ナツメグの味
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「ナツメグの味」。 エスカイヤとかニューヨーカー誌などに掲載したら似合いそうな、洒落た軽いホラー。正常と思われた人間が少しずつ異常性を露わにしていくという趣向で、この場合、殺人鬼であることがわかるのだが、カクテルにナツメグを入れるか入れないかが境目という妙な展開がいい。それほど怖いわけではないが、この後がどうなるのか想像するとやはり怖いという終わらせ方になっている。 「猛禽」「だから、ビールジーなんていないんだ」。 ホラー風味のシンプルでわかりやすい小咄。飼っている鸚鵡が産んだ大きな卵。それからかえった黒い怪鳥が夫婦を破滅させる「猛禽」が良い出来だ。 庭での一人遊びが大好きな幼い少年がそこで出会い、その実在を言い張る「ビールジーさん」。それが空想ではなく、しかも人喰いの妖怪だったことがオチでわかる「だから・・・」も洒落ている。 「宵待草」。 ホラー風味の恋愛悲劇で、詩的でとても良い作品。ニューヨークの大型百貨店には、実はたくさんの人が密かに住みつき暮らしている、閉店後にパーティを開いたり自作劇を上演したりしながら・・・ というイメージが素晴らしい。ミルハウザーもそうだったが、アメリカの作家は大型百貨店の存在になぜか創作欲を刺激されるらしい。 「遅すぎた来訪」。 一人の男の、自分の部屋に美しい女性がいる、しかし、見ることができないという感覚が濃密に描かれる。これも良い出来と思う。オチは、ジーン・リース「懐かしい我が家」と同様のもの。 「魔王とジョージとロージー」。 女性嫌悪を評価されて魔王にスカウトされ、宇宙の果てに新設された地獄の女性専用施設のトップ監督官におさまったジョージ。絶対的な権力を笠に着て楽しい日々を過ごしたが、間違って送られてきた美しいロージーに出会い、その処置を巡って魔王と対立するハメに・・・ ユーモアと皮肉が効いた、面白い作り話。 どの作品もいわゆる「奇妙な味」の系譜で巧くできているが、しかし、展開の切れがいまひとつで、オチの衝撃度が弱い。思うに人間性の捉え方が浅いのではないか。だから、プロットの作りもディテール描写も巧いのに、最後の展開に切れが出ず、読後に余韻が残らない。そんな印象を持った。 | ||||
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残酷なユーモア短編の名手コリアの日本では20余年振りの新作出版となるオリジナル傑作集。本書の特長は、彼の初期・最盛期・晩年期の作品が発表順ではありませんがバランス良く網羅されているという事で、破滅へまっしぐらに突き落とされる傾向の作品ばかりではなく、悪魔の住む異世界に遊び苦労の末に生還し救われるハッピーエンドな物語も含まれています。でも、幸運と不運の狭間は紙一重に過ぎませんので、手放しの油断は禁物ですよ。全17編の中から、私のお気に入り6編を紹介します。『ナツメグの味』:親友のバラバラ殺人事件に容疑者として巻き込まれた、穏やかで心優しき青年がカクテルを勧めた時に取った態度とは?背筋が凍るラストです。『特別配達』:マネキン人形に恋した青年の哀れな末路は?『猛禽』:幸せだった夫婦の仲が無気味な鳥の囁きで引き裂かれてしまいます。『頼みの綱』:インド人にロープ奇術を教わった夫婦が大喧嘩をしてしまい・・・奇術が何時も成功するとは限りません。『魔王とジョージとロージー』:女に振られ続けた青年ジョージに魔王閣下が救いの手を差し伸べ、宇宙の地獄本国に連れて来られる。ジョージは間違って地獄へ送られて来た娘ロージーを愛するようになり、魔王を出し抜こうと企む。著者初期の楽天的メルヘンです。『船から落ちた男』:老船長グレンウェイは豪華ヨットのゼノビア号で海に棲む幻の怪物を追い求めていた。偶然に船客となった悪意の人物のお蔭で彼の人生は狂い始める。本編は著者最晩年の力作で、老境に到達した作家ならではの人生観が深い感動を与えてくれます。 本書は著者の若き日の楽天的な作品群、最盛期のブラック・ユーモア全開の傑作、晩年の穏やかな心境を示す佳品の数々がバランス良く味わえる決定版といえる内容ですので、昔からのファンにも若い読者の方にも自信を持ってお奨め致します。 | ||||
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