海鳴り忍法帖
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
海鳴り忍法帖の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク
海鳴り忍法帖の総合評価:
9.00/10点 レビュー 8件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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それから、これは忍法帖のほとんど最期に描かれたものであってみれば、忍法帖を締めくくる仕掛けがほどこされているということだ。それは、冒頭の室町将軍義輝の庭における武術試合の圧倒的な吸引力にはじまる。最近、評論やエッセイの類ばかりを渉猟していた当方が、なにげなく手にとった本書の魔法にまたたくまに巻き込まれていくに充分なものだった。それは、まるで忍法帖の第一弾『甲賀忍法帖』の出だしを彷彿とさせる目くるめく幻惑な魔術そのものであった。目が吸いついて離せなくなるのだ。本を置くこと能わずとはまさにこのことだ。しかし、本書はこのまっこと奇怪千万な忍法がことごとく通用しない、さらに驚くべき武器を次から次に発明していく市民兵・逗子丸の存在が忍法帖シリーズの中でも異彩を放つことになる。彼は武器製造の天才でありなおかつ絶世の美童(成人してはいるが)でもあった。逗子丸の美貌こそは、まるで彼の反対側に棲息する妖女昼顔をさえ惑わせるものであった。それだけではない。鶯、鵯という美少女をも虜にするも、哀れ逗子丸の想い人は別にあった。さらには、彼の想い人の想いは他にあったのだ!この2つの要素が渾然一体となって物語のエンジンと化す。歴史の表にあらわれた決戦の波乱万丈と、その裏で蠢き騒ぐ闇の事情がヌルヌルドバドバとくんづほぐれつしながら展開していく様は、ただ呆然と指をくわえてみているしかない。
おお!つい忘れるところであった。この作が忍法帖の最末期に書かれたことの意味だった。それは、すでに書いたことでもあるが、ここで忍法が通用しない時代の到来を告げているのだ。それが近代兵器の先駆けとなる連発銃であり火焔瓶であり照明弾でありロケット砲であり地雷であり手榴弾であり、そしてついには大砲の製造にまでこぎつける。風太郎も書いている。<これは古代のシャーマニズム、呪術、陰陽道などに源流を持つ中世の亡霊のごとき魔術師陣と、ともかくも近代兵器との決戦であった>と。そして、ここから敷衍して、作者は太平洋戦争との比較に及んでいく。これこそ主眼であったのだろう。そう思えるほど凄惨な描写が続く。
もちろん、シリアスで塗り潰すような無粋は彼の小説には無縁だ。弾正と昼顔の初接吻シーンはこうだもの。<そして、蟇みたいな首と、地獄の美貌とは、物理的に接吻した>。さらに、昼顔は次々と並みいる男どもを篭絡していくが、彼女は何と醜男好みであってみれば…<十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した>。どことなく京マチ子を連想してしまうこの絶世の悪女こそ兵器作りに陶酔したロボットのような主人公よりも魅力をはなってやまないという趣向もまたそそられてしまうのだが、如何。