十二支像を奪還せよ
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| スタイリッシュな青春小説。ケイパー小説の体裁を取ってはいますが、ケイパー小説とは呼べません。それが新しさなのかどうかは私が判断できることではありません。 かつて失われた「円明園」にあった十二支の動物像。その中、五体の像は依然として行方不明のままでした。それらの像をスウェーデンの「ドロットニングホルム宮殿」、フランスの「フォンテーヌブロー宮殿」、その他から奪い取ろうとする若き五人の中国系アメリカ人たち。 リーダーは、ハーバード大学生、ウィル・チェン。"決して失敗しない"ウィルの妹、アイリーン。ガルベストン出身、アイリーンのルームメイト、リリー(彼女は美しきストリート・レーサーです)。ウィルの親友でもあるUCLAのダニエル。彼の父親は、FBIの美術品犯罪課に所属する捜査官(この設定が、鍵です)。最後の一人は、Google勤務、ソフトウェア・エンジニアのアレックス。昨今のケイパー小説に不可欠の役割です。彼女が実を虚に変えてしまう存在です。しかしながら、彼らは<悪党パーカー>たちのようなプロフェッショナルではなく、それぞれが将来を憂う五人のアマチュアであるに過ぎません。 最初に不満を言ってしまうと、ケーパー小説の要であるいくつかの収奪シークェンスについて、リアリティを上げるべく書き込まれなければいけないディティールが書き込まれず、上手に省略されています。それについては、これも要であるべきアレックスのハッカー・シーンが雰囲気を醸し出してはいるものの説得力のない<か弱さ>を露呈しています。 さあ、物語に戻りましょう。 米国から、中国へ、世界へ。そのストーリーの拡がりがまず魅力的でした。五人の中国系アメリカ人にとって、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコと米国の主要チャイナタウンが果たす影響力について窺い知ることもできます。私が知っている中国人たちは生活拠点を米国、カナダへ移すことについて躊躇いがありませんでした。何故なら、彼らには生きる術を得られる<チャイナタウン>の存在があったからと言えます。 不確かなアイデンティティの確立に向けて若者たちは懊悩し続けます。その果てしない苦悩については、誰もが通りすぎる一過性のこととは言え、計り知れない。(誰も聞いていませんが、私もまた苦しかった(笑)) ダニエルがアレックスに言うように 「・・・植物の成長を早めようと思って、苗を引っぱりあげたらどうなるか」(p.127) そう言う意味では、この物語は自分自身を無理やり引っ張り上げようとする物語と言っていいのかもしれません。 彼らは、アメリカで育ったアメリカ人であり、中国は自分の故郷にはなり得ない、自分自身は「根なし草」なんだというアイデンティティの喪失について、繰り返し記述されています。その激しさは、私にはないものであり、そこに何がしかの悔しさを感じたりもしました。そして、そのことはこの小説の最大のテーマへと繋がっていくわけですが、これもまたスリラーですからそれをここで詳述する権利は私にはありません。 それにしても、パリでストリート・レースに臨むリリーがすこぶる魅力的でした。銀色のエンジンとアドレナリン。黄色いランボルギーニと黒い艶消しのブガッティ。ルルーシュの「男と女」の昔から何故かパリのストリートには車がよく似合う。 ▫️「十二支像を奪還せよ "Portrait of A Thief"」(グレース・D・リー 早川書房) 2025/10/10。 | ||||
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