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真夜中は別の顔



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真夜中は別の顔の評価: 10.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

これはぜひ読んでほしい!

さて私がシドニー・シェルダンの作品の中で何が一番面白かったかと問われれば、本作を躊躇なく挙げるだろう。というよりもシェルダンの作品を読んだ方の多くは『ゲームの達人』か本作を挙げる方ばかりではないだろうか。
当時からシドニー・シェルダンの小説は社会現象になるまでになったと思うが、本作でその頂点を迎えたように思う。日本でドラマ化されたのもむべなるかなと思うくらいストーリーに起伏があり、先が読めない作品だ。『ゲームの達人』もドラマ化されたがあれは当時まださほど普及していなかったNHKの衛星放送であり、万人が見れるものではなかったが、本作は民放局のテレビ朝日がゴールデンタイムにドラマ化したのだ。それからも本作の人気の高さが伺えるものと思う。今でいうならば『ダ・ヴィンチ・コード』を日本の民放局がドラマ化すると同じくらいか(違う?)。しかし私はこのドラマを観なかった。本のイメージが崩れると思ったので、それは家族全員意見が一致し、一度もチャンネルを合わせる事はなかった(たしか当時母がノエル役の黒○瞳をあまり好きではなかったことも一因だったように思う)。個人的には過激な描写(特にノエルのパート)の多い本作をどう映像化するのかと、思春期独特の好奇心があったのだけれど。

まず開巻してすぐに本作のクライマックスから始まる。それは世界中が注目する大裁判が開かれようとしているというシーン。つまりここで物語の収束する先を読者はあらかじめ知らされるわけだ。しかもこの裁判というのが実に大規模。なんせその裁判を傍聴せんがために自家用ヘリや自家用ジェットまで動員して世界中のセレブが我先にとその地を訪れるという派手さ。この時点でもう読者である私は物語に釘付けである。
そこからはシドニー・シェルダンのいつもの作風とも云える主要登場人物の成立ちが語られる。しかし本作の面白さは並行して語られる主人公の2人の女性の対照的な人生に尽きるだろう。キャサリンとノエルの生き様はまさに太陽と月のような趣で繰り広げられる。

いつも天真爛漫で想像するのが大好きなキャサリンと不遇な出自から貧しい人生を運命付けられたノエル。どちらも美貌を備え、持ち前の行動力で自らの人生を切り開いていこうとするヴァイタリティに溢れている点では共通しているが、その生い立ちはかなり異なる。
特に衝撃的なノエルの方。というよりももはや読んだのが20年くらい前でもあることで強烈な印象を残すノエルの方しか覚えていないというのが正直なところだ。
金持ちと結婚することを人生の目標とし、己の美貌を武器にのし上がろうとする彼女は悪女になることも辞さず、体を売ることも厭わない。特に今でも鮮烈に覚えているのは堕胎のシーンだ。確か妊娠の相手は本作の中心人物のプレイボーイのパイロット、ラリーだったと思うが、彼女を裏切った恨みを、憎しみを敢えて体に染み込ませるために堕胎が危険と思われる妊娠月まで子供宿し、医者に掻き出させ、最後にはハンガーのフックを自ら膣に突っ込んで引きずり出すという恐ろしいまでの女の情念を滾らせる。このシーンは魂が冷えたなぁ。

本作で忘れてはならないのはコンスタンティン・デミリスという大富豪の存在。彼は本作では影の主人公というべき存在になっている。貰った恨みは決して忘れずに、復讐する。それが何年経とうが、相手が忘れようが必ず行うという大富豪だ。金持ちは寛容であるという定説を覆すかのような人物設定に、当時は映画『アンタッチャブル』でデ・ニーロが演じたアル・カポネを重ね合わせていたが、作中では確か小柄ながらも髪はふさふさで中肉の体型だったように描写されており、全然イメージが違う。
で、最後に立ち上るのはデミリスという男の恐ろしさ。彼はやはり復讐を忘れなかったというのを最後に読者の眼前に叩きつける。詳細を書くとネタバレになるので云わないが、この結末で本作は傑作と呼ばれるようになったように思う。そしてシェルダン作品では珍しく続編を匂わす閉じられ方をしており、事実、『明け方の夢』という続編が書かれる。

本作でおなかいっぱいになり、これ以上何を書くことがあるのかと思いきや、その続編もまた読ませる内容になっており、巻措く能わずを約束してくれる。それはまたそのときに感想を述べたいと思う。

Tetchy
WHOKS60S

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