(短編集)

殺意の盲点



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    初公開日(参考)1975年12月
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    短編集

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    殺意の盲点 (新風舎文庫)

    2004年04月30日 殺意の盲点 (新風舎文庫)

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    No.1:
    (5pt)

    表題作「殺意の盲点」を含めた12編の短編集。文庫で234頁だから大サービスだ!

    本書は1976年1月に角川文庫から出版されたものです。1971年4月潮出版社から「殺意の盲点」のタイトルで出版されたものを再編集して同タイトルで再出版されたものです。潮出版社のものには本作以外にも「一千万人の犯人」「サラリーマン皿屋敷」「公害戦争」「美しい不信」「雨に散る花」が含まれています。残念ながら潮出版社の「殺意の盲点」は現在では入手不可能なようです。
    「殺意の盲点」
    ルポライターだった谷は、カスタムカーを運転する者によって妻と子供を轢き逃げされる。だった、と言うのはその日から生活が一変してしまったからだ。妻は命を取り留めたが、子供の命は失われてしまった。事故の直前に妻が見た運転者の風貌を手掛かりに、仕事を放擲し妻と共に犯人捜しに執念を燃やす。同時間帯に通勤、通学する者の犯行であろうと推理し夫婦でパトロールする日課が始まった。当時は自動車マイカーが氾濫して事故が多発し“くるま公害”と言われるほど社会問題化されていた時。高性能な乗用車を所有する若者たちが赤信号や多くの標識などによりスピードを抑制され、その欲求不満を晴らすため車が凶器として弱き妻子に向けられたのだ。通常なら殺意にならないような動機が盲点だったが、若者たちの気持ちは納得出来るものではない。
    「憎悪集中橋」
    前編「殺意の盲点」と同じように“くるま公害”を扱った作品。住人2万世帯約8万人が住むマンモス団地“曙台団地”の中心を貫くように4車線の幹線道路が開通した。それと同時にマイカー族の利便性が向上し増々団地の人気が上昇する結果となった。しかし、そこで大きな問題が起こる。その幹線道路によってマンモス団地が左右に分断されてしまった事だ。そこでS市は大規模な歩道橋を作って交流できるようにしたのだ。ところが住人たちは、どうして車はスイスイ走るのに人間は喘ぎ喘ぎ長い階段を登って横断しなければならないのかという不満をもち始める。すぐに住人たちは、その苦痛を避けて歩道橋を渡らず幹線道路を横断し始めた。当然、人や自転車がいないと思って自動車を運転しているのだから、事故が多発する。事故にあった人々は被害者なのだけど、運転していた人は加害者であるが、歩道橋が作られたことによって加害者にさせられた被害者なのだ。自動車社会の理不尽さを書いた話。
    「無医村の神」
    医師のいなかったI県の日本のチベットと呼ばれるS地域に小川と言う医師が来てから、地域の人々は彼を“神様”と崇拝していた。地域の人々は小川医師のいるお陰で不安なく過ごせていた。ところが「大都出版企画サービス」と言う会社を経営している“原稿ブローカー”竹内五郎という男がS地域の小川医師を“無医村の神、実はニセ者”という記事を週刊誌に書いたのだ。小川は医師法違反で免許を取り消され無資格の医師だったが腕は確かで地域の人々に貢献し信頼されていた。結局、小川医師が去ってから通常の病気であって助かる命も助からない事態が続発する。無資格とはいえ村にとって重要な医師だったのだ。その発端となった竹内五郎に住民たちが殺意を抱くのは当然の成り行きだろう。
    「堕ちた山脈」
    北アルプス北端にあるY岳の積雪期登攀を狙った東京岩稜登高会と静岡県A大山岳部の2パーティーが遭難した。杉尾顕一をリーダーとする岩稜登高会6名のパーティーはヒマラヤ経験のある山岳団体の中でも同会屈指のクライマー揃いだった。従って、軽く考えており、シェラフをはじめ装備も食料もほとんど持っていなかった。一方、A大山岳部は歴史も浅く、この山行が初めての冬山合宿だった。もともと金持ちの子弟が多く集まるA大だけに、装備や食料などヒマラヤに登るのではないかと言うほど潤沢だった。雪洞を掘って避難していた2パーティーは、当然、ベテランの杉尾をリーダーとする岩稜登高会リーダー杉尾の指示によって、残された限りある食料の管理や、降り積もる雪かきや労務を割り振られた。しかし、暫くするとA大山岳部のリーダーも岩稜登高会の装備や食料が十分でない事に気が付く。そうなれば立場は逆転するのだ。幸い2パーティーは捜索隊によって救助される。マスコミは山の友情が命を救ったと報じるのだが、密室ともいえる雪洞の中での軋轢を知るものはいない。その軋轢の様子、そこが読みどころ。
    「ゴマメの復讐」
    江戸時代創業の国内屈指の菱井デパートに勤務する磯田春雄は、学校でたての西も東も分からぬ女子店員と優しくしたのが切掛けになり3年ほど交際を続けていた。女子店員を多数要す老舗デパートは男女間の問題には極めてうるさい。そんななか磯田と女子店員の関係が店内に知れ渡ってしまった。彼女は“ミス菱井デパート”と呼ばれるほど美貌の持ち主で、幹部連からも好まれていたことから、磯田に対して厳しい処分が言い渡される。彼女に対しては軽い処分だったが、磯田は厳罰に処され馘首されてしまった。それに反感を抱いて磯田は巨大デパートに対して復讐を企てる。ゴマメとなって。
    「シジフォスの刺した人形」
    シジフォスとはギリシャ神話に出てくる人物。彼は坂の上から落ちて来る岩を坂の上に汗水たらして持ち上げていく苦役を与えられる。坂の上に上げた岩は、また自然に落ちてしまう。彼は何度も同じ事を繰り返さなければならない。意味の無い苦役を罰として与えられることの代名詞。立田茂二は都下の町はずれにある自動車組み立て工場で働きながら、全く人間性を必要としないベルトコンベヤー作業がまるでシジフォスと同じだと思った。彼の唯一の生きがいは、スタータレント小月えり子をテレビで見ることによって心を癒す事だった。その日も夜勤明けであったが小月えり子がテレビに出る事を知っていて、眠い目をこすりながら番組を楽しみに見た。この日の番組のテーマは、殺到するファンレターや贈り物の中から傑作な物を披露すると言う題材だった。そこには、おおよそ小月えり子には似合わない年寄りじみたドレスや、誤字だらけで方言丸出しのファンレターが紹介された。それは誰であろう、立田が送ったものだった。面白可笑しく笑う小月えり子を見て殺意を抱いてしまうことに、何故か納得してしまう。
    「赤い髪かざり」
    ベトナム帰休兵カールラーセン一等兵は二週間の休暇を与えられ、メコンデルタ地帯の戦場から東京へ来た。酒と女ならベトナムにもある。日本の美しい山脈の連なる高原が、人殺しに疲れた身も心も癒してくれるのではあるまいかと、とある高原の駅に降り立った。山名純子の父親は一流会社の社長を務める。純子は政略結婚として選ばれた男と結婚式を挙げる前日に信濃路へ向かう列車に乗り込んだ。場所はどこでも良かった。父親に対するレジスタンスで処女を捨てる旅だったからだ。駅を降りた純子は、八ヶ岳山脈の高原を歩いている季節外れの旅行者カールラーセンと出会う。他には誰もいない。高原の静謐な空間で二人はたちまち意気投合し、瞬間的に恋愛感情を抱くほどの中になった。しかし二人は長い時間、一緒に過ごすことは出来ない。惜別の思いを込めてサンゴの髪かざりを取ってカールに渡すのだ。もう想像つくと思うけど。ベトナムメコンデルタ地帯で米兵の戦死体を回収していた隊員が発見しアメリカ兵の認識票を確認した時、その兵隊の手にはサンゴの髪かざりが握られていたのだ。センチメンタルな話です。
    「団地戦争」
    団地という言葉は今日では無くなったが、画一的な造りの公営住宅を指すものだろう。居住スペースは狭いが、収入によって家賃が民間の賃貸住居と比較して優遇されている。森村氏も実は団地住人の経験を持つ。「高層の死角」でメジャーデビューした後も、いつ売れなくなるか分からないと言う危惧を抱いて、ベストセラー作家となった後も暫く団地に住み続けた経緯がある。その時代に感じたことが題材になっているのだろう。K県S市の団地に住むレストランに勤めるウェイトレスが自宅に帰る途中に痴漢に襲われる。彼女は目の前の団地の窓に向かって救助を求めた。ところが、その様子を知って、幾つか明るかった団地の窓が次々に明かりを消しカーテンを閉めてしまった。被害にあったウェイトレスを治療した磯川医師は、助けを求めたウェイトレスを見殺しにした団地の住人を訴えたいほど激怒する。しかし、団地の住人たちも万一自分が被害にあった時、誰も助けに来てくれない事を悟るのだ。次々に住人は転居し、ゴキブリとネズミしか住まない団地として滅びてしまうのだ。助けようとしなかった住人たちも住処を失ってしまうのだ。
    「挑戦の切符」
    野添友紀子は丸の内の商事会社に勤める同僚の川村達馬と交際していた。友紀子は女の貴重なもの全てを川村に与えてしまった。ところが川村は会社の重役令嬢との縁談に古ぞうりの様に友紀子を捨ててしまう。長野県北部の貧農に生まれた矢代正男は成功の機会を求めて大都会に来た。数年の苦闘の結果100万円ほどの預金を蓄えた。彼はそれを学費にして大学に行こうと決めた。その時“三か月で元金が三倍になる”という怪しげな広告につらされ全額を委ねる。他人から見れば当然のインチキなのだが、すぐにその会社は倒産し全額を失ってしまう。野添友紀子と矢代正男は人生に悔いはなかった。人生を終わらせるため、死ぬため偶然にも二人は長野県のK岳へ登ったのである。K岳襖岩で立ち往生した友紀子は、ここが自分の死ぬ場所だと悟り、死の来るのをじっと待った。ところが目をつぶると人の声が聞こえてくる。こんなに危険な場所へ助けに来てくれる人がいるなんて考えられなかった。もちろん、それは矢代だ。矢代も死ぬ場所を求めてK岳を登っていた。二人とも人生は勝敗では無い“負けた時にもう一度立ち直れるか”だと気が付く。二人は駅に着いた時、まだ行先は分からないが、新たな人生の切符を買う。人生ガンバレ物語。読み終わって清々しい気持ちになる。
    「奔放の代償」
    この時代フリーセックスだの一夫一婦制の崩壊だのと騒がれていた。森村氏の問題提議だ。岡村初枝は親の勧めるまま大して気は進まなかったが特に断る理由も無かった、というだけで岡村進と見合い結婚した。岡村進は元々女性から興味を惹かれるような風貌ではなかった。さらに木仏金仏(人情や風情を解しない。融通がきかない)な性格から初枝は結婚後も、特に愛情を感じることは無い。夫が会社に出勤してからは何もやることが無く、退屈で退屈で仕方無い。そんな気の緩みのある時、訪問販売のセールスマンと親密になってしまう。時はフリーセックス謳歌の時代。味気ない夫とのセックスに満足出来ない初枝は、セールスマンと情交を繰り返し妊娠までしてしまうのだ。もちろん夫には言えないので中絶手術を行う。森村氏が言いたいのはココからだ。通常、外科手術は医師が手元を見ながら行う。ところが人工妊娠中絶は医師の勘だけに頼る盲手術だ。子宮内部は見えない。その奥の方に金属の鉗子を入れて胎児を引っ張り出し、子宮壁にくっついた胎盤を掻き取るのである。柔らかい子宮内部を手探りで、金属の棒で引っ搔き回すのだからたまったものではない。初枝は医師の手術ミスで死亡してしまうのだ。
    「蟻の戦争」
    T大法学部出身で在学中に司法試験に合格したほど法律に詳しい浅田伸男は“大日モータース”に入社した。大日モータースは戦時中飛行機メーカーH航空機の流れをくむ“大日精機”が自動車メーカーへ転身したものだった。本社の浅田は同期入社で出身校も同じ大庭常久から「経済研究会」に出席しないか?と誘われる。大庭は常に浅田をライバル視していたので浅田はあまり気が進まなかった。三金会は毎月第3金曜日の夜に集まることから付いた名前だ。森村氏は他の作品でも度々登場させている。ただの飲み会程度と思って出席した浅田だが、それは松原副社長の松原派の集まりだった。しかし、社内には松原派の他、現社長の大野派と専務の大門康次の一派があった。三派は時期社長の座を狙って相手方の派閥の足を引っ張り合うことだけを考えている。蟻の努力にも劣る、恐ろしくも情けない人間たちの集まりだった。
    「殺意中心世帯」
    人間は一度、猜疑心を持ち始めると夫婦といえども全て悪い方向へ解釈するようになってしまうものだ。宮地は就寝中、少し大きな地震がきた時、放っておいてもすぐに収まるだろうと思った。ところが結婚祝いに貰った重さ6キロもある青銅の壺が棚から落ちてきた。また別の日、入浴中湯船で気を失ってしまった。危うく命は助かったが調べると浴室の煙突にすずめの巣ができたため、ガスが不完全燃焼していたことが分かった。何でもない事故だが宮地は妻の弓子が自分に殺意を持っているのではないかと猜疑心で一杯になる。会社へ出勤する振りをして妻の平日の行動を探ってみる。するとすぐ、宮地が出勤してから同じ団地に住む50才を超える井野という男の部屋に行っている事が分かった。なんとか妻の尻尾を掴んでやろうと計画するが、なかなかその現場を押さえることが出来ずに苦悶の日々が続いた。その後は何も無く平穏な日を過ごせた。ところが、なんと弓子が妊娠し出産した。人間の赤ちゃんなんて、みんな生まれたて時は猿みたいな顔をしているものだ。ところが宮地は、それは井野の子供だと確信してしまう。そもそも、人とすれ違えば相手が思わず振り向いてしまうほど美貌な弓子が、平凡で何でもない宮地と一回の見合いで結婚した理由も怪しく思うようになってくる。森村氏は、数々宮地が抱いた猜疑の気持ちの謎解きをしてくれます。そんな事で美貌の妻を疑っていたのかと思える結末です。
    殺意の盲点 (角川文庫 緑 365-11)Amazon書評・レビュー:殺意の盲点 (角川文庫 緑 365-11)より
    4041365112



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