるのが元第37連隊々員だったスティーヴ・レイニー。ある時は先回りして同士に連絡して協力しないように手を回し、中には既に自らの手でその命を奪った同胞もいる。それほどまでにして隠すアンディ・カニンガムの死とは一体どんなスキャンダルなのかと俄然興味が増してくる。
しかしアンディ・カニンガムの死を巡る捜査は屍の山を累々と築いていく。第37連隊の生き残り、リンドン・ヒューズは自殺に見せかけて殺害され、と今回の事件の張本人スティーヴ・レイニーもまたウォルト殺害に失敗し、自ら死を選ぶ。そしてウォルトの捜索の良き理解者であり協力者であったMIA家族の会もまたウォルトから袂を分かつようになる。
それほどまでアメリカが守りたかったアンディの死とは一体何なのか?最後の最後でようやく明かされる。
しかし今なおヴェトナム戦争については語られることが多い。特にデミルはライフワークとしているようにも感じられる。
そのどれもが異口同音に語るのが初めてアメリカが正義ではなくなった戦争だということだ。そんな無益な戦争で犠牲になった兵士たちが人間性を喪い、狂気に駆られてもはや普通の生活さえも送れなくなった戦争の惨たらしさが本書でも書かれているが、それは本当に人間のやることなのかと背筋に寒気が起きるようなことばかりだ。
そんな戦争だったからこそ無名で死ぬようなことはあってはならない。無名戦士の名を明らかにすることはすなわち兵士を一人の人間として尊厳を取り戻すことに繋がるのだ。
しかし、だ。
本書を読んだ後では事はそう簡単ではないことに気付かされた。
そういった意味では最後にカバーストーリーを仕立て上げたブリグズ大佐の行為は欺瞞ではあるものの、誰もがあるべきところに落ち着く結末ではある。
正義と悪、敵と味方、そんな単純に割り切れない物を孕んでいるがゆえに真実は明かされない方がいいときもある。
本書は戦争が決して英雄的行為ではなく、人間が生んだこの世で一番愚かな行為であることを示してくれた。従って英雄などいないのだ。そこにあるのは戦争を美化するための神話や伝説があるだけだ。真実は常にそんな美談とは対極の位置にある、バー=ゾウハーは静かに我々に教えてくれた。
ミステリ以上の味わいをまたもやもたらしてくれた。しかし今回は殊の外、考えさせられ、苦かった。
▼以下、ネタバレ感想