(短編小説)
私刑
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大坪砂男の作品を読んだのは本全集が初めてで、1・2巻は唸りながら読んだ。 “凄い”で済ませちゃいけないんだけど、凄い小説家だなあと素直に思った。 3巻はサスペンス篇。個人的には本書所収の作品群は好み。 翻訳風のハードボイルドではなく、日本のハードボイルド。論理的に構成された情緒。 鈴木清順に映画化してもらいたいような感じ。 描写コンプレックスを克服しようとしたのか、一人語りの文体や会話が大半を占める作品もある。もしかしたらコメディなどエンターテイメント系もイケるのかなとも思わせる。 一方で、書きなぐったような、売文めいているような、そんな作品もあり、何かしらの事情を抱えていた時期もあったのだろう。 でも、勢いでも売文でもよいので、もっと書いてほしかったなと思う。書きまくることで開ける世界もあったのではないだろうか。 | ||||
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サスペンス編と謳われているが、ストーリー性の高いものを集めた作品集。 「本格」や「奇想」よりも、矢張りこのストーリー性の高さが著者の真骨頂と云う気がする。ちなみに本巻に収録されている評論やエッセイの中に、著者が筆を折った後、プロットを売っていたエピソードが書かれており、「眠狂四郎」のシリーズ中にも該当するものがあると知り、成る程と想った。ミステリファンからは怒られそうだが、謎解きよりもその凝った文章よりもキャラクターとストーリー、この二つの要素こそ、この著者の誇るべき特徴であり、その意味では本巻と前の巻に収録された時代小説編、それ等に含まれる作品が著者を代表する作品と云えるのではないだろうか。 | ||||
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山村正夫は『わが懐旧的探偵作家論』で大坪砂男について「後期になるほど破綻が目立ちはじめた」と語る。 サスペンス篇とカテゴライズされた第3巻。冒頭の「私刑」「夢路を辿る」(昭24)「花売娘」(昭25)あたりの初期作はさておき、 それ以降の筆に徐々にどういう変化が起きているか?それを頭に置きながら読んでみた。 叙情的な小品「街かどの貞操」「初恋」犯人当て物「ショウだけは続けろ!」米映画のノベライズ物「二十四時間の恐怖」「ヴェラクレス」等、 本全集1巻『立春大吉』収録作に比べると、プロットの奇妙さ・語り口の凝り様が随分落ち着いてしまった感はある。 とはいえ、卵の黄身が鍵となる旧家因縁物「男井戸女井戸」は佳作で、 横溝正史の中絶作「病院横丁の首縊りの家」解決篇を完成できなかった大坪が改めて書き下ろした死婚ネタ「ある夢見術師の話」も注目。 山村正夫が言うほど作が破綻しているとは思わないが、昭和26年には筆名を「沙男」に変え昭和28年には「砂男」に戻したり、 この時期に何らかの迷いが生じているようにも見える。世間でいうほど厳しく一語一文凝りまくる姿勢で貫けてはいない。 なぜ彼が長篇を一作も書こうとしなかったのかも、いまひとつ私には見えてこない。 初期の濃密さならともかく、いくら頑固とはいえ上記のようなノベライズ物を手掛ける位なら、やってやれない事はなかったように感じるのだが。 戦後は探偵作家クラブの仕事に従事するため、構想・執筆の時間を持てなかった探偵作家はいる。 江戸川乱歩がその筆頭だが、大坪も余波を被った一人かもしれない。まして寡作の上、主戦場たる雑誌『宝石』の原稿料は安すぎるときている。 そこから来る貧苦。趣味人に見えても実は心に脆さがあって、それが探偵作家クラブ幹事長期の経理不始末に繋がっていったのではないだろうか。 | ||||
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収録作品 「私刑(リンチ)」 「夢路を辿る」 「花売娘」 「茨の目」 「街かどの貞操」 「初恋」 「外套」 「現場写真売ります」 「第四宇宙の夜想曲」 「密航前三十分」 「ある夢見術師の話」 「男井戸女井戸」 「ショウだけは続けろ!」 「電話はお話し中」 「危険な夫婦」 「彩られたコップ」 「二十四時間の恐怖」 「ヴェラクルス」 サスペンス・犯罪小説系統の作品を集めた全集第三巻。 表題作は第3回(1950年)日本探偵作家クラブ賞短編部門を受賞した著者の犯罪小説の代表作。 (因みに長編賞は高木彬光『能面殺人事件』であるのが後年、大坪と高木が文学派と本格派に分かれて論争したいわゆる[魔童子事件]の因縁を思わせ興味深い) 「私刑」は日本流のハードボイルドを志向して執筆した作品らしいが無頼の世界を描いた非情と世話物のような情念があいまった独特の迫力を持った短編。乱歩が著者を評して、時に西鶴調になるといった評言が首肯できる。 「男井戸女井戸」は弟子の都筑道夫が代表作の一つと評価していた作品だが、その都筑が翻訳した[エラリークイーンズミステリマガジン]コンテスト受賞作の某短編と酷似した基本アイデアなのが面白い。戦国時代の武将の故事に犯罪者の異常心理をなぞらえた傑作。 大戦後の焼跡を舞台にした「花売娘」「外套」「街かどの貞操」の乾いたロマンティシズムにも得がたい個性が感じられる。 「私刑」の劇画版や映画のノヴェライズまで収録した編集にはいつもながら大いに敬意を表したいが、いわば売文仕事であった「二十四時間の恐怖」や「ヴェラクルス」の小説版にすら文体への拘りを感じ、著者の業めいたものを感じて驚く。 巻末に収められた中島河太郎による解説の再録も貴重だが、それに増して筆名の由来となった「砂男」の作者ホフマンの生涯と著者のそれを対比させた紀田順一郎氏の書き下ろしエッセイが興味深い。大坪砂男という作家の人生そのものが数奇で特異な一編の物語として完結しているのだった。 | ||||
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