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(短編集)

名探偵の掟



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名探偵の掟の評価: 5.27/10点 レビュー 11件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.27pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全5件 1~5 1/1ページ
No.5:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

本格推理の肝である「トリック」のトリセツ?

雑誌連載された12本の連作短編を収めた短編集。
本格推理でよく登場するトリックや犯罪の背景をテーマに、読者側、作者側の視点からさまざまな蘊蓄、揶揄、注文、考え方などを披露する一種のガイドブックである。密室、時刻表トリック、アリバイ崩しなど一作品一テーマで、登場人物がネタバラシ、作品世界からの逸脱などを繰り返しながら本格推理でのトリックの面白さ、陳腐さ、可能性を披露していく、いわば初心者読者向けのユーモア・パロディである。
純粋なミステリー作品としての評価はできないが、本格推理を読み進めるときにちょっとだけ役に立つトリセツとして読んで損ではない。

iisan
927253Y1
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

本格ミステリを揶揄しながらもハードルを高く上げる

東野圭吾氏が本格ミステリにありがちなお約束事やコードといったものを痛快に皮肉った名探偵天下一大五郎と大河原警部二人のシリーズ連作短編集。

密室殺人を皮肉った「密室宣言」。Whodunitでお決まりの意外な犯人像を探し当てる「意外な犯人」。「屋敷を孤立させる理由」は本格の王道「吹雪の山荘」の中で繰り広げられる殺人事件を追った物。「最後の一言」はダイイング・メッセージが、「アリバイ宣言」はその題名どおり、アリバイ崩しのミステリ。変わった趣向なのが『「花のOL湯煙温泉殺人事件」論』は二時間ドラマのシステムを踏襲した内容。「切断の理由」はバラバラ殺人事件の「なぜ犯人は死体をバラバラにしたのか」を解き明かす。

「トリックの正体」は作中ではそれを語ることでネタバレしてしまうと伏せられているがここでバラしてもたぶん大丈夫なので書いてしまおう。一人二役トリックを扱っている。そこでは小説が文字でしか読者に表現していないことを逆手に取ったギャグで最後は締められる。
「殺すなら今」は童謡殺人を扱っているが、その中身は便乗殺人である。東野氏の捻くれた物の考え方がうまくブレンドされ、特にタイトルの意味が解る最後の一行は秀逸。

「アンフェアの見本」はどんなトリックは書けない。しかし東野氏がある有名な作品に対して持っている考えが解ってしまった。

「禁句」は首なし死体を扱っているが、まさに禁句のオンパレード。死体に首がない時点で被害者が他人と入れ違っているのは当然だろうとか、特に最後の台詞―ご都合主義はトリック小説には付き物でしょ―は、それを云っちゃあおしまいだよというものだった。

「凶器の話」では消えた凶器の正体がテーマ。これはその凶器の正体よりも最後に判明した新事実を名探偵の推理を守るために警部がもみ消すところが最大の皮肉。

エピローグはシリーズキャラが犯人という意外性を扱っている。これは当時連載されていた推理漫画『金田一少年の事件簿』を皮肉ったものなのか。

そして最終エピソード「最後の選択」は西野刑吾というどこかで聞いたような名前の符号が所有する無人島に天下一含め10人の探偵が集い、連続殺人が起こるという話。それぞれの探偵が古今東西の名探偵を髣髴させるキャラであり、それぞれを辛らつに貶している。そしてタイトルにある「最後の選択」はシリーズ探偵の存在意義を問うもので、案外内容的には深い、かな?

本書はとにかく普通の短編集ではない。登場人物が小説世界にいながらにして途中でメタの存在となり、自らの置かされている状況について色々不満を述べ、時には作者を貶したりする。事件も通常のストーリーのようには展開せず、ミステリにありがちな手続きに関しては省略されるし、時には事件に直接関わりあいのない人物は男性Aだの女性Bだのと簡略化される。
そう、本書で語られるのは物語ではなく、本格ミステリという作り物の世界が抱える非現実的な設定や内容に対する揶揄や疑問のオンパレードなのだ。

しかしそれでも一応トリックはあるし、それなりにオリジナリティも感じられる。自分の知っている限り、他の作家のトリックをそのまま転用した物は見当たらなかった。
もともと東野氏はトリックを創出することに苦労はしないと云っているから、これは東野氏の数あるトリックネタの棚卸しなのでもあろう。

とにかく本格に対する揶揄の連発が非常に小気味良い。エッセイで東野氏のギャグと毒のある語り口は一躍有名になったが本書でもそれは健在。いわゆる本格ミステリのお約束とも云える暗黙のルールについて敢えて鋭いツッコミを入れることを辞さない。
これは東野氏の本格ミステリからの訣別の書なのか?
いやいや逆に本格ミステリを愛するが故の提言と理解しよう。
なぜならこの後、東野氏は敢えて最後に犯人を明かさずに読者に推理をさせる実験的小説『どちらかが彼女を殺した』や『私が彼を殺した』といった野心的な本格ミステリを続けて書いているし、科学とトリックを融合させたガリレオシリーズも書いているからだ。
逆に云えば、ここには本格ミステリが抱える不自然さを敢えてこき下ろすことでその後の自作については決してそんな違和感を抱かせないぞと、ハードルを挙げているような感じさえ取れる。

本書における東野氏には、今まで作者自身が抱いていた違和感を忌憚なく語ることでふっきれた感さえ感じられる。

そしてこの作品を読んで「ああ、面白かった」で済ませてはならないだろう。これは東野氏が今までのミステリではもうダメだと明言しているのだから、今の本格ミステリ作家、これから本格ミステリを書く人たちは本書に書かれた示唆を踏まえてミステリを書かなければならない。
本書が刊行されたのが1996年6月。既に22年以上が経過しているが、果たして本格ミステリは変わっているだろうか?

この“本格ミステリ啓発の書”は本書で終わらず、さらにもう一冊『名探偵の呪縛』が刊行されている。
そちらもまたどんな東野氏の皮肉と歪んだミステリ愛が語られているのか愉しみだ。

Tetchy
WHOKS60S
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

名探偵の掟の感想

探偵小説をパロディーにした短篇集で賛否両論のある作品ですが、結構面白かったです。
一部「おいおい」と突っ込みたくなる話もありますが、次はどこ(推理小説の定番)をいじるんだろうというのを推理しながら読むと結構楽しめると思います。

フレディ
3M4Y9ZHL
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

名探偵の掟の感想

本格ミステリや探偵小説のお約束・タプーに踏み込む話。こんな話も書くんか~って感じでした。

水生
89I2I7TQ
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

あるある!

読んでて「あるある!」って思えるユーモアを交えた皮肉な発言が面白かったです。
愛情あるからこそ書けるお話しですね。

ゆー
98N04ZLM

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