群青に沈め 僕たちの特攻
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あらすじ/特攻はいわゆるゼロ戦で米艦隊に突入するだけではない。海の特攻である「回天」は比較的知られているが、この小説で扱われている「伏龍」のごとく、海の中を潜水服で「徒歩」で移動し、そして機雷を近寄ってきた米艦船に炸裂させ(ここで必然的に死ぬ)「海の中を徒歩で行く」特攻もあったことを初めて知った。 17才の少年に与えられた使命がこれである。 この時点で、大日本帝国は自国民を殺す事、青年にもならないような少年を殺すことが好きな国家、国民になってしまったんだなあ、と詠嘆。 この小説は意図的に第二次大戦末期、当時の日本人の老若男女が直面させられていた国家の重圧、拒否も逃避も不可能な、いつ死を強制、または余儀なくされるか分からない、しかもそれが不条理で期日もわからず、本来なら戦後日本国の日本人とはことなり、愛国精神なら豊富に涵養され、自発的に持っていただろう彼らでも不本意と恐怖を感じざるをえないような形での戦争に感じさせられていた反発、憎悪、困惑、恐怖、選択肢のない袋小路、閉塞感を総合した実感を意図的にカットしている。 戦後一世代を経て生まれた筆者にはその実態は想像ができない。 あえて言えば著者も再現できる自信は持てなかった感覚ではないかと思う。 テンプレートとして、上官による不合理な下士官イビリ、軍の命令に逆らえないのは上位下達の組織の常とはいえ、明らかに同国民に対する精神圧迫と反感と憎悪を植え付ける結果にしかならない、つまりは軍の士気と団結を養成するよりも憎悪と反逆を呼び覚ますような軍の経営上の不合理だのが描かれるが、この小説は「戦中期」を再現する構想を持たず、意図的にジュブナイル、17歳の少年が見た戦争、という感性を重視し、視野を限定した少年文学にすることを選んだと思われる。 著者の批判的精神は、軍港横須賀というのに賄賂でしか動かない業者だの、部隊のなかでもささいな昇進や内輪もめで本来なら期待できる団結だの一体感だのか失われ、いがみ合いと反目に繋がり、後味が悪い…といった描写に現れている。この為、この小説は、主人公である浅沼本人も自覚しない、なにか現実に対する内面の反応としてボソボソと「思う」独白としてだけ表される。 ・本来だったら一層団結できるのにバラバラになってしまう ・軍港だというのにこんな大人はなんだ。僕の田舎の方がよほど軍を信じている。 ・一つ爆発したら水中で誘爆する。その時点で「伏龍」は全滅。機能しないじゃないか。 ・死でも慣れてしまう。全力で訓練するがじつは退屈。 ・死が確実になったらむしろどうするかで、期日が分からないのが苛々するぐらいになる。 この自覚せざる観察がこの小説を大人の目線を持つ作品に仕上げている。 だが、この作品は極端に言えば戦時中を舞台にしたライトノベルである。 たとえば中村眞一郎が「死の影の下で」で持っていたような、戦前の統治階級の中では軍部に具体的に批判的で、どのような行動があったのか、とか、武田泰淳が「貴族の階段」で描いたような、上流階級での少女(たぶんこの少年とほぼ同年齢)がどのような視野を持っていたか、といった戦前の社会が持っていた階級や格差、またその中でも軍に対して持っていた服従だけではない視野といった広がりは意図的に切り捨てられている。 最後、敗戦を迎えて「次の段階の生に進む」=今までは過去になった、と相対化している。 山本七平が描いたような「二つの体制をどちらものめり込むことなく、どちらの社会も生き抜いていく」という視点を獲得(といっても無自覚であるし、敗戦後の半月ほどで主人公は戦後社会への適応をなしとげていく)してこの小説は終わる。 少年が青年になるという定式だが、さわやかな読後感とはうらはらに、筆者はこの小説は、著者の全著作においてどのようなポジションと意味を持って書かれたのか分からなかった。 重厚な動物小説で直木賞を受賞した、読者層としてはより「大人」をターゲットにしていると思われる著者である。 この作品は大人にして見れば戦争の扱い方が軽く、ジュブナイル小説としたら単行本ではなく新書か文庫でもっと手軽に上梓した方が良かったと思う。 「職業としての特攻とその具体的技術」という切り口を持てたのだから、有限である著作家としての寿命を考えれば、佳作ではあるけれど、なぜこのような形で著したのだろう、という疑問は禁じ得なかった。著者50歳の時の作品であるだけに、そうした着地点の計算はできるはずなのだが、と。 | ||||
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特攻隊員に志願するのは一時的な熱狂に浮かされて志願するものだと思っていましたが、 それでだけでは無い事情が本書には書かれています。 近い将来、断たれるであろう自分の命について、真摯に、そして生きたい気持ちとせめぎ合う気持ちが今の時代に生きる私にでも共感できました。 | ||||
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