僕を殺した女
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種別
長編
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あらすじ
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評判
僕を殺した女の評価:
6.50/10点 レビュー 4件。 B ランク
僕を殺した女の総合評価:
5.57/10点 レビュー 14件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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デビュー以来覆面作家として創作を続ける作家北川歩美氏のデビュー作。
ある日目覚めると女になっており、しかもその世界は五年後の世界だったというSFとしか思えないこの設定に論理的解明を試みた野心作。本作は当時日本推理サスペンス大賞に応募され、惜しくも当選を逃したが編集者の厚意により、加筆訂正をした上、出版された。
その選考会に参加したある書評家が某所で述べた、「実は今年最も印象に残った作品は某ミステリ賞に応募された『僕を殺した女』だったりする」というコメントが非常に印象に残っており、それが本作を、そしてこの北川歩美という作家に興味を覚える契機になったのは間違いない。
このどう考えても論理的に解明できない設定をどう料理するか、それを作者は作中人物の僕こと篠井有一の口から色々な推論を繰り広げる。
1995年のヒロヤマトモコと1989年の僕がお互いに異次元の扉を通った際に空間の捩れによって精神が入替ったというやはりSF的な論理展開を皮切りに多重人格論、2人の脳を入れ替えて起きた脳移植という推理。
精神異常者であった2人が精神病院で邂逅し、濃密な関係を築き上げていった際にそれぞれの心にお互いの人格が住み込んでしまった精神共有論。
篠井有一とヒロヤマトモコ2人の精神はそのままでお互いに性転換手術を受けた、などなど、その論理はどんどんこちらの予想を超えてエスカレートしては消去されていく。これは云い換えれば作者自らが合理的解決の選択肢を狭めていっており、かなりハードルの高い趣向をこらしていると云えよう。
特に混乱を誘うのはヒロヤマトモコなる女性の人生がそれまでに存在し、さらに彼女の意識に入り込んだ主人公篠井有一の人生も、失われた5年間の人生も存在するということだ。
さらに彼を取り巻く登場人物らも物語が進むにつれ、隠れた秘密が見えてくる。同性愛者、レイプされた女性から生まれた子供、近親相姦者と、アブノーマルな人間どもが織成すフリーク・ショーのような様相を呈してくる。
本作が刊行された90年代というのは、なぜか世間で自分探しというのが一大ブームとなった。バブル経済という幻想から覚めた人々が、それまで外側に向けていた意識を自分のアイデンティティという内側へ向けだした、そんな時代だった。
他者から見た自分とは一体どんな人間なのか。一番よく知っている自分のことを実はよく知らないのではないか。自然、小説やドラマもそれを扱った物が増えてきた。
特にTVでは『それいけ!ココロジー』という心理テストを扱った番組がちょっとしたブームになり、関連書籍も多く出た。本作も当時ブームだった「自分探し」をテーマにしている事は容易に読み取れる。
ただ謎は魅力的だが、最後に明かされる真相は複雑すぎる。色々詰め込みすぎで、特に後半はどんでん返しが執拗に繰り返され、その都度頭を整理する必要に迫られて、理解に困難を生じてしまうのが惜しいところだ。
方程式が美しく解けていく様を見ているというよりも、複雑で入り組んだ論理を勉強しながら読み解くといった感じか。
やはり魅力的な謎は割り算のようにスパッと割り切れるくらいの明快さを求めたいところだ。実にサスペンスフルな作品だっただけにそれだけが悔やまれる。
▼以下、ネタバレ感想