海鳴り忍法帖

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長編
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あらすじ

1996年05月31日 海鳴り忍法帖―山田風太郎傑作忍法帖 (KODANSHA NOVELS SPECIAL)

将軍足利義輝を倒した松永弾正が、次に狙うは繁栄を誇る堺の町と、美姫・夕子と昼顔。麾下の根来僧軍を使い、己の野望を達成せんとする弾正と、自由の精神と富を守らんと近代的兵器で立ち向かう呂宋助左衛門と厨子丸の死闘の行方は。(「BOOK」データベースより)

評判

海鳴り忍法帖の評価:

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海鳴り忍法帖の総合評価:

9.00/10点 レビュー 8件。

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Amazonレビュー

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No.8
(5pt)

絶対に映画では見たくない作品。脳内映画でこそ映える忍法帖末期を飾る大傑作!

「海鳴り忍法帖」。よくわからないタイトルだ。「週刊現代」連載時には「市民兵ただ一人」だったというが、これは、『全仕事』(角川文庫)での見出し“ひとりVS3万”でおおかた察しはつく。これに続く見出し“近代兵器VS根来忍法”をみれば、一人の市民兵が3万人の根来忍者を相手どって近代兵器を駆使して闘ったということが分かる。彼が相手にした根来忍者の首領が松永弾正(こと久秀)。彼らが決戦の時を迎えるのが(弾正も信長もが狙い定めていた)堺だ。つまり、これは史実を下敷きにした上の荒唐無稽なお噺という結構になる。巷間言われていることの繰り返しだが、山田風太郎の奇想天外な空想力は、全部が偽史などでは当然なく、むしろ全部が正史に則ったものの上にこそ花ひらく。これが彼の小説の醍醐味の一つ。まるで、タイム・スリップものの掟―歴史は改変してはならぬ―を厳守するのが山風の掟でもある。
それから、これは忍法帖のほとんど最期に描かれたものであってみれば、忍法帖を締めくくる仕掛けがほどこされているということだ。それは、冒頭の室町将軍義輝の庭における武術試合の圧倒的な吸引力にはじまる。最近、評論やエッセイの類ばかりを渉猟していた当方が、なにげなく手にとった本書の魔法にまたたくまに巻き込まれていくに充分なものだった。それは、まるで忍法帖の第一弾『甲賀忍法帖』の出だしを彷彿とさせる目くるめく幻惑な魔術そのものであった。目が吸いついて離せなくなるのだ。本を置くこと能わずとはまさにこのことだ。しかし、本書はこのまっこと奇怪千万な忍法がことごとく通用しない、さらに驚くべき武器を次から次に発明していく市民兵・逗子丸の存在が忍法帖シリーズの中でも異彩を放つことになる。彼は武器製造の天才でありなおかつ絶世の美童(成人してはいるが)でもあった。逗子丸の美貌こそは、まるで彼の反対側に棲息する妖女昼顔をさえ惑わせるものであった。それだけではない。鶯、鵯という美少女をも虜にするも、哀れ逗子丸の想い人は別にあった。さらには、彼の想い人の想いは他にあったのだ!この2つの要素が渾然一体となって物語のエンジンと化す。歴史の表にあらわれた決戦の波乱万丈と、その裏で蠢き騒ぐ闇の事情がヌルヌルドバドバとくんづほぐれつしながら展開していく様は、ただ呆然と指をくわえてみているしかない。
おお!つい忘れるところであった。この作が忍法帖の最末期に書かれたことの意味だった。それは、すでに書いたことでもあるが、ここで忍法が通用しない時代の到来を告げているのだ。それが近代兵器の先駆けとなる連発銃であり火焔瓶であり照明弾でありロケット砲であり地雷であり手榴弾であり、そしてついには大砲の製造にまでこぎつける。風太郎も書いている。<これは古代のシャーマニズム、呪術、陰陽道などに源流を持つ中世の亡霊のごとき魔術師陣と、ともかくも近代兵器との決戦であった>と。そして、ここから敷衍して、作者は太平洋戦争との比較に及んでいく。これこそ主眼であったのだろう。そう思えるほど凄惨な描写が続く。
もちろん、シリアスで塗り潰すような無粋は彼の小説には無縁だ。弾正と昼顔の初接吻シーンはこうだもの。<そして、蟇みたいな首と、地獄の美貌とは、物理的に接吻した>。さらに、昼顔は次々と並みいる男どもを篭絡していくが、彼女は何と醜男好みであってみれば…<十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した>。どことなく京マチ子を連想してしまうこの絶世の悪女こそ兵器作りに陶酔したロボットのような主人公よりも魅力をはなってやまないという趣向もまたそそられてしまうのだが、如何。
海鳴り忍法帖 (時代小説文庫) Amazon書評・レビュー: 海鳴り忍法帖 (時代小説文庫)より
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No.7
(5pt)

絶対に映画では見たくない作品。脳内映画でこそ映える忍法帖末期を飾る大傑作!

「海鳴り忍法帖」。よくわからないタイトルだ。「週刊現代」連載時には「市民兵ただ一人」だったというが、これは、『全仕事』(角川文庫)での見出し“ひとりVS3万”でおおかた察しはつく。これに続く見出し“近代兵器VS根来忍法”をみれば、一人の市民兵が3万人の根来忍者を相手どって近代兵器を駆使して闘ったということが分かる。彼が相手にした根来忍者の首領が松永弾正(こと久秀)。彼らが決戦の時を迎えるのが(弾正も信長もが狙い定めていた)堺だ。つまり、これは史実を下敷きにした上の荒唐無稽なお噺という結構になる。巷間言われていることの繰り返しだが、山田風太郎の奇想天外な空想力は、全部が偽史などでは当然なく、むしろ全部が正史に則ったものの上にこそ花ひらく。これが彼の小説の醍醐味の一つ。まるで、タイム・スリップものの掟―歴史は改変してはならぬ―を厳守するのが山風の掟でもある。
それから、これは忍法帖のほとんど最期に描かれたものであってみれば、忍法帖を締めくくる仕掛けがほどこされているということだ。それは、冒頭の室町将軍義輝の庭における武術試合の圧倒的な吸引力にはじまる。最近、評論やエッセイの類ばかりを渉猟していた当方が、なにげなく手にとった本書の魔法にまたたくまに巻き込まれていくに充分なものだった。それは、まるで忍法帖の第一弾『甲賀忍法帖』の出だしを彷彿とさせる目くるめく幻惑な魔術そのものであった。目が吸いついて離せなくなるのだ。本を置くこと能わずとはまさにこのことだ。しかし、本書はこのまっこと奇怪千万な忍法がことごとく通用しない、さらに驚くべき武器を次から次に発明していく市民兵・逗子丸の存在が忍法帖シリーズの中でも異彩を放つことになる。彼は武器製造の天才でありなおかつ絶世の美童(成人してはいるが)でもあった。逗子丸の美貌こそは、まるで彼の反対側に棲息する妖女昼顔をさえ惑わせるものであった。それだけではない。鶯、鵯という美少女をも虜にするも、哀れ逗子丸の想い人は別にあった。さらには、彼の想い人の想いは他にあったのだ!この2つの要素が渾然一体となって物語のエンジンと化す。歴史の表にあらわれた決戦の波乱万丈と、その裏で蠢き騒ぐ闇の事情がヌルヌルドバドバとくんづほぐれつしながら展開していく様は、ただ呆然と指をくわえてみているしかない。
おお!つい忘れるところであった。この作が忍法帖の最末期に書かれたことの意味だった。それは、すでに書いたことでもあるが、ここで忍法が通用しない時代の到来を告げているのだ。それが近代兵器の先駆けとなる連発銃であり火焔瓶であり照明弾でありロケット砲であり地雷であり手榴弾であり、そしてついには大砲の製造にまでこぎつける。風太郎も書いている。<これは古代のシャーマニズム、呪術、陰陽道などに源流を持つ中世の亡霊のごとき魔術師陣と、ともかくも近代兵器との決戦であった>と。そして、ここから敷衍して、作者は太平洋戦争との比較に及んでいく。これこそ主眼であったのだろう。そう思えるほど凄惨な描写が続く。
もちろん、シリアスで塗り潰すような無粋は彼の小説には無縁だ。弾正と昼顔の初接吻シーンはこうだもの。<そして、蟇みたいな首と、地獄の美貌とは、物理的に接吻した>。さらに、昼顔は次々と並みいる男どもを篭絡していくが、彼女は何と醜男好みであってみれば…<十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した>。どことなく京マチ子を連想してしまうこの絶世の悪女こそ兵器作りに陶酔したロボットのような主人公よりも魅力をはなってやまないという趣向もまたそそられてしまうのだが、如何。
海鳴り忍法帖 (1979年) (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 海鳴り忍法帖 (1979年) (角川文庫)より
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No.6
(5pt)

絶対に映画では見たくない作品。脳内映画でこそ映える忍法帖末期を飾る大傑作!

「海鳴り忍法帖」。よくわからないタイトルだ。「週刊現代」連載時には「市民兵ただ一人」だったというが、これは、『全仕事』(角川文庫)での見出し“ひとりVS3万”でおおかた察しはつく。これに続く見出し“近代兵器VS根来忍法”をみれば、一人の市民兵が3万人の根来忍者を相手どって近代兵器を駆使して闘ったということが分かる。彼が相手にした根来忍者の首領が松永弾正(こと久秀)。彼らが決戦の時を迎えるのが(弾正も信長もが狙い定めていた)堺だ。つまり、これは史実を下敷きにした上の荒唐無稽なお噺という結構になる。巷間言われていることの繰り返しだが、山田風太郎の奇想天外な空想力は、全部が偽史などでは当然なく、むしろ全部が正史に則ったものの上にこそ花ひらく。これが彼の小説の醍醐味の一つ。まるで、タイム・スリップものの掟―歴史は改変してはならぬ―を厳守するのが山風の掟でもある。
それから、これは忍法帖のほとんど最期に描かれたものであってみれば、忍法帖を締めくくる仕掛けがほどこされているということだ。それは、冒頭の室町将軍義輝の庭における武術試合の圧倒的な吸引力にはじまる。最近、評論やエッセイの類ばかりを渉猟していた当方が、なにげなく手にとった本書の魔法にまたたくまに巻き込まれていくに充分なものだった。それは、まるで忍法帖の第一弾『甲賀忍法帖』の出だしを彷彿とさせる目くるめく幻惑な魔術そのものであった。目が吸いついて離せなくなるのだ。本を置くこと能わずとはまさにこのことだ。しかし、本書はこのまっこと奇怪千万な忍法がことごとく通用しない、さらに驚くべき武器を次から次に発明していく市民兵・逗子丸の存在が忍法帖シリーズの中でも異彩を放つことになる。彼は武器製造の天才でありなおかつ絶世の美童(成人してはいるが)でもあった。逗子丸の美貌こそは、まるで彼の反対側に棲息する妖女昼顔をさえ惑わせるものであった。それだけではない。鶯、鵯という美少女をも虜にするも、哀れ逗子丸の想い人は別にあった。さらには、彼の想い人の想いは他にあったのだ!この2つの要素が渾然一体となって物語のエンジンと化す。歴史の表にあらわれた決戦の波乱万丈と、その裏で蠢き騒ぐ闇の事情がヌルヌルドバドバとくんづほぐれつしながら展開していく様は、ただ呆然と指をくわえてみているしかない。
おお!つい忘れるところであった。この作が忍法帖の最末期に書かれたことの意味だった。それは、すでに書いたことでもあるが、ここで忍法が通用しない時代の到来を告げているのだ。それが近代兵器の先駆けとなる連発銃であり火焔瓶であり照明弾でありロケット砲であり地雷であり手榴弾であり、そしてついには大砲の製造にまでこぎつける。風太郎も書いている。<これは古代のシャーマニズム、呪術、陰陽道などに源流を持つ中世の亡霊のごとき魔術師陣と、ともかくも近代兵器との決戦であった>と。そして、ここから敷衍して、作者は太平洋戦争との比較に及んでいく。これこそ主眼であったのだろう。そう思えるほど凄惨な描写が続く。
もちろん、シリアスで塗り潰すような無粋は彼の小説には無縁だ。弾正と昼顔の初接吻シーンはこうだもの。<そして、蟇みたいな首と、地獄の美貌とは、物理的に接吻した>。さらに、昼顔は次々と並みいる男どもを篭絡していくが、彼女は何と醜男好みであってみれば…<十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した>。どことなく京マチ子を連想してしまうこの絶世の悪女こそ兵器作りに陶酔したロボットのような主人公よりも魅力をはなってやまないという趣向もまたそそられてしまうのだが、如何。
海鳴り忍法帖 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 海鳴り忍法帖 (角川文庫)より
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No.5
(4pt)

共感を拒絶する忍法帖

フォーマットとしては、「姫君を報じた騎士の物語」で、『風来忍法帖』や『忍法八犬伝』の系譜と言えるのですが、いかんせん、主人公たる明治の忍者が、目的(最初は立身、その後は献身)のためならば自分を慕う女性も平然と手にかけるシリアル・キラーであり、それ以上に、崇拝の対象たる女性の魅力がゼロ、というよりも、『伊賀忍法帖』の右京大夫の劣化版というか、読み進めるうちに次第にいらいらさせられる始末。さらに、敵役はそれなりに非道なのだけれど、幕末ではそこそこ有為の人物ということで、肝心の仇討ちがぼやけてしまっています。

というわけで、風太郎忍法帖として出色とはいいがたいのですが、その後の明治物とリンクしている点と、主人公の駆使する飛騨幻法が、『忍法封印いま破る』に比肩されるほど強いということで、☆をおまけにひとつ献上。
海鳴り忍法帖―山田風太郎傑作忍法帖 (KODANSHA NOVELS SPECIAL) Amazon書評・レビュー: 海鳴り忍法帖―山田風太郎傑作忍法帖 (KODANSHA NOVELS SPECIAL)より
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No.4
(4pt)

銃・忍法帖・愛

『伊賀忍法帖 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)』と同じく、悪の大ボスは、強欲松永弾正久秀。
前作で主君の御台に懸想して主家を滅した久秀は、今作でも将軍の御台に懸想して義輝を弑するのだった-あんたも好きねぇ。

恋人を、久秀配下の根来衆たちに無残になぶり殺しにされた若き天才技師ミカエル厨子丸は、戦国の自由都市堺を舞台に、ルソン助左衛門の助けを得ながらさまざまな銃や兵器を発明し、復讐を遂げていくのであった。

3万人(!)の超人的根来衆が堺を取り囲んでからの闘いが、他の忍法帖と違っていて見もの。根来衆の代表それぞれの忍法が詳しく説明されたすぐ後に、近代兵器によってあっけなく瞬殺されてしまう様には呆気に取られてしまう。

『伊賀忍法帖』の漁火に輪をかけた地獄大夫夕顔の悪女、妖女ぶりもすごい。でもこうなっちゃったのは厨子丸への報われぬ愛のせい。また、厨子丸の死んだ恋人鶯の友人鵯の、厨子丸に届かぬ思いを寄せる姿もあわれ。

日本のヴェネツィアともいうべき堺が、その自由を奪われていく中、壮絶にそして悲壮に幕。
海鳴り忍法帖 (1979年) (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 海鳴り忍法帖 (1979年) (角川文庫)より
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