孔雀と雀 アラブに消えゆくスパイ



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初公開日(参考)2025年03月
分類

長編小説

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アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)

2025年03月19日 アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)

エドガー賞最優秀新人賞ほか7冠の傑作スパイ小説 CIA職員シェーンの最後の任務は中東バーレーンの反政府運動を探ること。だが、爆破テロが国王の自作自演である疑惑が浮上し……(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

孔雀と雀 アラブに消えゆくスパイの総合評価:8.67/10点レビュー 3件。Bランク


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(8pt)

死ぬまで疑い続けるしかない、スパイの宿命

デビュー作にして2023年度エドガー賞最優秀新人賞を受賞した、本格スパイ小説。激動期の中東でCIAケースオフィサーとして勤務した著者が、その体験をベースに書き上げた、リアリティ豊かなスパイ・サスペンスである。
バーレーンのCIA支局員・シェーンは、自分の息子とさして歳の違わない上司にうんざりしながら適度に仕事をこなし、酒浸りで年金を貰える日を待っていた。それでも、唯一の情報提供者との接触の中でバーレーン反政府派の気になる動きを察知し、探りを入れると、首都の中心部で起きた爆弾事件が政府による自作自演ではないかと思い始めた。さらに、偶然知り合った女性アーティストとの交際を深めることで、政府の陰謀であると確信し、その情報を本部に報告した。すると、シェーンの過度の飲酒、不適切な女性関係を理由にした退職通知が返ってきた。納得がいかないシェーンはCIA、米軍、バーレーン政府、アラブの春に感化された民衆が複雑に絡み合う騒乱のバーレーンで、真相解明のために奮闘する…。
知識が乏しい中東でも特に複雑な歴史を持つバーレーン王国が舞台で、それだけでも興味深い物語だが、さらにアラブの春という激動期の話であり、誰が誰を騙してるのか、どこに正義があるのか、最後まで先が読めないストーリーである。つまり、極めてリアルで緊迫感があるスパイ小説で、派手なアクションはなくても最後までサスペンスが味わえる、冷戦時代のスパイ小説の血統を受け継いだ作品と言える。
ル・カレ、グレアム・グリーンの世界を現代に甦らせた傑作として、本格スパイ小説のファンにオススメする。

iisan
927253Y1
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.2:
(4pt)

非戦闘型地政学的心理スパイの暗闘

確かに派手な銃撃戦や素手でのタイマン、カーチェイス、敵の秘密基地へ乱入して大暴れなどは現実的には不可能なのは理解していますが、映画や小説だからこそ楽しみにしているのも事実です。

本作はすでに盛りを超えた52歳のスパイが女性関係、勤務態度不良(なんとCIAでもタイムカードの打刻が必要のようです)、朝からひっかけてしまうアルコールの誘惑によりはるかに年下の上司から「早期退職勧告」を受けてしまいます。舞台は中東の島国・バーレーンでの反政府運動を下敷きにしています。(実際は王政の廃止まではいかずに立憲君主制(王政)になったとのことです。)

アメリカ、ロシア、イラン、サウジアラビアなど大国の思惑、反体制派組織への干渉と援助など地政学的な仕掛けが満載で基本的にはたったひとりで行動しながら深読みをして窮地から脱出を図り、クリーンな身分を獲得して平凡な生活を得られるか、という息詰まる心理戦を描いています。

ただし、21世紀の現代であればもうすこしスマホ、暗号や認証、盗聴アプリなどのIT系の仕掛けも必要だったかもしれません。
アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)より
4150415382
No.1:
(5pt)

矛盾が矛盾によって反転する時

短期の帰省の後、テレビで連日MLBに熱狂し、ワールドカップ・サッカー「日本対バーレーン」を観戦したがために読書が疎かになっていました。言い訳です。仕方がない。現実世界の楽しみが優先され、「読書」はいつだって夢なのだから。
 本書の背景には「アラブの春」があって、舞台は民主化運動真っ只中のバーレーン。これはちょっとしたシンクロニシティなのかどうか?(全てをそうやって霊的に結びつけようとする自分の心の動きにも問題が残ります(笑))かなりオーセンティックな体裁を持つエキサイティングなスパイ小説でした。
 主人公はCIAの中東分析局で勤務する52歳のシェーン・コリンズ。年金受給まで仕事を続けながらいずれフロリダの引退生活を夢見つつ自分よりはるかに年若い支局長に命じられることに忸怩たる思いを抱き、イランの陰謀を暴くという命題から逸れて次第に彼は<革命>の渦中に巻き込まれていきます。或る市中での爆破事件をきっかけに過度の飲酒と不適切な女性関係により「早期退職勧告」を掲げられた彼は、真相を追うべく静かに私的に奮闘していきますが・・・。
 鍵は、女性モザイク・アーティストのアルマイサの存在にありますが、彼女について語ろうとするとこのスパイ小説の肝を話すことになりますので語ることができません。しかしながら、彼女についてはかなり魅惑的に描写されており(こういう視点が亜細亜人でありながら欧米的だと批判されるかもしれません)、シェーンにとって世界の動きよりも艶やかに彼の心を翻弄し、尽きるところ私のような成長のない読者もまた振り回され続けます。
 もう一人、シェーンの協力者でもあるラシードの存在もまた注目に値します。シェーンに対して『信じるものがなければ生きる意味がない』(244p)と言ってのける彼に、もしかするとこの時代の小国「バーレーン」を生きた何者かたちの総合的なキャラクターだったのではと思わせるような「国を変える」という力強さを感じることにもなりました。
 タイトルはアルマイサが描く王国のオペラハウスに飾るモザイク画の由来(267p)から取られています。そのシンボリックなシーンと内容が読了後も静かな余韻を残します。それは先ほどのラシードの言葉と矛盾している内容でもあるわけですが、矛盾が矛盾によって反転する時、世界は或る運命という名の決着点へと辿り着くのかもしれません。
 そして白眉は、物語後半、シェーンが説明もないままにバーレーンから「あの国」へと赴き、密かに行動を積み重ねていく、そのプロセスにあります。それはスパイ小説を読む醍醐味でもあり、ル・カレの時代から何も変わらない。
  □「孔雀と雀 アラブに消えゆくスパイ "The Peacock and the Sparrow"」(I S ベリー 早川書房) 2025/3/23。
アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:アラブに冬を呼ぶスパイ (ハヤカワ文庫NV)より
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